ドギー:探偵事務所での事故により腕を骨折し、病院に運び込まれたホサキであったが
それに加えて栄養失調により少しの間病院生活を行う事になった
当時のホサキを見たドクター曰く「まともに動けている事すら信じられない状態」であったらしい
ドギー:そんな事があって落ち着いてきた頃、ノエルは自分の恋人に会うために病院の前まで来ていた
ノエル:「……」
ノエル:少しだけ大きなバスケットを抱え、病院の前に立つ。一つ溜息をついてから、病院へと足を踏み入れた。
ノエル:カウンターで受付をしてからホサキの病室に通してもらうよ。
ドギー:ではカウンターで受付を済ませた後病室へと向かうと
そこにはベッドの上で静かに本を読んでいるホサキの姿があった
ノエル:無言で扉の横をノックする。
ホサキ:「ん…?どうぞ~」
音に気付き、扉の外の存在に向けて声を掛ける
ノエル:「俺だ。入るぞ」そう言ってこちらからも姿を見せる
ノエル:そのまま真っ直ぐホサキのベッドに向かい、近くの椅子を引き寄せて腰かける
ホサキ:「…フフッ、君だったか…
来てくれるとは思ってなかったから少し驚いたよ」
少しだけ驚いたように固まった後に薄く微笑む
ノエル:「なんで来ないと思ったんだ、馬鹿。ほら、土産だ」
そう言ってバスケットに被せてあった布を取る。そこにはリンゴやオレンジに加え、普段は食べないような少し高いフルーツがたくさん入っていた。
ホサキ:「今回は相当怒ってたのわかったから、しばらくは一人で反省してろって感じで来てくれないものかとね…
っと…こんなに沢山…ありがとね、ノエル♪
…うわぁ…高かったんじゃない?こんなのまで…」
沢山のフルーツに少し目を丸くしながらも嬉しそうにクスっと笑う
ノエル:「いや……その、何だ。事故とは言え、最後の最後であんな事になってお前が病院送りになるとは思っていなかったし。
こちらも怒る気が冷めたというか……土産もその詫びというか」気まずそうに目を逸らす
ノエル:「どれを食べたい?剥いてやろうか、その腕じゃ厳しいだろうし」
ホサキ:「…フフッ、どうしたのさ、君らしくも無い♪
普段の君なら『自分の不注意のせいで人に迷惑かけた上に骨折までするとは、この馬鹿ホサキ!』
とか言いそうな物なのに♪」
半分からかうような口調で言った後にりんごを手に取る
ノエル:「……もう散々叱られただろう。俺がこれ以上追い詰める事も無いと思って……」リンゴをホサキの手から取り、するすると綺麗に剥いていく
ホサキ:「ん、そっか…でも我ながらこんなに叱られたのも初めてだったなぁ…♪」
リンゴを向く様子を見ながら困ったように笑う
ノエル:「ああ、俺も初めて見た……元のクールなお前からは想像もできないくらい失態ばかりだったからな」
ノエル:「……えっと、ホサキ…聞きたい事があるんだ…」
ノエル:リンゴを剥く手が止まる
ホサキ:「そうだね…情けない所いっぱい見せちゃったなあ…
…うん?」
ノエル:「……あの時、助けに行ったのは迷惑だったか…?」
ホサキ:「……どうして、そんな事を…?」
ノエル:「お前はあの時、きっと死んでもいいと思って家を出たのだろう。
だというのに無理に救いに行って、その……お前も心労が増えたんじゃないのか。エリーの事とか」
ノエル:「俺はお前を救いたかった、それは事実だ……でも、お節介な事をしたんじゃないかって思うと……あの時死ねば良かった、とか思われたら、俺は……」
ノエル:そう呟くように言って、目を伏せる
ホサキ:「…ノエル。」
そっと名前を呼ぶ
ノエル:「ん…」不安そうにホサキを見つめる
ホサキ:「……」
そっと胸に顔を押し当てるようにして抱きしめる
ノエル:「ゎ……ほ、ホサキ……」
ホサキ:「君の言う通り、僕はあの時死んでもいいと思った。それで君達を助けられるならって、独りよがりな感情でね。
それが間違いだった事は今回で身に染みたしもうしようとも思わない…でもそれはそれとして」
ホサキ:「君たちが…君が助けに来てくれた時
僕はどうしようも無い位に嬉しかったんだ…」
ノエル:「ん……」腕の中で声を漏らす
ホサキ:「それと…僕から一つやらないといけない事がある」
そっとノエルを離して、見つめる。
ノエル:「え……何を……?」困惑したような顔で見つめ返す
ホサキ:「…僕が居なくなる前のいつかの夜…
君は僕に対して、自分の人生に色をくれたって言ってただろう?」
ノエル:「ああ……えっと、そんな恥ずかしい事言っていたか……?」眉を歪めて、恥ずかしそうに目を逸らす
ホサキ:「うん…♪あれは…僕も一緒だったんだ」
ノエル:「……」驚いたように目を見開く
ホサキ:「僕の人生は…マーシュの家で暮らし始めてからはずっと灰色だった。
お世話になった人は居たけど、それでも、ずっと何か満ち足りてなくて…いつも空っぽだった」
ホサキ:「いわば…それまで僕の人生は始まってすらいなかったのかもしれない」
ホサキ:「でもね…ノエル。僕の人生は…君という光に出会った事で…新たに始まり出したんだ。」
ノエル:「ホサキ……」
ホサキ:「君と出会って…探偵事務所を通して色んな人たちと出会って…
僕の人生は虹色に輝き始めた」
ホサキ:「そんな事があったからこそ…僕はきっと、生きる事に意味を見いだせたんだと思う。」
ホサキ:「ありがとう、ノエル…僕の人生に…素敵な色を与えてくれて」
そう言って目を細め、感謝の言葉を述べる
ノエル:「……っ」ぎゅ、とホサキに抱き着く
ホサキ:「わっ…とと…」
ノエル:「……与えてくれて、じゃない……これからももっともっと、お前の人生を輝かしいものにする」
ノエル:「だから…もう、本当に傍から離れないで……ずっと、一緒にいて……お願いだから……」
ノエル:そう言うノエルの肩は、小さく震えていた
ホサキ:「…うん、約束する…今度こそ、例えどんな事があったとしても君から離れたりしない
それに、絶対に君を手放したりもしない。絶対に、だ。」
震える事なんて出来ないほどに、強く、強くノエルを抱きしめる
ノエル:「あ……ホサキ、少し苦しいぞ……」小さく声を上げながら、そっと抱き返す
ノエル:「うん……今度こそ約束だから。もう破ったら駄目だぞ、ダーリン……」
ホサキ:「ぁ…うん…絶対に…今度こそ、破ったりなんかするもんか…」
苦しくないように抱きしめる力を緩めてから力強く答える
ノエル:「…ん。なら、もう俺から言う事はないぞ」どこか幸せそうな声を漏らし、そっと胸元に頬擦りする
ホサキ:「フフッ…♪」
小さく笑いながらそっと、恋人の頭を撫でる
ノエル:「ぁ……ホサキ……♡」目を細めて大人しく頭を撫でられる
ホサキ:「んっ♪よしよし…♪
…そういえば…君の言う二つ目の罰ってなんだったの…?」
頭を優しく撫で続けながらふと思い浮かんだ疑問を口にする
ノエル:「……聞きたい?というか、やっぱりこれだけは受けてもらおうか……」体を起こして、ホサキを見つめる
ホサキ:「んっ…そうだね、やっちゃった以上は僕も受ける覚悟は出来てるし…」
むむっと表情を凛々しくしながらノエルを見る
ノエル:「なら、言わせてもらおう。……俺よりも先に死ぬな」
ホサキ:「え……?」
ノエル:「今後、俺の事を身を挺して守ったりするのも禁止だ。……わかったな?」そう言って微笑む
ホサキ:「…そう言う事か…うん…そうだね
確かに、それはちゃんと誓っておかないとね…うん、約束する。君より先に死んだりはしないよ。」
ノエル:「…良かった。約束だぞ、ダーリン」椅子に座り、リンゴを剥くのを再開する
ノエル:「……俺は人間だ。遅かれ早かれ、いつかは死ぬんだ」
ノエル:「だからこそ、どうやって死ぬかは自分で選びたい」
ノエル:しょり、しょり。リンゴを剥く音と、ノエルの声、時計の針が進む音が部屋に響く。
ホサキ:「……」
ノエル:「……最期に見るのはお前がいい。最期に聞くのは、お前の声がいい。最期に感じるのは…お前の手の温もりがいい」
ノエル:「だから、俺より先に逝くな。……今みたいに、お前に引け目が無いと言えない我儘だ」
ノエル:剥き終わったリンゴを持参した皿に乗せ、ホサキの前に置く
ノエル:「食べてくれ。赤くて綺麗なリンゴだった、きっとすごく美味しいはずだ」
ホサキ:「…美味しい」
剥かれたリンゴをそっと口に運び、言葉が自然と口から漏れ出る
ノエル:「ん、良かった。早く退院できるといいな、ホサキ」微笑みかける
ホサキ:「……」
そっとノエルの頬を撫でる
ノエル:「あぅ……」自然と笑みがこぼれ、クスクスと気持ちよさそうに笑う
ホサキ:「…そうだね…少しだけ…うぅん、凄く厳しい事だけど
必ず守るよ…僕だって、仮に君が死ぬときは…そんな顔をしていて欲しいから。」
そっと目を細めながらノエルの顔を見据えて、囁くようにノエルに誓う
ノエル:「うん……ありがとう、ホサキ。愛しいマイダーリン……♪」ホサキの頬に、そっとキスをする
ホサキ:「んっ…どういたしまして…愛しい愛しいマイハニィ…♪」
今度は唇にそっとキスを返す
ノエル:「ん……」幸せそうな声を漏らしながら優しく抱きしめる
ノエル:唇を離し、抱き着いたまま至近距離でホサキを見つめる
ノエル:「……そろそろ面会時間も終わる。今日はもう帰ろう」
ホサキ:「そっか…少し…うぅん、大分寂しくなるなぁ…♪」
ノエル:「自業自得だ。……お大事に、ホサキ」今度はノエルから唇にキスして、身体を起こす
ホサキ:「…フフッ、やっぱり君はそうでなくちゃね。
…ありがとう、ノエル♪」
ニコッと笑って微笑み返す
ノエル:「全く。……明日もまた来るからな」眉を八の字にし、名残惜しそうに微笑む
ノエル:「……それと、早く帰っておいで。待っているから」
ホサキ:「…うん♪君の為にも、なるべく早く治さないとね…♪
…すぐに帰って来るから、それまで待っててね、ハニィ。」
ノエル:「もちろん。…それじゃあ」
ノエル:手を振り、病室を後にする。
ノエル:ノエルが病院の外に出ると、夕焼け色と夜色の中間に染まった冬空が広がっていた。
ノエル:その空に浮かぶ一番星を見つめ、ノエルは願う。
ノエル:……二人で歩む道が、末永く続き…そして、幸せなものでありますように。