GM : セッションをはじめていく前に、まずはPCの紹介からはじめてもらおうと思います! PLのめいめい、おねがいします!!
涼風紗雪 : はーい!
■PC1:涼風紗雪
ロイス:犬養一夏 推奨感情:好奇心/不信感
カヴァー/ワークス:高校生/指定なし
あなたはY高校に通う高校二年生だ。
入学式の日、見知らぬ少女から「あたしの事、覚えてますか?」と尋ねられる。
当然ながら“覚えていない”という旨の返答をした後、その少女とは別れることになった――のだが、
何の因果か、その少女・犬養一夏とは、今後一年を通して親密な関係になっていくのだった。
涼風紗雪 : 涼風紗雪!テニス部所属のスポーツ万能な高校二年生!とある大手総合スポーツ用品メーカーの社長令嬢です!
涼風紗雪 : オーヴァードには幼い頃に焼死したことがきっかけで覚醒しました。
涼風紗雪 : だけど運悪くUGNにもFHにも出会うことがなくて、レネゲイドの知識も無いまま一人だけで化け物になった自分と向き合うことになりました。
涼風紗雪 : 当然衝動の制御もエフェクトの使い方も分からなくて、精神的に追い詰められていったのですが……
涼風紗雪 : ある時、昔好きだった物語に出てくる白馬の王子様のことを思い出して、その王子様のように気高く生きれば自分の衝動に打ち勝てるかもしれないと思いつきました!
涼風紗雪 : そんな感じの経緯で王子様みたいな立ち振る舞いをします!一人称僕っ娘です!体小さい女の子だけどひたすらかっこよくあろうとします!
涼風紗雪 : その後は一年位前に初めてFHと遭遇して洗脳されたりするところだったけど、何とか振り切って自分の家族や周囲の人達を守るためにUGNのエージェントになりました。
涼風紗雪 : あと遺産・祈りの造花の契約者で、戦闘になると衣装が変わる変身ヒロインみたいな感じになります!
涼風紗雪 : シンドロームはサラマンダー/ブラックドッグの白兵型で炎神の怒りを使って攻撃も回避もこなすぞ!
涼風紗雪 : そんな感じのスポーツ万能テニス部高校生王子様系お嬢様僕っ娘変身ヒロインUGNエージェントです、よろしくお願いします!
GM : ありがとうございました!
GM : レアな王子様系女子たすかる…! 自殺を考えるほどの病みも乗り越えているとのことなので、病みヒロインにも対処できそうでよき…!!
涼風紗雪 : 初めてやる気がする!需要あるみたいでよかった
涼風紗雪 : どんな病みでもかかってこい!
GM : プリプレイで言質を取りました。
涼風紗雪 : 言質扱いしてきた…!
GM : ではでは、PCの紹介が終わったところで、プリプレイは以上! さっそくオープニングフェイズに移っていきます!!
涼風紗雪 : わぁい、おねがいします!
ぼく : ぽたり。 ぽたり。 ぽたり。
ぼく :
しずくがこぼれおちて、足下の血だまりにのみこまれていく。
流れつづける“しずく”の正体は、血なのか涙なのか……もう、ぼくには分からなくなっていた。
ぼく : ■■■。 ■■■。 ■■■。
ぼく :
真っ白になったあたまに、だれかの声が流れ込んでくる。
けれど、ひどくしずかだと思った。
聞こえるのは、しずくの水音とだれかの音声だけ。 ……セミの鳴き声も、人間の泣き声も、右の耳から左の耳へと等しく抜けていく。
少女 : 「こ、この人でなし……!」
ぼく : あたりを支配していたしずけさを、少女の叫び声が破った。
ぼく : 「待……」
ぼく : ぼくは少女を引き留めるために声をあげた。 でも、何故だろう。 その先の言葉が続かなかった。
ぼく : そして、少女は震える足を引き摺って逃げ出した。
ぼく : ぼくには、それを見ていることしかできなかった。
ぼく : 「なんで」
ぼく : こんなことになってしまったんだろう。 そんなことを言っても、返ってくる答えなんてない。
ぼく : 身体じゅうの力が抜けていき、ぼくは血だまりにたおれこんだ。
ぼく : ──真っ白な思考と真っ赤な視界の間。 「人でなし」という少女の言葉だけが、いつまでも深く刺さって。
ぼく :
ぼくの意識は、真っ黒な深みに沈んでいった。
ぼく :
ぼく : ……あの“であい”さえなければ。
ぼく : ……あの“ねがい”さえなければ。
ぼく : 今頃、ぼくはラクになれていただろうか。
GM : せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : せんぱい出ます!
涼風紗雪 : 1d10+34(1D10+34) > 6[6]+34 > 40
GM : 4月1日。 天気は晴れ。
GM :
一週間ちょっとの春休みが終わり、今日は入学式の日だ。
久しぶりの制服に着替え、教科書等が抜けてスッカリ軽くなった学生カバンを肩にかける。
GM : 春の陽気の訪れはまだ遠く、外気温は10度あるかないかくらい。 ……式の間は手放さなければならないが、一応、アウターを手に取って準備完了。
GM : 暖房設備が充実した快適な家を抜け出し、差し込む朝日に目を細めながら玄関の扉を開く。
GM : すると、赤褐色の髪を二つ結びにしたセーラー服の少女が、向かいの塀に体を預けてスマホを弄っている姿が目に入ってきた。
狩野春香 : 「よっ、スズ。 久しぶり~……ってほどでもないか、春休み短かったし」
GM : あなたのことを“スズ”と愛称で呼び、小さく手を振るこの少女は、狩野 春香(カノ ハルカ)。 あなたとは幼稚園からの付き合いがある幼馴染だ。
GM : 二人は小学生まで同じ学校に通っていたが、中学生になると、あなたは親の方針で遠くの御嬢様学校に、春香は地元のY中学校に進学した。
GM : そのため、一時的に二人は離れ離れになっていたのだが、三年振りにY高校で再会を果たし……それ以来、こうして待ち合わせて、再び一緒に登校する運びとなったのだ。
涼風紗雪 : 「やぁ、おはよう春香」
涼風紗雪 : 「言われてみれば、確かにそうかもしれないね。二週間も無かった気がするし」
涼風紗雪 : そう微笑みかけながら手を振り返して、春香ちゃんのもとまで歩いて行きます
GM : あなたは春香の傍まで歩いていこうとしたが、その前に、手で制止された。
狩野春香 : 「……今日は、さ。 伝えたいことがあってね?」
涼風紗雪 : 「え?何かな」 少し驚きつつも立ち止まる
GM : 春香はゆっくり目を伏せると、あたかも深刻な話があるように切り出した。
狩野春香 : 「実は、私、彼氏できたの。 ――だから、明日からは迎えに来ない」
涼風紗雪 : 「……!そうなんだ……!おめでとう、春香」
狩野春香 : 「……あ、あれ? 驚かないの? 彼氏できたんだよ?」
涼風紗雪 : 「もちろん驚いてるよ。でも、先に言うべきことは祝福することだろ?」
狩野春香 : 「おおう、そんなマジに受け取られるとは……」
狩野春香 : 「スズさんやスズさんや」
狩野春香 : 「今日は何月何日か、言ってごらんなさい?」
狩野春香 : 急に口調が老婆になったり、御嬢様になったりしながら、春香はそういって笑った。
涼風紗雪 : 「今日?えーと、何日だったかな……」
涼風紗雪 : スマホを取り出して日付を確認してみて、
涼風紗雪 : 「……四月一日だね」
狩野春香 : 「へへっ」
狩野春香 : 「おわかりいただけただろうか……(低温)」
狩野春香 : 「彼氏ができたなんて、口から出任せ…! 折角だからついてみたエイプリルフールのウソだったのでした…!!」
涼風紗雪 : 「もう、すっかり騙されたよ……!やるね、春香」 面白そうに小さく笑って
涼風紗雪 : 「だけどいいの?エイプリルフールについた嘘って、確か叶わなくなるんじゃなかったっけ」
狩野春香 : 「ぇ…………」
狩野春香 : 「あ、あはは~! そ、それは日本で最近できたマイナールールというヤツだよスズちゃん!」
狩野春香 : 「ちなみに“ウソをついていいのは午前だけ”というのも、イギリス(?)の別行事から伝わって誤解された日本のマイナールールらしいよ? だから、大丈夫……大丈夫……」
涼風紗雪 : 「ここ、日本だけどね。でも、別に良いじゃないか叶わなくたって」
涼風紗雪 : 「祝いはしたけど、もう迎えに来れないって言われて実はちょっと寂しかったんだ」
涼風紗雪 : 「春香に彼氏が出来なければ、これからも一緒に登校出来るってわけだしね」
涼風紗雪 : そんな風に冗談っぽく笑いながら改めて春香ちゃんの傍まで歩いていく
狩野春香 : 「うう、叶わないなんて嫌だぁ……。 入学前に夢見ないこともなかった甘酸っぱい青春の日々を送るんだ、私はぁ……。 い、今はムリだけどぉ……」
GM : 春香はわざとらしく目元を拭う仕草をすると、あなたに笑い返した。
狩野春香 : 「……そういえば、スズには恋人とかいないの? そういう噂を聞いたことはないけど、実はいるんでしょ? っていうか、いない方がありえなくない?」
涼風紗雪 : 「ふふっ……え?僕に恋人?いや、本当にいないよ」
涼風紗雪 : 「そもそも、これまでだって誰とも付き合ったことないしね」
狩野春香 : 「えっ!? いない!? マジで言ってる???? 」
狩野春香 : 「ん~~、考えてみれば、確かに……? いたら私と一緒に登校してないか……?」
涼風紗雪 : 「だろ?……何て言うか、告白されたりはあったけど、まだ誰ともそういう関係になりたいと思えないんだよ」
涼風紗雪 : 「僕自身がまだ理想の王子様とは程遠いし。やっぱり今は恋人を作る気はないかなぁ」
狩野春香 : 「ふうん…? でもさ、スズ、それっていつになったら恋愛できるようになるの? 自分の能力に付き合うハードル付けてるのスズくらいだよ?」
涼風紗雪 : 「いつだろうね……でもきっといつかは来るよ。毎日ちゃんと前進してるからね」
涼風紗雪 : 「心配かけてごめんね。でももしそのいつかが来て、恋人が出来たら、一番に春香に報告するから気長に待ってて欲しいな」
狩野春香 : 「おっ、期待して待ってますぜい姉御!」
狩野春香 : 「(でも、スズのことが好きな子、苦労しそうだな~……)」
涼風紗雪 : 「ふふっ、期待しててくれよ。……じゃ、そろそろ行こうか?歩きながらでもお話は出来るしね」
狩野春香 : 「ん。 そうだね」
GM : 話がひと段落ついたところで、エイプリルフールのウソもほどほどにして、二人は歩き出した。
狩野春香 : 「あっ、そうだ! 聞いてくれる? 春休みにさ、数人でお泊り会したんだけどさ?」
涼風紗雪 : 「うん?そうなんだ。いいね、お泊り会」 歩きながら聞く姿勢
狩野春香 : 「いいでしょ! 今度、スズもお泊り会しようよ、部活とかない日にさ」
涼風紗雪 : 「良いの?もちろん、春香や他の皆がよければ参加したいな……!」
涼風紗雪 : 「僕の家に泊まりに来てくれるのも、誰かの家に泊まりに行くのもどっちでも楽しそうだ」
狩野春香 : 「スズの家に泊まりに行くのは流石に恐縮しちゃうんじゃないかなあ…。 スズ、高嶺の花みたいな印象持たれがちだから」
狩野春香 : 「スズに興味がある子って結構多いし、あとで私の方でセッティングしとくね」
狩野春香 : 「……と、何話そうとしてたんだっけ。 ああ、そうだ、春休みのお泊り会」
涼風紗雪 : 「高嶺の花なんて自分では思ってはないけど、楽しみだな……。あっ、そうだね、何か面白いことでもあったの?」
狩野春香 : 「面白い事? なのかな……? それは微妙だけど、ず~~~っっっと彼氏とビデオ通話してる子がいてさあ?」
狩野春香 : 「……ああ、プライバシーのために名前は伏せさせてね。 ……と言っても、見れば誰かわかると思うけど」
GM : 春香は取って付けたようにそう付け加え、また見知らぬカップルに話を戻す。
狩野春香 : 「バレンタインきっかけで付き合いだしたらしいんだけど、もうラブラブ見せつけてくれちゃってさ~……」
涼風紗雪 : 「はぁ~……なるほど」 相槌
狩野春香 : 「あっ、でも、それがイヤだったから愚痴ってる訳じゃないよ? ……むしろ、な~んかうらやましいな~なんて」
涼風紗雪 : 「あぁ、それならよかったよ……!嫌な気持ちになっちゃったのかなって心配しちゃった」
狩野春香 : 「まあ、友達との時間なんだし、そこにまで彼氏を持ち込むのはよくないとは思ったけど」
狩野春香 : 「恋は盲目って言うの? その人の存在が大きすぎて、他が目に入らなくなってるカンジで……めっちゃ幸せそうだな~って」
涼風紗雪 : 「そっか……僕にはあんまり羨ましいとかは分からないけど、幸せそうなのを間近で見たらそうなるのも不思議じゃないね……」
涼風紗雪 : 「……よっぽど彼氏欲しいんだね、春香」
狩野春香 : 「えっ!? あ~~~~…………」
狩野春香 : 「そう見えます…………?」
涼風紗雪 : 「うん、凄く」 何度も頷く
狩野春香 : 「ぐっ……」
狩野春香 : 「……そ、それは、もうっ! 欲しいでしょッ! 私だって彼氏欲しい!!!! 一度きりの青春というやつを謳歌したいし!!!! わ、悪いかこんにゃろ~!!!!」
涼風紗雪 : 「ご、ごめんごめん……!誰も悪いとは思ってないからさ!だから落ち着いて欲しいな、春香さんや……!」 春香ちゃんの真似するような呼び方してる
狩野春香 : 「こ、告白される側の人種が、バカにして~~~~!! もうっ!! なんでこんな恥ずかしいことを路上で叫ばなきゃいけないのかっ……!!」
狩野春香 : 「はあ……」
涼風紗雪 : 「……大丈夫だよ。そんなに焦らなくても、春香にはきっと素敵な恋人が出来るはずだから」
狩野春香 : 「めっちゃ無責任なこと言うじゃん……」
涼風紗雪 : 「そんなことないよ。だって春香は優しいし、明るいし、話してて楽しいし、その他にも言い切れないくらい良いところがいっぱいあるし……」
涼風紗雪 : 「本当に素敵な人だと思ってるから。だから大丈夫だよ、幼馴染として保証する」 微笑みかけて
狩野春香 : 「……ん。 ちょっと元気出た」
狩野春香 : 「なぜなら、そこまで言うからには、引き取り手が見つからなかった場合の補償責任がスズ側に生まれるからです……」
涼風紗雪 : 「え、僕に? 見つからないなんて思ってないけど、その時は僕が付き合えばいいのかな?」
狩野春香 : 「いやいや、ぜんぶ冗談ですから! でも、ありがとね!!」
狩野春香 : 「スズが男子だったら本気で頼んだかもしれな……いや、ないわ。 自分には釣り合わないみたいなこと言われてフラれて終わりだわ」
涼風紗雪 : 「いやいや、流石にそこまで行ったら僕も責任取ってフラないよ……!」
狩野春香 : 「ええ……? ホントにござるか~……?」
涼風紗雪 : 「ほんとうっ。って、冗談だっけ」 春香ちゃんの口調にくすくす笑いながら
狩野春香 : 「そうそう、冗談冗談。 エイプリルフールですから」
狩野春香 : 「いや、彼氏欲しいのはホントだけど……」ぼそっ
狩野春香 : 「とにかく、三年になったらもう受験とかで忙しくなるだろうし、この一年が青春を謳歌するラストチャンスなんですよ……!!」
狩野春香 : 「おたがいにがんばっていこうではありませんか……」
涼風紗雪 : 「そうだね……うん、分かった。頑張るよ」
涼風紗雪 : 「まずは僕自身が文句のないくらい、立派な王子様にならなきゃね……!」 瞳をキラキラ輝かせながら小さく握り拳をつくる
狩野春香 : 「その調子ですぞ、王子!」
GM : 爺やのつもりなのか、低い声でそういった。
涼風紗雪 : 「あぁ。見ててくれ、爺や……! ふふっ」 ノッてそう言ってから、楽しそうに笑う
狩野春香 : 「がんばると決めたからには、自己研鑽はもちろん、“彼氏ほしい~”とか“彼女ほしい~”とか、そんな“誰でもいい”みたいなスタンスじゃなくて、盲目になるくらい好きになれる人を探すことも目標にしていきますぞッ……!!」
涼風紗雪 : 「うん、頑張れ頑張れ……!一途なのは良いことだし、応援してるよ」
GM : 周囲の影響なのか、恋愛脳に染まりつつある幼馴染と他愛のない話を交わしながら、十五分ほど歩いたところでY高校の校庭に着いた。
GM : 玄関前にはクラス分け表が貼り出されており、各学年の生徒たちが、それぞれ三つの塊になって集まっている。
狩野春香 : 「……と、春らしい話題に花咲かせていたら着いちゃった」
涼風紗雪 : 「あっという間だったね。僕達もクラス見に行こうか」
GM :
あなたと春香が属する二年生のクラス分け表の前には、無数の女子が集まっていた。
友達連れで見に来たグループが多いらしく、後ろからのクラス確認はとてもできそうにない密度だ。
狩野春香 : 「去年もこんなカンジだったっけ。 ……う~ん、二人で行っても効率悪そうだし、スズの分も見せてもらってくるね」
涼風紗雪 : 「いいのかい?僕が行こうかと思ったけど……じゃあ、お願いするよ」
狩野春香 : 「おまかせされました! あれっ、友達のために率先して体張るとか、私、優しすぎ……? モテ期きちゃうかコレ……?」
GM : 春香は冗談交じりの自画自賛をした後、“すぐ戻ってくるから待ってて”と手を振りながら人混みに飛び込んでいった。
涼風紗雪 : 「春香は優しいよ。気を付けてねー」 手を振って見送って
涼風紗雪 : 「……新しい人と会うのは楽しいけど、春香とは今年も一緒のクラスだったら良いな」
涼風紗雪 : そう呟いて、人ごみの方を見つめながら春香ちゃんが帰って来るのを待とう。
GM :
GM : ――それから数分後。
GM : あんなことを言っていた幼馴染が、その場にいた女子グループに加わって話しだしたのが遠目にも見えた頃。
見知らぬ少女 : 「えっ……? せん、ぱい……?」
GM : あなたのすぐ後ろから、弱弱しい鳴き声のような少女の声が聞こえた。
涼風紗雪 : 「……?」 誰だろう、と後ろを振り返る
GM : 振り向くと、声の主は“信じられない”と言いたげな視線をあなたに向けていた。
GM : 遅刻しそうだったからか、いくらか寝癖で乱れてしまっている深い黒のショートヘア。
GM : サイズを間違えたからか、手がすっぽりと覆われるほどゆるゆるのカーディガン。
見知らぬ少女 : 「えっと、その……あたしのこと、覚えてますか?」
GM : ――少し抜けているところがあるような印象を抱かせる、この少女。
GM : 真新しい制服に身を包んでいること、そして「せんぱい」と呼んできたことから考えれば、おそらく新入生なのだろう。
GM : しかし、あなたには、このように射抜くようなあつい視線を向けてくる後輩がいた覚えはないし、その姿にも見覚えはなかった。
涼風紗雪 : 「……えっ、と」
涼風紗雪 : そんな風に言われるということは知り合いのはずだと、じーっと顔をよく見て思い出そうとする。
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「……ごめん、思い出せない。どこかで会ったかな……?」 申し訳なさそうに
見知らぬ少女 : 「そうですか……」
GM : 少女は俯きながらも口元には小さく笑みを浮かべていた。
GM : ……何故だろうか。 その姿にはうっすらとした既視感があった。
GM : けれど、いくら記憶を探ったところで誰かの名前が浮かんでくることはなかった。
涼風紗雪 : 「(どこかで見たような気はするんだけど……。何でだろう……)」
涼風紗雪 : 「本当にごめんね。よければ君の名前を教えてもらってもいいかな?」
見知らぬ少女 :
「あたしは、
GM : やはり、あなたは、その名前にも覚えはなかった。
涼風紗雪 : 「(……駄目だ、覚えてない。名前を聞けば思い出せるかもしれないと思ったんだけど……)」
涼風紗雪 : 「犬養一夏……一夏ちゃんって呼んでもいいかな?」
犬養一夏 : 「はい、もちろん」
涼風紗雪 : 「ありがとう、一夏ちゃん。僕の名前は……って、もしかしてもう知ってるのかな?」
犬養一夏 : 「いえ、教えてもらえるとうれしいです」
涼風紗雪 : 「分かった。僕は涼風紗雪、っていうんだ。よろしくね、一夏ちゃん」
犬養一夏 : 「……涼風紗雪」
犬養一夏 : 「……あっ、はい! よろしくおねがいしますね、せんぱい! 」
犬養一夏 : 「……ああ、せんぱい! さっき聞いたことは、どうか忘れてください! 単なる人違い、だったみたいですから……」
涼風紗雪 : 「え……そうなの?本当に?」
犬養一夏 : 「はい! こんな朝からヘンなこと聞いちゃってごめんなさい……!」
涼風紗雪 : 「ううん、気にしないで……!変なことなんて全然思ってないから」
涼風紗雪 : 「むしろ、入学式前から君みたいな素敵な一年生さんと出会えて嬉しいよ」 口元に笑みを浮かべる
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「あたしも、うれしいです」
GM : 一夏はそう言って笑ったが、その笑顔には、どこか翳りがあるように見えた。
犬養一夏 : 「……あっ! ごめんなさい! もうこんな時間!! あたし、行かないとっ! さようなら!!」
GM : 一夏は深々と腰を折って頭を下げると、そそっかしく小走りでその場を後にした。
涼風紗雪 : 「……うん!気を付けてね」 手を小さく振って見送る
涼風紗雪 : 「礼儀正しくて、良い子だな……。でも、なんか……」 翳りのあるような笑顔が頭から離れない
涼風紗雪 : 「……やっぱり、どこかで会ってたのか……?でも、あの子は人違いだって言ってるし……しつこく問いただすのも……」
涼風紗雪 : うーん、うーん……と唸りながら春香ちゃんが来るまでずっと悩んでる。
GM : そうして悩んでいると、ナゾの後輩と入れ替わるように春香が帰ってきた。
狩野春香 : 「……? あの子、知り合い? 新入生っぽかったけど」
涼風紗雪 : 「春香、おかえり……。いや、知り合いではない……みたい……なんだけど……」 腕組をしながら頭が傾いていってる
狩野春香 : 「な~んだ。 かわいい後輩見つけて、さっそく粉かけてたのかとも思ったけど、そうでもないっぽいね~」
涼風紗雪 : 「僕のことなんだと思ってるのさ。かわいい子だったのはそうだけど」
狩野春香 : 「冗談冗談。 さっき、自分のレベルが一定にならないと恋人作らないって言ってたばっかだもんね」
涼風紗雪 : 「うん……今まさに自分のレベルが低いことを実感したよ……記憶力をもっと鍛えなくちゃね……」 真面目な声色で
狩野春香 : 「ん? 知り合いではなかったんじゃないの? なんで記憶力?」
涼風紗雪 : 「そうなんだけど、どこかで見たような子だった気がするんだ」
涼風紗雪 : 「あの子は人違いだったとは言ってたんだけどね……」
狩野春香 : 「ふ~む、サスペンス?」
狩野春香 : 「高校デビューで見た目変わったとか……はないか! 髪染まっててとかメイクしてて分かんないとかならあるだろうけど、あの子は校則通りの見た目だったし」
涼風紗雪 : 「その可能性は……うーん……。いや、考えても分からないか」
涼風紗雪 : 「そうだ、クラス表はどうだったの?」
狩野春香 : 「あっ、そうだったそうだった。 私たちは引き続きA組! 一緒のクラスだったよ!! やったね!!」
涼風紗雪 : 「本当!?わぁ……嬉しいよ!また一年間よろしくね、春香!」 思わず笑顔になって春香ちゃんの両手を握っちゃう
狩野春香 : 「わわっと!? オタクはボディタッチに慣れてないので、急にされるとビックリしちゃうぞ!?」
GM : 春香は両手を握られただけで、なぜか頬を少し染めていた。
涼風紗雪 : 「あははっ!ごめんごめん、つい……!」 手を離す
狩野春香 : 「おそろしー女……(跡部様の声マネ)」
涼風紗雪 : 「恐ろしくなんかないって。じゃあ、教室まで行こうか!」
狩野春香 : 「そうだね……っと、そういえば」
狩野春香 : 「今日は部活ないけど、髪ゴム持ってきてる?」
涼風紗雪 : 「髪ゴム?一応持ってきてるけど、どうして?」
狩野春香 : 「ほら、校則。 いつもは何も言われないけど、ホントは肩についちゃダメじゃん髪?」
狩野春香 : 「式とかある日だけはうるさいから、ちゃんと結っといた方がいいよ?」
涼風紗雪 : 「あ、そっか。ありがとう、春香」
狩野春香 : 「どういたしまして……ってお礼言われるほどの事じゃないけど」
涼風紗雪 : 「初日から校則違反なんて、王子様じゃなくなるとこだったよ」
涼風紗雪 : そう言いながらポケットから取り出したゴムでちゃちゃっと後ろ結んじゃおう。
涼風紗雪 : 「これで大丈夫かな」
狩野春香 : 「お~、やっぱ似合うね~ポニテ」
涼風紗雪 : 「ありがとう。よし、準備万端っ」 嬉しそうに笑って
狩野春香 : 「うん、じゃあいこっか。 たしか教室に行ったあと、椅子を持って体育館に……」
GM :
GM : その後、入学式はこれといった異常もなく進行していった。
GM : それより気にかかるのは、あなたを「せんぱい」と呼んだナゾの少女のことだ。
GM : 彼女の真意はまったくもってわからない──今は、まだ。
涼風紗雪 : 春香ちゃんにロイス取ります!〇友情/食傷で!
涼風紗雪 : 一夏ちゃんのロイス感情は、〇好奇心/無関心にします!
system : [ 涼風紗雪 ] ロイス : 3 → 4
GM : せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : 1d10+40(1D10+40) > 6[6]+40 > 46
GM : 5月9日。 天気は曇り。
GM : テニス部に所属しているあなたは、この日の放課後も部活に励んでいた。
GM : 今さっき、5kmのランニングを終えたところだ。
GM : ──Y高校テニス部では、この5kmランニングが毎日行なわれている。 これは他の運動部と比べても相当の運動量だ。
GM : というのも、テニスというスポーツは優雅なイメージを抱かれがちではあるが、実際には凄まじい体力を要求されるスポーツ。 例えば、トップクラスの女子選手の場合は、3セットで約50kmの距離を走るとも言われている。
GM : 以上の事実から、Y高校テニス部では、基礎体力を作るランニング等を重視したキツめの練習メニューが組まれているのだった。
GM : ──クールダウンも兼ねて、Y高校グラウンド脇にあるテニスコートまでジョギングしていって、10分間の休憩に移る。
GM : 高校から運動部に入ったような基礎体力がない後輩部員たちは、テニスコートに着いた瞬間、ぐったりとへたりこんでしまった。
GM : 一方、あなたはオーヴァード。 無能力者の他部員達にはしんどいトレーニングでも、あなたにとってはいい汗をかく程度の丁度いいものだった。
犬養一夏 : 「おつかれさまです、せんぱい!」
GM : ひとりの女子マネージャーがあなたに駆け寄って、タオルとスポーツドリンクを渡してくる。
GM : そのマネージャーは、入学式の朝に出会ったあの少女……犬養一夏だった。 あの後、一夏はマネージャーとしてテニス部に入ってきたのである。
GM : 一夏については、まだまだ知らないことも多いが、部活だけの付き合いとはいえ、1ヵ月も一緒に過ごしていると分かってきたこともまた多かった。
GM : まず、一夏は1年生の間で“いつも明るく人懐っこく友達が多いムードメーカー”として知られているらしい。
GM : 実際、テニス部でも“愛されキャラ”として先輩たちに可愛がられている姿を目にすることが度々ある。
GM : 少し抜けているところがあったり、身だしなみに無頓着だったり、異性に興味がなかったりするところも、イマドキのJKらしくなくて逆にいいのだとか。
GM : 次に、“裏表がない”という話も聞いたが、それが真実かどうかは疑わしかった。
GM : 何故なら、入学式の日、一夏はあなたに何かを隠していた……単なる直感に過ぎないが、そんな気がしたからだ。
涼風紗雪 : 「ありがとう、一夏ちゃん。いつも助かるよ」 笑顔で受け取って、タオルで汗を拭こう
犬養一夏 : 「いえいえ! お礼なら先輩マネージャーの方々に言ってあげてください! あたしがしたことなんて、スポーツドリンク作ったくらいで、タオルの洗濯とか諸々の調整とか、ほぼ先輩方がやってるんですから…!」
涼風紗雪 : 「そう? でもスポーツドリンクを作るのも立派な仕事だし……」 と、ドリンクに口をつけて乾いた喉を潤して
涼風紗雪 : 「……うん、それにすっごく美味しいし! だから一夏ちゃんにもお礼言わせてよ」
犬養一夏 : 「ええ…? スポーツドリンクの素をまぜて、氷を入れただけなのに、美味しいって褒められるのは、それはそれで微妙な気持ちですよ…?」
GM : 一夏はそう言って、からかうように笑った。
涼風紗雪 : 「ふふっ……まあいいじゃないか。とにかく他のマネージャーも含めて、君にも感謝してるってこと」 ドリンクの蓋を閉めて
涼風紗雪 : 「それに、混ぜるだけって言ってもそれすらまともに出来なかった人もいるからね……例えば僕とか」
犬養一夏 : 「ええ…? ええっ!?!?」
涼風紗雪 : 「僕、そういうご飯だったり飲み物だったりを作るの全然やったことなくてさ……今はまだましになった方だけど……」
涼風紗雪 : 「昔一度、ドリンク作るの手伝ってみたら色々大変なことになったりしたよ」 照れるように笑いながら
犬養一夏 : 「せんぱいにこう言うのはどうかと思いますが……」
犬養一夏 : 「本当に底抜けに料理下手な人っているんですね……」
犬養一夏 : 「ああ、いえ…! せんぱいの場合は経験のなさですし、仕方ないところもあると思いますけどね…!」
涼風紗雪 : 「いや、本当に下手だからいいんだよ。特に必要なかったからって甘えてたところもあったし」
涼風紗雪 : 「やっぱりもうちょっと練習した方がいいかもね……よく考えたらおにぎりくらいしか作れない王子様っていうのもかっこわるいや」
犬養一夏 : 「王子様、ですか……?」
涼風紗雪 : 「ん?あぁ、うん。僕、王子様みたいになりたいんだ」 特に恥ずかしげも無い風に
犬養一夏 : 「えっ? 王子様みたいになりたい? それってどういう意味ですか……?」
涼風紗雪 : 「ほら、御伽噺とかに出てくるような、白馬に乗った王子様っているでしょ?」
涼風紗雪 : 「僕はそういうかっこいい王子様みたいな、強くて優しくて美しい、気高い生き方がしたいんだよ」
犬養一夏 : 「気高い生き方、ですか……」
GM : 一夏はすこし驚いたような表情を見せた後、
犬養一夏 : 「ふふっ、やっぱりせんぱいって変わってるんですね」
犬養一夏 : そう言って、なぜかうれしそうに笑った。
涼風紗雪 : 「うん、よく言われるよ」 つられて笑みを零す
犬養一夏 : 「……あたしは好きですよ。 せんぱいのそういうところ」
涼風紗雪 : 「本当? 変だとかよく分からないって言われるのはよくあるけど……」
涼風紗雪 : 「好きって言われるのは初めてかも。なんだか嬉しいよ」
犬養一夏 : 「んーと、それならよかったです?」
犬養一夏 : 「……でも、せんぱい。 その生き方ってきっとつらいですよ」
涼風紗雪 : 「え……?どうしてそう思うの?」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「なんででしょうね? 言ってみただけです!!」
涼風紗雪 : 「えぇ~?そんなの気になるじゃないか、教えてよ~」
涼風紗雪 : 冗談っぽく笑いながら、小さく拳を作って一夏ちゃんの肩をぽんぽんと優しく叩く。
GM : 一夏は「あはは、やめてくださいよ~」と笑いながら、あなたの手を振り払う。 周囲には笑いあってじゃれているように見えただろうが、あなたにはこの笑顔が作り物のように見えて仕方なかった。
涼風紗雪 : 「(……何だろうな、この感じ)」 胸の中が少し不安になる
犬養一夏 : 「ねえ、せんぱい?」
GM : 一夏はあなたの気持ちを察したかのように、瞳を覗き込んできた。
涼風紗雪 : 「うん……? どうしたんだい……?」
犬養一夏 : 「あの、せんぱいって帰りは歩きですよね?」
犬養一夏 : 「ほら、駅とは別方向に歩いていくのを見ますし」
涼風紗雪 : 「え?……あぁ、そうだよ!僕の家、学校から近いから歩いて通ってるんだ」 胸の奥に浮かんだ不安をしまい込み、一夏ちゃんの瞳を見つめ返す
犬養一夏 : 「ですよね! よかった! ……あっ、それでですねっ」
犬養一夏 : 「せんぱいさえよければ、なんですけど! 今日はあたしと一緒に帰りませんか……?」
涼風紗雪 : 「おや……一夏ちゃんからそんな風にお誘いされるなんてね」
涼風紗雪 : 「もちろん構わないよ、それじゃあ一緒に帰ろうかっ」 嬉しそうに微笑む
犬養一夏 : 「ホントですか? じゃあ、帰りは校門のあたりで待ってますね? すっぽかしたりしないでくださいよ~?」
涼風紗雪 : 「本当。そんなうっかり忘れるなんてしないから、安心してよ」
涼風紗雪 : 「部活が終わったらシャワー浴びたりしなきゃいけないけど、そう長くは待たせないからさ」
犬養一夏 : 「あ~~~~、あたしと違って髪が長いせんぱいだと、乾かすのに時間かかりそうですし、待てるかどうか……」
犬養一夏 : 「なんてことはないので、ちゃんと待ってますよ~!」
GM : そんな話をしていると、部長から号令がかかった。 休憩時間が終わったらしい。
涼風紗雪 : 「もう!君から誘ったのに逆にすっぽかすなんてそれこそどんな冗談……っと、そろそろ時間みたいだね」 部長の方に顔を向ける
犬養一夏 : 「ですね! 練習、がんばってください!!」
涼風紗雪 : 「うん、がんばるよ!」
涼風紗雪 : 笑顔で手をひらひらと振ってそう応え、小走りで駆けていく。
GM : そうして部員たちと合流すると、部長の指示の下、テニスコートでの練習を再開する。
GM : その内容はボレー練習やサーブレシーブ練習といった基本的なものだった。
GM : 主に1年部員たちが基本の動きを身に着けるために実施されたものではあったが、他の部員たちにとっても基本が重要なのは言うまでもない。
GM :
GM : ──おそらくは後輩部員たちにいいところを見せようとしている3年生部員たちの全力のサーブに相対していると、いつの間にか日が暮れはじめていた。
GM : グラウンド側に設置されている体育館側面の時計を見ると、6時を回ってしまっている。 学校が閉まるのが6時30分なので、もう片付けをはじめなければならない時間だ。
GM : 部長の指示の下、全員で手分けして片付けを済ませる。
犬養一夏 : 「じゃあ、校門の近くで待ってますね…!」
GM : 一夏はテニスボールの入ったカゴを抱えながら、あなたの耳元で囁いた。
GM : そして、そのカゴを元々あった場所に戻すと、他部員たちの片付けが終わったのを確認した後、
GM : 「おつかれさまです~! 先に失礼しますねっ!」と他部員たちに向かって愛想よく笑いながら一礼をして、校門に向かって歩いて行った。
GM : あなたはいちど部室に戻ると、軽くシャワーを浴び、ぱぱっと身支度を済ませて校門に急いだ。
2年A組のバスケ部男子 : 「てか、オレのクラス、学年美人ランキングTOP10の内、6人もいるんだぜ? ヤバくね? つかヤバいわ! マジヤバだわ!」
2年B組のバスケ部男子 : 「うらやましィ~、オレのクラスには美人とか1人もいないわ~」
2年C組のバスケ部男子 : 「いやいや、そもそも、美人ランキングに入ってる女子からしたら、オマエなんてアウトオブ眼中だろw」
2年B組のバスケ部男子 : 「あっ、たっつんひっで~~~~!! 」
GM : あなたは、下駄箱の近くで話しているバスケ部男子たちの脇を抜けて、校門に向かう。 そして、待っているハズの一夏を探した。
犬養一夏 : 「あっ、せんぱい!」
GM : 一夏は人気のないところに佇んでいたようだが、あなたの姿を認めると笑顔で駆け寄ってきた。
涼風紗雪 : 「お待たせ、一夏ちゃん」 駆け寄る一夏ちゃんを笑顔で迎える
犬養一夏 : 「いえ、全然待ってない……と言うと噓になるかもしれません」
涼風紗雪 : 「あはは、ごめんね。結構急いだんだけど、やっぱり髪が長くって」 銀色の長髪を手ですくいながら困った風に笑う
犬養一夏 : 「あっ、もちろん冗談ですよ? せんぱいの髪、キレイで長くて、うらやましいくらいです! 大事にしてくださいね!」
犬養一夏 : 「っとちょっとヘンな事いいましたかね? あたしらしくないというか~」
犬養一夏 : 「今まではひとりで帰ってたので、けっこう寂しかったんですけど、今日はせんぱいと一緒に帰れてテンションが上がってるみたいでして~……」
涼風紗雪 : 「ふふっ……変だなんて思ってないよ。僕も帰りはいつも一人だから、ちょっとテンション上がってるかも」
犬養一夏 : 「せんぱいも、ですか? ……えへへ。だったらちょっとうれしいです」
涼風紗雪 : 「うん、一緒だね。それじゃ帰ろうか、一夏ちゃんっ」 校門の外へと歩き出していこう
犬養一夏 : 「はい…!」
GM : そうして二人は帰路についた。 しばらく歩くと周りには誰もいなくなって、二人きりになる。
犬養一夏 : 「…………」
GM : あなたと二人きりになった時の一夏は、周りが言う“いつも明るい”という印象とは違って、どこか影があって、なぜかよそよそしいところがたまにある気がした。
GM : 何を話すか迷っているようで、あたりをぼんやりと見回している。
GM : そうして辺りの街並みに目を向けると、主にブティックなどに貼ってある「母の日フェア」の広告が目についた。
犬養一夏 : 「あ、今日って母の日なんですね」
涼風紗雪 : 「本当だ、そういえば今日って九日だったね」
涼風紗雪 : 「お母様に何か買って帰ろうかな……」 広告を眺めて
犬養一夏 : 「毎年、せんぱいは母親にプレゼントとかしてるんですか?」
涼風紗雪 : 「うん。といっても、ささやかなものだけどね」
犬養一夏 : 「ふうん……」
涼風紗雪 : 「やっぱり、今年もカーネーションがいいかな……一夏ちゃんはプレゼントしないの?」
犬養一夏 : 「あたしですか? ……あたしはアパート住みですし、母親はずっとずっと遠くにいるのでいいんです」
涼風紗雪 : 「そうなんだ、遠くに……って、もしかして一人暮らし?」
犬養一夏 : 「ああ、言ってませんでしたっけ! そうですよ?」
涼風紗雪 : 「うん、初めて聞いたよ!凄いな……!」
犬養一夏 : 「確かに、せんぱいではムリかもしれないですね、一人暮らし!」
GM : 一夏はからかうように笑った。
涼風紗雪 : 「料理が出来ないから!?そ、それはそうかもしれないけど……!」
犬養一夏 : 「いえ、聞いた限りでは、他のこともできるか怪しい気がしますよ~?」
涼風紗雪 : 「う、うーん……」 若干悩んで
涼風紗雪 : 「いや、他の家事は大丈夫……だと思うよ、多分ね……」 怪しそうな顔
犬養一夏 : 「こ、これはぜったいダメなヤツだっ……!!」
涼風紗雪 : 「そんなことないって!ほら、掃除くらいなら学校でもするからこなせるし!」
犬養一夏 : 「学校ですることしか自信ないんですね……。 じゃあ、洗濯全般ダメじゃないですか……?」
涼風紗雪 : 「洗濯か……いや、洗濯って自分でやる家事の内に入らないんじゃないかな?」
犬養一夏 : 「まあ、洗濯機ありますしね……。 さすがに皿洗いとか風呂掃除とかはできるでしょうし……」
犬養一夏 : 「さすがに、せんぱいを甘く見過ぎましたね……」
涼風紗雪 : 「いや、洗濯機というかクリーニングに出すというか……。皿洗いとかもハウスキーパーの仕事のような気がするんだけど……」
犬養一夏 : 「は……?」
犬養一夏 : 「せんぱい、マジで言ってます? 」
涼風紗雪 : 「え、マジも何も普通に話してると思うんだけど……」
犬養一夏 : 「あの、ですね……せんぱい……」
犬養一夏 : 「服洗いも、皿洗いも、身の回りのことは、ぜんぶ自分でやるんです……」
涼風紗雪 : 「なん……っ」
涼風紗雪 : 「そ、そうなのか……?一人暮らしっていっても、そういうことは誰か雇ってしてもらうと思っていたんだけど……本当に……?」 目を丸くして
犬養一夏 : 「それだと一人暮らしじゃないですし……。 フツウの人は、人を雇うほどのおかねを持っていないんですよ……」
涼風紗雪 : 「…………」 口元を隠すように手を添えて、視線を左右に泳がせて
涼風紗雪 : 「……そう……なのか……。知らなかったよ……。あんまりこういう話、したことなかったっていうか……」
涼風紗雪 : 「いや、中学生の頃にしたことはあるんだけど……そういう感じじゃなかったからさ……」
涼風紗雪 : 「結構びっくりしてる……」
犬養一夏 : 「いやいやいや、あたしの方がびっくりしてますよ……」
犬養一夏 : 「せんぱいに抱いていたイメージがひとつ壊れましたし……」
涼風紗雪 : 「そうなのかい……!?何だか申し訳ない気分だよ……」
犬養一夏 : 「大丈夫です。 むしろ」
犬養一夏 : 「……いえ、なんでもないです」
涼風紗雪 : 「そ、そう?」
涼風紗雪 : 「(むしろ……何なんだろう?)」 気になったけど困惑してて聞く余裕はなかった
涼風紗雪 : 「でも……そうか、すごく貴重な話が聞けたな」
涼風紗雪 : 「皆が出来ることを僕が全く出来ないっていうのも駄目だし……今日はまず自分でお皿を洗ってみるよっ」
犬養一夏 : 「ええ、そうするといいですよ」
GM : 10分ほど歩いたところで、一夏はゆっくりと立ち止まった。
犬養一夏 : 「っと、ここでお別れですね…! バイトの面接があるので、ここで失礼します! また明日…!!」
涼風紗雪 : 「これから?……分かった、頑張ってね一夏ちゃん」
涼風紗雪 : 「また明日!」 笑顔で手を小さく振る
GM : 一夏は手を振りかえす。 そして、別の道を歩いていこうとした。
GM : しかし、一度振り返って、
犬養一夏 : 「……あ」
犬養一夏 : 「あの。せんぱいと、また一緒に帰っても、いいですか……?」
GM : 不安そうに、そう訊ねてきた。
涼風紗雪 : 「うん、良いよ。また一緒に帰ろう!」
涼風紗雪 : 「今日は一夏ちゃんと帰れて、ほんとに楽しかったよ」
涼風紗雪 : 全く悩むことなく、声を弾ませてそう答える。
犬養一夏 : 「……約束ですよ」
涼風紗雪 : 「ん、約束だね。分かった、ちゃんと守るから」
犬養一夏 : 「……はい」
GM : そうして一夏は小走りで去っていった。
涼風紗雪 : 「じゃあ、明日は僕から誘おうかな。ふふっ、楽しみだ」
涼風紗雪 : 「……そうだ、カーネーション買って帰らなきゃね」
涼風紗雪 : 色々衝撃を受けてすっかり忘れていた母の日のことを思い出して、さっき見えた店の方へと寄り道してから帰ることにした。
GM : それから10分後、あなたは家についた。
GM : そして、いつも通りに門を開けて家に入ろうとした──その時、不意に背後から何者かの気配を感じた。
涼風紗雪 : 「……?」
涼風紗雪 : 誰かいる?と気になって振り返ってみる。
GM : 振り返った先には、誰もいなかった。 そして隠れる場所などもない。
涼風紗雪 : 「……あれ?……気のせいかな」
涼風紗雪 : 不思議そうにぱちぱちと瞬きした後、門を開けて帰宅しよう。
GM : その後は特に気配を感じることはなかった。 やはり気のせいだったのだろうか。
GM : 拭いきれない気持ち悪さを残したまま、あなたはベッドに身体を預けた。
犬養一夏 : 「…………」
GM : せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : 1d10+46(1D10+46) > 7[7]+46 > 53
GM : 6月12日。 天気は大雨。
GM : 5月9日以降、あなたと一夏は約束通りに2人で一緒に帰るようになっていた。
GM : そして、今日もいつも通りに一緒に帰る予定だったが、いつも通りではないことがふたつあった。
GM : ──ひとつ目は、あなたが一夏を待っていること。
GM : あなたが一夏を待っているのは、今日が初めてだ。 ……というのも、あなたには着替え等の時間があるので、これまでは必然的に待たせる側に立っていた。
GM :
しかし、今日は教室に忘れものをしてしまったらしい一夏を待っている。
思えば、幼馴染の春香と過ごしている時も、5分前行動を徹底している彼女を待つことはほぼないので、待つ側に立つのは久しぶりかもしれない。
GM : ──ふたつ目は、あなたは一夏の家に行って夕ごはんを御馳走になる予定だということ。
GM : いきなりどうしてそんな話になったのかを説明するには、まずは5月に一夏が受けていたアルバイトの面接結果から話す必要があるだろう。
GM : 一夏は面接に合格。 “フォーチュン・ハンター”というレストランで働くことになった。
GM : 一夏から聞いた限りでは、学生ということで“部活後に来てくれればいい”と融通を利かせてくれたイイ職場らしい。
GM : そして、肝心の夕ごはんを御馳走される経緯についてだが、
犬養一夏 : 「フォーチュン・ハンターでは“夏のオリジナルメニューをスタッフが考える”って企画があって、採用されたスタッフにはボーナスが出るそうなんですっ!」
犬養一夏 : 「あたしっ、なんとしてもボーナスが欲しいんです~! せんぱいっ、試食係として協力してもらえませんか?」
GM : そんな訳で、あなたは家族に話を通した上で、一夏が考えたオリジナルメニューの試食係を引き受けることにした。
GM : その約束の日が今日という訳だ。
1年B組の女子1 : 「ってかさ、猫山……ちょっとアレじゃない……?」
1年B組の女子2 : 「いや、ちょっとって言うか、ふつーにめっちゃキモいじゃん?」
1年B組の女子一同 : 「それな~!!!!」
1年B組の女子3 : 「ね~! 調子に乗ってるよね~! まあ、根は悪い子じゃないんだけどね」
GM : ──じめじめとした女子たちの話し声を、ざあざあと打ちつける大粒の雨がかきけしていく。
GM : 天気予報通りに、梅雨──Y高校テニス部の士気がもっとも下がる時期──が今年も訪れたのだ。
GM : 当然ながら、雨の日はテニスコートが使えない。
GM : そして、テニスコートが使えない時は、練習メニューのほとんどが基礎トレーニングに切り替わる。 ……よって、梅雨の間のテニス部は、ラケットとボールを手放してトレーニング部同然の状態なのである。
GM : もしも「梅雨がうれしい」というテニス部員がいるなら、他の部活に入った方がいいだろう。 そのくらい梅雨は嫌われている。
犬養一夏 : 「ごめんなさい、おまたせしました~……」
GM : 一夏は急いで靴を履き替えて、あなたの傍に駆け寄ると深い溜め息をついた。
犬養一夏 : 「傘探してみたんですけど、なかったです……。 はぁ、今日から梅雨入りだったんですね~……」
涼風紗雪 : 「あぁ、忘れ物って傘だったんだね」 時間つぶしに見ていたスマホからそちらに顔を向けて
涼風紗雪 : 「じゃあ、どうしようか……。一夏ちゃんが良ければ、僕の傘に入る?」
涼風紗雪 : そう言って手に下げてる青い傘を見せる。
犬養一夏 : 「えっ? せんぱいの傘に、あたしがですか…!?」
涼風紗雪 : 「うん。もしかして嫌かな?」
犬養一夏 : 「あっ、いえ、そんなことはないっ! んですけど~……」
犬養一夏 : 「ほら、相合傘という奴になっちゃいますよ…?」
涼風紗雪 : 「確かにそうだけど、このままじゃ一夏ちゃんが濡れちゃうじゃないか」
犬養一夏 : 「うむむ……それはそうですけど、あたしは別に濡れても大丈夫ですよ~?」
犬養一夏 : 「誘ってくれたのは嬉しいですけど、せんぱいって男女問わずにモテますし、あたしと相合傘なんてしてるところを見られるのとかって避けるべきじゃないですか?」
涼風紗雪 : 「いや、そんなに言うほどモテないよ」 くすっと笑って
涼風紗雪 : 「でも優しいね、一夏ちゃんは。遠慮してるのは僕の評判を考えてのことだったんだ」
犬養一夏 : 「え? いやいや、それこそ言うほど優しくないですよ~?」
涼風紗雪 : 「優しい人は皆そう言うって」
犬養一夏 : 「それを言うなら、モテる人はみんな『言うほどモテない』って言いますよ~」
涼風紗雪 : 「あははっ、そう言われたら言い返せないな」 と、楽しそうに笑って
涼風紗雪 :
「……よし。じゃあ誘い方を変えようかな」
傘を広げる。そのまま傘を差して、昇降口の扉を出て一夏ちゃんの方へと振り返り
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん、僕と一緒の傘に入って欲しいな。かわいい後輩を雨で濡らしたくないんだ」 手を差し出して、微笑みながらそう誘う
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「案外、ズルいんですね。 せんぱいって~」
涼風紗雪 : 「え?……そうかな?」 きょとんとする
犬養一夏 : 「……会った時も思いましたけど、あんまりかわいいとか言わないでくださいよ。 フツーに照れちゃうんで」
GM : 一夏は困った風に笑うと、あなたの手を取って同じ傘に入った。
涼風紗雪 :
「ふふっ、ごめんね。じゃあ、帰ろうか?」
肩が濡れないように傘を少しだけ一夏ちゃんの方に傾けて歩き出そう。
犬養一夏 : 「いいえ、ちょっと待ってください。 これだとせんぱいの肩が濡れちゃいます」
涼風紗雪 : 「え?あぁ、駄目かな?僕はこれくらい何ともないんだけど」
犬養一夏 : 「いやいや、今度はあたしが気になりますし~…」
犬養一夏 : 「せんぱいの傘なんですから、まずはせんぱいが濡れないようにしてくださいよ?」
涼風紗雪 : 「(別に本当に良いんだけど……気を遣わせすぎちゃうのも悪いかな……)」 少し悩んで
涼風紗雪 : 「分かった。じゃあ、これでいいかな?」 困った風に笑いながら、傘を垂直に立てて持つ
犬養一夏 : 「はい、それで結構です」
GM : しかし、この持ち方では二人とも少しずつ肩が濡れてしまう。
GM : ふと一夏の方を見ると、一夏はあなたとの距離をすこし開けていた。 この距離さえ詰めれば、二人とも濡れずに済みそうだ。
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん、もしかして照れてる?」
犬養一夏 : 「え゛っ゛」
涼風紗雪 : 「凄い声出たね。だってほら、こんなに間空いてるし」
犬養一夏 : 「こんなにって言っても、手ひとつかふたつ分くらいですし、先輩と後輩の距離感としてはフツーなのでは…!」
涼風紗雪 : 「うーん……」 確かに、とその距離を見て
涼風紗雪 : 「でももう少しこっちによって欲しいな?そうすれば、僕の肩も濡れずに済むんだけど……」
涼風紗雪 : さっきまずは僕が濡れないようにしてって言ったよね?と、ちょっとだけ意地悪な目で覗き込む。
犬養一夏 : 「う~……」
犬養一夏 : 「やっぱり、ズルいです……せんぱいって……」
GM : 一夏は諦めたようにそう言うと、えいっと覚悟を決めたように距離を詰めた。 そうしてほとんど密着状態になって、二人はようやく傘に収まることができた。
涼風紗雪 : 「ふふ……ありがとう、一夏ちゃん」 満足げに微笑んで、改めて歩き出していく
GM : 一夏は俯きながらも一緒に歩き出す。
GM : しかし、数分ほど歩いたところでこらえきれなくなったのか、
犬養一夏 : 「……しかし、近い、ですね」
GM : よそよそしいというよりは、少し恥ずかしそうに、そう尋ねてくる。
涼風紗雪 : 「だって、濡れないようにしてるからね」 一方特に恥ずかしげもない様子で
涼風紗雪 : 「もしかして一夏ちゃん、誰かと相合傘ってしたことない?」
犬養一夏 : 「はい、初めてです……」
涼風紗雪 : 「そうなんだ。すっごく緊張してるからそうだと思ったよ」
犬養一夏 : 「…………」
涼風紗雪 : 「でもほら、誰か好きな男の子とかだとまずいかもしれないけど、僕は同じ女の子なんだし。そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」 優しく笑いかける
犬養一夏 : 「そんなこと言われても、緊張しますよ……」ぼそっ
涼風紗雪 : 「……?ごめん、雨音で聞こえなかったみたいだ。もう一度言ってくれる?」
犬養一夏 : 「いえ、聞こえなくていいようなことしか言ってませんから」
涼風紗雪 : 「そう……?」
犬養一夏 : 「そうなんです」
GM : 一夏の「はあ」という溜め息もまた雨音にかきけされていった。
GM :
GM : 雨雲に染められて暗くなった道を歩いていく。
GM : ──Y高校からは徒歩30分ほど。 あなたの家からは徒歩15分ほど。 春香の家からは徒歩5分ほどの場所に、一夏の家はあった。
GM : 一夏が住んでいるのは、端的に言ってしまえばボロアパートだった。 手すりなどの見える金属部分はほとんど錆びついており、節々から年季がかんじられる。
GM : 一夏はボロアパートの階段をのぼると、205号室と書かれた部屋の前で立ち止まった。
犬養一夏 : 「あっ……」
涼風紗雪 : 「……えっ、どうしたんだい?」 アパートに結構衝撃を受けていた
犬養一夏 : 「ああ、いえ……掃除、すっかり忘れてました……」
犬養一夏 : 「ちょ~っと待っててくださいね? 5分……いや、3分で片付けるのでっ……!!」
涼風紗雪 : 「あぁ、そういうこと……!分かった、待ってるからゆっくり片付けて!」
涼風紗雪 : 「(家をうっかり間違えたとかそういうわけじゃなかったんだ……)」
GM : 一夏は急いで部屋に入っていくと、その言葉通り、3分もしない内に戻ってきた。
犬養一夏 : 「おまたせしました~…! もう大丈夫…だと思います…?」
GM : 何故か自信がなさそうな一夏に、部屋に案内される。
涼風紗雪 : 「お疲れ様。じゃあ……お邪魔します」 部屋に上がろう
GM : 部屋に入ってまず思うのは「狭い」ということだろう。 入ってすぐ見える廊下は、両腕を広げることができないほど狭い。
GM :
かろうじてキッチンとバスルーム等の必要最低限の設備はあるようだったが、それらもひどく狭い。
御嬢様育ちのあなたからすれば、尚更そう感じてしまうだろう。
犬養一夏 : 「あっ、“オリジナルメニュー”が完成するまでちょっとかかるので、それまではあたしの部屋でテキトーにくつろいでてくださいね~」
涼風紗雪 : 「…………」 春香の家より狭いぞ……と驚いて固まってしまって
涼風紗雪 : 「……あ、う、うん!分かったよ!待ってる待ってる!」 気を取り直して
GM : そして、廊下を進んで奥にある一夏の自室に通される。
GM : 玄関を通った時から分かっていたことではあるが、その部屋は狭かった。……テーブル、ベッド、タンスだけで部屋のほとんどが埋まっている。
GM : それでも十二分にあなたが座るスペースは残されていた。 ……何故なら、この部屋には物がほとんど置かれていないからだ。
GM : テレビ、スマホ、エアコン等のほとんどの家にあるだろう家電は、当然のように置かれていない。
GM : コンセントの差し込み口には、電子ケトルのプラグ以外は何も刺さっていない。 この部屋にはテレビもスマホもないので必要ないのだろう。
犬養一夏 : 「……あ、こういう時は飲み物を出すべきですよね」
犬養一夏 : 「お水かお茶がいいですかね? それともジュース?」
涼風紗雪 : 「え、ええと……。じゃあ、お茶で……?」
犬養一夏 : 「お茶ですね~」
涼風紗雪 : 「うん、頼むよ……」 空いているスペースに座る
GM : “オリジナルメニュー”を待っている間、あなたの興味は部屋にある数少ない一夏の私物──意外にも少女趣味のベッド。 抱くのに丁度いいサイズの犬のぬいぐるみ。 あなたが小学校高学年の頃に流行った若い年代向けの恋愛ソングのCD。 さっきの“掃除”の時に何かを隠すためにかけられただろうタンスのカーテン──に注がれる。
GM : しかし、あなたが最も気になったのは、テーブルに置いてある香水だった。
GM : 噂では一夏は“オシャレはしない”という話だったが……。
GM : ともあれ、無水エタノールも傍に置いてあるということは、この香水は自作したものなのだろう。
涼風紗雪 : 「これ、香水か……。どこのメーカーの……いや、もしかして手作りなのかな……?」
涼風紗雪 : 「意外だな、一夏ちゃんが香水つけるなんて……」
涼風紗雪 : 気になったから手を伸ばして触ろうとしかけて、いや勝手に触るのはまずいと手を引っ込める。
GM : あなたが手をひっこめたところで、お茶を持った一夏が部屋に戻ってきた。
犬養一夏 : 「粗茶ですが!」
涼風紗雪 : 「うん、ありがと……う?」
涼風紗雪 : 「(ソチャ……?)」 紅茶が出ると思っていたせいでちょっと戸惑っている
犬養一夏 : 「?」
涼風紗雪 : 「いや、ううん……何でもないよ」 せっかく出してくれたしと一口飲んで
涼風紗雪 : 「……お茶だね」 当たり前のことを真面目な顔で言いながらお茶を見つめてる
犬養一夏 : 「お茶ですよ?」
GM : その様子が可笑しかったのか、一夏は口元に手を当てて微笑んだ。
涼風紗雪 : 「もう、何笑ってるのさ」 つられて笑っちゃう
犬養一夏 : 「さっきからカルチャーショックを受けっぱなしだったみたいなので、それが可笑しくて」
涼風紗雪 : 「そ、そう見えてた?ショックというか何と言うか、確かに結構新鮮な感じがして……」
涼風紗雪 :
「いや、そんなことより!オリジナルメニューの試食だったよね!」
何か失礼なことを言ってしまうかもしれないと思って、慌てて本題に入る
犬養一夏 : 「そうでしたね?」下校時とは逆に慌てているせんぱいを見て、ふふっと笑う。
犬養一夏 : 「でも、完成には10分ほどかかるので、もうしばらく待っててください。 うちには暇つぶしになるようなものは何もないですけど、せんぱいはスマホ持ってましたよね?」
涼風紗雪 : 「そんな、何もないだなんて……」 ちょっと苦笑して
涼風紗雪 : 「スマホなら持ってるよ。ゆっくり作ってくれていいからさ」
犬養一夏 : 「では、御言葉に甘え……あっ!」
涼風紗雪 : 「どうしたの?」
犬養一夏 : 「この香水、片付けるの忘れてたな~と思って。 まあ、見られて困るようなものじゃないですけど」
GM : 一夏はそういうと、テーブルに置いてある自作香水を手に取った。
涼風紗雪 : 「あぁ、それか。少しびっくりしたよ、一夏ちゃんも香水をつけるんだって」
犬養一夏 : 「つけるというか、つくるのが趣味というか…?」
犬養一夏 : 「造った香りがニガテなので、例えば、みんなが運動後に使ってるフォレストブリーズとかニガテで…」
涼風紗雪 : 「そうなんだ……?香りにはこだわりがあるってこと?」 特に苦手とかでもないので今一ピンときていない
犬養一夏 : 「そうなるんですかね。 あたし、匂いに敏感みたいで…。 体育の後とかは教室がフォレストブリーズの匂いに包まれちゃいますし、ささやかな抵抗というか…」
涼風紗雪 : 「なるほどね。確かに匂いに敏感って人はいるかも……」
涼風紗雪 : 「でも凄いね、自分で香水作れちゃうなんて!僕なんかじゃ絶対作れないよ!」
犬養一夏 : 「そうですか…? でも作り方さえ分かれば意外とカンタンですよ?」
涼風紗雪 : 「そうなの?凄く手間がかかりそうだと思ってたんだけど……」
涼風紗雪 : 「じゃあ、今度時間がある時にでも一夏ちゃんに作り方を教えてもらってもいい?」
犬養一夏 : 「勿論いいですよ! まあ、あたし自身まだまだですけど!」
犬養一夏 : 「でも、せんぱいも香水に興味あるんですね? せんぱいっていつもイイ匂いするし、もう何かしらはつけてるものかと~…」
涼風紗雪 : 「そうかい?自分ではそこまで分からないけど……多分シャンプーか入浴剤の匂いかな?」
涼風紗雪 : 「薔薇の香りが好きだからさ。香水じゃないけどそういうのばかり使ってるな」
犬養一夏 : 「あ~、せんぱいは薔薇が好きなんですね~。言われてみれば確かに、せんぱいからは薔薇の匂いがする気がします」
犬養一夏 : 「あっ、薔薇の香水を作りたいって考えてるなら、それはやめた方がいいと思います…。 凄まじく高価なので…」
涼風紗雪 : 「えっ、そうなの?作りたいなと思ったんだけど……高価って、どれくらいする?」
犬養一夏 : 「具体的にいくらかは忘れちゃいましたけど、数百本から数千本の薔薇から1瓶の香水を作るとかって話を聞いたことあります……」
涼風紗雪 : 「数百から数千……結構大掛かりなんだね」
涼風紗雪 : 「でも用意しようと思えば出来そうじゃないかな?」
犬養一夏 : 「え……?」
涼風紗雪 : 「えっ?いや、買おうと思えば……って」
涼風紗雪 : 「まあ、ちゃんと調べてみないと分からないけどさ。薔薇にも色々あるわけだし」
犬養一夏 : 「いや、いくらかかるんですかそれっ…!?」
犬養一夏 : 「趣味にかける金額じゃなくなりますよ絶対!?」
涼風紗雪 : 「そ、そこまで言うほどなのか……!?」
涼風紗雪 : 「え、でも、薔薇を数百から数千……。昔、たくさんの薔薇をお父様から貰ったこともあるしな……大丈夫だと思ったんだけれど……」
涼風紗雪 : 「香水に詳しい一夏ちゃんがそう言うなら、別のものにした方がいいのかな……」 うむむと小さく唸って
犬養一夏 : 「こ、この人、金銭感覚がおかしい……」
犬養一夏 : 「わざわざそんなに高価な薔薇を選ばなくても、いい匂いの香水は作れますし! 天然由来ならそれでいいじゃないですか…!」
涼風紗雪 : 「せっかくなら良いものを選んだ方がより良い香水が作れると思ったんだけど……」
涼風紗雪 : 「まあ、自分でもちゃんと調べてみようかな?まだよく分かっていないしね」
犬養一夏 : 「そうしてください…。 そして、自身の金銭感覚をどうか見つめなおしてください…」
涼風紗雪 : 「そう言われても……。いや、わ、わかったよ……」
犬養一夏 : 「この分だと、試食を頼む人を間違ったかもしれませんね…。 あたしが用意できるものと言えば、所詮は庶民のごはんですし、せんぱいの口に合うようなものは…」
涼風紗雪 : 「そんなことないよ!そんな、庶民だとか見下してないし、美味しいものはちゃんと美味しいって分かるからさ!」
犬養一夏 : 「ちょっと意地悪いいましたかね!」
犬養一夏 : 「冗談ですよ~! 半分くらいは…!!」
涼風紗雪 : 「半分は意地悪なのかい……?とにかく楽しみにしてるからさ、自信持って作ってよ」
犬養一夏 : 「はい!」
GM : 一夏は笑顔でそう答えると「そろそろ、いい頃合いだと思うので盛り付けてきますね」とキッチンに戻っていった。
涼風紗雪 : スマホを見て待っていてとは言われたけど、せっかくだしと一夏ちゃんの部屋を色々眺めたりしながら待つよ!
GM : そうして待っていると、数分もしない内、涼しげなガラスの皿に乗せられて“オリジナルメニュー”が運ばれてきた。
犬養一夏 : 「これがあたしが考えた“夏のオリジナルメニュー”!」
犬養一夏 : 「スモークサーモンの冷製クリームパスタですっ!!」
GM : それは純白のソースに身を包んだクリームパスタだった。
GM : 薔薇状に巻いたスモークサーモンと、ハート状に重ねたふたきれのレモンが添えられており、その見た目は華やかさと可愛らしさを兼ね備えている。
涼風紗雪 : 「わ……!?これを、本当に一夏ちゃんが作ったの……!?」
犬養一夏 : 「ふっふ~、もちろんっ! 実は家事は一通りできちゃう後輩なのでした~!!」
GM : 驚いているあなたを見ると、一夏はほっと一息ついて得意げにそういった。
涼風紗雪 : 「凄いな、本当に……!」 尊敬した目で見て
涼風紗雪 : 「このスモークサーモン、薔薇みたいでかわいくて好きだな……。あっ、でも食べなきゃいけないのか」
犬養一夏 : 「ふふっ、せんぱいが薔薇が好きだって聞いたので、薔薇っぽくしてみました~! ちゃんとたべてくれないとダメですよ~?」
犬養一夏 : 「あっ、スモークサーモン自体は買ってきたものなので、まずは肝心のパスタ部分からたべてもらえれば!!」
涼風紗雪 : 「うん、分かったよ。それじゃあ、いただきますっ」
涼風紗雪 : ちゃんと手を合わせてから、上品にパスタを口に運んでみよう。
GM : パスタをフォークで巻いて口元まで運ぶと、レモンの爽やかな香りも一緒に運ばれてきた。
GM : そして、まず一口目。
GM :
本来のクリームソースが持っているクリーミーな美味しさはそのままに、レモン果汁が加わることによって、夏らしいさっぱりとした味わいに仕上がっている。
更には、このレモン果汁は全体としてのまとめ役も担っているらしく、ひんやりとした麺との相性も抜群だ。
GM : 続けて、二口目、三口目とたべすすめていく。
GM : 全くと言っていいほど飽きが来ない。 隠し味として入っている粒マスタードと黒胡椒がいいアクセントになって後を引くのだ。
涼風紗雪 : 「これは……!美味しいよ、一夏ちゃん!」 瞳を輝かせて一夏ちゃんを見つめる
犬養一夏 : 「ホントですか…! せんぱいの口に合うかは本当に心配だったんですけど、杞憂でよかったです~」
涼風紗雪 : 「合うよ、すごくっ。もう、びっくりしたな……!」
涼風紗雪 : 「庶民がどうとかは思わないけど、凄く食べやすい味だよ。夏らしくて良いと思うな」 そう言いながら更に食べ進めていく
犬養一夏 : 「夏らしさはすごく意識していたところなので、気付いてもらえてうれしいですっ」
犬養一夏 : 「冷製パスタと言えばトマト。 でもそれだと他のところでも食べれるな~って思って、ちょっと差を出すカンジにしてみたんですけど、好評でほんとによかった~……」
涼風紗雪 : 「なるほど、そこまで考えてたんだね……。これなら採用されるよ、きっと!」
犬養一夏 : 「はいっ! せんぱいのおかげで自信つきました!」
涼風紗雪 : 「ふふっ、それならよかった……!試食役なんて初めてだけど、ちゃんと仕事出来たみたいだ」
犬養一夏 : 「ええ、バッチリです! ……ああ、そういえばなんですけど」
犬養一夏 : 「サーモンの薔薇の傍にあったハート型のレモン、気付きました?」
涼風紗雪 : 「ん……あぁ、もちろん。ハート型にしてるなんてかわいいなと思ってたんだ」
犬養一夏 : 「世界史の先生が言ってたんですけど、ブラジル? だったかでは今日は“恋人の日”だとかで、それでハート型にしてみたんです」
涼風紗雪 : 「へぇ、詳しいね……!あははっ、そんなこと言われるとなんだか恋人になったような気分だね」
涼風紗雪 : 彼女に手料理を食べさせてもらうみたいでさ、と冗談っぽく笑っている。
犬養一夏 : 「……そういうこと言っちゃいます?」
犬養一夏 : 「……あたしが振った話題も悪かったですけど、いろんな人を勘違いさせてそうですよね、せんぱいって」
涼風紗雪 : 「え?勘違いって……?」
涼風紗雪 : 「ただの冗談のつもりだったんだけど、もしかして気を悪くさせちゃったかな」
犬養一夏 : 「冗談、ですか」
犬養一夏 : 「いえ、別に嫌だった訳じゃないですよ」
犬養一夏 : 「でも、せんぱいってカッコいいから、せんぱいからしたら冗談でも、ホントにドキッとしちゃう子もいるんじゃないかな~って話です」
涼風紗雪 : 「そうかな……?かっこいい王子様でありたいとは思ってるけど、本気にしちゃうかもってことか……」
涼風紗雪 : 「分かった……気を付けるよ。ありがとう、一夏ちゃん」
犬養一夏 : 「ホントに気を付けてくださいね~? かわいい後輩からのありがた~い忠告ですからね~?」
GM : 一夏は「かわいいと言われると恥ずかしい」なんて言っていたクセに、自分のことをかわいい後輩なんて言いながら愉快そうに笑ってみせた。
涼風紗雪 : 「なんか、圧を感じる気が……。それに一夏ちゃん、キャラが違わないかい?確かにかわいい後輩だけどさっ」
犬養一夏 : 「えっ、そうですか? いつもこんなカンジですよ~」
涼風紗雪 : 「そうかな~……?」
涼風紗雪 : そうかも……?とちょっと妙にも感じながら、クリームパスタを食べ終わろう。
犬養一夏 : 「それはともかく! 恋人の日関連であたしが話したかったことは、せんぱいと一緒にいる女の子のことですよ!」
犬養一夏 : 「あの子、恋人なんですか~? いつも一緒にいますよね~? ぶっちゃけ、どうなんです~?」
涼風紗雪 : 「え!?何、いきなり誰のこと!?いつも一緒にいるって、春香のこと?」
犬養一夏 : 「そうそう、その人です!」
涼風紗雪 : 「えぇ、恋人だなんて……ただの幼馴染だよ」
犬養一夏 : 「ああ、幼馴染! 道理で仲がいい訳だ~」
涼風紗雪 : 「そうだよ、幼馴染!もう、何をどう見たら僕と春香が恋人に見えるのさ」 可笑しそうに笑ってる
犬養一夏 : 「だって~、すごく仲よさそうだったんですもん!」
涼風紗雪 : 「そんなに?確かに実際仲は良いと思うし、僕も好きだけどね」
犬養一夏 : 「ですよね~、傍から見ててもわかりますもん!」
犬養一夏 : 「そもそもの話、せんぱいって女の子からもモテますけど、女の子は恋愛対象に入ってるんですか~?」
涼風紗雪 : 「女の子と付き合うってこと?うーん……どうなんだろう……」
涼風紗雪 : 「そもそも誰かとそういう関係になりたいってまだ思わないから、あんまり考えたことないなぁ……」
犬養一夏 : 「……へえ」
涼風紗雪 : 「え?」
犬養一夏 : 「いや、めずらしいな~って。 あたしの周りの子たちは、恋愛に対して前向きですし~」
涼風紗雪 : 「あぁ~……確かにね……」 春香ちゃんの顔が真っ先に思い浮かぶ
涼風紗雪 : 「でも僕はまだ自分が思う理想の王子様になれてないからさ。恋愛よりも、その夢を目指す方に忙しいっていうかさ……」
涼風紗雪 : 「昔女の子に告白されたことはあるから、女の子同士だからダメとかそういう風には思わないけど……やっぱりまだよく分からないかな」
犬養一夏 : 「なるほど~」
GM : パスタを食べ終えた後もそんな話をしていると、外はもう真っ暗になっていた。
犬養一夏 : 「……っと、ごめんなさい! もうすっかり暗くなっちゃいましたね!」
涼風紗雪 : 「あ……本当だね。いつのまにかこんな時間だ」 腕時計で時間を確かめる
犬養一夏 : 「こんな時間まで付き合ってくれて、本当にありがとうございました…!」
GM : そうして、あなたは家に帰るために玄関に向かう。 それを追うように一夏がついてくる。 玄関から出るところまで見送ってくれるらしい。
犬養一夏 : 「あたしが誘っておいてなんですけど、夜道にひとりで大丈夫ですか?」
涼風紗雪 : 「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ」
涼風紗雪 : 「僕、こう見えて結構強いからね。もし変なものが出ても問題ないさ」
犬養一夏 : 「そうですか~…? それならいいんですけど…」
涼風紗雪 : 「うん。だからここまでで大丈夫っ」
犬養一夏 : 「…………」
涼風紗雪 : 「……?どうかした?」
犬養一夏 : 「えっと、その……」
犬養一夏 : 「……………………」
犬養一夏 : 「いえ! なんでもないんです!! 忘れ物はないのかな~と思っただけで!!」
涼風紗雪 : 「忘れ物か……。うん、無いと思う」 スカートのポケットや鞄を確認して
犬養一夏 : 「もし忘れ物があったら勝手に貰っちゃいますよ~? ホントに大丈夫ですか~?」
涼風紗雪 : 「その時はちゃんと届けて欲しいな……!っていうか、随分心配性だね」
犬養一夏 : 「それは~……考えておきますっ!」
犬養一夏 : 「心配性なのは……、うーん、あたしの家に人が来るのは初めてだったので、それでですかね~!」
涼風紗雪 : 「それで帰り道のことや、忘れ物がないかって心配に……?」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「もしかして一夏ちゃん、僕がいなくなると寂しかったりする?」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「正直に言うと、そうですね……。 せんぱいのこと、まだ帰したくないです……」
涼風紗雪 : 「やっぱり。何だか、帰さなきゃいけないけど引き留めてるような感じがしたから、そうだと思ったよ」
犬養一夏 : 「あはは~。 なんでもとは言わずとも、せんぱいにはお見通しでしたか~……」
犬養一夏 : 「高校生にもなって、せんぱいが帰るの寂しいとか恥ずかし~……」
涼風紗雪 : 「いや、そんなことないよ。初めて人を家に上げたって言うなら分からなくもないし……」
涼風紗雪 : 「それにちょっと嬉しいな。後輩からそんなに慕われるなんて、もっとかわいく見えちゃうよ」
犬養一夏 : 「か、からかうのはやめてくださいよっ。 せんぱいにかわいいって言われるの、結構マジで照れるんですから~」
犬養一夏 : 「っていうか、さっきの忠告! もう忘れちゃってませんか~!?」
涼風紗雪 : 「あははっ、ごめんごめん……!でもそんな、まだ帰したくないなんて言われたらかわいいって思っても仕方ないじゃないか……!」
犬養一夏 : 「もう……」
涼風紗雪 : 「……後輩にここまで言われたら、僕も気持ちとしては帰りたくはないんだけど……」
涼風紗雪 : 「……うん、そうだな。今日の所は帰らなきゃいけないけど」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん、また遊びにきてもいいかな?今度は試食役とか、そういうの無しでさ」
犬養一夏 : 「えっ……いいんですか?」
涼風紗雪 : 「うん。また遊びにくる約束をすれば、寂しさも少しは和らぐと思うし」
涼風紗雪 : 「それに今日は楽しかったから、僕もまた遊びに行きたいなって」 優しく微笑みかける
犬養一夏 : 「そう、ですか……」
GM : 一夏は安心したようにふっと微笑んで、
犬養一夏 : 「そうですね! 今度来るときは二人で香水作りしましょう! 約束ですっ!!」
GM : と約束を持ちかけてきた。
涼風紗雪 : 「うん、そうだね!よーし、薔薇数千本用意してくるよ!」
犬養一夏 : 「いえ、それはやめてください……。 この部屋が薔薇で埋め尽くされちゃうので……」
涼風紗雪 : 「あ……やっぱりそうなるかな?分かった……」 ちょっとだけ残念そうに
涼風紗雪 : 「薔薇のことは置いといて……うん、約束だね!きっとまた来させてもらうよ!」
犬養一夏 : 「はいっ! 約束を破ったら、その時には薔薇数千本を有効活用することにしましょうか! 薔薇数千本の~ますってことで~!」
涼風紗雪 : 「えぇ?それって薔薇じゃなくて針じゃなかった?」 楽しそうに笑って
犬養一夏 : 「まあまあ、似たようなものですよ~」
涼風紗雪 : 「もう、似てないよ。ふふっ……」
涼風紗雪 : 「……よし、じゃあ帰るよ。一夏ちゃん、また明日学校でね」
犬養一夏 : 「……あっ、」
犬養一夏 : 「いえ、また明日っ!!」
GM : 一夏は何かを伝えようとしたようだったが、その言葉の続きは、すぐに笑顔の「また明日」で覆い隠されてしまった。
GM : しかし、心配は要らないだろう。その笑顔は、裏だとか影だとかがあるようなものではなかった。
涼風紗雪 : 「……うん!それじゃ!」
涼風紗雪 : 言葉の続きは気になったが、陰を感じない笑顔に安心する。
涼風紗雪 : そのまま玄関の扉を開け、振り返って笑顔で小さく手を振りながら、外へと出て行こう。
GM : あなたが外に出る頃には、いくらか雨足が弱まっていた。
GM : それでも、まだまだ止む気配はない。
GM : あなたは雨傘をさすと、晴れない雨雲のせいで、この時間にしては暗くなってしまった道を歩き出した。
GM : せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : 1d10+53(1D10+53) > 8[8]+53 > 61
GM : ここまでずっと6以上ですね、せんぱい…。
涼風紗雪 : なんか基本高いんじゃ…!
GM : 悲しい…。 でも、ジャームになっても愛してあげますよ、せんぱい…。
涼風紗雪 : ジャームになったらわたし造花になるから絵面が凄いことになる…!
GM : そういえばそうだった!! やっぱりジャーム化しちゃダメだわ!!!! ってあたりまえのことに気付いたところで、シーンをはじめていきますよ、せんぱい!!
GM : 7月7日。 天気は快晴。
GM : 梅雨はすっかり明けて、いよいよ本格的な夏を迎えていた。
GM : 今年の夏は湿度が低いらしく、例年と比べるとカラッとした気持ちのいい暑さだった。
GM : ──そして、あなたが試食係を務めた“夏のオリジナルメニュー・サーモンの冷製クリームパスタ”はというと、一夏が働いているレストラン“フォーチュン・ハンター”の人気メニューになっていた。
GM : 夏らしくさっぱりとひんやりとした美味しさと、下準備をしておけば盛り付けだけで提供できる作りやすさ。 この2点で店長からの評価を受けて、無事に夏限定オリジナルメニューとして採用されたのだった。
GM : なお、考案者である一夏の写真と名前とコメントが一緒に掲示されるところだったらしいが、そこは全力で断ったらしい。
GM : サーモンの冷製パスタが人気メニューになった経緯についてだが、7月のはじめからレストランでの提供が始まって、その3日後にSNSで少しバズったことがキッカケだったらしい。
GM : 薔薇みたいに巻いたサーモンがSNS映えするとかで、あなたのクラスでもちょっとした話題だ。 美味しさも折り紙付きなのでリピーターも多く、Y市の若い女性層を中心に人気が出てきている。
GM : そんな評判を尻目に、一夏は念願のボーナスをもらったこと自体にかなり喜んでいる様子だった。
GM : ボーナスの使い道をあなたと話したこともあったが、結局、貯金するのが丸いという結論に至っていた。
2年A組のバスケ部男子 : 「なあ、知ってる? 1年の……」
2年B組のバスケ部男子 : 「ああ、猫山? たぶん、うちの学校で一番かわいいよな。 まあ、性格はキツいけどさ」
2年A組のバスケ部男子 : 「ちげえよ! だぼだぼカーディガン!!」
2年B組のバスケ部男子 : 「ん? いまいちパッとしない子だよな? いつも寝癖ついててだらしなさそうだし、ショートカットで元気系なのはちょっとな~……女子は清楚なカンジがいいわ~……」
2年A組のバスケ部男子 : 「そうじゃねえって! 体操着の話だよ!!」
2年B組のバスケ部男子 : 「あ? もう暑いのに、まだ長袖の体操着を着てるのがヘンって話か? ……それとも何だよ? おまえ、あいつのこと好きなのかよ?」
2年A組のバスケ部男子 : 「バカじゃねーの!? それはないない!! おまえ、話の分からないヤツだな~~~~!!!!」
2年C組のバスケ部男子 : 「……だぼだぼカーディガンのおっぱいの話、だろ?w」
2年A組のバスケ部男子 : 「それ!! 意外とヤバいデカさだよな~~~~!!!! 1年のかわいいランキングだと圏外だけど、1年のおっぱいランキングだとメダル圏内には入りそうなんだよな~~~~」
2年C組のバスケ部男子 : 「だよなあ~! でっけぇでっけぇでっけぇわ!!」
2年B組のバスケ部男子 : 「おまえら……おっぱいしか見てねえのかよ……」
2年A組のバスケ部男子 : 「分かってねェな~~~~人の価値はおっぱいと顔で決まるんだぜ~~~~」
2年C組のバスケ部男子 : 「……だったら、オマエの価値って無じゃんw」
2年A組のバスケ部男子 : 「たっ、たっつんひっで~~~~!! 」
GM : ──騒がしい男子たちの話し声を、忙しないセミたちの鳴き声がかきけしていく。
GM : あなたは部活後の冷たいシャワーを浴びて、じっとりした汗をさっぱり洗い流すと、バスケ部男子たちの脇を抜けて校門に向かった。
GM : いつも通りに一夏を探そうと辺りを見回すと、校門からすぐのところにある自動販売機の近くで──そこで買ったものだと思われる──レモンの天然水を口にしている一夏をすぐに見つけることができた。
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん、お待たせ」 すぐ傍まで歩いて行く
犬養一夏 : 「あっ、せんぱい…! ごめんなさいっ、まだシャワーに時間がかかるかと思って飲み物を買ってました…!」
GM : もう最高気温30度をマークするほどの暑さだというのに、いまだに一夏はカーディガンを着ていた。
涼風紗雪 : 「そんなの好きに買って構わないさ。暑いもんね」
涼風紗雪 : 「……その上着も脱いだらどうだい?」
犬養一夏 : 「ああ、これですか~」
犬養一夏 : 「やっぱりヘンですよね~他の子にも言われます~」
涼風紗雪 : 「変とまでは思わないけれど、暑くないのかなって気になってさ」
犬養一夏 : 「う~ん、暑いには暑いんですけど、なんていうんだろ……」
犬養一夏 : 「これに慣れちゃったというか……ほら、長かった前髪が急になくなると違和感がすごくないですか? あんなカンジでして~……」
涼風紗雪 : 「なるほどね……過ごしやすい格好っていうのも人それぞれか」
涼風紗雪 : 「日焼けもしないで済むし、結構悪くないかもしれないね」
犬養一夏 : 「お~、たしかに~」
犬養一夏 : 「……あっ、そうだ」
GM : 一夏は何かを思いついたようにそう言うと、いじわるな笑みを浮かべて、のみかけのレモンの天然水を差し出してきた。
犬養一夏 : 「せんぱいも要ります~?」
涼風紗雪 : 「おや……いいのかい?じゃあ、ちょうど喉も乾いてたし頂くよ」
涼風紗雪 : にこっと笑って、飲み物を受け取る。
犬養一夏 : 「な~んて、じょーだ……えっ!?」
涼風紗雪 : そのまま何のためらいも無く一口飲んでから、濡れた唇を手の甲で拭った。
涼風紗雪 : 「ありがとう。美味しいね、これ」 返す
犬養一夏 : 「えっ、うええっ……!?」
GM : 一夏は半ば放心状態で、レモンの天然水を受け取った。
涼風紗雪 : 「ふふ……どうしたんだい?そんなに驚いて」
犬養一夏 : 「だ、だって関節キ……」
犬養一夏 : 「い、いやいや、冷静になってぼく……。 ぼくにはムリなことでも、相手はせんぱい……。 しかも運動部……。 運動部はそういうのに抵抗感ない人が多いみたいだし……」
犬養一夏 : 「今回はぼくの考えが甘かっただけ……。 うんうん、おっけーおっけー……」
GM : 一夏は返ってきたペットボトルを見つめながら、何かをぶつぶつと呟いた後、
犬養一夏 : 「な、なんでもないですっ! せんぱいは間接キスとか気にしないんですねっ!!」
GM : そう取り繕って見せた。
涼風紗雪 : 「いや、気にしないわけじゃないさ。受け取る直前に間接キスになるなってすぐに思ったし」
涼風紗雪 : 「でも一夏ちゃんもそれを分かってて渡してくれたのだとしたら、王子様として拒否するのは失礼だろ?」
涼風紗雪 : 「それに赤の他人ならともかく、一夏ちゃんなら僕は間接キスくらいしたって構わないさ」
犬養一夏 : 「なっ…………!?」
犬養一夏 : 「な、何を言ってるんですか、せんぱい……!?」
涼風紗雪 : 「何を言ってるも何も、言葉通りの意味だけど……」
涼風紗雪 : 「それとも、もしかして嫌だった?もう僕達結構仲が良い方だと思ってたから別に大丈夫だと思ったんだけどな」
涼風紗雪 : 「もし嫌なら、新しいの買った方がいいかな?」 鞄から財布を取りだしながら
犬養一夏 : 「あ~、なるほど、なるほど~……」
犬養一夏 : 「せんぱいの間接キスができる基準は、親しい相手なら誰でもってカンジなんですね~……」
犬養一夏 : 「なるほど~……」
犬養一夏 : 「いえ、わざわざ買い替えなくてもいいですよ。 もう、なんか、あんまりノドかわいてないですし~……」
涼風紗雪 : 「誰でもってわけじゃないけど……そう?」 財布をしまう
犬養一夏 : 「むしろ、コレ要ります……? あたし、せんぱいと間接キスするのはなんかちょっと~……」
涼風紗雪 : 「え!?そっちから渡したのに……!?」
犬養一夏 : 「だ、だって、それは冗談のつもりだったんですもん!」
犬養一夏 : 「せんぱいって育ちがいいし、そういうの気にしないで飲むなんて思ってなかったんですもん!!」
涼風紗雪 : 「冗談……そうだったのか……。間接キスになるけど僕のこと気遣って渡してくれたものだと真面目に受け取ってしまってたよ……」
犬養一夏 : 「同級生相手なら回し飲みしてもいいかもしれないですけど、せんぱいに渡す飲み物は新しいのをちゃんと買いますよ~。 ボーナスで懐はホカホカなんですから~……」
涼風紗雪 :
「あはは……それもそうか。なんだか僕の方が恥ずかしくなってきちゃったよ」
少しだけ頬を赤らめながら、照れ隠しするように微笑む
犬養一夏 : 「も、もう……なんでせんぱいまで恥ずかしがってるんですか……」
涼風紗雪 : 「いや、だって……ふふっ……。冗談に真面目に対応しちゃったのと、こんなに間接キスだと意識するとなんだか急にね……」 恥ずかしそうに目を逸らして
涼風紗雪 : 「ま、まあ、もうやっちゃったことは仕方ないかな。いらないならそれは貰うよ」 手を差し出す
犬養一夏 : 「…………」
GM : 一夏は照れているあなたを見て、さらに照れてしまったようだったが、俯きながらおずおずとレモンの天然水を差し出してきた。
涼風紗雪 : 「ん、ありがとう。……えっと」 今ここで残りも飲むかどうか一瞬迷って
涼風紗雪 : 「……もう帰ろうか!」 やっぱり後にしようと鞄の中にしまう
犬養一夏 : 「……で、ですね!」
涼風紗雪 : うんうんっ、とぎこちなく頷きながら歩き出していく。
GM : ぎこちない距離感のまま、二人は歩き出した。
GM : しばらくの間、沈黙が続く。 セミたちの鳴き声がハッキリと聞こえる気がした。
GM : その沈黙を破るため、口を開いたのは一夏の方だった。
犬養一夏 : 「……あっ、そういえば! せんぱい!!」
涼風紗雪 : 「え、何かな!?」
犬養一夏 : 「あ、あたし、実はですねっ! 今日が誕生日なんですよ~!!」
涼風紗雪 : 「なっ……!?そ、そうなのか!?今日!?」
犬養一夏 : 「そんなに驚くようなことでした…? まあ、誰にも教えてなかったので知らなかったでしょうけど~」
涼風紗雪 : 「そりゃ驚くよ……。そうか、誕生日なのか……」
涼風紗雪 : 「うん、そっか……。誕生日おめでとう、一夏ちゃんっ」
犬養一夏 : 「ありがとうございます~!」
涼風紗雪 : 「うん……!でも、誕生日プレゼントも渡せたら良かったんだけどね」
犬養一夏 : 「いえ、いいんですよ! 話のネタになりそうだなって思って話しただけですし、プレゼントなんて…!」
涼風紗雪 : 「だけど、せっかくのかわいい後輩の誕生日だしさ……」 うーんと悩んで
涼風紗雪 : 「……そうだ!じゃあ今から買いにいこうか!」
犬養一夏 : 「え、ええっ!?」
犬養一夏 : 「いいですよ、そんなにわざわざ……!! せんぱいだって部活で疲れてるでしょうし、あたしは本当にその気持ちだけで……」
涼風紗雪 : 「僕は全然疲れてないから大丈夫だよ。……あ、もしかして今日ってこれからバイトだった?」
犬養一夏 : 「バイトは休みですけど~……」
涼風紗雪 : 「じゃあ良いじゃないか。一緒に買いにいこうよっ」
涼風紗雪 : ねっ、と顔を覗き込む。
犬養一夏 : 「うっ……」
犬養一夏 : 「わ、分かりました……」
涼風紗雪 : 「よし、じゃあ決定だね。今日は真っ直ぐ帰らずに寄り道していこう!」
犬養一夏 : 「ご、強引ですね……? でも、せんぱいにプレゼントをもらえるのは、スナオに嬉しいです……」
涼風紗雪 : 「それなら良かった。じゃあ行こうかっ」
涼風紗雪 : と、そんな感じでショッピングモールとか近場で誕生日プレゼントが買えそうな場所に行きたいです!
GM : では、二人は登下校に使っている道とは別方向にあるショッピングモールに歩いていった。
犬養一夏 : 「……せんぱい。 念のために言っておきますけど、高価なモノとか貰って申し訳なくなるモノとかは受け取れないですからね?」
涼風紗雪 : 「高価なもの……って……?」 ピンときていない表情
犬養一夏 : 「それは、まあ、何万円もするモノですよ? 電子機器とかブランドモノとか?」
涼風紗雪 : 「何万円って、それくらいなら安い方じゃないかい?」
涼風紗雪 : 「8万くらいのレディースものの腕時計とかもありかなって考えてたんだけれど……」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「さて、帰りますね~……」
涼風紗雪 : 「ちょ、ちょっと待ってよ!?なんでさ!?」
犬養一夏 : 「だから、受け取れないんですって! そういうの!!」
犬養一夏 : 「もっと、こうっ……学生らしいプレゼントにしてくださいよっ!?」
涼風紗雪 : 「学生らしい……!?」
涼風紗雪 : 「が、学生らしい……か……。なるほど……」 目線を泳がせて悩んでる
犬養一夏 : 「少なくとも、5000円以内でおねがいします……。 せんぱいの誕生日の時におかえしとかできなくなるんで……」
涼風紗雪 : 「5000円!?いや、そんなお返しを期待してるわけじゃないんだけどな……!」
犬養一夏 : 「いやいや、そうじゃないとあたしが申し訳ないですから…!!」
涼風紗雪 : 「……そ、そっか、分かった……。5000円以内……」
涼風紗雪 : 「うん、大丈夫。ちょっと心配だけど、ちゃんとそれくらいで良いプレゼントを選んでみせるよっ」
犬養一夏 : 「ホントにおねがいしますよ……?」
涼風紗雪 : 「任せてよ……!」
涼風紗雪 : 「(とはいえ、何を買うべきかな……。できれば一夏ちゃんの好きそうなものがいいけれど……)」 色々考えながら歩いていく
涼風紗雪 : ショッピングモールにつくと、とりあえず様々な店を眺めてぐるっと一周していく。
涼風紗雪 : 「あんまり来たことないけど、結構色々あったね。女性向けだと、アクセサリーとか、化粧品とかさ……」 立ち止まって
犬養一夏 : 「せんぱいもあんまり来たことないんですね~、あたしもです~」
涼風紗雪 : 「うん。自分で買い物することってそんなにないんだよね」
犬養一夏 : 「自分で買い物しないって、じゃあ誰に買ってきてもらってるんですか?」
涼風紗雪 : 「家にいるお手伝いさんとか。あとは物によってはお父様に頼んだりとかかな」
犬養一夏 : 「ああ、なるほど~……」
涼風紗雪 : 「うん……」 少し考え込んで
涼風紗雪 :
「……よし、結構悩んじゃったけど決めたよ!一夏ちゃん、ついてきて!」
そう言ってある店の方へと進んでいく。
犬養一夏 : 「はいっ」
GM : 一夏はあなたの後ろについていった。
涼風紗雪 : 一夏ちゃんを連れて入ったのは、ショッピングモールの奥にある雑貨屋だった。
涼風紗雪 : 「そうだ、聞いておかなきゃ。一夏ちゃんって何色が好き?」
犬養一夏 : 「えっ? ん~、何色でしょう……。 あんまり考えたことが……」
犬養一夏 : 「あっ」
犬養一夏 : 「……青が好き、かもしれません」
涼風紗雪 : 「そうなんだ……!僕も好きだよ、青!一緒だね!」
犬養一夏 : 「一緒……ですねっ! せんぱいって確かに青いものを身に着けてるイメージあるかもっ」
涼風紗雪 : 「うん、すぐ青色選んじゃうんだよね。青空が好きだからかな」
犬養一夏 : 「ああ、なるほど~! あたしも好きですよ! 青空!!」
涼風紗雪 : 「そうなんだ……!えーと、青色、青色……あった!じゃあこれだ」
涼風紗雪 : 雑貨屋の棚に陳列されたある商品を手に取る。
涼風紗雪 : それは青色のタオルハンカチだった。
涼風紗雪 : ふわふわとした肌触りの良いそのハンカチの隅には、小さな犬が刺繍されていた。
涼風紗雪 : かわいらしいその犬は、青空の下を元気に散歩しているように見える。
涼風紗雪 : 犬の見た目は一ヵ月前に一夏の部屋を訪れた時に見た犬のぬいぐるみと似ていて、紗雪はそこからこの種類のハンカチを選んだようだった。
涼風紗雪 : 「これとかどうかな!もう夏で暑いって話してたの思い出してさ、じゃあこういうのもアリかなって……!」
涼風紗雪 : 1200円の値札がついたそのハンカチを一夏ちゃんに差し出して聞いてみる。
犬養一夏 : 「せんぱい……」
犬養一夏 : 「あたし、それがいいです……!!」
GM : 一夏は胸元に手を置いて、とてもうれしそうに笑った。
涼風紗雪 : 「本当!?よかった……!やっぱり、犬好きなんだね」 同じように嬉しそうな笑顔になる
犬養一夏 : 「でも、せんぱい、あたしが犬が好きだってこと、よく分かりましたね?」
涼風紗雪 : 「だって、この前家に行った時に犬のぬいぐるみがあったじゃないか。だから好きかなって思ったんだ」
犬養一夏 : 「あ~、なるほど~……」
犬養一夏 : 「ちゃんとあたしのこと見てくれてるんですね、せんぱい!」
涼風紗雪 : 「ふふっ、まあね。じゃあ買ってくるから外で待っててよ」 ハンカチを預かる
犬養一夏 : 「はいっ!」
GM : 一夏は元気よく返事をすると、店の外に出ていった。
涼風紗雪 : 「喜んでくれたみたいで、良かったな……!」
涼風紗雪 : 嬉しく思いながらレジへと持っていき、プレゼント用の青いリボンでラッピングしてもらって会計を済ませる。
涼風紗雪 : そして一夏ちゃんのもとへと戻ってくると、
涼風紗雪 :
「はい、一夏ちゃん。改めて、誕生日おめでとう!」
笑顔で祝福しながら、プレゼントを手渡した。
犬養一夏 : 「ありがとうございますっ!」
犬養一夏 : 「せんぱいに誕生日を祝ってもらえて、あたし、あたし、本当にうれしいです……!!」
犬養一夏 : 「……っ」
GM : 一夏はプレゼントへの感謝を口にしていると、すこし涙が出てしまったようで、それを隠すためにカーディガンの裾で目元を拭った。
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん?もしかして、泣いてるの?」
犬養一夏 : 「ご、ごめんなさい……あたし、ちゃんと、うれしい、のにっ……」
犬養一夏 : 「あはは……実は、こうして誕生日を祝ってもらえたの、久しぶりでしてっ……」
涼風紗雪 : 「そんな、謝らなくていいよ。嬉しくて涙が出てきちゃうことってあるよね」
涼風紗雪 : 「でも、そんなに久しぶりなんだ……?じゃあ、なおさら祝って良かったって思うし……」
涼風紗雪 : 「僕、また来年も一夏ちゃんの誕生日お祝いするよ。だから楽しみにしてて欲しいな」 優しく微笑みかけながらそう伝える
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「それは、とてもうれしい、ですけど……」
犬養一夏 : 「期待しちゃって、いいんでしょうか……」
涼風紗雪 : 「もちろん!期待して待っててよ!忘れたりなんかしないからさ!」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「いえ、期待しないで待っておくことにしますね! 人って、大事なことでも忘れてしまうものですしっ!!」
涼風紗雪 : 「もー……!まあ、それでもいいかな。それなら今度はサプライズで祝えたりしそうだしね」 ちょっと困ったように笑いながら
犬養一夏 : 「ふふっ、じゃあ、楽しみに待ってますっ」
涼風紗雪 : 「うん!」
涼風紗雪 : 「……よしっ、メインイベントは終わったけど、一夏ちゃんまだ時間は大丈夫?」
犬養一夏 : 「はい、それは大丈夫ですけど…」
GM : 一夏はハンカチの入ったプレゼント箱を大事そうに抱いたまま、質問の意図がわかっていないのか、首を傾げながらそう答えた。
涼風紗雪 : 「よかった。じゃあ、もうちょっとここで遊んで行こうよ」
涼風紗雪 : 「さっき向こうで、七夕だから短冊にお願い事書いて笹の葉に吊るせるっていうの見かけたんだ。なんだか楽しそうだし見て行かない?」
犬養一夏 : 「ああ、七夕の~! いいですよね~! 昔、ひとつだけですけど、願いが叶ったことがありますっ!」
涼風紗雪 : 「そうなんだ?僕も子供の頃に叶ったことがあったな……!」
涼風紗雪 : 「って言っても、昔のことだからちょっとうろ覚えだけどね」
犬養一夏 : 「まあ、小さい頃のことはあまり覚えてない人が多いですよね~」
犬養一夏 : 「あたしは小学生の頃までは覚えてますけど、幼稚園とかだと覚えてませんし~」
涼風紗雪 : 「その辺りになると流石に結構忘れちゃうよね」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃんは覚えてるの?何の願い事が叶ったのか」
犬養一夏 : 「はい! それはもう! サンタさんとかと同じで迷信だと思ってたのに、ホントに叶っちゃって驚いたんですからっ!!」
涼風紗雪 : 「へぇ……!それって何なんだい?あ、でもこういう願い事ってあんまり人に言うようなものじゃないか……?」
犬養一夏 : 「そうですよ~? それに少し恥ずかしいですしね~」
涼風紗雪 : 「だよね、ちょっとデリカシーに欠けてたかもしれないな」 誤魔化すようにえへへと笑う
犬養一夏 : 「もう、せんぱいったら」
涼風紗雪 : 「ごめんごめんっ。じゃあ、行こうか……!」
涼風紗雪 : そう言って楽し気にしながら、七夕のイベントコーナーの方へと一夏ちゃんを連れて歩いていく。
GM : 七夕のイベントコーナーについた2人は、短冊に願い事を書くと、互いの願い事を隠したまま、それぞれの短冊を飾ってもらった。
GM : 今回の願い事は叶うのか。 それは誰にも分からない。
GM : せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : 1d10+61(1D10+61) > 9[9]+61 > 70
GM : 8月5日。 天気は快晴。
GM : 激しく照りつけていた太陽が「ジュッ」と音を立てるように水平線の向こう側に沈んでいく。
GM : オフホワイトの砂。 コバルトブルーの海。 セルリアンブルーの空。 その全てに滲んでいく。
GM : ──夏休みがはじまってから約1週間。 七夕祭りを2日後に控える今になって、Y高校テニス部は、神奈川県某市の海岸に訪れていた。
GM :
勿論、皆で海水浴に来た訳ではない。
Y高校テニス部にとって重要な意義を持つ伝統行事──夏合宿を慣行するために来ているのだった。
夏合宿の意義を正しく説明するには、まずはY高校テニス部の“今”について話す必要があるだろう。
GM : テニス部では7月の初め頃に3年生が引退。 部長と副部長の引き継ぎが行われた。
GM : あなたは当時の部長からの推薦を受けて、部長候補として名前が挙げられていた。
GM : 他部員からも賛成意見しか見受けられず、次期部長はあなただと皆が思っていた。
GM : しかし、あなたは周囲の期待を裏切って、当時の部長からの推薦を自ら辞退した。
GM : ……その理由を一言で表すなら“あなたがオーヴァードであるから”に他ならない。
GM :
オーヴァードが持っている力は、非オーヴァードには決して手が届かないものだ。
本来なら、勝負にもならない。 そもそも、次元がまったく違う。
GM : だから、あなたは非オーヴァードに合わせて、力を今までセーブしつづけてきた。
GM : 本気を出すことができないあなたが、本気の部員たちをまとめる立場に立つのは、不適切だろう。
GM : そして、非オーヴァードたちの舞台には非オーヴァードたちが立つべき、とあなたはそう思った。
GM : それに、UGNエージェントとしての諸々の活動にも支障が出るかもしれなかった。
GM : そうしたUGNエージェントとしての隠し事も踏まえて、あなたは推薦を辞退することを決断した。
GM : その結果、熱意があり人望のない2人の同級生が、それぞれ部長と副部長に選ばれることになった。
GM : カリスマ性がないなりに2人は頑張っていたが、それでも最初から3年生のように上手くいかない。
GM : ──そこで、夏合宿の出番という訳だ。
GM : 部員たちは団体行動を通じてリーダーの交代を実感することができるし、部長たちは団体行動を通じてリーダーの経験を蓄積することができる。
GM : とはいえ、夏合宿の意義はそれだけではない。 わざわざ海に来たことにも意味がある。
GM : 夏合宿の練習メニューは特別。 主にビーチを使って行われる。
GM : ビーチでの運動は、砂場に足を取られるため、効率的に足腰を鍛えることができるのだ。
GM :
今日の練習メニュー──ビーチランニングを終え、ビーチテニス※の試合が一巡した頃。
※ネット越しにボールを空中で打ち合う競技。 テニスとバドミントンを融合させたようなスポーツ。
GM :
部員たちは一様にくたくたに疲れきっていた。
……無理もない。 目的地に行くため早朝に電車に乗って、目的地に着いたら即座に練習を始めて、それから日没まで延々と練習を続けて、と相当の過密スケジュールだったのだから。
テニス部顧問 : 「ようし! 今日の練習はここまでっ!!」
テニス部顧問 : 「夕ごはんはBBQだっ! 日が沈むまでは自由に過ごしてていいぞ~!!」
GM :
次の瞬間、テニス部新部長から「では解散!」と号令がかかると、部員たちは疲れが吹っ飛んだかのように更衣室に走り出した。
……それから数分後。 更衣室から出てくるほとんどの部員たちは水着に着替えていた。
GM : 水着に着替えた部員たちは、汗まみれで湿ったトレーニングウェアをテニス部の洗濯カゴに放り込み、一直線に海に走っていく。
2年C組のテニス部部長 : 「ちゃっかり水着持ってきてるしあいつらっ!? 合宿のしおりには“水着を持ってこい”なんて書いてなかったのにっ!!」
2年C組のテニス部部長 : 「ま、ウチも持ってきてるんだけどさぁ……」
2年C組のテニス部マネージャー : 「あっ、彼氏さんに見せるつもりだった水着ぃ?」
2年C組のテニス部部長 : 「正しくは“元彼氏”ね? 折角の夏合宿なんだから、嫌なこと思い出させないでよ~……」
2年C組のテニス部マネージャー : 「たしか、彼氏に悪口を言われてたんだっけぇ……? 裏垢でずーっと……」
犬養一夏 : 「えぇ……、自分の彼女にそんなこと……」
2年C組のテニス部部長 : 「ありがとね~、一夏ちゃん。 でも、聞いてみたら“一緒にいる時間が少ないことに対する不満が抑えられなかった”とかって言ってたから、部活ばっかに目がいってたウチにも非がない訳じゃないんだよね~……」
2年C組のテニス部部長 : 「はああ……。 この気持ち、一体どこに向けるべきなのか……」
2年C組のテニス部マネージャー : 「う~ん、ここは考え方を逆転してみたらぁ? 折角の夏合宿なんだから、むしろ鬱憤を晴らすいい機会じゃないかしらぁ……?」
2年C組のテニス部部長 : 「それも、そう……かも? 人もほぼいなくなってるし、海に叫んでみよっかな……」
2年C組のテニス部部長 : 「ま、それも洗濯物を片付けてからに……」
2年C組のテニス部部長 : 「って、うわっ! “洗濯物は畳め”っていつも言ってるのに、あの子らっ……! こんな雑に放り込んでっ……!!」
犬養一夏 : 「まあまあ、畳まれてても畳まれてなくても、洗うときは一緒ですし~」
2年C組のテニス部マネージャー : 「ううん、それがそうはいかないのよぉ……。 新部長は求心力がないから、こういうとこからしっかりしないと規律が保たないのよぉ……」
2年C組のテニス部部長 : 「このマネージャー、傷心の部長を労わるとかないのかっ!?」
涼風紗雪 :
「大丈夫?僕も手伝おうか?」
と、白いオフショルダーのワンピースタイプの水着に着替えてそちらにやってくる
犬養一夏 : 「いえ……あっ、せんぱいも水着を持ってきてるんですね! とっても似合ってます!」
涼風紗雪 : 「ありがとう。海に着たんだしせっかくだから持ってきたんだ」
GM : 対する一夏はというと、朝から私服のままだった。
GM : しかし、私服の一夏を見るのは、今日がはじめてかもしれない。
GM : トップスはゆるめの無地のパーカー。 ボトムスはデニムのショートパンツ。 そしてビーチサンダルといった装い。
GM : 上半身はほとんど隠されているのに、下半身はほとんど隠れていないので、健康的なふとももが夕陽を照り返していて眩しい。
涼風紗雪 : 「一夏ちゃんは?持ってきてないの?水着」
犬養一夏 : 「あはは……、あいにく水着とか持ってなくて~……」
涼風紗雪 : 「そうなんだ……。誕生日プレゼントは水着でも良かったかもしれないな」
涼風紗雪 : いやそれも誕生日プレゼントとしては変なのか?と少し悩んでいる
犬養一夏 : 「いやいや、恥ずかしいですし、着ないですからねっ」
2年C組のテニス部部長 : 「うん? 一夏ちゃん、誕生日だったんだ?」
涼風紗雪 : 「あぁ、もう一ヵ月前だけどね」
2年C組のテニス部マネージャー : 「知らなかったわぁ、祝ってあげたかったのだけどぉ……」
犬養一夏 : 「その気持ちだけで十分ですからっ! あたし、謙虚な後輩なのでっ!!」
2年C組のテニス部部長 : 「自分で謙虚って言う!?」
涼風紗雪 : 「あはは……僕がプレゼントあげようかって言ったら最初は断ってたし、謙虚な方かもね」
犬養一夏 : 「ほら、せんぱいからのお墨付き? もありますよ?」
2年C組のテニス部部長 : 「うーん……いつも文句ひとつ言わずにマネージャー業してくれてるし、謙虚ではあるのかも……」
2年C組のテニス部マネージャー : 「一夏ちゃんは謙虚でしょぉ? 別に迷う必要もないと思うのだけどぉ……」
2年C組のテニス部マネージャー : 「それはそうと、紗雪ちゃんからも言ってあげてくれないかしらっ」
2年C組のテニス部マネージャー : 「この部長はいまいち頼りないって!」
2年C組のテニス部部長 : 「こ、このマネージャー…!! のほほんとした顔で、ド直球過ぎないかっ…!?」
涼風紗雪 : 「まあ、確かに……頼りないといえばまだ頼りないかもしれないね」
2年C組のテニス部部長 : 「さ、紗雪までそんなこと言う!?」
涼風紗雪 : 「でも頼りがいなんて、これからいくらでも出てくるものだと思うな」
涼風紗雪 : 「そのための合宿でもあるし、最初の頃に比べると少しずつ部長らしくなってきてるしさ」
2年C組のテニス部部長 : 「紗雪~~~~!! 」
2年C組のテニス部マネージャー : 「ふふっ、今は頼り甲斐はないけど尽くし甲斐はあって、退屈はしない部長さんよねっ」
涼風紗雪 : 「うんうん……。僕も出来る限り支えていくからさ、頑張って行こうよ」
2年C組のテニス部部長 : 「みんなから人気がある紗雪がサポートしてくれるの、マジでたすかる~! 紗雪の言うことなら聞いてくれるカンジあるしっ!」
2年C組のテニス部部長 : 「じゃあ、頼れる助っ人ができたところで、“尽くし甲斐がある”なんて口から出まかせ言ってるマネージャーは解雇しよっか」
2年C組のテニス部マネージャー : 「あらぁ? 最初から“尽くし甲斐がある”って意味で言ってたのよぉ? 小学校からの付き合いなんだし、それくらい分かってほしかったわぁ……」
2年C組のテニス部部長 : 「いやいや、分かるって……アンタ、部長で遊んでるでしょ……」
2年C組のテニス部マネージャー : 「うふふ。 まあ、部長には、わたしが付いてるんだから大丈夫ってことよぉ」
2年C組のテニス部部長 : 「アンタ、変わんないねホントに……、まあ、そういうことにしておくわ……」
涼風紗雪 : 「ふふ……」 仲が良いな、とその様子を微笑ましそうに見守っている
2年C組のテニス部部長 : 「それはそうと、紗雪、ホントに頼りにしてるからね? マジで頼んだよ?」
2年C組のテニス部マネージャー : 「出たぁ、他人任せぇ」
2年C組のテニス部部長 : 「うっせぇわ!」
涼風紗雪 : 「もちろん、任せてよ。部長辞退した分、ちゃんと手伝うからさ」
犬養一夏 : 「ふたりともがんばってください!」
涼風紗雪 : 「うん。ありがとう、一夏ちゃん」
犬養一夏 : 「ところでせんぱい。 さっきは“手伝おうか?”って言ってくれてましたけど、いいんですか? 折角の水着に着替えてきた訳ですし、海で泳いで来た方がいいんじゃ?」
涼風紗雪 : 「あぁ、そうだね……。大丈夫かなと心配になってきちゃったけど……」
涼風紗雪 :
「逆に僕がいると気遣わせてしまうかな」
一人だけ水着だし、とワンピースの水着の裾を指で摘まんで
犬養一夏 : 「いえ、そんなことはないですよ!」
2年C組のテニス部部長 : 「っていうか、ウチも下に水着きてるわ」
2年C組のテニス部マネージャー : 「そういう訳だから、手伝ってもらえると嬉しいわ! ね、一夏ちゃん?」
犬養一夏 : 「あっ……? えっ……? はい……?」
涼風紗雪 : 「そっか、じゃあ少し手伝おうかな。遊ぶのはその後でも十分だしねっ」
犬養一夏 : 「では、せんぱいはあちらの洗濯カゴをおねがいします~! ちょっと重いですがっ!!」
涼風紗雪 : 「分かった、これだね」 軽々とカゴを持ち上げて洗濯を手伝っていこう
2年C組のテニス部マネージャー : 「お~、さすがぁ! 力持ちぃ!!」
涼風紗雪 : 「ふふ、それほどでもないさ」
GM : そうして、あなたはマネージャーたちと協力して洗濯物を片付けた。
GM : BBQ準備も手伝おうとしたが、それは断られてしまい、あなたは海ではしゃぐ部員たちとの親交を深めることになった。
GM : そして、あなたは実家のシェフが作るごはんとは真逆のワイルドなBBQを楽しんだ後、みんなと予約していた旅館に移動した。
GM : 部屋に荷物を置いた後は、部員たちと温泉に浸かって癒されたのだが、そこには一夏の姿はなかった。
GM : 風呂あがりには、なぜか定番と言われている“コーヒー牛乳”なるものを飲んだ後、いくつかの班に分かれて、それぞれ割り振られた部屋に移動した。
GM : 当然、ちょっとした修学旅行気分の部員たちがすぐに寝静まるハズもなく、新部長の一声によって枕投げが開催された。
GM : そこに顧問の先生は叱りにやってきたのだが「女子のテリトリーを侵害した」とか「ロリコン変態教師」とか散々なことを誰かに言われて追い返された。
GM : それでも、“枕投げはもうやめておこう”という話になって、それから暫くは女子らしいトークで盛りあがっていたものの、枕投げで出てきたアドレナリンが切れると、急に眠くなっていき……
GM : 結果的には、12時頃という健康的な時間に就寝となった。
GM : ──ひどく静かな深夜。 聞こえるのは、潮騒の水音だけ。
GM : ……砂浜の方から聞こえてきた足音で、あなたは目覚める。
GM : 腕時計に目を凝らすと、深夜の3時過ぎ。 起きている人などいないハズの時間だった。
涼風紗雪 : 「ん……」 布団から上体を起こす
涼風紗雪 : 「気のせいかな……。何か音がしたような」
涼風紗雪 : 部屋に砂浜の方が見える窓があるなら、そこから外を覗いてみたいけどあるかな?
GM : では、寝ている部員たちをまたいで窓際まで歩いていく。 そして、砂浜に目を凝らすと、確かに人影があるように見える。 しかし、ここからでは暗くてよく分からない。
涼風紗雪 : 「……誰かいる。こんな時間なのに」
涼風紗雪 : 「(ただの不審者か、考えすぎかもしれないけど……もしかしたら、レネゲイドに関係するものかもしれない。念のために確認しておいた方がいいか)」
涼風紗雪 : 鞄から取り出した青い薔薇の造花を懐にしまうと、上着を一枚羽織って旅館から出よう。砂浜の方へと向かいます。
GM : 足音を追って、外に出る。 一度は気になったからには、足音の主の正体を確かめるまで寝付けそうになかった。
GM : 砂浜に向かう道は街灯が壊れていて、一寸先も見えない暗さだった。
GM : 明かりの代わりになるスマホを旅館に忘れてきてしまい、いったん戻ろうかとも考えたが、それでも、足元にさえ気を付ければ歩くことはできた。 そのため、あなたは自分の感覚を信じて、このまま歩いていくことに決めた。
涼風紗雪 : 「暗いな……。まあ、進めないこともないけれど……」 ゆっくりと人影が見えた方角へと進む
GM : ──あなたが砂浜に着いた頃。 追っていた足音は、“ざくざく”という砂の音から“ざぶざぶ”という水の音に変わった。
GM : 夜の海は、夜の空をそのまま鏡写しにしたように真っ黒だった。 海と空の境界も曖昧になるほど、深い深い黒だった。
GM : 海から聞こえてくる音を足掛かりに、夜闇に隠されている足音の主を探す。
GM : すると、月明かりを浴びている1つの人影を、すぐに見つけることができた。
犬養一夏 : 「…………」
GM : ──その人影の正体は、犬養一夏だった。
GM : しかし、いつもの一夏とは様子が違った。 ぽつねんと浮かぶ満月をぼんやりと仰ぎながら、ゆっくりと沖合に向かって歩いている。
GM : ……その後ろ姿には、このまま海に融けていって、二度と帰ってこないような儚さがあった。
涼風紗雪 : 「……え。一夏ちゃん」
涼風紗雪 : 「……!一夏ちゃん!ちょっと待って!!」
涼風紗雪 : 意外な人影の正体に驚き一度立ち止まるが、慌てて大声で名前を呼ぶ。
犬養一夏 : 「えっ、せんぱ……っ!?」
GM : 一夏があなたの声に驚いて、振り向いたその瞬間。
GM : 一夏は暗い海に足を取られて、思いっきり転んでしまった。
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん……!大丈夫!?」 足下が濡れるのも構わず、そちらへと走り出す
犬養一夏 : 「ぷはぁ……ちょっと海水のんじゃいましたけど、大丈夫です~……」
GM : 膝まで浸かる深さだったので、一夏の全身は濡れに濡れてしまっている。
GM : あなたは一夏の傍に駆け寄ると、仄かな月明かりに照らされて下着が透けてしまっている姿が丸見えになってしまったことに気付く。
涼風紗雪 : 「あぁ……こんなになって。一夏ちゃん、ほら立って」 透けた下着は見ないようにしながら手を差し出す
犬養一夏 : 「……あっ、ありがとうございますっ」
GM : あなたが視線を逸らしたのが分かったのか、一夏は恥ずかしそうに胸元を隠しながら、差し出された手を取った。
涼風紗雪 : 「ん……」 手を引っ張って一夏ちゃんを立たせて
涼風紗雪 : 「……これ着て。僕ので悪いけど」 上着を脱いで、一夏ちゃんの肩に羽織らせよう
犬養一夏 : 「は、はい」
GM : 一夏は髪まで濡らしてしまっていた。 すぐにシャワーを浴びるなりした方がいいだろう。
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん、旅館に戻ろう。このままじゃ風邪引いちゃうよ」
涼風紗雪 : 聞きたいことはあるが今優先すべきことではないと思い、再び手を取って砂浜へと向かう。
GM : 一夏はあなたの手をぎゅっと握って、砂浜まで着いていった。
GM : しかし、砂浜に着いた途端、ぎゅっと握っていた手の力を緩めてこういった。
犬養一夏 : 「……何も、聞かないんですか?」
涼風紗雪 : 「……そうだね。聞きたいことはあるけれど……」
涼風紗雪 : 「今は早くシャワーを浴びて、冷えた体を温めて欲しいからさ」
涼風紗雪 : だから僕が聞きたいことは後にするよ、と優しく微笑みながら手を握る。
犬養一夏 : 「……そう、ですか」
涼風紗雪 : 「うん。じゃあ、行こう」 手を引っ張って歩き出す
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「あの、せんぱい」
涼風紗雪 : 「ん、どうしたの?」
犬養一夏 : 「あたし、話してもいいですよ、せんぱいになら……」
犬養一夏 : 「別に大したことじゃないんです。 他人と一緒に寝るのがニガテで上手く寝付けなくて、1人になりたくて海に来ただけですから……」
犬養一夏 : 「まさか、せんぱいにみつかっちゃうとは思いませんでしたけど……」
涼風紗雪 : 「……本当にそうなの?だったら、悪いことをしちゃったかもしれないな……」
涼風紗雪 : 「……だけど僕には、君があのまま海の底に消えていってしまうように見えたんだよ」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「それは、きっと、単なる気のせいですよ」
GM : 一夏は俯きながらも口元には小さく笑みを浮かべていた。
GM : 濡れた一夏が俯きながら笑った瞬間、あなたはようやく“入学式で抱いた既視感”の正体に気付いた。
GM : 何故、“信じられない”と言いたげな視線を向けられたのか。
GM : 何故、一夏はあなたのことを知っている様子だったのに、あなたは一夏のことを知らなかったのか。
GM : その答えは、すべて“いつかの記憶”に繋がっていたのだと。
──────────────────────────────
GM : 3年前。 8月5日。 天気は快晴。
GM : 雲ひとつなく晴れ渡る青空に、セミの鳴き声が木霊する。 これ以上ない夏の朝だった。
GM : 今年の夏は湿度が低いらしく、例年と比べるとカラッとした気持ちのいい暑さだった。
GM : ──今年で中学2年生になるあなたは、家族と幼馴染が暮らす東京都のY市を離れて、神奈川県の都市部に位置する御嬢様学校に通っていた。
GM : 今日で夏休みがはじまってから約1週間が経つ。 しかし、あなたは普段通りの時間に学校に通っていた。
GM : 期末テストで成績が悪かった一部の生徒たちは、夏休み期間でも補習を受けるために学校に通っているが、あなたの場合はそうではなかった。
GM : あなたが学校に通っているのは部活動のためだ。 この学校の運動部に所属している生徒たちにとっては、休暇を部活動に費やすのは当然……。
GM : あなたの夏休みはあってないようなものだった。 けれど、テニス部で身体を動かすことは好きだったし、それが苦だというわけでもなかった。
GM : したがって、あなたは今日も今日とて学校に向かっていた。 その道の途中。
GM : ──ひとりの少女が捨てられた子犬のように道脇でひっそりと蹲っていた。 ……澄んだ青空の下、何故かびしょ濡れで。
GM : 濡れた前髪が張りついて顔を隠している白銀のロングヘア。
GM : 濡れて下着が透けていて直視に堪えない半袖のセーラー服。
GM : ──少しどころではなく暗晦な印象を抱かせる、この少女。
GM : 着ている制服のデザインを見たところ、おそらくは近くにある公立中学校の生徒なのだろう。
GM : しかし、温室育ちのあなたには、この晴れた日に濡れネズミになって蹲っている意味がまったくもってわからなかった。
涼風紗雪 : 放っておくわけにもいかないと感じ、少女の傍へと歩いて行って、
涼風紗雪 : 「君、どうしたの?大丈夫かい?」 膝を畳んで屈み、少女を覗き込むようにして声をかける
見知らぬ少女 : 「…………」
GM : あなたがその少女に声をかけると、まだ水が滴っている前髪の隙間から……血めいた真っ赤な瞳がジロリと覗き返した。
涼風紗雪 : 「こんにちは」 優しく微笑みかけながら、その目を見つめ返す
見知らぬ少女 : 「……話したくないって伝わらなかった?」
見知らぬ少女 : 「……いいから、ぼくを放っておいてよ」
GM : 弱弱しい鳴き声のような少女の声が返ってくる。
涼風紗雪 : 「ごめんね。でも、そんなびしょ濡れで、一人で蹲ってる女の子を放っておくわけにもいかないよ」
見知らぬ少女 : 「意味わかんない……」
見知らぬ少女 : 「ああ、わかった……。 恩を売って何かさせようって魂胆でしょ……」
見知らぬ少女 : 「ぼくは騙されないから」
涼風紗雪 : 「見返りに何かさせようなんて考えてないよ。そんなの王子様らしくないじゃないか」
見知らぬ少女 : 「王子らしい……? はっ、何を言ってるの、バカバカしい……」
GM : 少女はあなたの真っ直ぐな目を見つめ返すことができなくなって、目を逸らしながら苦笑した。
涼風紗雪 : 「あはは、よく言われるよ」
涼風紗雪 : 特に気にした様子も無く笑うと、手に持っていたバッグを開ける。
涼風紗雪 : そして大きめのスポーツタオルを取り出すと、少女が目を逸らしている隙にその肩にタオルを優しく羽織らせよう。
見知らぬ少女 : 「えっ……」
見知らぬ少女 : 「こ、今度は何のつもり……?」
GM : 少女はスポーツタオルを振り払う訳でもなく、ただその行動に驚いて、疑心暗鬼に揺れる瞳であなたのことを見上げた。
涼風紗雪 : 「君が一人にして欲しいなら、もうこれ以上は構わない。すぐにここから立ち去るよ」
涼風紗雪 : 「だけど、僕は君を放っておきたくないから、これくらいのお節介はさせてほしいな」
見知らぬ少女 : 「……変わってる」
涼風紗雪 : 「それもよく言われるよ」 立ち上がる
見知らぬ少女 : 「…………」
GM : 少女は受け取ったスポーツタオルを不思議そうに見つめていた。
涼風紗雪 : 「それじゃ、通りすがりの変な王子様はそろそろ行くよ」
涼風紗雪 : 「風邪、引かないように気を付けてね」 少し心配そうに微笑んでから、少女に背を向けて歩き出す
見知らぬ少女 : 「待……」
GM : 少女は思わずあなたの手を掴んで引き留めた。
涼風紗雪 : 「おっと……。どうしたんだい?」 立ち止まって振り返る
見知らぬ少女 : 「あっ、えっと……」
GM : ふいに濡れている手で掴んでしまったことで、バツが悪そうに、
見知らぬ少女 : 「ありが、とう……言っておこうと、思って……」
GM : 少女は俯きながらも口元には小さく笑みを浮かべていた。
涼風紗雪 : 「……!うん、どういたしまして!」 嬉しそうに笑顔を咲かせる
見知らぬ少女 : 「それと、疑ってごめんなさい……」
涼風紗雪 : 「ううん、いいよ。知らない人に声をかけられて、警戒するなって言う方が難しいもんね」
見知らぬ少女 : 「…………」
涼風紗雪 : 「……やっぱり、もうちょっと一緒にいようか?」 掴んだままの手を見下ろして
見知らぬ少女 : 「でも、いいの……? あなたにも用があるんじゃ……」
涼風紗雪 : 「あ。そうだった、部活のことすっかり忘れてたよ」
見知らぬ少女 : 「やっぱり……」
涼風紗雪 : 「……ま、いいかな?少しくらい遅刻しても」
涼風紗雪 : 「後で僕がちょっと怒られるだけだしね」
見知らぬ少女 : 「それはよくないと思う……」
GM : 少女は可笑しそうにクスクスと笑った。
涼風紗雪 : 「ふふっ……やっぱりそうだよね」
涼風紗雪 : 「でも今の僕は部活のことより、君のことの方が心配になっちゃってるんだよね」
見知らぬ少女 : 「その気持ちはうれしい、けど……」
見知らぬ少女 : 「ぼくとは、一緒にいない方がいいよ」
涼風紗雪 : 「どうしてそう思うんだい?」
見知らぬ少女 : 「それは…………」
GM : 少女は口を噤んでしまい、その先の答えは出てこなかった。
涼風紗雪 : 「……あっ、そうだ。君の名前は?何て言うの?」 言いたくないことなのだと察し、話題を変える
見知らぬ少女 : 「………………」
GM : どうしてなのか、少女はそんなにカンタンな質問にも口を噤んでいた。
涼風紗雪 : 「……じゃあ、勝手にお姫様って呼ぼうかな」 冗談っぽく笑って
見知らぬ少女 : 「……それは、恥ずかしいからやめてっ」
涼風紗雪 : 「まだちゃんと名乗ってない王子様とお姫様でちょうどいいかなと思ったけど、お気に召さなかったかな」
涼風紗雪 : 「でも恥ずかしいなら仕方ないね、別の呼び方を考えるよ」
見知らぬ少女 : 「要らないと思う……。 もう二度と会うこともないだろうから……」
GM : 少女は俯いて、スポーツタオルをぎゅっと握りしめた。
涼風紗雪 : 「それはどうかな?また会うこともあると思うけれど……」
涼風紗雪 :
「いや、次に会うことよりも、まずは今だよね。何か着替えとか用意した方がいいかな……」
もうすでにお節介を焼くと決めたのか、ここからどうするべきかと考えを巡らせている
見知らぬ少女 : 「いいよ、このままで」
見知らぬ少女 : 「それより、このタオルはどうすればいい?」
涼風紗雪 : 「濡れた体を拭くのに使ってほしいな。その後は、別に捨てても……」
涼風紗雪 : 「……いや、次に会えた時に返してもらおうかな?」
見知らぬ少女 : 「次に会えた時……」
見知らぬ少女 : 「うん……、約束ね?」
涼風紗雪 : 「……!うん、約束だ」 嬉しそうに頷く
GM : 少女もその返答にうれしそうに頷いて、タオルを抱き締めた。
見知らぬ少女 : 「……あなたみたいな人が、せんぱいにいてくれたらよかったのにな」
GM : 少女はそう呟くと、身に着けていた安物の腕時計に目を落とした。
見知らぬ少女 : 「あっ、ごめんなさい。 もうこんな時間……。 ぼく、行かないと……」
涼風紗雪 : 「君もこれから行くところがあったんだね。それなら流石に……引き留めるわけにもいかないか」
涼風紗雪 : 「謝らなくていいよ。気を付けて行っておいで」
見知らぬ少女 : 「……さようなら」
GM : 少女は名残惜しそうに小さく手を振ると、ゆっくりとぼとぼと歩いてその場を後にした。 ……その後ろ姿には、物寂しいような儚さがあった。
涼風紗雪 : 「うん。……また会おうね」
涼風紗雪 : 再会を約束する別れの言葉を告げて、少女が見えなくなるまでその場で見送る。
涼風紗雪 : 「……僕も行かないとな。少し急げばまだ間に合うかもしれないし」
涼風紗雪 : 少女のことは依然として心配だったが、きっとまたどこかで会えると信じて、少女が向かった道とは反対の方角へと走り出した。
GM : 結局、その少女との再会は二度と叶うことはなかった。
GM : ──2人の出会いから3年が経つまでは。
──────────────────────────────
GM : ……あなたはすべてを思い出した。
GM : いいや、一夏が今までずっと隠していた“正体”に気付いたという方が正しいだろう。
GM : 同時に、これまでに抱いていた疑問の答えが明らかになった。
GM : 一夏があなたのことを知っていたのは、あなたたちは一度だけ出会ったことがあったからだ。
GM : そして、あなたが一夏のことを知らなかったのは、正しくは一夏のことを“知らなかった”のではなく“気付けなかった”のだ。
GM : 様変わりしている一夏にあなたは気付けなかった。 しかし、あなたが気付けなかったのは無理もない。
GM : 髪型、髪色、瞳の色、一人称、喋り方……まるっきり別人になったと言えるくらい、すべてが3年前とは変わっていたのだから。
GM : しかし、時を同じくして、新たな疑問も生まれていた。 ……なぜ、一夏はそんなことをしていたのだろうか?
涼風紗雪 : 「あ……!!」 目を大きく見開き、声を漏らす
犬養一夏 : 「……どうしました?」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん、君……!君だったのか!?」 一夏ちゃんに顔を近づける
犬養一夏 : 「え、えっ!? 何がですっ……!?」
GM : いきなりあなたの顔が近付いたことで、一夏は仄かな月明かりでも分かるくらい赤面していた。
涼風紗雪 : 「ほら……!あの、あれだよ……!」 正体に気付いたことで動揺しているのか、少し焦りながら
涼風紗雪 : 「君、あの時の仔犬ちゃんだったのか……!!」
犬養一夏 : 「こ、仔犬ちゃん……? な、なんのことだか……」
涼風紗雪 : 「……あぁ、そうだった、お姫様が恥ずかしいって言ってたから、じゃあ何となく仔犬っぽいかなーって思ってただけで……」
涼風紗雪 : 「いやそうじゃなくて。思い出したんだよ!僕達、三年前に会ってたよね!?」
犬養一夏 : 「ああ……気付いちゃっ、たんですね……」
GM : 一夏は俯きながらも口元には小さく笑みを浮かべていた。
涼風紗雪 : 「うん……。今、濡れている君の姿があの時の女の子と被って見えたからなのかな……ようやく気付いたよ」
涼風紗雪 : 「とても驚いたよ……凄く成長してるし、髪の色とかも違うからさ……」
犬養一夏 : 「あはは~……、あの頃の面影が残らないようにイメチェンしましたからね~……」
涼風紗雪 : 「どうしてそんなイメチェン……いや、三年も経てば変えててもおかしくないのかな」
涼風紗雪 : 「見た目はともかく、一夏ちゃんは……やっぱり最初から覚えてたし、気付いてたんだよね」
犬養一夏 : 「はい……。 もう会えないと思ってたので、すごく驚きました……」
犬養一夏 : 「なにしろ、あたしとせんぱいが初めて会ったのは神奈川……。 まさか、東京で先輩後輩の関係になるなんて、思いもしませんでしたよ……」
涼風紗雪 : 「そうだね……それは驚く……。実際、あの入学式で再開した時も本当に驚いてた様子だった……」
涼風紗雪 : 「……気付けなくてごめん、一夏ちゃん。君はちゃんと、覚えているかって訊いてくれていたのに」 申し訳なさそうに目を逸らす
犬養一夏 : 「いえ、いいんです。 あたし、むしろ嬉しかったくらいですから」
涼風紗雪 : 「嬉しい?それはどうして?」
犬養一夏 : 「あの頃のあたしは、あることないこと言いふらされてイジメられてて暗かったですし……、いわゆる黒歴史なので知らないに越したことはなかったというか……」
涼風紗雪 : 「そうだったのか……。じゃあ、今更気付いてしまうのは悪かったかな……」 少し困ったように
犬養一夏 : 「仕方ないので許すことにしますっ!」
GM : 一夏は冗談めかして笑ってみせた。
涼風紗雪 : 「ふふ……ありがとう」
涼風紗雪 : 「だけど、あの頃と比べて元気になったみたいで本当に安心したよ」
犬養一夏 : 「……それはよかったです!」
涼風紗雪 : 「うんっ。それに、あの時言ってた君の先輩にもこうしてなれたし……」
涼風紗雪 : 「……っと、そうだ。ごめん、こうして話してしまってたけど、一夏ちゃん大丈夫?寒いよね……!?」 まだ濡れっぱなしなことに気付く
犬養一夏 : 「いえ、ちょうどいいくらいですよ…? 元々、涼みに来てたわけですし~…?」
犬養一夏 : 「まあ、ちょっと寒いかもですけど…」
涼風紗雪 : 「それはちょうどいいとは言わないよ!とにかく、旅館に戻ろう?」
犬養一夏 : 「う~ん……」
涼風紗雪 : 「……?もしかして、まだここにいたい?」
犬養一夏 : 「えへへ……実は……」
涼風紗雪 : 「困ったな……。うぅん……」 一夏ちゃんの体調を心配して
涼風紗雪 : 「……じゃあ、僕も一緒にいても構わないかな?」
犬養一夏 : 「でも、いいんですか……?」
犬養一夏 : 「ほら、せんぱいも濡れちゃってますし……」
涼風紗雪 : 「僕は平気だよ。そこまで寒くはないからさ」
涼風紗雪 : 「それに、びしょ濡れの女の子を一人のまま放っておけないからね」
犬養一夏 : 「また“放っておけない”ですか~?」
GM : 一夏は出会いを懐かしみながら、からかうように笑った。
涼風紗雪 : 「そう。僕は通りすがりの、変な王子様だからね。お節介焼きなんだ」
涼風紗雪 : 三年前に言ったことを思い出して小さく笑う。
犬養一夏 : 「………………」
GM : 一夏は俯いて黙り込んだ後、あなたに向き直ると、意を決したように切り出した。
犬養一夏 : 「……ねえ、せんぱい?」
涼風紗雪 : 「ん?なんだい?」
犬養一夏 : 「ひとつ、おねがいがあるんです。 聞いてもらえますか?」
涼風紗雪 : 「いいよ。どんなお願いかな?」
犬養一夏 : 「……あんまり、あたしに“期待”させないでほしいんです」
涼風紗雪 : 「……?えっと……何の期待かな?」
犬養一夏 : 「“せんぱいなら優しくしてくれるハズ”だとか、そういう期待です」
犬養一夏 : 「カンタンに言えば、せんぱいの側から、あたしとの距離を置いてほしいんです」
涼風紗雪 : 「それは……つまり……どういうことなんだろう……?」 混乱したように瞳が揺らぐ
涼風紗雪 : 「君に優しくするのは、迷惑だったのかな?」
犬養一夏 : 「はい、すごく」
犬養一夏 : 「……本当のあたしは、せんぱいが思ってるような女の子じゃないんですよ」
犬養一夏 : 「……聞こえのいい言葉や約束なんて、その場のノリで口にしているだけだし、他人に期待しても裏切られるに決まってる。 ……だから、他人には期待しないのが賢い生き方」
犬養一夏 : 「あたしは、そう信じて生きてきました」
犬養一夏 : 「なのに、せんぱいには心のどこかで期待してしまっていて……、その期待をどうしても捨てられなくて……」
犬養一夏 : 「怖いんです……。 いつか裏切られる日が来るのが……」
犬養一夏 : 「なので、せんぱいとは距離を置きたいんです……おねがいします……」
GM : 一夏は微かに震えている自分の肩を抱いて、今にも泣き出しそうになりながら告白した。
涼風紗雪 : 「……他人に期待しない方が楽、か。確かに、分からなくはないかもしれない」
涼風紗雪 : 「でも……ごめん、一夏ちゃん。そのお願いは叶えられない」
犬養一夏 : 「なんで……? 別に難しいことを言ってる訳じゃないでしょ……?」
犬養一夏 : 「せんぱいは、3年前に一度だけ会ったこと以外に縁のない後輩マネージャーと距離を置くだけでいいんですよ……!?」
涼風紗雪 : 「いや、とても難しいよ。僕にとってもう一夏ちゃんは、3年前に一度だけ会ったこと以外に縁のない後輩マネージャー、とだけ言える存在じゃないんだ」
涼風紗雪 : 「この4ヵ月間、まだ短い間かもしれないけどさ。一緒の部にいる後輩で、家に遊びに行ったり、誕生日を祝ったりした、友達だと思っているから……」
涼風紗雪 : 「今更、距離を置いたりなんて出来ないよ。僕は君と、これからも仲良くしたいんだ」
犬養一夏 : 「せんぱい……ズルいですよ……」
涼風紗雪 : 「そうかな?僕にとっては当たり前の気持ちを言っただけだよ」
犬養一夏 : 「そんなことを言われたら、困っちゃいます……」
犬養一夏 : 「あんまり人の心をかきみださないでください……おねがいですから……」
犬養一夏 : 「自分の気持ちを我慢して生きていくって、決めたんですから……」
涼風紗雪 : 「(自分の気持ち……?)」
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃんは、僕のことが本当は嫌いというわけでは……ないんだよね?」
犬養一夏 : 「…………」
涼風紗雪 : 「もし嫌いだって言うなら、僕は言われた通り距離を置くよ」
涼風紗雪 : 「でもそうじゃないなら、やっぱりこれからも僕と仲良くしてほしいし……」
涼風紗雪 : 「僕は君を絶対に裏切ったりしないって、約束するから」
犬養一夏 : 「……あたし、は、せんぱいの、ことが、」
犬養一夏 : 「………………」
犬養一夏 : 「………………………………き、」
犬養一夏 : 「……………………………………………………………………………………す、き、ですっ」
GM : 一夏は俯きながら、ズボンの裾をぎゅっと握り込んだ。 そして、弱弱しい鳴き声のような声で、ぽつりぽつりと雫のように呟いた。
犬養一夏 : 「…………ああっ、もうっ!! 本当にせんぱいってズルいですっ!!」
犬養一夏 : 「……きらいなんて、言える訳ないですよっ!」
犬養一夏 : 「すきですよ、すきっ! せんぱいのことがすきですっ! この際、言ってやりますよっ!!」
GM : 先ほどの様子とは一転。 一夏は自棄になったのか、ほぼ半泣きになりながら、堰をきったように早口で告白した。
犬養一夏 : 「あっ、でも、その、ちが、告白とかではなくっ!」
犬養一夏 : 「せんぱいとして、せんぱいがすきでっ…………」
犬養一夏 : 「ああああああ、何を言ってるの、ぼくはっ……!?!?!?!?!?」
GM : 一息ついた途端、一夏は我に返ったようだった。 ……ぶんぶんと手を振って訂正するが、時すでに遅し。
GM : ギリギリで“告白ではない”と誤魔化すことはできたが、それでも後悔を叫ぶしかない状態に陥っていた。
涼風紗雪 : 「お、落ち着いて……!ちゃんと分かってるからさ……!!」
犬養一夏 : 「うう…………」
GM : 一夏はすっかり真っ赤になった顔を両手で覆った。
涼風紗雪 : 「その、さ。君にとっては、絶対裏切らないって約束も、聞こえが良くてその場のノリで言ってるだけに聞こえるかもしれないけど……」
涼風紗雪 : 「君が裏切られることが怖いから距離を置きたいっていうなら、僕は君とこれからも一緒にいるために絶対に裏切らないようにしようって、真剣に考えて決めたんだ」
涼風紗雪 : 「そんな……照れちゃうくらい、僕のことが好きならさ」
涼風紗雪 : 「僕のこと、信じて欲しい。……出来るかな?」
涼風紗雪 : 顔を真っ赤にしてる一夏ちゃんを見て、こちらも少しだけ照れたように微笑む。
犬養一夏 : 「で、できないですよ……人の気持ちも知らないで……」
犬養一夏 : 「信じれば信じるほど、裏切られた時のショックは大きくなるんです」
犬養一夏 : 「……それに、この世に裏切らない人間なんていないんですから、せんぱいだけが特別なんて、手放しでは信じられないです」
涼風紗雪 : 「そうか……。じゃあ、どうすれば信じられるようになれるかな?」
犬養一夏 : 「あたしに聞かれても、わかんないですよ……。 だから、あたしは期待したくないって……」
涼風紗雪 : 「分からないならさ、もう少しゆっくり探してもいいんじゃないかな」
涼風紗雪 : 「僕達、まだ出会って4ヵ月しか経ってないじゃないか。期待したくないとか、信じられないとか、判断するにはまだ早すぎると思うよ」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「わかり、ました」
犬養一夏 : 「ひとまず、せんぱいに期待しても、いいんですね……?」
涼風紗雪 : 「ひとまずでもいいなら、僕はそうして欲しいと思ってる。これからゆっくり、僕のことを見て行けばいいからさ」
犬養一夏 : 「ん……、それじゃあ、まずは“期待させないでほしい”っておねがいの代わりに、別のおねがいを聞いてもらう形で信じさせてもらっていいですか……?」
涼風紗雪 : 「分かった。何かな?」
犬養一夏 : 「……その」
犬養一夏 : 「……子供っぽいと思われるかもしれないんですけど、せんぱいと一緒に海遊びしたくて」
涼風紗雪 : 「海遊び?子供っぽいだなんて思わないけれど、もしかして今からかい?」
犬養一夏 : 「は、はい……。 どうせ服も濡れちゃいましたし、このまま遊びたいなって……」
犬養一夏 : 「あっ、ダ、ダメですよねっ! こんなワガママ言っちゃって!! 明日も朝早いし、きっと眠いですよねっ!! 期待したくないなんて言ってたのに、期待していいって言われた途端に甘えすぎですしっ!!」
犬養一夏 : 「さっきのは忘れてください、一時の気の迷いというやつで~……」
涼風紗雪 : 「……うん、そうだね」
涼風紗雪 : そう頷きながらサンダルを脱ぐと、波打ち際から海の中へと入っていく。
犬養一夏 : 「せ、せんぱい……?」
涼風紗雪 : 「確かにもう朝は早いし、少し眠たくなってきた……。だけど、そんなの関係無いよ」
涼風紗雪 : 「おいで、一夏ちゃん。僕と一緒に遊ぼう」
涼風紗雪 : ぱしゃっと片手で掬いあげた海水を宙に舞わせて、その手を一夏ちゃんに差し出しながら楽しそうに笑いかける。
犬養一夏 : 「は、はいっ!!」
GM : 一夏は満面の笑みを浮かべて、差し出された手をおずおずと握った。
涼風紗雪 : 「(……一夏ちゃん。僕は君を裏切らない)」
涼風紗雪 : 「(君はもう僕にとって大切な友達だから、軽い気持ちで言ったわけじゃない。この約束は絶対に嘘にはしないつもりだ)」
涼風紗雪 : 「(……だけど、もし僕が人間じゃない……オーヴァードだと知ったら、君は裏切られたと感じてしまうかもしれないね)」
涼風紗雪 : 「(オーヴァードであることを今すぐに明かすつもりはないし、人間とオーヴァードが共存出来る世界になるまで、伝えてはいけないと思っている)」
涼風紗雪 : 「(でも、長く付き合っていくなら、いつか僕の正体を知ってしまう可能性はゼロじゃない……)」
涼風紗雪 : 「(その時どうすればいいのか、僕にはまだ分からないけど。だけどそうなったとしても、君とはずっと仲良くしていきたいから……)」
涼風紗雪 : 「(君を裏切らないで済む道を、頑張って探し続けるよ。君が僕をちゃんと信じられるように……)」
涼風紗雪 : 一夏ちゃんと海で遊びながら、心の奥底でそう静かに決意する。
涼風紗雪 : 一夏ちゃんのロイスの感情を〇好奇心/無関心から、〇友情/不安に変更します
GM : りょうかいしました! さすがにこんなイベントあったら不安にもなる…( ˘ω˘ )
GM : ──あなたたちは、静かに波打っている暗い海に足を踏み入れた。 ……そんなふたりを、微かな月明かりがいつまでも照らしていた。
GM : せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : 1d10+70(1D10+70) > 8[8]+70 > 78
GM : 侵蝕率高ノルマ達成
涼風紗雪 : なんでこいつこんなに高いんだろうね…!
GM : 本格的にバックトラックが不安になってきましたよ!
涼風紗雪 : この後の登場侵食全部1出すから見てて…
GM : がんばれ…。 がんばれ…。
GM : では、気を取りなおして、部活が終わった後の帰り道からはじめていきます!
GM : 9月21日。 天気は曇り。
GM : 夏休みが明けてから暫く経って、久しぶりの授業にも慣れてきた頃。
GM : 夏の風物詩であるセミの鳴き声はもう聞こえなくなってしまったが、その残滓は暑さとして残っていた。
GM : ──部活終わりの帰り道。
GM : あなたと一夏は、寄り添う影を引き連れて、いつのまにか少し早巻きになった夕暮れの中を歩いていた。
GM : そして、分かれ道に差し掛かったところで、ふたりは歩みをとめた。
犬養一夏 : 「ではまた!」
涼風紗雪 : 「うん。それじゃあまた明日ね、一夏ちゃん」
GM : 一夏は微笑みを浮かべて、小さく手を振ると小走りで去っていった。 今日もアルバイトがあるのだろう。
GM : ──夏合宿以降、一夏は決まりが悪そうにして、あなたと少し距離を開けるようになっていた。
GM : ……本音を明かしてしまった上、勢いあまって愛の告白めいたことをしてしまったためだろう。
GM : しかし、9月に入る頃には、いつもの明るい後輩としての顔をすっかり取り戻したようだった。 ……むしろ、結果的には、夏合宿前よりも距離がグッと縮まった気さえする。
涼風紗雪 : こちらも手を振り返してから、自分の家の方角へと歩き出していく。
涼風紗雪 : やがて、この辺りの住宅街のどこよりも立派な家に辿り着くと、門を開ける。
涼風紗雪 : 「ただいま」
涼風紗雪 : 玄関から帰宅し、出迎えてくれた家のお手伝いさんにそう笑顔を向ける。
涼風紗雪 : 手洗いを済ませ、階段を上って二階へ。
涼風紗雪 : 向かったのは自分の部屋だ。一人で使うには広々としすぎており、天蓋付きのベッドが置かれているようなどこかの国のお姫様のような部屋だったが、紗雪にとってはこれが全くの普通だった。
涼風紗雪 : 「(今日は……やっぱり、特に任務は無さそうだな)」
涼風紗雪 : UGNとの連絡に使用している携帯電話を確認する。
涼風紗雪 : 出動要請があれば準備を整えてすぐに出発するところだったが、今日はその必要はなさそうだった。
涼風紗雪 : 「どうしようかな……先に宿題してもいいけど……」
涼風紗雪 : 先月よりは涼しくなったが、それでもまだ暑さは残っている。部活終わりにシャワーを浴びたにも関わらず、また下着まで汗で濡れてしまっていた。
涼風紗雪 : 「やっぱり気持ち悪いな。お風呂入っちゃおう」
涼風紗雪 : そう決めて、寝巻を用意してバスルームへと向かう。
涼風紗雪 : 涼風邸は大体どこもかしこも広い。昔遊びに来た春香からは「でかすぎる」とよく突っ込まれていた。
涼風紗雪 : 脱衣所で汗ばんだ服を脱ぎ捨てた紗雪は、「温泉じゃない?これ」と言われたバスルームの扉を開ける。
涼風紗雪 : シャワーを浴び、体を洗ってから、綺麗な薔薇の花弁が浮いた湯舟に足から浸かっていった。
涼風紗雪 : 「はぁ……」
涼風紗雪 : 温かいお湯に肩まで浸かると、思わず息が漏れる。オーヴァードで人よりも体力があると言えど、部活動で体は少し疲れていたらしい。
涼風紗雪 : 紗雪は瞳を閉じると、足を伸ばして体をリラックスさせながらゆっくりと入浴を楽しんでいく。
GM : そうしてあなたが湯舟に浸かって、癒されていると
GM : ──どこからか射抜くようなあつい視線を感じる。 ……すぐ近くで息遣いが聞こえるような気さえする。
涼風紗雪 : 「……!?」
涼風紗雪 : 息遣いが聴こえた瞬間、肩をビクッと震わせて目を開ける。
涼風紗雪 : 「……な、何だ?」
涼風紗雪 : 少し微睡んでいたため気のせいかもしれないと思いつつも、周囲を見回そう。
GM : ……辺りを見回すが、誰も見当たらない。 広いバスルームではあるが、それゆえに死角はないし、当然ながら、入ってくるときには誰もいないことを確認している。
GM : こんなことは、今日だけに限った話ではなかった。 はじめて気付いたのは9月に入った頃からだったか。 ……いや、思い返すと、5月にも同じことがあった気がする。
GM : 誰かの気配が付きまとってきている気がしていた。 ……家でも外でも、昼でも夜でも、関係なくずっと。
GM : しかし、巧みに隠れているからなのか、もしくは単に気のせいなのか、オーヴァードであるあなたをもってしても、その“誰か”を見つけることは今までできずにいた。
涼風紗雪 :
「……誰か、いるのか……!?いるなら隠れてないで出てこい……!!」
胸元を片腕で隠しながら湯船から立ち上がり、そこにいるかどうかも分からない何かに声を上げる
GM : あなたのあげた声は、広いバスルームに反響し、そして空しく消えていった。
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「(やっぱり……ここまでくるとただの気のせいなのかな……。でも……)」
涼風紗雪 : 不安だけが胸の中で膨らんでいく。
涼風紗雪 : 何の反応も無いし、姿も見えない。しかし今も気配が付きまとっているような気がして、体をタオルで隠しながら逃げるようにバスルームを出ていった。
涼風紗雪 : 脱衣所で手早く体を拭くと、白いロング丈のネグリジェに着替え、自室へと戻った。
涼風紗雪 : 「……本当に、何なんだろう」
涼風紗雪 : 鏡台の前で髪を乾かしながら、弱々しく呟く。
涼風紗雪 : お風呂に入って疲れは取れたはずなのに、全く癒された気分ではなくなってしまっていた。
GM : やがて、あなたの長い髪がようやく乾ききった頃。
GM : 不意にコンコン…と規則正しいノック音が響いた。
涼風紗雪 : 「……!」 ただのノックの音なのに肩を小さく跳ねさせる
涼風紗雪 : 「あっ……は、はーい。どうぞ」
涼風紗雪 : 慌てて扉の前に行き、鍵を開ける。
GM : あなたが自室の扉を開けると、すぐそこに、あなたと比べて頭ひとつ分ほど背の高い使用人が立っていた。
涼風紗雪 : 「どうしたの?」
使用人 : 「……大変申し訳ありません。 実は御嬢様の御召し物が行方不明になっているらしいのです」
涼風紗雪 : 「え?お召し物……って、えぇ?そうなの?」
GM : はい、と使用人は申し訳なさそうに頭を下げた。
使用人 : 「涼風家の使用人たちを総動員して探したのですが、どうしても見つけることができず……」
使用人 : 「御嬢様なら知っているかもしれないと思ったのですが、心当たりなどはないでしょうか?」
涼風紗雪 : 「どうだろう……。無くなったのって、何の服なんだい?学校のジャージとか?それならうっかり持ち帰り忘れたとかあるかもしれないけれど……」
使用人 : 「御嬢様が夏場に愛用されていたワンピースです」
涼風紗雪 : 「夏……って、あれのこと!?それなら最後に着てから、僕はずっと触ってないと思うけれど……!」
使用人 : 「はい、使用人たちも同様に今まで触っていないとのことなのですが、冬場に向けて衣類の整理をしていたところ、あのワンピースがなくなっているという報告を受けまして……」
涼風紗雪 : 「そうなんだ……」
涼風紗雪 : 「……いや、うん、見つからないなら仕方ないよ。もしかしたらどこか別の場所からひょっこり見つかるかもしれないしさ」
涼風紗雪 : 「まさか、そんな……服一着だけ持っていく泥棒とかいるわけないし。きっとこの家のどこかにはあるよ」
使用人 : 「…………」
使用人 : 「そうですね、わかりました」
使用人 : 「しかし、御嬢様が気に入っていた御召し物を失くしたとあっては、使用人としての沽券に関わります」
使用人 : 「このままワンピースの捜索は続けさせてください。 ……使用人の誰かの手による盗難という線も含めて」
涼風紗雪 : 「ん……分かったよ。でも、そんなに周りを疑い過ぎないでね」
涼風紗雪 : 「僕はそこまで気にしてないからさ……」
涼風紗雪 : そう気遣うが、謎の気配のことを思い出しているのか、その微笑は少しぎこちない
使用人 : 「…………」
使用人 : 「時に御嬢様」
使用人 : 「バスルームでなにか?」
涼風紗雪 : 「え?何かって、何のこと?」
使用人 : 「普段より入浴時間が短かったようですし、顔色も優れないようでしたから、なにかあったのではないかと思ったのですが」
涼風紗雪 : 「あー……」
涼風紗雪 : 「あはは、よく見てるね。……何だか今日はちょっと疲れてるみたいなんだ」
涼風紗雪 : 「それで、湯船に浸かってたらうっかり寝ちゃいそうかもと思って……早めに出てきちゃったんだよ」 目線を逸らしながら
使用人 : 「……そうですか」
使用人 : 「でしたら、御嬢様の宿題が終わる頃に、ハーブティーかホットミルク、そしてアロマキャンドルをお持ちしますね」
使用人 : 「ぐっすり眠れば、疲れも取れるハズですから」
GM : 使用人はあなたのウソに気付かないフリをして、ハーブティーとホットミルクはどちらをお持ちしましょう? と問いかけてきた。
涼風紗雪 : 「ありがとう……。じゃあ、ハーブティーで頼むよ」
使用人 : 「かしこまりました」
使用人 : 「では、夕食時には呼びに参ります。 この度は誠に申し訳ございませんでした」
GM : 使用人は恭しく礼をすると、キビキビと去っていった。
涼風紗雪 : 全然いいんだよ、とあまり気にし過ぎないように小さく微笑んでから扉を閉める。
涼風紗雪 : 「…………」 扉にもたれかかって
涼風紗雪 : 「……服が無くなったのも、ただの偶然だよ。自分でそんな泥棒なんていないって言っておきながら、何でこんな気にしてるんだよ、僕」
涼風紗雪 : 「……少し休もう。なんか……変なことばっかり考えちゃう……」
涼風紗雪 : ベッドへと向かうと、綺麗な白いシーツにぼふっと飛び込み、うつ伏せに寝転んだ。
GM : その日の夜は、使用人の献身のおかげか、ぐっすりと眠ることができた。
GM : ──しかし、それからというもの、“誰か”のストーカー行為は、日に日にエスカレートしていった。
GM : さきほどのような盗難被害に関しては、その頻度自体は多くなかった。 ……しかし、10月の半ば頃には、バスタオルから下着まで盗まれるほど悪化していたのだった。
GM : どれだけ心の広いあなたでも、ここまでの事態は流石に看過できない。
GM : だが、警察を頼るにしても“誰か”がオーヴァードだった場合は無意味……むしろ、最悪の事態になりかねない。
GM : UGNを頼りにするにしても“誰か”がオーヴァードでない場合は無意味……ではないが、個人的なストーカー対策のために、世界を守るUGNを付き合わせるのは憚られた。
GM : ……なので、まずは“誰か”の正体をつきとめてから、この事態の対処にあたるべきだろう、とあなたは考えた。
GM : そうして、あなたは動き出した。 すぐ近くに隠れている“誰か”を見つけだし、穏やかな日常を取り戻すために。
涼風紗雪 : ストーカーに執着/〇恐怖でロイスを取ります。以上で!
system : [ 涼風紗雪 ] ロイス : 4 → 5
GM : 恐怖ロイスを取られてる…💦💦
涼風紗雪 : 当り前よなぁ!?王子でも女の子やぞ!
GM : 暴力を振るったりした訳じゃないのに不思議ほにゅなぁ…
GM : せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : 1d10+78(1D10+78) > 6[6]+78 > 84
GM : 1は出ましたか……?
涼風紗雪 : 出たよ!!!6!?6ですねこれは…
GM : ではでは、侵蝕率はあいかわらずですが、気を取りなおしていきますよ!! ついに秋に入りまして、文化祭準備のシーンになります!!
GM : 10月31日。 天気は曇り。
GM : 10月の終わりにもなると、先月までの暑さは噓のようにどこかに去り、もうすっかり人肌恋しい寒さが訪れていた。
GM : ……だのに、暖房器具もない冷えきった空き教室に、あなたたち、2年A組の生徒は集まっていた。
GM : というのも、Y高校の文化祭まで残り7日。 2年A組の生徒たちは、その準備のために空き教室に集まっていたのだ。
GM : 短期間での準備にはなるが、学校側の計らいで午後の授業と部活は休止しているため、思ったよりは時間はあった。
GM : ──あなたのクラスの出し物は“コスプレ喫茶”だ。 主に幼馴染の春香が意見を通した結果だった。
GM : 当初は“女子は男装・男子は女装”の予定だったが、それは“恥ずかしいからムリ”という男子の反対意見で変更され、男女それぞれでテーマを相談して決めることになった。
GM : メニューに関しては、学校側から“コンロ等は使わないで”と言われたため、冷凍食品しか出せないと思われていた。
GM : しかし、クラスメイトの巻村くんが持っていたクレープメーカーの存在で、それはギリギリで避けられたのだった。
GM : そして、手作りクレープが看板メニューになった。 他には、市販の冷凍食品と清涼飲料水などもメニューに入れて、スイーツ系を中心に充実のラインナップを用意できた。
GM : 基本的には盛り付けだけでいいラインナップだが、クレープだけはクレープメーカーで焼かなければならないため、厨房担当は持ち主である巻村くんの指導を受けていた。 ……余談だが、クレープを作ることが異様に上手かった巻村くんは“クレープ巻き巻き巻村くん”として謎のクレープキャラにされて、ごく少数の生徒の尊敬を集めていた。
GM : ……一方その頃、ふたつめの看板を準備するため、あなたは、衣装の制作を担当している春香に呼びだされていた。 ふたつめの看板とは仮装したあなた自身のことなのだ。
狩野春香 : 「ぐ……これでもかと幼馴染のスタイルのよさを見せつけられている……」
GM : 衣装の採寸をするため、春香はあなたの身体にメジャーを押し当てていた。
涼風紗雪 : 「そんな、見せつけてるだなんて……。それに、別に普通だよ僕のスタイルなんて」 大人しく採寸されてる
狩野春香 : 「普通……? これで……?」
狩野春香 : 「ちょっと何言ってるか分からない」
涼風紗雪 : 「何もおかしなことは言って無いと思うんだけれど……」
狩野春香 : 「ぐっ……謙虚さは時に美徳ではないと知れっ……!」
GM : 春香は手にしていたメジャーを使って、あなたをぎゅっと締め付けた。
涼風紗雪 : 「んぐっ……ご、ごめん、そんな怒らなくても……!」
狩野春香 : 「謙遜は相手を傷つけることもあると分かったなら、許してしんぜよう……。 分からないなら、このまま文化祭当日まで縛っておいてくれるわ……」
涼風紗雪 : 「わ、分かった!もう十分分かったから!そんな酷いことしないでくれよ……!」
狩野春香 : 「……よろしいっ」
GM : 春香はメジャーを外すと、悪戯っぽく笑った。
涼風紗雪 : 「もー……」 笑い返す
狩野春香 : 「もうはこちらのセリフ……と、それはそうと、スズ」
涼風紗雪 : 「ん?なんだい?」
狩野春香 : 「物は相談なんだけど」
狩野春香 : 「折角のコスプレ喫茶なんだしさ、ごはんだけじゃなくて、プラスアルファの付加価値……つまりはサービスがあって然るべきだと思うんだよね、拙者は」
涼風紗雪 : 「うん……?サービスっていうと、どんなことをするんだい?コスプレ喫茶ってまだあまりよく分からなくてさ……」
狩野春香 : 「そこはまだ深く考えてないからこその相談なんだけど、そうだなぁ、例えば……」
狩野春香 : 「ウチの看板のクレープを使ったサービス、あ~んしてあげるとか……」
狩野春香 : 「いや、テキトーに言ったけど、これアリでは? 天才かもな私?」
涼風紗雪 : 「あ~ん……つまりお客さんに食べさせてあげるってことか……」 少しびっくりしたように顎に手を当てて
狩野春香 : 「うんうん、大人にすることを考えたら犯罪臭すごいけどね」
涼風紗雪 : 「犯罪って……。いや、でも良いんじゃないかな?恥ずかしがる子もいるかもしれないから、出来るって子だけになるかもしれないけれど」
狩野春香 : 「いやいや、逆じゃん! 恥ずかしがってる方が」
狩野春香 : 「……じゃなくて」
狩野春香 : 「そうだね、宣伝文句とかにはしないで、あくまでサプライズ的なカンジで、接客する人の自主性に委ねればいっか」
涼風紗雪 : 「……?うん、それが良いと思うよ」
涼風紗雪 : 「ちなみに春香はするの?食べさせてあげるサービス」
狩野春香 : 「えっ、私? いやいや、しないよ?」
狩野春香 : 「私は裏方の方が合ってるし、第一、私にあ~んされても嬉しくないでしょJK(常識的に考えて)」
涼風紗雪 : 「そうかな……。少なくとも僕は嬉しいと思うよ、春香にあーんってしてもらうの」 想像したのか楽しそうにクスッと笑って
狩野春香 : 「うえっ、な、なにわろてんねん!」
涼風紗雪 : 「ごめんごめん。想像したら楽しそうだなと思ってさ」
狩野春香 : 「う~ん、まあ、確かに? 私はスズと違ってコスプレすると浮くだろうし、ネタ的にたのしそうではあるよね~」
涼風紗雪 : 「いや、ネタじゃなくて純粋にそう思ったんだけどな……」
涼風紗雪 : 「ほら、そういうのって普通恋人同士でやりそうなことだけど、仲が良い子同士でやってもなんか悪くないかなって思ったんだよね」
涼風紗雪 : 「だから春香と出来たら楽しそうかなって気がしたんだけど……」 困ったように小さく笑って
狩野春香 : 「なるほど、そーゆーこと……」
涼風紗雪 : 「そういうことそういうこと!でもやりたくないならそれで良いんじゃないかな、さっきそう言ったばっかりだし」
狩野春香 : 「うん、まあ、裏方は裏方で忙しいし、知らない人にコスプレ見せるのは抵抗あるし……というか、黒歴史になりそうだからしないんだけど……」
狩野春香 : 「今度、機会があれば、個人的にあ~んしてあげようではないか……」
狩野春香 : 「……あ~、いや、でも、そんなにあ~んしてほしいって話でもなかったんだっけ」
狩野春香 : 「あはは! ……うわあ!なんかハズい! 忘れろ! 忘れろ! 忘れろビーム!!」
涼風紗雪 : 「え!?いや、そんな変なビームされても!?」
涼風紗雪 : 「……あ、そうか、春香だけにさせるのは恥ずかしいってことか……確かにそれもそうだ……」
涼風紗雪 : 「じゃあ今度喫茶店とか寄った時にでもしようよ、僕もしてあげるからさ!」
狩野春香 : 「え、ええ……? マジで言ってますぅ……? “あ~ん”自体が恥ずかしいのに、それを互いにしあうんですかぁ……?」
涼風紗雪 : 「えっ……元々春香から提案したことなのにそんなこと言うの……!?」
狩野春香 : 「いやあ、自分がするのは恥ずかしいから抵抗あるというか……」
狩野春香 : 「フツーの女子同士なら、“あ~ん”をしあうのも何の躊躇もないだろうけどぉ、私はそういうことしてこなかったんでぇ……」
涼風紗雪 : 「えぇ……。そ、そうか……」
涼風紗雪 : 「分かったよ。恥ずかしいならそんな無理にすることじゃないしね」
涼風紗雪 : 「(今度一緒に遊びに行ってご飯とか食べてる時にもう一回お願いしてみよう)」 幼馴染相手だから全く遠慮が無かった
狩野春香 : 「……なあ、スズさんや」
涼風紗雪 : 「ん、なんだい?」
狩野春香 : 「なんか今よからぬこと考えてなかった????」
涼風紗雪 : 「お……思ってない思ってない」 目を逸らしながら
狩野春香 : 「フフ……下手だなあスズくん、下手っぴさ……!!」
狩野春香 : 「嘘の付き方が下手……!!」
涼風紗雪 : 「え……う、嘘なんてついてないんだけどな……!?」
狩野春香 : 「ふーん……、それならいいんだけど」
狩野春香 : 「…………」
狩野春香 : 「まあ、何事も経験という言葉もあるし、ホントにスズがしたいって言うなら、してもいいよ“あ~ん”くらい……」
涼風紗雪 : 「……!本当!?うん、したいしたい!春香とあ~んしてみたい!」 ぱぁっと明るい笑顔になって
狩野春香 : 「そ、そんなにガツガツと“したい”って言ってするものじゃないでしょ、あ~んって……!?」
涼風紗雪 : 「そうなの?いや、なんかダメって言われるとますます気になっちゃうみたいなさ……とにかく、じゃあ約束だよ」
狩野春香 : 「うわあ、なんか約束してまで“あ~ん”しあうとか、逆にハズいな~……」
狩野春香 : 「っていうか、別に家族相手とかだったらなんでもないし、スズが相手なのがいけないと思うんだよな~……(小声)」
涼風紗雪 : 「……?え、僕が……何て言ったんだい?」 微妙に聞き取れなかった
狩野春香 : 「……別になんでもないって、約束ね」
GM : 幼馴染と他愛ない会話をしていても、あなたの心が完全に休まる時はない。
GM : ストーカーの存在に確信を持った後、捜索を始めてから1ヵ月が経った今も、一向にその尻尾を捉えることができずにいるのだから。
GM : 事ここに至っては、誰かの協力を得なければ進展はもう見込めないだろう。
GM : ……ここまで見つからないとなるとオーヴァードの犯行なのかもしれない。 ……UGNに相談することも検討をはじめた、その瞬間。
GM : あなたの背後から、ゆっくりと、だが確実に、誰かの影が迫ってきていた。
??? : 「こんにち……」
??? : 「わっ!!!!」
涼風紗雪 : 「きゃあっ!?」 肩をビクッと震えさせ、王子様キャラとはかけ離れたような悲鳴を出してしまう
GM : あなたが振り返ると、段ボール製の獣耳のカチューシャを付けて「がおー」と狼のようなポーズを取っている一夏がそこにはいた。
涼風紗雪 : 「……って、あ……い、一夏ちゃん!?」
犬養一夏 : 「どうもっ! あたしのクラスはおばけ屋敷なので、その予行練習にきた一夏ですっ!! まさかこんなに驚いてくれるとは思ってませんでしたけどっ」
涼風紗雪 : 「こ、こんにちは、一夏ちゃん……。そうか、おばけ屋敷の練習……。流石に背後から来られるとびっくりしちゃったよ……」
涼風紗雪 : 「(……ストーカーのせいで、何だか凄く駄目になっちゃってるな……)」
狩野春香 : 「くく、いいモン見させてもらったぜ……恥ずかしい思いをした甲斐があったってモンよ……」
涼風紗雪 : 「何がいいモン見させてもらっただよ、春香」 少しムッとして
狩野春香 : 「いや~、スズの悲鳴きいたの久しぶりだったからさ~」
狩野春香 : 「きゃあっ!? だって! スズったらか~わいっ!!」悲鳴のマネをしながら
涼風紗雪 : 「春香……!そ、そういう意地悪すると、僕でも怒るからね……!!」 恥ずかしそうに頬が少し赤くなる
狩野春香 : 「きゃあっ、ごめんなさ~い」にへらと笑いながら
涼風紗雪 : 「全く、もう……」
涼風紗雪 : 「あ……ごめん一夏ちゃん、騒いじゃって。その獣の耳、よく似合っているね」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「そうですかね~? でも、せんぱいに褒めてもらえるとうれしいですっ」
犬養一夏 : 「……そちらの方は、狩野春香さんですよね! はじめましてっ」
涼風紗雪 : 「うん、そうだよ。春香、この子は一年生の犬養一夏ちゃん。テニス部でマネージャーしてくれてるんだ」
狩野春香 : 「ああ、その子が例の~」
狩野春香 : 「……あれ? ……私、どこかで名乗ったっけ?」
涼風紗雪 : 「いや、名乗ってはないけれど……。あっ、そういえば前に春香の話をしたことあったから、覚えていたのかな……?」
涼風紗雪 : 「フルネームで言ったかどうかは……結構前のことだからちょっと覚えてないけれど」
犬養一夏 : 「せんぱいとは、もう長い付き合いですし~、せんぱいと仲のいい人のことは自然と耳に入ってくるんですよっ」
涼風紗雪 : 「そうなの?あはは、僕達仲が良いって一年生の方で噂になってるんだってさ」 嬉しそうに春香ちゃんを見る
狩野春香 : 「一年生の方で話題になってるなんて、なんだか照れますな~……、あっ、ヘンなウワサとか流れてないよね? 大丈夫だよね?」
犬養一夏 : 「それはもう大丈夫ですよ~! 優しい先輩として評判ですからっ」
狩野春香 : 「ほっ、よかった~~~~」
涼風紗雪 : 「変な噂って何だよ、もう。春香に変なとこなんかないんだから大丈夫だって」 楽し気に笑って
狩野春香 : 「えっ、それは…………、う~ん…………、幼馴染の信頼がしんどい!!!!!!!!」
涼風紗雪 : 「えぇ……!?そんなしんどくなるような話じゃなかったよね……!?」
狩野春香 : 「あ~~~~…………っと、それはともかく!!!!!!」
狩野春香 : 「採寸は終わったし! 仕事の方は素材が届くの待ってるみたいだし!! スズはしばらく休んでていいよ!!!!」
涼風紗雪 : 「そうなのかい?じゃあ、せっかく一夏ちゃんが遊びにきてくれたことだし、少し休ませてもらおうかな」
狩野春香 : 「そうしなさいそうしなさい……」
狩野春香 : 「それじゃ、ごゆっくり……」
GM : 春香は何か(黒歴史)の存在をごまかして、あなたたちをやんわりと遠ざけた。
涼風紗雪 : 「……?なんでなんかちょっと焦ってたんだろう」 遠ざけられ
犬養一夏 : 「いったいなんだったんでしょうね……?」
GM : そして、あなたたちは使われていない教壇の近くに腰を落ち着けることになった。
涼風紗雪 : 「春香はたまにあんな感じになる時あるからな……」 別に気にしなくていいか、と思い
涼風紗雪 : 「おばけ屋敷って言ってたけど、一夏ちゃんもおばけ役するんだね。さっきのがおーって感じからすると、狼男……狼女?なのかい?」
犬養一夏 : 「ですね~! 特に設定なんかはないので、ざっくり狼人間とかウェアウルフ役? ってカンジですっ」
涼風紗雪 : 「なるほど、ウェアウルフか……!かわいい狼さんが見れそうだし、文化祭当日は僕も遊びに行ってもいいかな?」
犬養一夏 : 「はい、それはもちろん! まあ、あたしはカーテン越しにシルエットでの出演なので、ちゃんと会うことはできないんですけど」
涼風紗雪 : 「おや、そうなんだね。それでも楽しみにさせてもらうよ」
犬養一夏 : 「……それより、せんぱい」
犬養一夏 : 「どうかしたんですか? 最近おかしいですよ?」
涼風紗雪 : 「え……?おかしいって、どこがかな……?」
犬養一夏 : 「ついさっきだって、そうだったでしょ……? あんなに驚いて……」
涼風紗雪 : 「あー、あれは……ごめん、おかしかったよね。でも何だか凄く驚いちゃってさ……」 誤魔化すように小さく笑う
犬養一夏 : 「それだけじゃないですよ……、練習してる時でも、必要以上に周りを気にしているようですし……」
犬養一夏 : 「まるで、何かの影に怯えているような……」
犬養一夏 : 「ねえ、せんぱい……。 あたしには隠し事をしないで、全てを打ち明けてほしいんです……」
犬養一夏 : 「せんぱいに助けてもらったように、あたしもせんぱいを助けてあげたいから……だから……」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん……」
涼風紗雪 : 「(……参ったな。気持ちは嬉しいけれど、相手はオーヴァードかもしれないんだ……)」
涼風紗雪 : 「(一人で調べるのは限界だとは思っていたけれど、一夏ちゃんを危険に巻き込むようなことは出来ない……)」
涼風紗雪 : 「(でも僕は嘘をつくのが下手らしいし、誤魔化せそうな気もしない……)」
涼風紗雪 : 「(……それに、ここまで心配してくれているのに嘘をついたら、一夏ちゃんを裏切ってしまうことになる気がする)」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「……ごめん、一夏ちゃん。確かに僕は隠し事をしている」
涼風紗雪 : 「それが何か教えるよ。でもそのことを誰かに話したり、騒いだりはしないで欲しいんだ。約束してくれるかい?」 一夏ちゃんの目を見て
犬養一夏 : 「は、はいっ……! 約束しますっ……!!」
GM : 秘密を打ち明けてもらえたことがうれしかったのか、心配そうな表情から一転、満面の笑みになって一夏は答えた。
涼風紗雪 : 「ありがとう」
涼風紗雪 : その笑みに頷いてから、一夏ちゃんの耳元に顔を近づけ、
涼風紗雪 : 「……実は、僕……ストーカーされているんだ」 と囁く
犬養一夏 : 「……ス、ストーカー!?」
GM : 一夏は声を抑えながらも、驚愕の表情を見せた。
涼風紗雪 : 「うん……。もう一ヵ月以上前から、誰かに付き纏われている。ずっと視線や気配を感じるんだ」
涼風紗雪 : 「最初は気のせいかもしれないと思っていたんだけど、服を盗まれたこともあって……」
涼風紗雪 : 「最近は……。そ、その……下着、とかまで……盗まれたりしたんだよ……」 若干言いづらそうに視線を床に落として
犬養一夏 : 「なるほど、それで……」
犬養一夏 : 「警察には……? あっ、警察って、民事不介入とかでストーカー対策には及び腰なんですっけ……」
涼風紗雪 : 「ん……そうだね……。あまり頼りには出来なさそうなんだ」
涼風紗雪 : 「(本当は違うけれど、オーヴァードが犯人かもしれないからとまでは言えない……そういうことにしておこう)」
犬養一夏 : 「う~ん……となると、必要なのは“ストーカーがいる”ってハッキリした証拠を見つけることですよね……」
犬養一夏 : 「そうすれば、Y市の方で手配されて、ストーカーも動きづらくなる気がしますし……」
涼風紗雪 : 「そうだね……それが出来れば、良いんだけれど……」
涼風紗雪 : 「このストーカー、全く姿を見せないんだ。僕の家はセキュリティがしっかりしているんだけど、監視カメラには映らないし、入った痕跡さえ残さないみたいでさ……」
涼風紗雪 : 「ずっと見つけようと探してはいるんだけどね……」 少し疲れ気味に溜息をつく
犬養一夏 : 「ふむむ」
犬養一夏 : 「……あたしにひとつ、考えがあります」
涼風紗雪 : 「考え……?」
犬養一夏 : 「“文化祭”を使うんですよ」
涼風紗雪 : 「……?どういうことだい?」
犬養一夏 : 「せんぱいのクラスの出し物は“コスプレ喫茶”。 ……顔がバレていないストーカーなら、コスプレしたせんぱいを見るために、あるいは接客を受けるために必ず来るハズです」
涼風紗雪 : 「それは……確かにそうかもしれないね……」
犬養一夏 : 「でも、それだけでは誰がストーカーかは分かりません」
犬養一夏 : 「そこで、ストーカーを誘き出す“罠”が必要になってきます」
犬養一夏 : 「……そうですね、例えば」
犬養一夏 : 「ストーカーなら、せんぱいに擦り寄る奴なんか一番許せないハズですよね」
犬養一夏 : 「あたしがせんぱいとデート、してるフリをすることで、ストーカーを誘き出すことができるんじゃないでしょうか……!」
涼風紗雪 : 「……!?一夏ちゃんとデート……!?」
犬養一夏 : 「ふ、フリですよっ…!? フリ…!!」
涼風紗雪 : 「わ、分かってる、フリだよね……!」
涼風紗雪 : 「いや、でも……それは駄目だよ、一夏ちゃん」
犬養一夏 : 「ど、どうしてですか…? あたしとデートするの、フリでも嫌でした…?」
涼風紗雪 : 「ううん、それは別に嫌じゃないんだ……一夏ちゃんと一緒に文化祭を巡るのはきっと楽しいと思う」
涼風紗雪 : 「だけど、それでもしストーカーを誘き出せたとしたら、一夏ちゃんが危ない目に遭うかもしれないじゃないか」
犬養一夏 : 「それは……大丈夫ですよ!」
犬養一夏 : 「ぜったい、せんぱいが守ってくれますからっ!!」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん……」
涼風紗雪 : 「……そこまで自信を持って頼られちゃ、流石に断れないな」
涼風紗雪 : 「分かったよ。お姫様を守るのは王子様の役目だ」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん。君のことは、僕が必ず守るよ」
涼風紗雪 : そう頷き、一夏ちゃんの目を真っ直ぐに見つめる。
犬養一夏 : 「ぁう……、お姫様は恥ずかしいので、やめてくださいって……」頬を染めて目を逸らす
涼風紗雪 : 「ふふっ、それは悪かったね」
涼風紗雪 : 「じゃあ、文化祭当日は一夏ちゃんとデートだね。楽しみになってきたよ」
犬養一夏 : 「フリですからねっ……!? いえ、バレないようにデートっぽくしなきゃいけないのは確かですけど~……」
涼風紗雪 : 「そうだった、フリだったね。まあ……フリでもちゃんとエスコートするから、任せてよ」
犬養一夏 : 「は、はい……お、おねがいします……」
GM : 一夏は照れくさそうに視線を足元に落とした。
GM : その時、聞き覚えのない少女の声が、二人の間に割って入った。
??? : 「……一夏、店長が呼んでるわ」
GM : 声が聞こえた方向を見ると、空き教室の入口に見知らぬ少女が立っていた。
GM : 光を束ねたような金のツインテール。 ひざ上15cmで折った短いスカート。
GM : ──猫のような大きな吊り目は、どことなく勝ち気そうな印象を抱かせる。 ……そして、実際に気が強いのだろう。 何故ならば、1年生だろうに、2年生がいる教室に入っても周りを気にする様子がないのだから。
犬養一夏 : 「あっ、ありがと、すぐ行くから」
涼風紗雪 : 「彼女は……一夏ちゃんのクラスメイトかな?」
犬養一夏 : 「ああ、せんぱい、この子は同じ店でバイトしてるクラスメイトの……」
??? : 「わたしは猫山 朗姫(ネコヤマ アキ)」
GM : ……猫山。 彼女はそれなりに有名人だ。 その名前は何度か聞いたことがあった。 ウワサによれば、Y高校で一番の美人候補だとか。
涼風紗雪 : 「なるほど、一夏ちゃんのバイト仲間の……猫山さんだね。僕は涼風紗雪。よろしくね」 優しく微笑みかける
猫山朗姫 : 「ふうん……あんたがねえ……」
GM : ごく短い自己紹介を終えると、少女は品定めするような目であなたを見た。
涼風紗雪 : 「おや、もしかして知ってくれているのかな?」
猫山朗姫 : 「知ってると言えば知ってるし、知らないと言えば知らない、といったところかしら」
猫山朗姫 : 「一夏に聞いたこと以外のところは知らないわ」
涼風紗雪 : 「そっか、そういうことだったんだね」
涼風紗雪 : 一夏ちゃんが友達に自分の事を話していると知って嬉しそうににこにこしている。
猫山朗姫 : 「どうして笑っているの?」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん、友達に僕の話をしてたんだなって思うとなんかちょっと嬉しくてさ」
猫山朗姫 : 「ふ~ん、そういうこと」
涼風紗雪 : 「うん。……あ、ごめんね、これからバイトだったんだね。つい長く引き止めちゃっていたな」
犬養一夏 : 「いえ、いいんですよ~! ……その、文化祭、たのしみにしてますねっ!」
涼風紗雪 : 「僕も楽しみにしているよ」
涼風紗雪 : そう言いいながら、一夏ちゃんの耳元に顔を近づけると、
涼風紗雪 : 「……相談に乗ってくれてありがとう、一夏ちゃん。少しだけ、気持ちが和らいだよ」
涼風紗雪 : と、小声で囁いてから笑みを向ける。その笑顔は今日一番リラックスした、嬉しそうなものだった。
犬養一夏 : 「あうっ!? ど、どういたしましてっ!?」
GM : 一夏は素っ頓狂な声をあげると、囁かれた方の耳を抑えて、真っ赤になりながら距離を取った。
犬養一夏 : 「さっきも思ったんですけど、耳は、その、敏感なので囁くのはちょっと……!」
涼風紗雪 : 「あ……。ご、ごめんね……!」
犬養一夏 : 「するにしても心の準備とかできてる時とかにしてくださいね……」
猫山朗姫 : 「…………」
猫山朗姫 : 「……それじゃ、一夏は借りていくわね」
涼風紗雪 : 「うん、持って行って……って言い方は変だな」
涼風紗雪 : 「バイト頑張ってね、一夏ちゃん。行ってらっしゃい」 笑顔で手を小さく振る
犬養一夏 : 「はい、行ってきます! さようなら、せんぱい!」
涼風紗雪 : 「ん、またねっ」
GM : そうしてふたりは去っていった。
GM :
その後、なぜかクレープに造詣が深い巻村と、なぜかコスプレに造詣が深い春香が、それぞれ陣頭指揮をとることで2年A組の文化祭準備は着々と進んでいった。
GM : 当日までに準備が間に合わない、ということはないだろう。
犬養一夏 : 「……店長はなんて?」
猫山朗姫 : 「“準備”はいつでもできてるって」
猫山朗姫 : 「一夏は心配しないで任せておきなさい」
GM : せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : 1d10+84(1D10+84) > 9[9]+84 > 93
GM : もう、せんぱいったら
涼風紗雪 : ほんと何なん???????????
GM : これからの侵蝕率によってはマジでヤバいけど、それはさておき、文化祭に入っていきます!
GM : 11月7日。 天気は曇り。
GM : 文化祭当日。 寒々としたY高校は、厚手の服を着込んだ保護者たちで込み合っていた。
GM : 2年A組の“コスプレ喫茶”も例に漏れず、昼時になる頃には休む間もない大盛況だった。
GM : 二枚看板であるクレープとコスプレは共に好評を博し、噂が噂を呼び、客が客を呼び、一時は終わりのない行列ができていた。
GM : ──本来、コスプレ喫茶のスタッフは、午前担当と午後担当でクラスメイトを分けての交代制だったのだが、予想を遥かに超える混雑で人材不足に陥ってしまい、あなたを含む一部の生徒は残業するハメになっていた。
GM : 家事全般ができないあなたは、当然ながらウエイトレス──仮装している今は“ウエイター”の方が正しいか──を担当していたのだが、あなたの初めての接客業体験は、あるいはテニスの試合よりハードなものだった。
GM : しかし、2時を過ぎる頃には客足は徐々に弱まっていき……、いまだに店内は満席ではあるが、長かった行列は跡形もなく消えていた。
GM : そして、それまでの間に、ストーカーらしき人影を見つけることはできなかった。 客として接触するだけの勇気は持っていないのか、それとも既にもう来ていたのか。 ……それはあなたには分からない。何故ならば、あなたはストーカーに関する情報を何も持ち合わせていないのだから。
酒臭い女性客 : 「ねぇ、写真撮影とかってしてもいいのかしらぁ……?」
涼風紗雪 : 「えぇ、もちろん構いませんよ。お嬢様」
涼風紗雪 :
そう畏まった口調で接客をする紗雪は、銀色の長い髪を後ろで一つに纏め、燕尾服を着用している。
この仮装は“執事”。漫画やアニメにあまり詳しくなく、好きなキャラなどもいないため、当初提案されていた女子の男装をすることにしたようだ。
執事を選んだのは自分の身近にいて真似をしやすいと思ったからなのだろう。
身長が低いため少年執事のようになっているが、本物の執事を知っているのと紗雪の王子様キャラも相まって、中々格好がついている。
酒臭い女性客 : 「うふふっ、ありがとぉ」
酒臭い女性客 : 「りん……ううん、うちの子に見せてあげたくてねぇ……」
涼風紗雪 : 「なるほど……是非見せてあげてください。見た目だけでも美味しさは伝わると思いますよ」 子供がいるんだな、と微笑ましそうに
酒臭い女性客 : 「うんうんっ! じゃあねぇ、もっと近くによってくれるかしらぁ?」
GM : そういうと外国人のようなルックスを持つその女は、スマホを取り出した。
涼風紗雪 : 「……?こうですか?」 言われた通り近くに寄る
酒臭い女性客 : 「そぉそぉ、そんなカンジでぇ……」
GM : その女はそう言いながら片手でスマホを掲げると、空いたもう片方の手であなたをぎゅっと抱き寄せてきた。
GM : その女の豊満で柔らかなボディがあなたに触れる。
涼風紗雪 : 「え……!?お、お嬢様?」
GM : その瞬間、パシャッというカメラのシャッター音が聞こえた。 その写真に写ったのは、おそらくはあなたの驚き顔だろう。
酒臭い女性客 : 「ん~? なぁに~?」
涼風紗雪 : 「いえ……写真撮影って、わたしも含めてだったんですね」
涼風紗雪 : 驚いた顔を撮られてしまったことに少し恥ずかしそうにしてる。
酒臭い女性客 : 「あらっ、ダメだったかしらぁ……? ウエイターさんがカッコいいから、それも撮っておこうと思ったのだけどぉ……」
涼風紗雪 : 「いえ、全然!わたしで良ければ、いくらでも撮って貰って構いませんよ」
酒臭い女性客 : 「ホントぉ? じゃあ、もう1枚……」
涼風紗雪 : 「はいっ」 今度はしっかり撮られようと、女性客の腰に優しく手を回してちゃんと表情も作る
GM : その女はあらあらと笑いながら、もう一度スマホを構えて写真を撮った。
酒臭い女性客 : 「うふふっ、ありがとぉ! あなたのおかげで、とってもいい写真が撮れたわぁ!」
涼風紗雪 : 「それは何よりです」 楽しくなってきたのか、嬉しそうに微笑む
酒臭い女性客 : 「さてとっ、写真も撮ったことだしぃ、これから待ち合わせもあるからぁ、そろそろお暇させてもらおうかしらぁ」
涼風紗雪 : 「かしこまりました。いってらっしゃいませ、お嬢様」 出入り口まで見送って一礼していこう
GM : あなたがその女性客を出入り口まで見送ると、
犬養一夏 : 「…………」
GM : すれ違いざまに店内に入ってくる一夏が見えた。
涼風紗雪 : 「(ちょっとお酒くさ……いや、香りが強い人だったけど、優しそうで良いお客様だったな……それに抱き寄せられた時、なんだかすごく柔らかくて……)」
涼風紗雪 : 「……って、一夏ちゃん!?」 遅れて気付き、慌ててそちらへ振り向く
犬養一夏 : 「はい、一夏です」
犬養一夏 : 「せんぱいが待ち合わせ場所に来るのが遅かったので、忘れられたのかと心配になって見に来たんですけど」
涼風紗雪 : 「ごめん……!忘れてたわけじゃないんだ。ただ忙しくて、午後も仕事することになっちゃってて……!」
犬養一夏 : 「……そうですか」
犬養一夏 : 「それで、あの女の人と抱き合ったりしてた訳ですか」
涼風紗雪 : 「え?あ、あぁ……見てたんだね。あのお客様、一緒に写真を撮りたかったみたいだからさ……」
犬養一夏 : 「ふうん」
涼風紗雪 : 「…………っ」
涼風紗雪 : 「(もしかして……というか、やっぱり怒ってるよね?待ち合わせに遅れたから……)」
涼風紗雪 : 「そ、そうだ一夏ちゃん、せっかく来てくれたんだしクレープ食べていくかい?今席も空いたからさ」
犬養一夏 : 「……そうですね」
犬養一夏 : 「おひるまだですし、ちょうどお腹が空いた頃でした」
涼風紗雪 : 「良かった!じゃあ……」 小さく咳払いして
涼風紗雪 : 「おかえりなさいませ、お嬢様。こちらのお席にどうぞ」 と、爽やかな笑顔で接客する
GM : 一夏は大人しく席に案内されたが、その大人しさが逆に“圧”を生んでいた。
GM : しかし、一夏が席について「はあ……」と深い溜め息をつくと、同時に“圧”は抜けていったようだった。
犬養一夏 : 「せんぱいのことだから、みんなが困ってるからって残業を引き受けちゃって、待ち合わせに来られなかったことは分かりました……」
犬養一夏 : 「せんぱいのクラスが大人気だったのは噂で聞いてましたし、それについては、もう許すことにしますっ」
涼風紗雪 : 「そうか、ありがとう……。ほんとにごめんね、一夏ちゃん」
犬養一夏 : 「いいんですよっ……というか、許すとか許さないとか決められる立場じゃないしっ……(小声)」
犬養一夏 : 「それはともかく、せんぱい、ストーカーっぽい人とか見ました~?」
涼風紗雪 : 「いや、まだ……。注意してたんだけど、それっぽい人はいなかったよ」
犬養一夏 : 「ふむむ……」
犬養一夏 : 「じゃあ……」
犬養一夏 : 「……………………」
GM : 一夏はあなたの方に視線を移すと、そのままじっと見つめた状態で停止した。
涼風紗雪 : 「……どうしたの?」 言葉の続きを待っていたが、停止した一夏ちゃんを不思議そうに見つめ返す
犬養一夏 : 「あっ、いえ、その」
犬養一夏 : 「今日のせんぱい、カッコいいな~って……」
GM : 一夏は自然と口からついて出たようにそう言った。
涼風紗雪 : 「あぁ、なんだっ」 どうしたのかと心配になったが口元を綻ばせて
涼風紗雪 : 「ありがとう、嬉しいよ」
涼風紗雪 : 衣装だけじゃなくて胸を潰したり、立ち方や歩き方等も男らしくかっこよく見えるように努力した甲斐があったかな、と嬉しくなる。
犬養一夏 : 「ど、どういたしまして……?」
犬養一夏 : 「…………」
GM : 自分で“カッコいい”と口にしたことで意識してしまったのか、一夏は恥ずかしそうに少し俯いた。
涼風紗雪 : 「ふふっ……」 その様子をかわいいな、と見つめて
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん、どのクレープにする?結構何でもあるよ」 とメニューを見せる
犬養一夏 : 「あっ、ええっと……イチゴ生クリームでっ!」
涼風紗雪 : 「イチゴ生クリームだね。かしこまりました」
涼風紗雪 : 少し待っていてね、とクレープ巻き巻き厨房の方に注文を届けに行こう。
朝からずっとクレープ巻き巻き巻村くん : 「これでイチゴは最後だなっと! ……はいよ、イチゴ生クリームひとつ!」
GM : クレープ担当の生徒は、1分もかからないうちにイチゴ生クリームのクレープを作ると、紙に包んであなたに渡した。
涼風紗雪 : ありがとう、と受け取って一夏ちゃんのテーブルへと戻る。
涼風紗雪 : 「お待たせしました、お嬢様。いちご生クリームのクレープになります」 手に持ったまま一夏ちゃんに見せる
犬養一夏 : 「お、お姫様の次はお嬢様ですか……? というか、お嬢様はせんぱいの方なんじゃ……」
涼風紗雪 : 「今は執事ですから」 そう言って一夏ちゃんの隣の席に座る
涼風紗雪 : 「それでは、お嬢様?あーん」 両手で持ったクレープを一夏ちゃんの口元に差し出す
犬養一夏 : 「あ~……ってちょ、ちょ、ちょっと待ってください!?」
涼風紗雪 : 「どうなされました?」
犬養一夏 : 「な、なんで急にあ~んする流れに…!? あたし、気付かない内にしてほしいって言ってましたっけ…!?」
涼風紗雪 : 「いいえ。言ってないけど、サービスとしてやっているんです」
犬養一夏 : 「えっ、ええっ、そんなサービスあるんですかっ…!?」
涼風紗雪 : 「あるんですっ。あ、食べづらいならスプーンでも出来ますよ」
犬養一夏 : 「確かにたべづらいにはたべづらいけど、そういう問題じゃなくてっ……!!」
犬養一夏 : 「あたし、ひとりでたべられますからっ」
GM : そういって一夏はあなたの持っているクレープを奪おうと手を伸ばした。
涼風紗雪 : 「そう……?嫌なら無理にとは言わないんだけど……」 クレープを奪われないようにさっと手を引いて
涼風紗雪 : 「でも今日は約束を守れずに一夏ちゃんを待たせちゃったしさ。そのお詫びってわけじゃないんだけど……」
涼風紗雪 : 「僕がしてあげたいなって思ったんだ。だから、一口だけでも駄目かな……?」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「べ、別にあたしも嫌ではないというか、むしろ……」
犬養一夏 : 「その、うれしいですけど……」
犬養一夏 : 「でも、恥ずかしいというか……」
涼風紗雪 : 「大丈夫、恥ずかしくないよ。僕に任せて」 安心させるように微笑みかける
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「もう、せんぱいには敵わないですね……。 さっきの女の人にも、そういう言葉をかけてたんじゃないんですか~……?」
涼風紗雪 : 「いや、さっきのお客様には言ってないよ。それにサービスだから、少しでも嫌だったり恥ずかしかったりしたらやめてるからさ」
犬養一夏 : 「そ、そうですかっ」
犬養一夏 : 「……じゃあ、えっと」
犬養一夏 : 「これから恋人同士になる訳ですし、これも必要な試練ということでっ」
犬養一夏 : 「よ、よろしくおねがいします……?」
涼風紗雪 : 「うん、よろしくね。それじゃ……あ~ん?」
涼風紗雪 : スプーンで生クリームのついたいちごを掬い上げ、一夏ちゃんの口元へと差し出す。
犬養一夏 : 「あ~~~ん」
GM : 一夏は目を閉じて口を開けて、そのスプーンを迎え入れた。
涼風紗雪 : 「美味しい?」
犬養一夏 : 「……ん、美味しいとは思うんですけど」
犬養一夏 : 「……ちょっと味がよくわかんないです」
涼風紗雪 : 「ふふっ、そうかい?じゃあ、あとはゆっくり味わって食べるといいよ」
涼風紗雪 : 一口だけという約束だったので、残りのクレープとスプーンを一夏ちゃんに手渡す。
犬養一夏 : 「…………」
GM : 一夏はクレープとスプーンを受け取ると、何かを思いついたらしく悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
犬養一夏 : 「今までずっと仕事してたってことは、せんぱいも昼ごはんはまだですよね~?」
涼風紗雪 : 「ん?あぁ、そうなんだよね……結構お腹空いてきてしまってるよ」 困ったように笑う
犬養一夏 : 「ふふっ、やっぱり~」
犬養一夏 : 「じゃあ、あたしのクレープを分けてあげますよっ」
涼風紗雪 : 「え……?いや、気遣いは嬉しいけれどそれはいけないんじゃないかな……。僕はお店側だから貰えないよ」
犬養一夏 : 「せんぱいは本来は仕事時間じゃないんですし、そのくらい許されますって」
涼風紗雪 : 「うーん……残業代と思えば、いいのかな……。それじゃあ、一夏ちゃんの厚意に甘えてしまおうか……」
犬養一夏 : 「ほらっ! 口を開けてくださいっ! はいっ! あ~ん!!」
涼風紗雪 : 「ん……。あ~ん……」 瞳を閉じ、恥ずかしがることもなく素直に口を開く
犬養一夏 : 「……むっ、せんぱいはこういうの慣れてるんですか」
犬養一夏 : 「仕返しして照れさせようって思ってたんですけど」
涼風紗雪 : 「……いや、慣れてなんかいないよ。初めてやってもらうわけだからね」
涼風紗雪 : 「それより……してくれないのかい?待っているんだけどな……」
涼風紗雪 : ずっとこのままでいると流石に恥ずかしさが増してしまうのか、瞳を閉じたままそう促す
犬養一夏 : 「ふふっ、そうだったんですねっ」
犬養一夏 : 「……ちょっと待っててくださいっ」
涼風紗雪 : 「う……うん?」 そのまま待つ
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「そうして待ってるせんぱい、なんだか可愛いですね~」
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん、もしかしてからかっているのかい?」 パチ、と目を開く
犬養一夏 : 「えへへ~」
GM : あなたが目を開けると、一夏はあなたの顔を覗き込んでクスクスと笑っていた。
涼風紗雪 : 「全く、もう……」 その様子を見て仕方ないな、と小さく笑う
犬養一夏 : 「じゃあ、改めまして! はい! あ~ん!!」
GM : 一夏は笑いながら、イチゴと生クリームがたっぷり乗ったスプーンを構えた。
涼風紗雪 : 「……あ~ん」 改めて口を小さく開く
GM : 自分の店のクレープは初めて口にしたが、学生の手作りとは思えないほどのクオリティだった。 甘過ぎない生クリームが甘酸っぱいイチゴを引き立てている。
涼風紗雪 : 「んむ……」 もぐもぐとクレープを味わう
犬養一夏 : 「美味しいですか?」
涼風紗雪 : 「うん、とても美味しい……でも……」
涼風紗雪 : 「この美味しさは、一夏ちゃんに食べさせてもらったから……より格別に感じるのかもしれないね」
涼風紗雪 : 唇についた生クリームを舌で舐めとりながら、頬を少し朱に染めて目を細める。
犬養一夏 : 「せ、せんぱいったら、からかったからって仕返しですか~?」
涼風紗雪 : 「いや、仕返しじゃなくて本心だよ。本当に美味しく感じたからさ」
犬養一夏 : 「……もう、口が上手いんですからっ」
犬養一夏 : 「…………でも、あたしも同じです。 せんぱいにたべさせてもらったから、ずっと美味しく感じたんだと思います」
GM : 一夏はあなたと同じように頬を朱に染めてそういった。
犬養一夏 : 「な、なんてっ! 恋人同士ならそんなカンジのことを言うんですかねっ!!」
犬養一夏 : 「これで恋人のフリをする準備もオッケーですねっ!!」
涼風紗雪 : 「ふふっ……そうだね。ばっちりだと思うよ」
涼風紗雪 : 恥ずかしがっている様子を愛おしそうに見つめながら頷く。
GM : ──幸せそうなふたりのことをじっと見つめる少女が、後ろから迫ってきていた。
狩野春香 : 「やあやあ、スズ! 一夏ちゃん!! こんなに寒い日だっていうのに、昼間からアツアツだね~!」
涼風紗雪 : 「春香。どうしたの?」 アツアツというところは気にせず振り向く
狩野春香 : 「お~、圧巻のスルースキル……」
狩野春香 : 「“どうしたの?” と聞かれれば“こうしたの!”と答えるだけの、ふたりの世界を遮った理由はあるのだけど」
狩野春香 : 「個人的に海外ドラマにハマっている春香さん的には、ここは逆にこう聞き返したい! “良いニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?”」
涼風紗雪 : 「海外ドラマ好きだったんだね。じゃあ、悪い方から聞こうかな」
犬養一夏 : 「悪い方から聞くのが定番ですよね、イチゴは後にたべる派みたいな~」
狩野春香 : 「オーケー! 悪いニュースね!!」
GM : 突如としてキッチンから出てきた春香は、もういっそ朗らかな笑みで、悪いニュースを口にする。
狩野春香 : 「それは、もう冬になるというのに“私には彼氏ができていない”ということッ」
涼風紗雪 : 「あ……うん、そうだったね……。ま、まあこれからだよ、これから」
狩野春香 : 「あ、あれ…? そんなに言い訳が苦しいカンジの言い方されると、逆に傷付いちゃいますよ…?」
狩野春香 : 「クリスマス時期にカップルは急増するから大丈夫だ!って、胸を張って慰めてもよくない!?!?!?」
涼風紗雪 : 「ご、ごめん……!でもそういうカップルってすぐ別れがちとも聞くし、ちゃんと好きな人を見つけたいって春香に言うのもどうかなって気もして……!」
狩野春香 : 「わ、思ってたよりずっと誠実な答えに、春香さんビックリ!」
狩野春香 : 「とても的を射た意見なので参考に……してたら年が明けるネ……」
涼風紗雪 : 「そんなに焦らなくても……あっ、そうだ、じゃあ良いニュースっていうのは何なんだい?」
狩野春香 : 「今、あまりの不憫さに話を逸らされましたネ????」
涼風紗雪 : 「いやいや、悪い話を続けてたら春香の気が滅入るかもと思ってさ……!せっかくの文化祭なんだし、春香もそんなしょんぼりしてると勿体ないよ」
狩野春香 : 「うむむ、百理ある……、文化祭も青春の1ページとして大事なイベントだし……」
狩野春香 : 「まあ、恋愛に関しては半分ほど諦めてるから“彼氏できない”はネタということで流して、いいニュースにいきますかっ」
涼風紗雪 : 「えっ、ネタだったのか……。まあいいか、それでどんなニュース?」
狩野春香 : 「“初恋は実らない”と言うし? 諦め半分でネタにしてる方が気がラクだし?」
狩野春香 : 「……と、いいニュースだったね! これはなんと! スズさんにも関係するビッグニュースなのだよ!!」
涼風紗雪 : 「へぇ……!」 わくわくしながら続きを待つ
狩野春香 : 「フッ、聞いて驚けッ!!」
犬養一夏 : 「……(ごくり)」
狩野春香 : 「午前組、もう遊びに行っていいってさ!」
涼風紗雪 : 「えっ、本当かい……!」
狩野春香 : 「……おや? 肩透かしパターンだったのに、ちゃんと驚いてくれてる?」
狩野春香 : 「でも、そういうとこが好きだぜ、ベイベェ……」
涼風紗雪 : 「そりゃ驚くよ、もう今日は午後までずっと働きっぱなしかなと思ってたからさ」
涼風紗雪 : 「でも良かった。一夏ちゃんと遊びに行く予定があったから助かるよ」
狩野春香 : 「ほう? 一夏ちゃんと?」
涼風紗雪 : 「うん、前から約束してたんだ」
狩野春香 : 「……そっか、なるほどね」
犬養一夏 : 「はい、実はずっと前から“デートする約束”だったんですよ!」
狩野春香 : 「フッ、隅に置けないやっちゃなあ、スズはん……」
涼風紗雪 : 「何で関西弁……。いや、まあ……うん、デートなんだよ」 目を少し逸らしながら
涼風紗雪 : 「(正確には恋人のフリしてデートだけど……さっき彼氏が出来ないって話をしてた春香の前でこういうのは何だか申し訳ない気がするな……)」
狩野春香 : 「しかし、スズに恋人ができるとはね……恋愛にあまり関心がなさそうだったのに……」
狩野春香 : 「私より、先に…………」
狩野春香 : 「少し、泣く」
涼風紗雪 : 「な、泣かないで……!ご、ごめん、これには少しわけが……!!」 焦って椅子からガタンと立ち上がる
狩野春香 : 「いやいや、そんな浮気した彼氏みたいな動揺しなくても! 別にネタだから! 」
狩野春香 : 「しかし、喜ばしいことだねえ、赤飯とか炊いとく?」
涼風紗雪 : 「いいよそんなの……!炊かなくていいからっ」
狩野春香 : 「なんだ、せっかく特製赤飯クレープを御馳走しようと思ったのに……」
涼風紗雪 : 「どんなクレープだよそれ……。えっと、まあ恋人とかそういうのは……また今度ちゃんと説明するからさ」
狩野春香 : 「えっ、今度は惚気話を聞かされるの私?」
涼風紗雪 : 「そういうわけじゃ……!う、うぅ……でも確かにそうとしか聞こえないか……」
涼風紗雪 : 「(や、やっぱりこういうことになると落ち着かないな……嘘をついているわけだし……ちゃんとストーカーの件が片付いたら話せるけれど……)」
狩野春香 : 「まっ、ホントは私にも恋人はいるから、全然聞いてあげてもいいんだけどね!」
涼風紗雪 : 「えっ……そうなの!?さっきいないって言ってたよね!?」
狩野春香 : 「でも、先月は10人に告白されたから」
狩野春香 : 「それでね、いまの私の彼氏、すごいんだ……。 ふたりきりでドライブしてる時に煽り運転にあったら、その車を停車するまで追跡するほどの執念の持ち主でさ……」
狩野春香 : 「あはは……、でも、恥ずかしがりやなんだよね……」
狩野春香 : 「一度も画面から出てきてくれないんだから」
涼風紗雪 : 「……それって……二次元の存在じゃないのか……?」
狩野春香 : 「……」
狩野春香 : 「…………」
狩野春香 : 「……………………」
涼風紗雪 : 「……な、なんか……ごめん……」
狩野春香 : 「あやまられると更に惨めだわ!」
狩野春香 : 「……まあ、惚気話をされたら同じだけの惚気話をするから覚悟しろということで」
狩野春香 : 「良いニュースも悪いニュースも言ったから、あとは……」
涼風紗雪 : 「うん……。あとは、何かあった?」 春香ちゃんがショックを受けてたとかではなさそうで少し安心する
狩野春香 : 「スズのおかげでなんとか客を捌ききれた! 遅くまで残って手伝ってくれて本当にありがとう! ものすごく助かった!」
狩野春香 : 「……という春香さんの感謝の言葉で締めさせていただきます」
涼風紗雪 : 「……!うん、どういたしまして!春香もお疲れ様っ」 嬉しそうな笑顔を向ける
狩野春香 : 「おつかれさま~……デートたのしんできてね~……」
涼風紗雪 : 「ありがとう。それじゃ……行こうか、一夏ちゃん」
犬養一夏 : 「はいっ」
GM : 一夏はイチゴクレープを手にして席を立った。
涼風紗雪 : では執事服を着たまま、一緒に教室を出て行こう。
GM : ──そうして、あなたたちは、一夏のクラスである1年B組に向かった。
GM : 1年B組の出店はおばけ屋敷。 おばけ屋敷といえばデートの定番だが、同時に文化祭の定番でもあり、ここも行列ができていた。
GM : ……回転率はまずまずだが、まだ暫くの間は待つ必要があるみたいだ。
GM : 長い行列の最後尾に並んで、おばけ屋敷の出入口に目を向けてみると、魔女に仮装をした女子生徒が受け付けを担当していたり、ジャック・オ・ランタンなどが飾られているのが見える。
GM : 先週あったハロウィンを意識して、西洋風のおばけ屋敷にしたらしい。
犬養一夏 : 「こっちは午前と変わらない人混みですね~……」
犬養一夏 : 「みんなでギリギリまで準備をがんばってきましたし、それが評価されてるというのは嬉しいものですねっ」
犬養一夏 : 「でも、この分だと少なくとも10分は待たないと入れないかなあ……、どうします? せんぱい?」
GM : 一夏はイチゴクレープを頬張りながら、そう尋ねてきた。
涼風紗雪 : 「十分くらいなら全然待てるさ。それに一夏ちゃんのクラスだから最初に見たいし……それでもいいかな?」
犬養一夏 : 「あたしはぜんぜん待てますよ~ 」
涼風紗雪 : 「良かった、じゃあこのまま待とうか」
涼風紗雪 : そう言いながら、一夏ちゃんのクレープを持っていない手に自分の手を寄せる。
涼風紗雪 : そしてその手を、指を絡ませるようにして繋ごう。
犬養一夏 : 「えっ、あっ、あのっ…!? せっ、せんぱいっ…!?」
GM : あまりのことに、一夏は手にしていたクレープを落としそうになった。 しかし、その手を払いのけるような様子はない。
涼風紗雪 : 「どうしたんだい?」 恋人繋ぎした手にギュッと優しく力を入れる
犬養一夏 : 「だって、これ、こ、恋人つなぎ……」
涼風紗雪 : 「あぁ、別におかしくないよね?だって僕達、今日は恋人同士なんだからさ」 そう一夏ちゃんに微笑みかける
犬養一夏 : 「う、うう……、そう、ですけど……」
犬養一夏 : 「でも、いきなりは反則……というか……」
GM : 一夏は耳まで真っ赤にしながら、しぼりだすようにいった。 指先からは一夏の高くなった体温が伝わってきて、じんわりと温かい。
GM : そして、だぼだぼのカーディガンから覗いたその指先は、傷跡ひとつないキレイなものだった。 ……夏場にも着ていたのは、一夏が言っていた通りに“着ていないと落ち着かないから”なのだろう。
涼風紗雪 : 「ふふっ、ごめんね。一言断るべきだったかな……でもこういうのも悪くないだろう?」
犬養一夏 : 「まあ、寒かったですし、これであったかくはなりましたけど~……」
涼風紗雪 : 「良かった。それにこうしていたら、十分待つのも退屈じゃないだろうしね」
犬養一夏 : 「…………」
GM : あなたに手のひらで転がされてしまっているのが気に入らないのか、一夏は非難するようにあなたをジトーッと睨んだ。
涼風紗雪 : 「……何か……怒らせちゃったかな?」 困ったように小さく笑みを浮かべる
犬養一夏 : 「別に……“そういうのは心の準備ができてる時に”って何度も言ってきたハズなのに、またこういうことをしてきたので、せんぱいってズルいな~って思っただけです……」
涼風紗雪 : 「あー……。あはは、ごめんね。次からはちゃんと気を付けるから、今回は許して欲しいな」
犬養一夏 : 「もう……」
GM : 手を繋いで暫く待っていると、ついにあなたたちの順番が回ってきた。
受け付け : 「次の方どうぞ~」
受け付け : 「おばけ屋敷に入ってすぐのところでビデオでの説明がありますから、それを聞いたら、あとはスタッフに従って進んでくださいね~」
涼風紗雪 : 「分かりました。行こう、一夏ちゃん」 手を引いて教室の中へと進もう
犬養一夏 : 「はいっ」
GM : まずあなたたちは、暗幕と衝立で仕切られた薄暗い小部屋に通された。 広さはシャワー室ほどしかなく、必然的にふたりは密着することになる。
涼風紗雪 : 「少し狭いね……一夏ちゃん大丈夫?」
犬養一夏 : 「ん、思ってたよりずっと狭いですね……、せんぱいこそ大丈夫ですか……?」
GM : 一夏は平静を装っていたが、互いの心音が聞こえるほど密着することになって、心臓だけは正直に早鐘を打っているようだ。
涼風紗雪 : 「……うんっ、僕は大丈夫」 心臓の鼓動が聴こえ合うことはあまり気にしないようにする
犬養一夏 : 「それならよかった……」ぎこちない笑みを浮かべ
GM : ……部屋に入ったあなたたちを出迎えたのは古い型式のテレビだった。 今となっては教科書などでしか目にしないブラウン管と呼ばれるものだ。
涼風紗雪 : 「え、えっと……これでビデオを見るのかな?随分大きなテレビだけど……」
犬養一夏 : 「そうですね、きっとそろそろ……」
GM : その画面は真っ暗だったが、あなたたちが入ってきたのを察知してか、ふいに白に染まり、やがて仮面をかぶったスーツの人間が映し出される。
涼風紗雪 : 「誰か出てきた」 ジッと画面を見る
仮面の人間(?) : 「ククク、ようこそ……」
GM : 男とも女とも付かない不気味で機械的な加工音声が、狭い部屋に響く。
仮面の人間(?) : 「はじめまして、私は黒魔術師のファウスト! そして、こちらは私が契約した悪魔の……」
GM : ファウストと名乗った人物が指した先には、ひとつの林檎があった。
GM : ──次の瞬間、林檎はひとりでにフワリと宙に浮かびあがると、ポリポリと咀嚼音を立てて消えていった。 そして、ファウストは溜め息をつく。
涼風紗雪 : 「え!?」
ファウスト : 「……メフィスト、自己紹介がまだ済んでいないぞ、林檎を齧るのは後にしなさい」
犬養一夏 : 「ああ、ここは林檎をたべるところだけ別撮りして合成したらしいんですよね~」
涼風紗雪 : 「へぇ~……!よく出来てるなぁ……」
犬養一夏 : 「もうここに関しては本気度が違いましたね……」
ファウスト : 「……コホン、失敬、本題に戻ろうか」
ファウスト : 「これから、あなたを魔界に招待する! 勿論、乗り物も手配させてもらった!」
ファウスト : 「まあ、あいにく、魔法の馬車ではなく、魔法のトロッコなのだが……文句は言わないでくれたまえ」
涼風紗雪 : 「どっちでも面白そうだし大丈夫ですよ。……って、ビデオだったねこれ」
犬養一夏 : 「ふふっ、ですねっ」
ファウスト : 「……ああ、忘れるところだった。 気を付けてもらいたいことがひとつある」
ファウスト : 「魔界にいる間は、何があっても決してトロッコの外に出てはならない」
ファウスト : 「トロッコには透明化の魔法が掛けられていて安全だが、その外に出てしまえば……」
ファウスト : 「ククク、その先のことは口にするのも恐ろしい」
涼風紗雪 : 「とにかく出ちゃダメなんだね……」
犬養一夏 : 「トロッコに乗っておばけ屋敷を回ることになるんですけど、もし勝手にトロッコから出られたら困っちゃいますからね~」
涼風紗雪 : 「そりゃそうか……こういう風に教えてくれるのって雰囲気出てて面白いな」
犬養一夏 : 「“ホラーは雰囲気作りが全て”ってホラー映画好きの恐山くんの指揮で作られてますからね~」
涼風紗雪 : 「へぇぇ……」
ファウスト : 「……準備はいいだろうか? 立ち去るのなら、今のうちだが?」
ファウスト : 「……ふむ、ここに残ったということは、準備はできているということだな! ならば、メフィスト! 客人を案内しろ!!」
GM : ……アナウンスを終えた瞬間、急にテレビの画面は砂嵐に包まれた。 ざあざあという無機質で不快な音が恐怖心をかきたてる。
涼風紗雪 : 「……こういう砂嵐って初めて見たかも」 一夏ちゃんとくっついたままテレビの画面を見つめ続けて
犬養一夏 : 「あたしもですね……うちにはテレビもないので……」
GM : ──それから約3分が経った頃だろうか。 悪魔に仮装した1年B組の男子生徒が入ってきて、あなたたちは奥の部屋に通された。
GM : その部屋には、木製のトロッコがひとつ置いてあった。 その内側にはシートベルトが備え付けられた椅子がふたつ付いている。
GM : ……あたりは完全な暗闇だ。 ジャック・オ・ランタンの明かりが足元になければ、トロッコも見つけられなかったことだろう。
涼風紗雪 : 「これがトロッコか……。というか、凄く暗いね……足元には気をつけなくちゃ」 トロッコに乗り込んで座席に座ろう
犬養一夏 : 「ですね~……落とし物とかすると大変で……」
犬養一夏 : 「あっ、あたしは後ろに座りますねっ」
涼風紗雪 : 「ん、分かったよ。それじゃ前で楽しませてもらおうかな」 シートベルトをつける
犬養一夏 : 「ふふっ、特等席でたのしんでくださいねっ」
犬養一夏 : 「あたしはまたせんぱいの悲鳴を聞けることをたのしみにしてますからっ」
GM : 暗闇でよく見えないが、一夏はさぞイジワルな笑みを浮かべていることだろう。
涼風紗雪 : 「またって、あれは……!も、もう……そんな何度もみっともない悲鳴出さないよ」 前を向く
GM : あなたたちがトロッコに乗り込むと、悪魔に仮装した男子生徒がその後ろについた。 ……そして、そのトロッコを押しだした。
GM : トロッコは寒さに震えるようにガタガタと揺れながら、暗闇をゆっくり進んでいく。
犬養一夏 : 「うちのおばけ屋敷は、あんなものじゃないですけどね?」脅かすような声色で
涼風紗雪 : 「す、すごい自信じゃないか……楽しみになってきたよ……」
犬養一夏 : 「というより、あの時はちょっと声かけただけで驚いてましたし~……」
犬養一夏 : 「それはそれとして、完成度にそこそこの自信はありますけど、機械を造れる人は流石にいなかったので、トロッコは人力なんですよね~……」
涼風紗雪 : 「あ、そうなんだね。じゃあ暗くて見えないけど、今も押している人がいるんだ」
犬養一夏 : 「ですね! ここまで案内してくれた悪魔メフィストのコスプレをした男子が今も押してますよ!」
涼風紗雪 : 「働き者だな、メフィスト……」 感心したように
GM : ……そのうち、ぼんやりとした薄明かりが見えてきた。 それに照らされて、折れ曲がった枯れ木のような人影が浮かびあがる。
GM : その人影は三角帽子を目深に被った怪しい老婆だった。 衣服は黒系で統一されていて、このあたりの暗闇に融け込んで見える。
GM : あれは“魔女”だと、顔が見えなくても一目で分かった。
涼風紗雪 : 「……魔女かな……あれは」
犬養一夏 : 「はい、午後の部は魔女がテーマなんですよ」
涼風紗雪 : 「午前と午後でテーマが違うんだね」
犬養一夏 : 「これも“客を飽きさせないように”って恐山くんの提案で……、おかげで完成はギリギリでしたよ……」
涼風紗雪 : 「よく頑張ったね……」 魔女の方をじーっと眺めながら
GM : ……そして、次に、魔女の後ろ。 壁掛けのハンガーフックに目を奪われる。
GM : 何故なら、そこには、外套でも吊るすように2人分の人骨が吊るされていた。 サイズ比から考えると、恐らくは男女1組の……。
GM : カップルが迷い込んで、魔女に殺されてしまったのか。 錆びた鉄の生臭さがムッと広がり、そんな想像に説得力を与えてくる。
涼風紗雪 : 「……っ!?血の臭い……っ」 少し驚くが声を抑える
犬養一夏 : 「ああ、これはあたしが造った血の臭いですね~」鼻をつまみながら
犬養一夏 : 「一応言っておくと、本物じゃないので安心してください」
涼風紗雪 : 「本物だったら怖すぎるよ!でも凄くリアルだね……匂いまでついてるなんて思わなかった」
犬養一夏 : 「“五感に訴えるのが効果的”って、これも恐山くんが……」
涼風紗雪 : 「やっぱりそうだと思ったよ……」
犬養一夏 : 「ええ、演出のほとんどが恐山くんのアイデアですね~……」
GM : そんな裏事情を話していると、
GM : 魔女はあなたのトロッコに緩慢な歩みで近寄ってきた。
涼風紗雪 : 「(遠くにいるだけかと思ったら近付いてくるのか)」 と、魔女の方を見る
GM : ……しかし、その手前にあるテーブルで歩みはとまる。
GM : 魔女はテーブルに置いてあった白い手紙を手に取ると、木が軋むような笑い声を漏らした。
涼風紗雪 : 「な、何……?」
魔女 : 「キヒヒ、もう4月も終わりかい。 “ウーリアンさん”が呼んでるよ、今年もブロッケン山に集まらないとねぇ」
GM : ……すぐ傍から魔女の声が聞こえてくる。 どうやら、トロッコに備え付けられているスピーカーから聞こえているらしかった。
GM : 耳をすますと、魔女の声は、定年間近とウワサされている古文の大山田先生のものだった。
涼風紗雪 : 「この声……もしかして大山田先生なのかな?」
犬養一夏 : 「よく気付きましたね? 実は大山田先生のところにいって、わざわざ録音をおねがいしたんですよ。一番、魔女っぽい声だとかで」
涼風紗雪 : 「何となく聞き覚えがあったからさ。なるほどね……」
涼風紗雪 : 「ところでウーリアンさんって誰だろう……」
犬養一夏 : 「それは、えーと、たしかぁ……」
犬養一夏 : 「こ、このあと分かりますよっ」
涼風紗雪 : 「分かった。じゃあ楽しみに待とうかな」
ファウスト : 「……おっと、すまない! 魔界に入る際の時空の歪みで、ワルプルギスの夜がはじまる頃まで飛ばされてしまったらしい!」
GM : ファウストの声が──魔女の声と同じように──トロッコのスピーカーから聞こえてきた。
涼風紗雪 : 「元から四月って設定なのかなって思ったら、そういうことだったのか」
ファウスト : 「4月の終わりに行われるワルプルギスの夜とは“ウーリアンさん”を……つまり、悪魔サタンを崇めるための魔女たちの集会……」
ファウスト : 「その準備のために、魔女たちは盛んに動き出すだろう! 要するに、あなたは窮地にある訳だ!」
涼風紗雪 : 「なるほどね……悪魔かぁ……」
犬養一夏 : 「そうそう、悪魔でした悪魔…! 本来、魔女とは悪魔と契約した人間とかなんとか…」
涼風紗雪 : 「(契約か……なんか遺産みたいだ)」
涼風紗雪 : 「全然知らなかったな……。詳しいね、一夏ちゃん」
犬養一夏 : 「まあ、恐山くんがクラスメイトに設定資料を配ったり、そのテストをしたりと大変でしたからね~……」苦笑い
涼風紗雪 : 「ふふっ、全力だなぁ……」
犬養一夏 : 「何かに全力で取り組むのはイイことだと思いますけど、度が過ぎてる気も……」
涼風紗雪 : 「まあまあ……それでこのクオリティのお化け屋敷が出来てるんだからいいんじゃないかな」
犬養一夏 : 「それは確かに? ……っと、まだアナウンスがあるんでした! それを遮ったと知れたら、恐山くんになんて言われるかっ」いたずらっぽく笑う
ファウスト : 「……ああ、案ずることはない! 彼女は耳が遠いし、私の透明化魔法も」
魔女 : 「……ん?」
GM : 魔女は急に振り向いて、あなたのトロッコを一瞥した。 ……そして、ゆっくり歩いてくる。
GM : 魔女が近寄ってきたことで、トロッコは息を潜めるように停止した。 沈黙が場を支配する。
涼風紗雪 : 「(気付いてるような気がするけど……)」
魔女 : 「……確か、ここらから音が」
GM : 魔女はトロッコに手をかけると、その身体を乗り出して……あなたの顔を覗き込んできた。
涼風紗雪 : 「うわ……」 小さく声を上げて顔を見つめる
GM : 魔女の顔は、血肉がこびりついた髑髏そのものだった。 なぜか笑っているようにも見える。
涼風紗雪 : 「わ……!?」
魔女 : 「見つけたよ! 見つけたよ!!」
魔女 : 「あああああ! 裏切り者のファウストの客かい!!」
涼風紗雪 : 「う、裏切り者?何のこと……!?」
魔女 : 「あたしをナメているのかねえ! 許せない! 許せないねえ!!」あなたの声など耳に入っていないように喚き続ける
魔女 : 「こうなったら、こいつを魔女集会の手土産にしてやるよ! どう料理してやろうかのう!!」
GM : 魔女は捲し立てるように叫んだ。 それから逃げ出すために、トロッコは全速力で走り出す。
涼風紗雪 : 「ちょっとびっくりした……。こ、こういう展開か……」 トロッコにしっかり掴まって
犬養一夏 : 「あたしは裏事情とか知ってるので全く怖くないですけど、せんぱい、もう怖がっちゃってます~? まだまだ序盤ですよ~?」からかうように笑う
涼風紗雪 : 「いやいや……まだこの程度で怖がってはいないよ。ちょっと驚いただけさ……」
犬養一夏 : 「ふふ、本当ですか? それならよかったですっ」
涼風紗雪 : 「うん……」
涼風紗雪 : 「(と言っても……普通に驚いたのもあるけど、ああいう顔のオーヴァードとかジャームっているからな……。なんか、二重の意味でびっくりしちゃうというか……普通の人よりリアルに感じるのかも……)」
涼風紗雪 : 「ま、まあ、この程度で怖がってちゃおばけ屋敷なんて最後まで楽しめないからね。ここからも全然平気さ」
犬養一夏 : 「ふうん……」
犬養一夏 : 「いつまでそう言ってられるか、たのしみにしようじゃないか……」
犬養一夏 : 「恐山くんがいたら、そう言ってるでしょうね……」
涼風紗雪 : 「会ったことも無いのに情報が多すぎてなんかキャラが分かってきちゃったな……」 小さく笑って
GM : ──相手は魔女といっても老婆。 トロッコに追いつく俊敏さは持ち合わせていないらしく、さらに追ってくる様子はなかった。
GM : やがて、一息ついてトロッコを減速させると、急に「ガタン」と側面からの衝撃を受けて、なぜなのか完全に停止してしまった。
涼風紗雪 : 「んっ……何か当たった……?」 衝撃がした方を向く
GM : あなたが見た方には暗闇が広がるばかりだった。 その衝撃は下の方から来ているらしく、身を乗り出さなければ確認はできそうにない。
GM : 「ガタン、ガタン」と今度は両側面から、続け様に襲ってくる衝撃。 何者かがトロッコを叩いているのだと、すぐに分かった。
涼風紗雪 : 「いくらなんでも叩きすぎじゃない、かな……」 そーっと身を乗り出してトロッコの下を確認する
GM : ソレの正体を確認するために、あなたは身を乗り出した……その時。
??? : 「たす、け……」
GM : あなたはソレに肩を掴まれた。 そして、息遣いが聞こえる近さで、ソレの正体が露わになる。
GM : ……ソレはボロボロの服を着た男だった。 しかし、肌は不気味なほど青白い。 もう生きている人間ではないということだろう。
涼風紗雪 : 「ふあっ……!?なっ、なに……!」 ビクッと体を震わせて後ろに引こうとする
GM : あなたが身を引くと、ソレも同時についてきた。 このトロッコに、逃げられるだけのスペースはない。
GM : ソレはあなたを捕食しようというのか、その口を大きく開けて見せた。
涼風紗雪 : 「い……い、いや!なんでこんな……!」 目をギュッと瞑りながら、男を振り払うように両手を突き出す
GM : ソレはあなたに突き飛ばされて、呻き声をあげながら崩れ落ちた。
ファウスト : 「私の透明化の魔法が先ほど破れてしまったのはさておき……、あの魔女の使い魔、リビングデッドか」
ファウスト : 「鮮度はいいらしい、元となった“素材”の意識が残っているからな」
GM : リビングデッドは1体だけではなかった。 あたりを見回すと、他にも数体が這い回っている。
涼風紗雪 : 「お……多くないか……?」 閉じていた目を開いて、周囲をキョロキョロと見回す
犬養一夏 : 「せんぱ~い、声、震えてませんか~?」にやにや
涼風紗雪 : 「……!いや、でも、触って来たりトロッコに入って来るのはルール違反なんじゃないかな……!!」
犬養一夏 : 「え~? 言い訳ですか~?」
涼風紗雪 : 「ぐっ……。た、確かに、言い訳は……見苦しいか……」
犬養一夏 : 「ふふっ、でも、さっきのせんぱい、すごくかわいかったですよ~」
涼風紗雪 : 「やめてくれよ……。そんなかわいくなかっただろ」 恥ずかしそうに目を伏せながら
犬養一夏 : 「ホントにホントですって、せんぱいはかわいいですよっ」
涼風紗雪 : 「もう……っ」
涼風紗雪 : 「(ここから先は、もう驚いたりしないようにしなきゃな……)」
ファウスト : 「……もし掴まったら、あなたもコイツらの仲間に入ることになる」
ファウスト : 「気を付けたまえよ」
GM : あなたはリビングデッドの手を振り払い、トロッコをガタガタと揺らされながらも、なんとかリビングデッド達の住処を抜けた。
涼風紗雪 : 「忠告がちょっと遅いんだよな……」 スピーカーだと分かってるけど小さく文句を漏らす
犬養一夏 : 「まあ、録音した通りに流れてますからね…」
涼風紗雪 : 「そりゃそうか……」 苦笑いして
GM : ──しばらく進むと、廊下から差し込む明かりが見えてきた。
涼風紗雪 : 「ん……そろそろ出口かな。結構走ってたもんね」
犬養一夏 : 「はい、教室ひとつ分のスペースしかないですからね~」
GM : しかし、その明かりは、すぐ人影に遮られて見えなくなった。
涼風紗雪 : 「……?あれ……」
魔女 : 「追いついたよッ! 観念するんだねえ!!」
GM : ……人影の正体は、あの魔女だった。 使い魔のリビングデッド達に足止めさせている間、魔法の箒に乗って追いついたのだろう。
涼風紗雪 : 「わ……!あの魔女だっ……」
魔女 : 「ヒッヒッヒ、死ぬがよい!」
涼風紗雪 : 「……どうすれば……」 身構えて
ファウスト : 「あの魔女は魔界から出られない! そのまま突っ切れ!!」
涼風紗雪 : 「そういうこと……!」 自分が動かしているわけじゃないが、トロッコの手すりを小さくトントンと叩く
GM : あなたのその仕草に応えて、あなたの乗るトロッコは、再び、加速をはじめようとしていた。
GM : しかし、トロッコが動くことはなかった。 あなたが魔女の手に掴まって動けなくなったのだ。
魔女 :
「待ちなぁぁぁッ!! 見物料だよッ! きっちり死んでから行くんだねえッ!!」
涼風紗雪 : 「ひゃっ……。だ、だから触って来るのはだめだって……!」 魔女の顔を見ないように視線を逸らす
GM : そして、あなたは、杖を突きつけられた。 目を逸らしても、杖の先に光が集まるのが見える。
涼風紗雪 : 「……!こ、これって……攻撃される……?」 杖の先を見て
涼風紗雪 : 「(いやいや、オーヴァードじゃないんだから……!お化け屋敷なんだから……!)」 そうは思うがどうすればいいか分からず固まってしまう
GM : あなたが戸惑っていると、その後ろにいた一夏が、魔女を突き飛ばした。
涼風紗雪 : 「え!?あ、一夏ちゃん……!?」
犬養一夏 : 「終点あたりの仕組みは、あまり分かんないですけど、確かこれでいいハズ……! 行きましょう……!!」
涼風紗雪 : 「そうなんだ……!?じゃあ、い、急いで、急いでっ」 トロッコを叩く
GM :
つきとばされた魔女は、断末魔をあげた。 死んだ訳ではないが、もう追ってくる様子はない。
GM : そして、魔女の試練を潜り抜けた2人は、ついに終点に辿り着く。
涼風紗雪 : 「凄い叫び声だった……。やっと終わりかぁ……」
犬養一夏 : 「魔女の声優担当の大山田先生、演劇部の顧問ですからね……、演技力も相当だったみたいで……」
GM : おばけ屋敷の出口の扉には、廊下からの淡い光が差し込んでいた。
GM : 近くには掃除用ロッカーがあり、学校に戻ってきたと実感できる。
涼風紗雪 : 「はぁ……」 安心して息を大きく吐く
犬養一夏 : 「ふふっ、せんぱい、めちゃめちゃ怖がってましたね~」
涼風紗雪 : 「あぁ……まぁ……そ、そうだね……。少し怖かった……くらいかな……」
犬養一夏 : 「ええ~? まあ、ここはせんぱいを立てて、そういうことにしておきますか~」クスクスと笑いながら
ファウスト : 「いくつかのトラブルもあったが、ついに終点だ! くれぐれもトロッコに忘れ物はしないように気を付けたまえ」
涼風紗雪 : 「はーい……」 シートベルトを外して、トロッコの外に出よう
GM : 一夏も同じようにトロッコの外に出る。
GM : ──そうして、あなたたち2人は、外の廊下に出るために、出口の扉に向かって歩き出した。
GM : その瞬間。
GM : 「ギイィッ!」という金属音と共に、近くのロッカーから、血に塗れた女が飛び出してきた。
血まみれの女 : 「……どうしてあたしを置いていくのおおおおおお!!!!」
涼風紗雪 : 「きゃあぁっ!?」 悲鳴を上げ、女から逃げるようにして一夏ちゃんに抱き着く
犬養一夏 : 「きゃあっ!?」
GM : 一夏もまた悲鳴をあげて、あなたに縋るように抱き着いた。
涼風紗雪 : 「……っ!い、一夏ちゃん、こっち……!!」 一夏ちゃんの悲鳴を聞いた瞬間、ハッとしたように手を取って出口の扉まで走り出す
犬養一夏 : 「は、はいっ……!」
GM : 一夏は震える声でなんとか答えると、あなたに手を引かれて出口に走った。
GM : あなたたちは急いでおばけ屋敷を後にする。 流石に外まで追ってくることはないようだ。
涼風紗雪 : 「……はぁ、はぁ……。び、びっくりした……」
犬養一夏 : 「はあ……はあ……、あ、あんなの聞いてないですよっ……」
涼風紗雪 : 「あ、やっぱり一夏ちゃんも知らなかったんだね……」
犬養一夏 : 「まっっっったく知りませんでしたっ……もう心臓が止まるかと思ったっ……」
涼風紗雪 : 「僕もだよ……」
涼風紗雪 : 「魔女を突き飛ばして終わりで良いのかなとか、でもとにかく終わって良かったって安心してるとこにあんなことしてくるんだもんね……」 小さく笑いかける
犬養一夏 : 「ホントに……もうメチャクチャですよ~……」笑顔をみて安堵の息を漏らす
涼風紗雪 : 「ふふっ……。でも楽しかったよ。最後は一夏ちゃんもかわいい声出してたしね」
犬養一夏 : 「うっ……、怖いのヘーキって顔してた分、なんか恥ずかしいです……」
涼風紗雪 : 「まあ、僕も怖がっちゃってたし……恥ずかしがることなんてないよ」
涼風紗雪 : そう微笑みかけながら、一夏ちゃんの手を再び繋ぐ。
GM : 最後に出てきた血塗れの女が余程怖かったのか、その手はまだ少し震えていた。
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん……大丈夫?」
犬養一夏 : 「……えへへ、実はまだちょっと怖くてっ」
犬養一夏 : 「……あの、もっとくっついてもいいですか?」
犬養一夏 : 「……その、さっき分かったんですけど、そうすると、とっても落ち着くのでっ」
涼風紗雪 : 「うん、いいよ。……おいで、一夏ちゃん」 片方の腕を広げて
犬養一夏 : 「だ、抱き着くのは、えっと、流石にここだと人目がありますしっ……!」
涼風紗雪 : 「……それもそうか」
涼風紗雪 : 確かにと頷くが、その直後に一夏ちゃんの手を引っ張ってこちらへ体を寄せ、優しく抱きしめよう。
犬養一夏 : 「……っ!?」
GM : 一夏は驚いて体勢を崩して、あなたの胸元に顔を埋めるような形で抱き着いてしまう。
涼風紗雪 : 「でも僕達、今日は恋人同士だからね。恋人なら、人目があったって抱き着いても別に良いでしょ?」
犬養一夏 : 「せ、せんぱいっ……」あなたの胸元から顔をあげて、目を合わせようとするが、恥ずかしくて出来ない
涼風紗雪 : 「駄目だったかな?」
犬養一夏 : 「あ、ぅ……」
犬養一夏 : 「駄目、じゃない……ですけど……」先程とは違う要因で声が震える
涼風紗雪 : 「じゃあ良いよね?……でも、もう怖くはなくなったみたいかな?」 さっきとは様子が違うのを察して、少し安心したように微笑む
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「…………ううん、もうちょっと、こうしていていいですか?」
涼風紗雪 : 「……うん、もちろんっ。君がそうしたいなら、いくらでも構わないさ」 ぎゅうっと抱きしめる
GM : 一夏はあなたの細い腰にゆっくり手を回すと、薄氷を踏むように恐る恐る抱き返した。
GM : ……ぴったりと密着して撓んだ一夏の双丘が、その柔かさを衣服越しに主張してくる。
GM : ほのかに漂う自作香水のフルーティーな芳香。
GM : あたりの肌寒さとは裏腹に高まっていく体温。
GM : “くっつくと落ち着く”と言ったのに響く心音。
GM : ──こうして抱き合っていると、虚偽のヴェールに隠れた“本当の一夏”に触れられる。
GM : 何故だろうか、そんな気がした。
GM : 夏合宿で秘密を明かした一夏に、隠さなければいけないことなんて、ないハズなのに。
GM : ……暫しの間、温もりに包まれながら、抱いてしまった疑念の正体を探ろうとしたが、
GM : 急に廊下に響いた「ひゅーひゅー!」と芝居染みた口笛の音で、現実に引き戻された。
涼風紗雪 : 「……!」 ハッとして、口笛が聴こえた方へ顔を向ける
GM : 音が聞こえた方向に視線を送ると、そこには同級生のバスケ部男子が三人並んでいた。
GM : 皆一様に意地の悪い笑みを浮かべ、抱き合うあなた達に対する奇異の目を向けている。
涼風紗雪 : 「…………」 そちらを確認してから、薄く笑みを浮かべ
涼風紗雪 : 「どうしたの?僕達に何か用かい?」 余裕気に見せつけるように一夏ちゃんを抱きしめたまま、そう問いかける
2年のバスケ部男子たち : 「ああ!? 俺らァ、彼女の一人もいねェから男子だけでつるんでると思ってんのか!? くそッ、見せつけやがってッ…!!」
2年のバスケ部男子たち : 「用はねェ! だが、よォく周りを見てみることだなァ! 涼風ェ!!」
GM : そして、あたりを見渡してみると、おばけ屋敷の待機列に並ぶ人の衆目も集めていた。
GM : この場にいるほぼ全ての人間から、無遠慮にもジロジロと好奇の目を向けられている。
GM : ──往来で抱き合えば人目を引く、というのは当然の帰結ではあるが、それに加えて、今回は口笛で視線誘導された結果、激しい注目を浴びることになってしまったらしい。
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん、もう大丈夫かな?どうやら場所を移した方がいいみたいだ」
犬養一夏 : 「……で、ですねっ」
GM : 一夏も周囲からの目に気付いたのか、あなたの肩をトンと軽く押すと、そのままの勢いでスッと後ずさって離れていった。
GM : ……二人の間にあっただろう熱気は、嘘みたいに急速に失われていき、その代わりに元々あった11月の寒気が戻ってきた。
涼風紗雪 : 「…………」 その感じに少しだけ寂しそうにしてから
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん」 離れられた分一夏ちゃんに詰め寄って、その手を繋ぎにいく
GM : 一夏は出された手を握ろうか逡巡して後ずさると、自身の胸に手を置いて、久しぶりに空気を取り込むように深呼吸した。
GM : そのあと、一夏はあなたに背を向けて、
犬養一夏 : 「い、いえっ! 次っ! 行きましょうかっ!!」
GM : こころなしか声をうわずらせながら、そう口にするや否や、あなたの返事も待たずに、ブツブツと何かを呟きながら、スタスタと逃げるように早足で歩いていってしまった。
涼風紗雪 : 「……うん、そうだね」 無理させちゃったかな、と困ったように笑って
涼風紗雪 : 「悪かったね、見せつけてしまって。僕達は行くから、君達も文化祭を楽しむといいよ」
涼風紗雪 : と言って男子達を少し怒ったような冷たい目で見てから、一夏ちゃんの後を追いかけて歩いて行こう
GM :
犬養一夏 : 「ふ、ぅ……、今日、いくらなんでも、くっつきすぎですしっ……」ぼそっ
犬養一夏 : 「“いくらでも構わない”なんて言われても、こ、これ以上は、ぼくの心臓がもちませんしっ……」ぼそっぼそっ
GM :
GM : それから二人は、来場者の分だけ騒がしくなった昼過ぎの渡り廊下を、黙々と歩いていた。
GM : 一夏は暫くの間、あなたの3メートルほど前方にいたが、曲がり角に差し掛かったところで、
GM : その歩みを緩めると、あなたの隣に並んできた。 ……あの人目から逃げきれたからだろう。
犬養一夏 : 「……せんぱいが急にあんなコトするから、もう死ぬかと思いました」
GM : はあ、と寒さで白くなった溜め息をつきながら、一夏は文句がありそうな目を向けてくる。
涼風紗雪 : 「あはは……ごめんね。僕はあんまりああいう人目気にしないから、つい……これからは気を付けるよ」
犬養一夏 : 「気を付ける気を付けるってもう何回目ですかぁ……まあ、それはいいですけど……」
犬養一夏 : 「それより」とあなたのYシャツの裾をくいくい引いて、
犬養一夏 : 「気付いてます……? 後ろの……」
GM : 一夏は耳元で囁くように尋ねてきた。
GM : ──わざわざ一夏に言われるまでもなく、あなたは既に察知している。
GM : おばけ屋敷から出たあたりから、後ろからコソコソついてきている“ストーカー”がいると。
GM : ……不幸中の幸いと言うべきか、一夏との抱擁で目立ったことが呼び水になったのだろう。
涼風紗雪 : 「……あぁ、気付いているよ。さっきからずっとついてきているね」
涼風紗雪 : 「あれがストーカーかな。まさか、本当に来るなんてね……」
犬養一夏 : 「ええ、文化祭デート作戦が、まさかこうも上手くいくなんて……」
GM : あなたがずっと探していた“ストーカー”の正体は、枯れ木のような長身痩躯の人物だった。
GM : ジャケットのフードを目深に被っていて、人相こそ分からなかったが、体格からして男性。
GM : いかに相手が細身でも、男性と女性の間には体格差というものがある。
GM : ……しかし、あなたはオーヴァード。 その程度の性差は、軽々と捻じ伏せることができる。
GM : とはいえ、もしも相手もオーヴァードだった場合は話が変わってくる。
GM : 堂々と能力を使ったら、それを見た来場者たちに対して記憶処理を施す必要が出てくるし、
GM : 《ワーディング》を使ったら、来場者たちが気絶して、それはそれで騒ぎになってしまう。
GM : すぐに考えられる対応策となると「人気のない場所にストーカーを誘き寄せた後、一夏とストーカーに対して《ワーディング》を使用すること」などが挙げられるだろうか。
GM : そうすれば、ストーカーが非オーヴァードだった場合はノーリスクで取り押さえることができるし、オーヴァードだった場合も人目を気にしないで能力を使うことができる。
涼風紗雪 : 「(誰かまでは分からないけど……この場で取り押さえるのは流石にやめておいた方がいいな……)」 歩きながら少し考えて
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん、あいつを人気の無い場所に誘い込もうかと思うんだけど、別棟の方って確か誰も使って無かったよね?」 小声で聞く
犬養一夏 : 「ええ、確か。 あっちにあるのは、主に部室とか特別教室ですから」小声で返す
涼風紗雪 : 「だよね。じゃあそっちへ行こう、出来るだけ不自然に見えないように……」
涼風紗雪 : 「……って言っても、流石に怪しまれるかな。わざわざそっちに行く理由なんてないし」
犬養一夏 : 「あっ、トイレとかどうですか? みんなが使ってる方のトイレは、朝からずっと混んでますし!」
涼風紗雪 : 「トイレか……!なるほど、混んでるから空いてる方に行こう、と見せかければ確かに自然かもしれない」
涼風紗雪 : 「賢いね、一夏ちゃん。じゃあ、それで行こう」
犬養一夏 : 「ふふ~、賢いって言われるのは久しぶりですけど、それでいきましょう!」ドヤ
涼風紗雪 : じゃあ頷いてから、近くにある混んでいるトイレに寄りつつ別棟に向かいます!向こうの方は空いてたよね、とか話しながら!
GM : ──あなた達は別棟のトイレに向かって歩いていった。
GM : 来場者向けに解放されているトイレは、当然ながら混みあっている。 だから「待ちたくないから空いている遠くのトイレに向かう」というのは、何も不自然な行動ではない。
GM : もちろん、あなたの狙いは「人気のない場所にストーカーを誘き出す」ことにある訳だが、相手は気付いていないハズ。 むしろ、これをチャンスと捉えているかもしれない。
GM : 一歩一歩、足を動かす度に廊下の喧騒は静まっていき、遠くの潮騒のように聞こえてくる。
GM : ……そうして、やがて、廊下に残された音は、一夏とあなたの二人分の足音だけになった。
GM : しかし、あなたの狙い通りに、ストーカーは音を殺して、後ろから追ってきているらしい。 嫉妬や妄執のようなマイナスの熱量を孕んだ視線が、痛いほど突き刺さってくる。
GM : そして、別棟のトイレに通じる十字路を曲がった瞬間。
ストーカー : 「うああああああああああああああああああッッ!!」
GM : ──先手を取って仕掛けたのはストーカーの方だった。
GM : そのフードの男性は、ポケットから刃渡り約10cmほどの折り畳み式ナイフを取り出すと、ケダモノの如く叫びながら、まっすぐ突っ込んできた。
GM : ……狙いは、一夏だ。
涼風紗雪 : 「なっ……なんだと!?」 絶叫に反応して振り返り
涼風紗雪 :
いや、怯んでいる場合じゃない!と、すぐに一夏ちゃんを背に隠して≪ワーディング≫を使います!
レネゲイド物質で作られた青い薔薇の花弁が周囲に舞い散り、別棟全体を包み込むようにワーディングが展開する!
犬養一夏 : 「──ッ!?」
ストーカー : 「…………!!」
GM : 一夏を襲った凶刃は、掠り傷ひとつ残すことも叶わず、無様にもカランカランと転がった。
GM : 同時に、男性と一夏もバタリとその場に転がる。 二人とも非オーヴァードだったのだろう。
涼風紗雪 : 「……倒れた」
涼風紗雪 : 「こいつ……オーヴァードじゃないのか……?」
涼風紗雪 : 驚きながらストーカーを見下ろした後、振り返って一夏ちゃんを確認する。
涼風紗雪 : 「一夏ちゃんも……オーヴァードじゃないんだ。って、そりゃそうか」
涼風紗雪 : でも良かった、君がこっち側に来ていなくて……。
涼風紗雪 : そう安心しながら、一夏ちゃんの打ちどころが悪くないか見る。
涼風紗雪 : その後、まずストーカーからナイフを取り上げよう。
涼風紗雪 : で、ストーカーの腕を後ろに回して、自分がつけていたネクタイでストーカーの両手首を手錠のように結んで拘束。
涼風紗雪 : ストーカーをうつ伏せに押さえつけた状態にして、ワーディングを解除します。
GM : それから暫くした後、《ワーディング》をかけられていた二人は、呻きながら目を覚ました。
GM : ……フードの下に隠されていたストーカーの顔が覗く。
GM : その男性の顔つきは、正直まったく見覚えがなかった。
GM : 西洋人染みた高い鼻。 瘦せこけ骨張った頬。 ちぢれた長めの白髪。 今に飛び出そうな眼。
GM : そして、仮面の如く張りついた狂喜の表情。
GM : ……さっきまで、おばけ屋敷にいたからか“甦った魔法使い”というフレーズを連想させる。
涼風紗雪 : 「お前……誰だ?」
ストーカー : 「………………」
GM : 重い重い沈黙。 そして笑顔。 それが相手の返答だった。
犬養一夏 : 「……あの、せんぱい? あたし、いつの間に気を失っていたんでしょう?」
犬養一夏 : 「なんかストーカーも拘束されてるし」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん。えっと……さっきこいつの叫び声を聞いて、突っ込んでこられた時かな。驚いて失神してしまったみたいだね……」 嘘は苦手だが、出来るだけバレないように落ち着いて言う
涼風紗雪 : 「こいつはその間に取り押さえたんだ。けど……」 不気味そうにストーカーの笑顔を見下ろす
犬養一夏 : 「……なるほど?」一緒に見下ろす
涼風紗雪 : 「……おいっ。お前……本当に僕のストーカーなのか?答えろっ」 もう一度問いかける
ストーカー : 「ふふふっ、くふふっ、あははっ」
GM : 男性はあなたを見上げると、不気味な笑みで返事をした。
犬養一夏 : 「ねえ、せんぱい? こんな様子じゃあ、聞くだけムダじゃないですか?」
涼風紗雪 : 「そう……みたいだね……」
涼風紗雪 : 「(オーヴァードじゃなくて、しかもこんなまともな精神状態じゃない奴がストーカーの正体……?本当にこいつが犯人なのか……?)」
涼風紗雪 : この男がこれまで尻尾も掴めなかった犯人だとは信じがたく、困惑したように笑顔を見下ろす。
涼風紗雪 : 「……いや、とりあえず。一夏ちゃん、職員室に行って先生達を呼んできてもらえないかな?ナイフを持った危険人物がいたって伝えてほしい」
犬養一夏 : 「わかりました、ストーカーから目を離さないで待っててくださいね」
涼風紗雪 : 「うん……ありがとう」
GM :
GM : ──その後、男性を警察に引き渡した後、あなたは交番で事情聴取を受けることになった。
GM : 男性との接点などをはじめとして様々なことを聞かれたが、答えられるものは少なかった。 ……何故なら、本当に知らない人物だったのだから。
GM : それは警察も同じだったらしい。 「あの男性の所持品からは、本人確認できるものが何も見つからなかったため今も調査している」とのことだ。
GM : しかし、あの男性の所持品であるウエストポーチには、あなたの衣服がしまわれていた他、
GM : Y高校での聞き取り調査の結果、ストーカーの目撃者が一夏以外にも数名見つかったため、
GM : 「窃盗罪ならびにストーカー規制法違反などの立証は十分に可能だろう」という話だった。
GM : ……そうして事情聴取を終える頃には、いつのまにか、外はすっかり暗くなっていて、あなたはパトカーで家まで送り届けられることになった。
GM :
GM : あなたを心配して玄関で待っていた両親に、これまでの経緯を軽く説明して安心させた後、
GM : あなたは自室に戻ると、ベッドに腰を下ろして一息ついた。 ストーカーの視線がなくなったおかげで、久々にリラックスすることができそうだ。
GM : ……ふとスマホに目を落とすと、RINEの未読通知がそこそこ溜まっていたことに気がつく。 そのほとんどは、幼馴染の春香からのメッセージだ。
GM : ストーカーの件は春香の耳にも届いていたそうで、あなたのことを気にかけてくれていたが、これまで事情聴取で忙しくて気付けなかったらしい。
涼風紗雪 : 「春香……。心配かけちゃったな。ちゃんと話しておかなきゃ」
涼風紗雪 : 春香ちゃんに通話をかけます!もしもし!
狩野春香 : 「あ……! スズぅ……!! もうホントに心配したよぅ……」スマホ越しに安堵の声が聞こえてくる
涼風紗雪 : 「春香、ごめんね。事情聴取で気付けなかったんだ」
涼風紗雪 : 「でも、もう全部終わって家にも帰ってきてるから大丈夫だよ」
狩野春香 : 「ホント? ケガとかしてない?」
涼風紗雪 : 「うん。掠り傷一つついてないよ」
狩野春香 : 「そっかそっか、よかったぁ……」
狩野春香 : 「じゃなくて、まずごめん、だよね」
狩野春香 : 「いちばん近くにいたハズなのに、私、スズが悩んでることに気付けなかった……。 力にもなれなかった……」
狩野春香 : 「親友失格、だよ」
涼風紗雪 : 「な……何言ってるんだよ!そんなわけない、というかそれなら僕の方が謝るべきだ!」
涼風紗雪 : 「迷惑や心配をかけると思って、ずっと言わなかったのは僕だよ!だから春香がそんな風に思う必要ないって……!」
狩野春香 : 「ん……」
狩野春香 : 「そう言われてみれば、スズにずっと相談されなかったせいで、私、余計に心配したんだが??????」
狩野春香 : 「これはもういっそ、全面的にスズが悪いのでは????」
涼風紗雪 : 「えっ、そ、そうだけど……」 切り替えが早いな、と少し戸惑ったように笑って
涼風紗雪 : 「ふふっ、ごめんね。じゃあ、僕に出来ることなら何でもするから許して欲しいな」
狩野春香 : 「ええっ、なんでも!?!?!?!?」
狩野春香 : 「別に話の流れで冗談を口にしただけ、だったのですけれど、言ってみるものですわね……?(謎のエセお嬢様口調)」
狩野春香 : 「え、どうしよう。 なんでもか」
涼風紗雪 : 「うん、何でも。ほら、どこか遊びにつれていけとか、何か買えとかさ。ほんとに何でもいいよ」
狩野春香 : 「んー……、DB的には、ギャルのパンティーを要求するところかもしれないけど、さ〜すがにそれは……。 ネタが伝わらないどころか引かれるだろうし……(ブツブツ)」
狩野春香 : 「いや、でも、しちゃいけないことって、無性にしたくなるよな……(ブツブツ)」
涼風紗雪 : 「……春香?何言ってるの?」 微妙に聞き取れない
狩野春香 : 「お、おおぅ!? ナ、ナンデモナイヨー」
涼風紗雪 : 「そう?でもそんなに悩むなら別に今じゃなくても構わないよ」
狩野春香 : 「いや、決めた!」
涼風紗雪 : 「ん。なになに?」
狩野春香 : 「今後、こういうことがあった時、ちゃんと相談すること!」
狩野春香 : 「まあ、やっぱり力にはなれないかもしれないけど……、それでも、誰か知ってる友達がいると気がラクになると思うしさ」
狩野春香 : 「っていうか、そっちのが私の気もラクだし! 心配かけるのがイヤっていうなら、むしろ相談してくれよな!!」
涼風紗雪 : 「春香……」
涼風紗雪 : 「……うん、分かった。次からは絶対に相談する。約束するよ」 口元に小さく笑みを浮かべて
狩野春香 : 「約束だかんね!」
狩野春香 : 「……なお破ったら、卒業までコスプレで登校することを強制します」
涼風紗雪 : 「それは流石に先生に怒られちゃうよ。ふふっ……」
狩野春香 : 「でも、本当にすぐ相談してね? だって」
狩野春香 : 「……あのストーカー、警察署から逃げ出したんでしょ?」
涼風紗雪 : え!?GM、その情報って紗雪は知ってます!?初耳!?
GM : 完全に初耳です!
涼風紗雪 : ですよね!了解…!
涼風紗雪 : 「……え?逃げ出した……?」
狩野春香 : 「あれ? 聞いてないの?」
狩野春香 : 「いやあ、かくいう私も、ついさっき友達伝いに聞いたことなんだけどさ」
狩野春香 : 「なんでも取り調べ中に逃げられちゃったらしいよ? 手錠も当然つけてたのに、スルッと外して、軽々と逃げていったって」
涼風紗雪 : 「そんな……嘘だろ……!?手錠を外して軽々と逃げるだなんて、いくら何でもありえないよ!」
狩野春香 : 「まあ、そこは流石に誇張とか入ってるんだろうけど」
狩野春香 : 「でも、逃げ出したのは確かみたい。 うちの周りでも警察がバタバタしてる」
狩野春香 : 「血眼になってストーカーを探してるんじゃないかな」
涼風紗雪 : 「そうなんだ……。こっちにはそんな連絡来てなかったから、全然知らなかったよ……」
狩野春香 : 「警察としては、隠したい事実なんじゃない? 取り逃したことが問題にならないうちに解決したいんだと思う」
狩野春香 : 「……ともかく、スズ、しばらくは一人で外出するのは避けてね?」
涼風紗雪 : 「……分かった」
狩野春香 : 「まあ、あれだけ派手に警察が動いてたら、この街に戻ってくることなんて出来ないとは思うけどさ!」
涼風紗雪 : 「うん……それもそうかもしれないけど……」
涼風紗雪 : 「とりあえず、後で警察の方に電話で確認はしておくよ」
狩野春香 : 「うんうん、それがいいと思う」
涼風紗雪 : 「……じゃあ、一旦切るよ。……色々とありがとう、春香」
狩野春香 : 「……あ、ちょっと待って」
涼風紗雪 : 「……ん?どうしたの?」
狩野春香 : 「あの、さ……。 今年になってから、よくスズと一緒にいる……、後輩の、一夏ちゃん、いるじゃない……?」
涼風紗雪 : 「うん?一夏ちゃんがどうかしたの?」
狩野春香 : 「…………」
狩野春香 : 「ううん……、やっぱりなんでもないや」
涼風紗雪 : 「え、え?何でもないの?気になるんだけど……」
狩野春香 : 「ごめんごめん! うちの喫茶店に来てた客から、ちょっと悪いウワサを聞いただけだから、気にしないで!!」
狩野春香 : 「所詮はウワサだし、別のイツカちゃんのことかもしれないしさ」
涼風紗雪 : 「噂かぁ……。まあ、気にしないけど……それってどんな噂なの?」
狩野春香 : 「…………それは、ちょっと」
狩野春香 : 「聞かない方がいいと思う」
狩野春香 : 「ストーカーの一件で神経質になってるからか、ちょっと気になって……、まあ、いろいろと気を付けてってこと! それだけ!!」
涼風紗雪 : 「ん……分かった。とにかく気を付けるよ」
狩野春香 : 「フッ、なにかあったら、その時は僕が守ってあげるよ……(吐息多めイケボ)」
涼風紗雪 : 「んふっ……いきなりどうしたのっ」 突然の謎の台詞に噴き出す
狩野春香 : 「なんか不穏なまま通話を切りたくなくて、そんな反骨心からスズの真似してみた!」
涼風紗雪 : 「僕の真似なの!?確かに僕が言いそうな感じだとは思ったけど……もう、参ったな」
涼風紗雪 : 「まあ……ありがとう、春香。頼りにしているよ」
狩野春香 : 「ん! じゃあまた!!」
涼風紗雪 : 「うんっ。またね、春香」 電話を切ろう
涼風紗雪 : 「……ふぅ」
涼風紗雪 : 息を大きく吐いて、後ろ向きに倒れる。ぼふっ、と柔らかい音を立ててベッドの上に仰向けに寝転がった。
涼風紗雪 : 「(噂はさておき……ストーカーが警察から逃げ出した、か……)」
涼風紗雪 : 「(警察がそんなミスをそうそうするとは思えない。もしもオーヴァードが相手だったら、警察でも取り逃がしてしまうかもしれないけど……)」
涼風紗雪 : 「……でも、オーヴァードじゃないんだよな……」
涼風紗雪 : 瞳を閉じて、≪ワーディング≫で倒れたストーカーのことを思い出しながら悩む。
涼風紗雪 : いくら考えても結局答えは出ず、嫌な感情だけが心に残り続けた。
涼風紗雪 : 春香ちゃんのロイスのP感情を友情から誠意に、ストーカーのN感情を恐怖から猜疑心に変えます。
GM : 感情変更、了解しました! 気持ちの流れが分かって良い変更!!
GM : その後、あなたが受けていた諸々のストーカー行為はパッタリとなくなったものの、あのストーカーはついに警察でも見つけられなかったらしい。
GM : ……あのストーカーは一体、何者だったのだろうか? 何処に消えてしまったのだろうか? 何故あのようなストーカー行為に走ったのだろうか?
GM : なにも分かっていない。 ……が、一切の被害がなくなった以上は解決とするしか、ない。
GM : そうして、いくつもの拭い去れない疑念を残して、ストーカー事件は一旦の幕を下ろした。
GM :
GM : ──────────────────────────────
GM :
GM : ……一方その頃。 Y市内のレストラン“フォーチュンハンター”にて。
GM : その裏手に存在する事務室には、警察から逃げ延びたストーカーと、
GM : きちんと校則通りの服装をした、黒髪ショートの女子高校生がいた。
犬養一夏 : 「本当にすごいんだ“フォーチュン・ハンター”の力って」
ストーカー : 「フォーチュン・ハンターはあくまで表の顔」
ストーカー : 「……正しくは“ファルスハーツ”の力、ね?」
GM : 不気味な男は、事務室のソファに身を投げるようにして体を預けた。
GM : 次の瞬間、その男の体はシュルシュルと糸みたいに“解けて”いって、
GM : 化けの皮の内部から、金髪ツインテールの女子高校生が姿を現した。
GM : 男の体を編んでいた糸は一塊に纏まり、少女の左手に収まっている。
猫山朗姫 : 「もっとも、能力で仮装から演技まで熟すのは、わたしくらいでしょうけど」
GM : 朗姫は物憂げにしながら、着ていた男物のジャケットを放り投げた。
犬養一夏 : 「しかし、何あれ? ずっと笑ってるし、フツーに怖かったんだけど……」
猫山朗姫 : 「男の声も出せるけど、微妙なイントネーションの差とかでバレたら面倒じゃない」
猫山朗姫 : 「UGNエージェントだったし、わたしより戦闘経験豊富そうだったし」
犬養一夏 : 「でも、好きな姿に変身できるなんて、まるで魔法みたい」
猫山朗姫 : 「はっ、それはディスティニー映画の見過ぎね、これはそんなキレイな代物じゃないわ」
猫山朗姫 : 「──そんなことより、あの悪魔との“契約”の重さ、あなたはきちんと理解してるの?」
犬養一夏 : 「……またその話? 言ったでしょ? せんぱいが手に入るなら、なんでも構わないって」
犬養一夏 : 「っていうか、そもそも、勧誘してきたのはそっちじゃん」
GM : 朗姫は一夏を一瞥すると“それはそうだけれど”と肩を竦めてみせた。
猫山朗姫 : 「『恋は盲目』って言葉を改めて思い知ったわ。 その他は視界に入ってもいないのね」
猫山朗姫 : 「まったくもって呆れるわ、あの女のどこがいいのかしら」
犬養一夏 : 「……せんぱいを侮辱するつもり?」
猫山朗姫 : 「だったら?」
犬養一夏 : 「…………」
GM : 一夏の双眸から光が失せて、数秒の沈黙が二人の間を流れていった。
猫山朗姫 : 「……随分と嫌われたものね。 わたしとしては、一夏とはなかよくしたいのだけれど」
猫山朗姫 : 「まあいいわ、せいぜい今を楽しんでおきなさい」
猫山朗姫 : 「幸福なんて、取りこぼした瞬間に砕け散るワレモノだものね?」
GM : 朗姫は向けられた敵意を軽く受け流すと、出入口付近にあるコートハンガーにかけられたトレンチコートを羽織って、さっさと帰ってしまった。
犬養一夏 : 「…………」
GM : 一夏には、そんなクラスメイトを、見ていることしかできなかった。
GM : せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : ツンデレで登場ダイス振ります。別に10出ても構わないし、別に高くてもいいし~
涼風紗雪 : 1d10+93(1D10+93) > 3[3]+93 > 96
涼風紗雪 : よっしゃー!!!!!!
GM : よしよしよし……はじめての低い出目……
涼風紗雪 : やっとですよ…
GM : ちょっと安心できる…
GM : ではでは、文化祭編から結構な月日が経った年末頃から再開していきますよっ
涼風紗雪 : はーい
GM : 12月25日。 天気は曇り。
GM : 凍てついた真冬の寒風が、頬を切りつけていく。
GM : 初雪が降ってないなんて、信じがたいほど寒い。 12月も終わる間際なので、当然ではあるが寒い。
GM : 12時過ぎ。 Y高校の校門には、その寒さに身を縮ませて帰路につく生徒が、ぽつぽつと見られた。
GM : 時間を見れば明らかであるが、彼らは“授業が終わったから帰ろうとしている”という訳ではない。
GM : そもそも、Y高校は昨日から冬休みに入っている。 年が明けるまでは、その授業自体がないのだ。
GM : それでも学校に来ていた生徒……つまりあなた達は、今年最後の部活動を終えてきた運動部員だ。
GM : ──今日はクリスマス。 なのに部活動なんて、と恋人がいる部員の不満はテニス部にもあったが、
GM : それは顧問の教師から送られたクリスマスプレゼント(主にスポーツ用品など)で相殺されて……
GM : ギリギリで和やかな空気のまま部活動を円満に終えて、あなたも一夏と二人で帰るところだった。
GM :
GM : その帰り道。
GM : クリスマスで浮かれ気分の街を二人で歩いていると──夏に大量発生するセミと同じく、冬の風物詩とでも言うべきものか──駅の方に向かう男女二人組と何度もすれちがった。
GM : 言わずもがな、クリスマスにかけて急増したカップル達。 寿命が短いのもセミと同じだ。
犬養一夏 : 「明らかに張りきった服装の男女……ん~、クリスマスですね~……」
犬養一夏 : 「みんな駅の方に歩いていきますけど、ディスティニーランドにでも行くんですかね?」
涼風紗雪 : 「どうだろう?みんなってわけじゃないかもしれないけど、まだお昼だからね」
涼風紗雪 : 「このまま夜までデートしにいく人達も多いのかもしれないね……」 道行くカップル達を眺めながら
犬養一夏 : 「なんかいいですね、そういうの。 あたしはデートなんてしたこと……」
犬養一夏 : 「あっ、そういえば文化祭でしましたっけ、デート」
涼風紗雪 : 「そういえばそうだね。恋人のふりをしてもらった時のだ」 楽しそうに懐かしむ
犬養一夏 : 「ですです! まあ、あの時は事情もあったのでノーカウントな気もしますけど!」
涼風紗雪 : 「そうなる……のかな?そういえば、一夏ちゃんって今まで誰か付き合った人っているの?」 カウントされたデートはあるのかな、と気になって
犬養一夏 : 「あっ、それ、聞いちゃいます……?」
涼風紗雪 : 「あれ、もしかして駄目だった?」
犬養一夏 : 「別にダメって訳じゃないですけど、いたことあると思います?」
犬養一夏 : 「ほら、そういうのに縁遠い人間でしょ、あたしって」
涼風紗雪 : 「そうかな?僕はあってもおかしくはないかな、って思ってるよ」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん、かわいいしさ」
犬養一夏 : 「……はいはい、ありがとうございます」一瞬だけ口籠ったが、軽く流す
犬養一夏 : 「まあ、ホントのところ、一度だけチョットイイ雰囲気になったことくらいはありますよ? それ以上にはならなかったですけど~……」
涼風紗雪 : 「へぇ……そうなんだ。やっぱりあるんだね、そういうの」 納得したように頷いて
犬養一夏 : 「今もモテモテのせんぱいと違って、中学の頃の話ですけどねっ」
涼風紗雪 : 「モテモテって……。まあ、否定したらまた春香に怒られちゃうか」 困ったように笑う
涼風紗雪 : 「(中学の頃っていうと、一夏ちゃんと初めて会った時の頃になるのかな……嫌なことを思い出せちゃうかもしれないし、あんまり深く聞かない方が良いか)」
涼風紗雪 : 「別にモテても、全部断ってるからそんなに関係ないとは思うけどね……。今日もあとはこのまま家に帰るだけだしさ」
犬養一夏 : 「あれ? せんぱいもクリスマスの予定ないんですか?」
涼風紗雪 : 「うん。特にはないよ」
涼風紗雪 : 「いつもは家族でご飯を食べに行ったりもするんだけどね。今年はお父様の仕事が忙しくて無しになったんだ」
犬養一夏 : 「ふうん、なるほど、いつもは家族と~」
犬養一夏 : 「……ねえ、せんぱい?」
涼風紗雪 : 「ん?何かな」
犬養一夏 : 「せんぱいって、ディスティニー作品とか見ます?」
涼風紗雪 : 「ディスティニー?うん、見たことはあるけど……それがどうかした?」
犬養一夏 : 「あたしは小学校の頃から、友達の影響でディスティニー作品が好きだったんですけど、ディスティニーランドに行く機会はずっと逃がしちゃってて……」
犬養一夏 : 「ほら、ひとりで行くにはハードルが高いですし、だから……」
涼風紗雪 : 「いいよ。じゃあ、一緒に行こうか?」 何を言いたいのか察して、微笑みかけながら言う
犬養一夏 : 「えっ」
犬養一夏 : 「ま、まさか考えを先読みされるとは」
犬養一夏 : 「せんぱいにはかないませんね、ホントに」
涼風紗雪 : 「やっぱり。今の話し方聞いたら、行きたいのかなって思ってさ」
涼風紗雪 : 「じゃあ、いつ行こうか?今日でもいいけど、流石に急すぎるかな」
犬養一夏 : 「せんぱいが大丈夫なら、今日にでも行きたいです! クリスマス限定の催し物とかもありそうですしっ!」
涼風紗雪 : 「そっか……ちょうどクリスマスの話をしてた流れだったしね」
涼風紗雪 : 「よし、じゃあ行こう行こう!」
犬養一夏 : 「やった! それじゃあ、駅のブティック前で待ち合わせましょうか!」
涼風紗雪 : 「うん、分かった。ふふっ、楽しみだな……」
犬養一夏 : 「はい、楽しみです!」
犬養一夏 : 「……っと、もう分かれ道までついちゃいましたね、それじゃあ、また!」
GM : あなたたちは、いつも通りの場所で別れると、それぞれの家路についてまっすぐ帰った。
GM : そして、あなたは帰宅後すぐにランチと出支度を済ませると、帰りが遅くなる旨を使用人に伝え、待ち合わせ場所に急いだ。
GM : ──つもりだったのだが、待ち合わせしていた駅のブティックには、既に人影があった。
GM : その少女は、ブティックのショーウインドウを手鏡代わりに、熱心に前髪を弄っていて。
犬養一夏 : 「ん〜……」
GM : ……それが一夏だと認識するには、数秒の時間が必要だった。
GM :
GM : 裾が広がっていてワンピースみたいで可愛らしい白いコート。
GM : そのコートに隠されていて見えないほどの丈が短いスカート。
GM : そこから覗いた二本の足を寒さから守る黒いストッキングと、同じ黒の編みあげブーツ。
GM :
GM : 今の一夏を見れば「クリスマスデートを心待ちにしている少女」だと誰もが思うだろう。
GM : ……少女然とした可憐さがあって。 いかにも気合を入れて選んできたデート服に見える。
GM :
GM : ──しかし、それはあなたの知る一夏像とは掛け離れていた。
GM : いつもの一夏は、学校では校則を遵守した服装をしていたし、
GM : プライベートでも制服のままだったり、機能と価格を重視したパッとしない服装ばかり。
GM : ……そんな一夏が、いつも寝癖をそのままにしている一夏が、オシャレしてくるなんて。
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 初めて見る一夏ちゃんの姿に驚き、声をかけるのも忘れて見惚れてしまう。
涼風紗雪 : 「……あっ」 しばらくその場に立ち尽くしていたが、ハッと我に返って
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん!おまたせ!」 慌てて小走りで一夏ちゃんの方に駆けよっていく
犬養一夏 : 「あっ、せんぱい……!」身嗜みを整えているところを見られたくなかったのか、驚いた様子で
GM : 近付くと香水の匂いが漂ってきた。 普段は傍でも気付かないほど自然な香りだが、今日は少し濃いモノをつけているらしい。
涼風紗雪 : 「ごめんね。ちょっと来るのが遅かったかな」
犬養一夏 : 「い、いえっ! むしろ、あたしの方こそ、早く来すぎちゃってごめんなさい……?」
涼風紗雪 : 「ううん、そんな早く来て謝る必要ないよ」
涼風紗雪 : 「それより……似合ってるね、その服。凄くかわいいよ」 今さっき見惚れていたのを思い出して、少し照れたように微笑みながら
犬養一夏 : 「えっ、あっ」
犬養一夏 : 「ほら、今日の街はオシャレしている人ばっかりですし、浮かないためにというか……」
犬養一夏 : 「せんぱいの隣を歩くですし、ちょっと背伸びしてみたというか……」
犬養一夏 : 「いやいや、似合ってるって褒めてもらってるんですし、言い訳する必要ないですねっ!?」
犬養一夏 : 「と、ともかく、似合ってるなら一安心ですっ!」
涼風紗雪 : 「……隣って、じゃあ僕のためにお洒落してくれたってこと?何だか嬉しいな」
涼風紗雪 : 「でもそれなら、僕ももっと気合入れて服選んだ方がよかったな……」 ショーウインドウ越しにマフラーを巻いた自分の服装を見て
犬養一夏 : 「いえいえ、そんなの、いいですからっ!」
涼風紗雪 : 「そう?」
犬養一夏 : 「まあ、気合の入った服を準備してきてくれたら、それはそれで嬉しかったと思いますけど……」
犬養一夏 : 「それより、いっしょに過ごす時間が多い方がうれしいですしっ」
涼風紗雪 : 「そっか……ありがとう、一夏ちゃん」
涼風紗雪 : 「じゃあ、今日はいっぱい楽しもうか!」
犬養一夏 : 「はいっ! さっそく行きましょうっ!!」
GM : ──満員電車に揺られて30分。 最寄り駅から歩いて5分。 さらに待機列に並んで10分。
GM : 合わせて1時間もしないうちに、あなた達は世界有数のテーマパーク・ディスティニーランドの入口に辿り着いたのだった。
GM : そのままエントランスを抜ける。 すると、そこは現代日本から隔絶された別世界だった。
GM : このテーマパークの創立者が過ごした20世紀初頭の古き良き時代のアメリカの街並みが、そこにはごく自然に広がっていた。
GM : ……至極当然のことだが、来場者数は元より、その完成度は高校の文化祭の比ではない。
GM : 建造物の優美さに始まり、植木や照明等の小物のひとつにも気が配られていて、それぞれ過不足なく世界観を演出している。
GM :
GM : さらにまっすぐ歩くと、視界が開けてきて、次は更なる“異物”があなたたちを出迎えた。
GM : ──そこには、明らかに時空を異にする中世ヨーロッパの白亜の城が聳えていた。 まさに物語の世界から顕れてきたようだ。
涼風紗雪 : 「相変わらず大きなお城だね」 楽し気に、少し瞳を輝かせながら城を見上げる
犬養一夏 : 「わあ……」ちょっと放心状態
犬養一夏 : 「写真とかで見たことはありましたけど、実物はこんなに大きいんですね……」
涼風紗雪 : 「実際に見るとそう思うよね。分かるよ」
犬養一夏 : 「ええ、ホントに……」
犬養一夏 : 「っていうか、“相変わらず”って、せんぱいは来たことあるんですか、ディスティニーランド? 」
涼風紗雪 : 「うん、何度もあるよ。最後に来たのは中学に上がる前くらいだから、結構久しぶりだけどね」
犬養一夏 : 「ふうん、なるほどなるほど」
犬養一夏 : 「それじゃあ、ディスティニーランド経験でも先輩ということで、せんぱいにエスコートしてもらおうかなぁ?」
涼風紗雪 : 「そうだね……よし、分かった」 頷いて
涼風紗雪 : 「では、参りましょうか?お姫様」 微笑みながら、一夏ちゃんに手を差し出す
犬養一夏 : 「……いやいや、あたしはお姫様なんかじゃないですって何度も」たじろぎ
犬養一夏 : 「というかっ、別にもうデートの演技はいらない訳ですし、手をつなぐ必要はないのではっ」
涼風紗雪 : 「ふふっ、ごめんね。この場所でエスコートしてなんて言われたら、つい」 口元に手を添えてくすっと笑う
犬養一夏 : 「もー、からかってますー……?」
涼風紗雪 : 「僕はいつだって真面目に王子様してるよ」 少し笑った後
涼風紗雪 : 「……じゃ、行こうか一夏ちゃん!」 と、今度は普通にエスコートしようと歩き出す
犬養一夏 : 「はいっ」後ろについて歩き出す
犬養一夏 : 「……しかし、せんぱいが張りきって服選びしてこなくてよかった、と改めて思いましたよ」隣に並んで
涼風紗雪 : 「え?どうして?」
犬養一夏 : 「え~、だって、仕草から服装まで城に馴染みすぎたら、キャストさんと間違われちゃいそうですもん」からかうように笑う
涼風紗雪 : 「あはは、なるほどね。それはそれで悪い気はしないかな」
犬養一夏 : 「いやいやいや! そうなったら、あたしが困りますからっ!」
涼風紗雪 : 「ごめんごめん、お城に馴染みそうなんて言われたらちょっと嬉しくてさ」
涼風紗雪 : 「でも仮にキャストだと間違われるようなことがあっても、一夏ちゃんを放っておいたりなんてしないから大丈夫だよ」
犬養一夏 : 「そ、そういう問題ですか……?」
涼風紗雪 : 「だって一夏ちゃんと遊びに来てるんだし。そういう問題だよ」
犬養一夏 : 「や、そもそもキャストさんと間違われないようにしてくださいよ……!? せんぱいが事情を説明してる間、あたしはなんだか居心地が悪そうですしぃ……!」
涼風紗雪 : 「ん、分かったっ。というか、今は普通の服なんだし間違われることなんてないよ。安心して」
犬養一夏 : 「あっ、それもそうでしたね……? あはは……」
犬養一夏 : 「なんか想像したらちょっとイヤだなって思っちゃって……」
犬養一夏 : 「ま、まあ、それはともかく! どこから回りましょうか!!」
涼風紗雪 : 「……そうだね。じゃあ……」
涼風紗雪 :
「よし。最初はあそこからにしようかな。一夏ちゃんついてきてっ」
初ディスティニーの一夏ちゃんのことを考えて、適当なアトラクションへ向かっていこう
GM : ──自然の世界。 動物の世界。 西部の世界。 未来の世界。 創作の世界。 魔法の世界。
GM : ディスティニーランドには、先ほど通り抜けたアメリカ街も含めると7つの世界がある。
GM : 今いる城下の広場から、パッチワークみたいに繋がっている世界をどう回っていこうか。
GM : ランド経験者のあなたは、あっという間にプランを立てると、一夏を連れて歩き出した。
GM :
GM : ──そうして、あなた達は様々なアトラクションを巡って、またグッズを買って着用し、遊園地というものを満喫していた。
GM : その道すがら。 すっかり日が沈んだ頃、偶然にもキャラクターのパレードに遭遇して、人混みで足を止めていた時のこと。
GM : またしても、というべきか。 ひさしぶり、というべきか。
GM : ……約100を越える観客すべての視線がパレードに向けられる中、たった一人、あなただけに向けられている視線があった。
GM : 間違いない。 誰かに尾けられているのだ。 そう確信する。
GM : もしかして、あのストーカーが警察から逃げ延びた先が、偶々、このあたりだったのか?
GM : ここで、せんぱいには《知覚》で判定をおねがいします! 追跡者の正体を暴くための判定です!!
涼風紗雪 : なに!?判定!?今まで特にすることのなかった判定がある!?了解!!
涼風紗雪 : 3dx くそざこ知覚(3DX10) > 10[4,5,10]+7[7] > 17
涼風紗雪 : おー!!
GM : せんぱい、つよすぎない????
GM : では、結果を出しますね!
涼風紗雪 : お願いします!
GM : いや、違う。 ……追跡者の正体は、一組のカップルに変装した涼風家の使用人達だった。
使用人 : 「奥様、お嬢様は……」携帯電話に小声で
GM : 彼らの口振りからすると、主である両親の命なのだろう。 ストーカーの件で心配して、あなたに見張りをつけていたらしい。
涼風紗雪 : 「…………」 警戒していたら思わぬ犯人に唖然として
涼風紗雪 : 「(あれって、うちの使用人の……。っていうか、今かすかに聴こえたけど奥様って……)」
涼風紗雪 : 「……ふふっ」 思わず小さく声を出して笑ってしまう
犬養一夏 : 「せんぱい、どうかしました?」
涼風紗雪 : 「ううん、何でもないよ」
涼風紗雪 : 「(もう、お母様ったら。使用人の仕事増やしてまで……心配しすぎだよ)」 と心の中で思うが、別に嫌そうでは無く
涼風紗雪 :
「ほら、それより見て一夏ちゃん!すっごく綺麗だよ!」
楽しんでいる一夏ちゃんにわざわざ知らせる必要は無いと思い、気にせずパレードを指差したりしている
犬養一夏 : 「……そう、ですねっ」少し気にかかったようだが、言われるままにパレードに目を向ける
GM : あなた達は使用人達を後目に、煌びやかなキャラクターのパレードを思い切り楽しんだ。
GM : そうして、ストーカーに怯えていたのが嘘のように楽しげなあなたを見て安心したのか、
GM : パレードが終わる頃には、いつの間にか、あなたを監視する使用人はいなくなっていた。
GM :
GM : ──それから、遊び疲れて休憩所を探すと、すぐ近くにレストランがあるみたいだった。
GM : ハートとダイヤのトランプ兵の間を抜けて、紅白の薔薇のアーチを潜ると、御伽の国をテーマにしたレストランに辿り着く。
GM : ふたりが頼んだのは、ハートのデミグラスハンバーグ。 カップに入ったミネストローネ。 デザートには苺のムースケーキ。
GM : そのひとつひとつが、御伽の国の“薔薇の紅”を象徴したカラーリングで、見栄も美しい。
GM : それぞれの質は、涼風家で出てくるモノには及ばないハズなのだが、御伽の国のムードが魔法のスパイスになっているのか、
GM : またはクリスマスという特別な日を一夏と共にしているからか、とても美味しく感じた。
GM : そして何よりも、寒空の下でひどく冷えきった身体には、あたたかい料理が身に染みた。
GM : ──そうしてあなた達はゆったりとディナーを摂って、少しだけアトラクションを回ると、最後に観覧車に乗ることにした。
GM : あなた達は、スタッフに促されるまま、手狭なゴンドラに詰め込まれるみたいに入った。
GM : そうして向かいあって座ると、間もなく観覧車は回りだした。 窓の外に目を向けてみる。
GM :
GM : 夜空に浮かんでいるハズの星々は、残念ながら、雲のカーテンで隠されてしまっていたが、
GM : 代わりに地上では街灯りが星々のように瞬いて、そこそこロマンチックな夜景が見渡せた。
涼風紗雪 : 「……凄く綺麗だね」 窓から夜景を眺めて
犬養一夏 : 「ええ、キレイですね……、もし晴れていたら星も見れたりして、もっとキレイだったのかな……」
犬養一夏 : 「でも、ちょっと高くて怖いかも……。 せんぱいは、こんなに高いところに来たことってあります……?」
涼風紗雪 : 「そうだな……うん、あるよ。僕は高いところ、結構好きだからさ」
犬養一夏 : 「あ~、なんかそれ分かるかも。 ほら、正義の味方って高いところ好きじゃありません? 例えばタキシードマスク様とか」
涼風紗雪 : 「えぇ?イメージは分かるけど……別に僕は正義の味方ってわけじゃないんだけどな」
犬養一夏 : 「王子様だって似たようなものじゃありません?」
涼風紗雪 : 「んー、確かに物語的にはヒーローとして扱われるし、似たようなものかもしれないけど……」
涼風紗雪 : 「でも……王子様はさ、正義の味方っていうより、お姫様の味方だと思うな」
犬養一夏 : 「う~ん? じゃあ、あたしの味方、ですか? ……頑なにお姫様って呼んできますし?」冗談めかして
涼風紗雪 : 「ふふっ、そうかもね」
涼風紗雪 : そう言って、一夏ちゃんの手を握ろう。
犬養一夏 : 「えっ!? あっ!? こ、この手はっ!?!?」
涼風紗雪 : 「こうすれば、怖いのも少しはましになるかなと思ってね。どうかな?」
犬養一夏 : 「な、なるほど~……逆にビックリしちゃいましたって~……」
犬養一夏 : 「(こ、告白とかされるのかと思った~……! 心臓とまるかと思った~……!! そんなハズないよね、よかった~……!! いや、よくないけどっ……!!)」
涼風紗雪 : 「あはは、ごめんね」 とはいうものの、手を握ったまま離そうとはしない
犬養一夏 : 「あ、あの~、せんぱい~……?」
涼風紗雪 : 「うん?」
犬養一夏 : 「改めて質問しますけど、この手は一体……?」
犬養一夏 : 「ああ、怖がってるからってことですか! あたしも子供じゃないんですから、手を握っていてもらわなきゃいけないほど怖いって訳でも……」
涼風紗雪 : 「……じゃあ、やっぱり離そうか?」 じーっと一夏ちゃんの目を見つめながら
犬養一夏 : 「え、それは…………」
GM : そんな話をしていると、不意にハキハキとして聞き取りやすい女性の声が部屋に響いた。
GM : そして、一夏はその女の声にビックリして、握られていたあなたの手を離してしまった。
アナウンス : 「間もなく、聖なる夜空を彩る華麗な花火──ディスティニー・ライト・ザ・ナイトが始まります!」
アナウンス : 「心躍るディスティニー・ミュージックに乗せて、様々な色の光が舞いあがり、聖なる夜空を色鮮やかに輝かせます!」
アナウンス : 「ディスティニー・ライト・ザ・ナイトは間もなく始まります! どうぞ、おたのしみに!」
涼風紗雪 : 「わっ……。びっくりした。そうか、花火か」
犬養一夏 : 「あっ……、そう、ですねっ、閉園時に打ちあげるって聞いたことあります……」
涼風紗雪 : 「良いタイミングで観覧車に乗れたね。えっと、こっちの窓かな」 窓の方を覗いて
涼風紗雪 : 離れた手は握りにいかないで、そのまま待っていよう。
犬養一夏 : 「…………」
GM : アナウンスが終わると、白亜の城がライトアップされて、観覧車の天井に備えつけてあるスピーカーからBGMが流れ出した。
GM : それから数分後のこと。 ショーの開幕を告げる3尺玉が、白亜の城から打ちあげられた。
GM : 続いて、白。 赤。 緑。 クリスマスカラーを主とした多種多彩な花火が、BGMに合わせてミュージカルのように咲き乱れる。
GM : そして、観覧車の個室は、その光り輝く花々によって色とりどりに染めあげられていた。
犬養一夏 : 「……ねえ、せんぱい?」
涼風紗雪 : 「……ん?なにかな」
犬養一夏 : 「覚えてます? 夏合宿でおねがいした"期待したくないので距離を取ってほしい"って話」
涼風紗雪 : 「うん、覚えてるけど……?」
犬養一夏 : 「いま思い返すと、あまりに急で一方的で、せんぱいを困らせちゃいましたよね」
犬養一夏 : 「……えっと、その時、あたしがイジメられてたって話はしましたっけ」
涼風紗雪 : 「そうだね、確か聞いたと思うよ」
犬養一夏 : 「ですよね」
犬養一夏 : 「あの時、周りはともかくとして、親友と思ってた子まで、あたしを避けるようになって」
犬養一夏 : 「勝手に裏切られた気持ちになって、居場所を失くしたことが、すごく寂しくて苦しくて」
犬養一夏 : 「だから、誰も信じない方が、誰も期待しない方が、裏切られないから傷つかなくていい、って思ったんです」
犬養一夏 : 「……ごめんなさい、クリスマスのディスティニーランドで、こんな話、場違いですよね」笑いながら
犬養一夏 : 「でも」
GM : 一夏は躊躇いながらもあなたの手を取ると、両手で包み込むみたいに重ねた。 一夏の熱が伝わってきて温かい気持ちになる。
犬養一夏 : 「ありがとう、って言っておきたかったから」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん……」
涼風紗雪 : 「……うん、それじゃあ、どういたしまして」
涼風紗雪 : 「クリスマスだからとか、そんなの気にしなくたっていいよ。一夏ちゃんのことが知れて、僕は嬉しいしさ」
涼風紗雪 : 「これからも、何でも話したいことを話してよ」 手の温もりを感じながら、口元に優しく笑みを浮かべる
犬養一夏 : 「なんでも、ですか……?」
涼風紗雪 : 「うん、何でも!嬉しいことや楽しいことだけじゃなくて、辛かったことや悲しかったことでも、何でも話して欲しいな」
犬養一夏 : 「ん……。 でも、いま一番に伝えたいのは、やっぱり、本当に今更ですけど“信じさせてくれてありがとう”ですかねっ」
犬養一夏 : 「誰も信じない生き方も、誰かに裏切られるのと同じくらい、寂しくて苦しかったですから」
犬養一夏 : 「せんぱいが“絶対に裏切ったりしない”って"信じて欲しい"って言ってくれた時、すぐに信じることはできなかったけど」
犬養一夏 : 「でも、あたしはそれだけで、勝手に救われた気持ちになったんです」
涼風紗雪 : 「……そっか。うん、それなら良かった」
涼風紗雪 : 「じゃあ約束通り、これからも一夏ちゃんのことを裏切らないような立派な先輩でいなくちゃね」
犬養一夏 : 「ふふっ、ホントにおねがいしますよ~?」
涼風紗雪 : 「うん、任せてよ!」 胸を張って、自信を持ってそう言い切る
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「あの、もうひとつ、ずっと言いたかったことを思い出しました」
犬養一夏 : 「あたし、せんぱいの──」
GM : その瞬間。 最後に咲いた3尺玉の破裂音で覆い隠されて、続きの言葉は消えてしまった。
GM : フラッシュが焚かれたカメラの如く、光に照らされて、朱に染まった一夏の笑顔だけが、いつまでも瞳に焼きついて離れない。
涼風紗雪 : 「……?えっと、先輩の……何て言ったの?ごめんね、なんか聴こえなくてさ……」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「“クリスマスプレゼントを用意した”って言ったんですよっ」
GM : 一夏は苦笑すると、薔薇色で手のひらサイズのプレゼントボックスを取り出してみせた。
涼風紗雪 : 「え!?ありがとう……!でも、悪いな。僕何も用意してないのに……!」
犬養一夏 : 「いいんです、あたしはもう誕生日プレゼントもらってますし!」
涼風紗雪 : 「そっか……うん、じゃあお返し……じゃないけど、ありがたく貰おうかな。今開けてもいいの?」
犬養一夏 : 「ええ、どうぞどうぞ!」
涼風紗雪 : 「じゃあ、開けてみるね。何だろう……?」
涼風紗雪 : プレゼントボックスを受け取って、ワクワクしながら開いてみよう。
GM : 包みを開けると、そこには薔薇の意匠が施された蒼いガラスの可愛い小瓶が入っていた。
涼風紗雪 : 「わぁ、綺麗だね……!でも、これって……?」 小瓶を取り出してみる
犬養一夏 : 「知っての通り、うちは貧乏なので自作なんですけど、せんぱいのために作った世界で一つだけの香水です」
涼風紗雪 : 「あぁ、香水……!一夏ちゃん、作れるって言ってたもんね……!」
涼風紗雪 : 「そっかぁ、僕のために……。ね、今つけてみてもいいのかな?」
犬養一夏 : 「も、もちろん、いいですよっ」緊張の面持ち
涼風紗雪 : 「ありがとう。ほんとはシャワーとか浴びてからの方が良いとは思うんだけど、どんな香りなのか気になっちゃって……」
涼風紗雪 : えへへ、と笑いながら小瓶の蓋を開けて、手首と首元に香水をつけてみます。
GM : あなたが瓶を開けると、甘い甘い花の香りが室内にふわりと舞った。 思考にふわりと薄い靄がかかるような感覚に襲われる。
涼風紗雪 : 「ん……。やっぱり、花の香りなんだね……?」
犬養一夏 : 「は、はい、瓶のデザイン通りに、薔薇をベースにブレンドしたもの、です……」
涼風紗雪 : 「薔薇だったからそうかなって思ったんだ。僕の好みだって、覚えててくれてたんだね……」
涼風紗雪 : 「良い香りだし、凄く嬉しいよ……!ありがとう、一夏ちゃん!」 今日一番の笑顔を見せる
犬養一夏 : 「えへ、えへへ……、そうですかぁ……! 気に入ってくれたんですかぁ……!」ふにゃふにゃと笑う
犬養一夏 : 「あたしも、せんぱいに喜んでもらえて、凄く嬉しいですっ」
涼風紗雪 : 「うん!大事に使わせてもらうよ……!」
涼風紗雪 : 小瓶を嬉しそうに眺めた後、無くさないようにちゃんと鞄の中にしまおう。
GM : 一夏からプレゼントを受け取ってから間もなく、観覧車は一周してゲートに戻ってきた。
GM : 帰路につこうと観覧車から出ると、いつのまにか初雪が降りはじめていて、燃え散った花火が灰の花弁になったみたいだった。
涼風紗雪 : 「ねえ、一夏ちゃん。今日は楽しかった?」
犬養一夏 : 「えへへ、この顔で分かりません?」にこ~
涼風紗雪 : 「ふふっ、聞くまでもなかったね」 同じようににこにこと笑いながら
涼風紗雪 : 「じゃあ、また一緒に遊びに来ようよ。今度は、もっと晴れた日とかにさ!」
犬養一夏 : 「いいんですか? それじゃあ、また来年! 二人で遊びに来ましょうね!」
涼風紗雪 : 「もちろん。今日だけじゃ乗れなかったアトラクションもあるし、何なら次は貸し切りにしてもらっても……」 使用人が尾行してたことを思い出しながら
犬養一夏 : 「か、貸し切り!? 一体いくらかかるんですかそれ!?」
涼風紗雪 : 「いくらだったかな……まあ、そんなに言うほどでもなかったような……」
犬養一夏 : 「……たとえせんぱいでも、その言葉だけは信用できません」
涼風紗雪 : 「あはは……そう言われると、何だか自信なくなってきちゃった」
涼風紗雪 : 「じゃあ普通に、普通にね!また来年来ようか!」
犬養一夏 : 「はいっ、約束ですからねっ」
涼風紗雪 : 「うん、約束だ……!」
GM : そうして「来年も一緒に来よう」と約束を交わして、クリスマスデートは幕を下ろした。
GM : 一夏が思い描いていた通りの幸せが、ついに花開いた日だったと言えるだろう。 ……それなら、この先の運命は決まっている。
GM : いちど咲き誇った幸せは、花と同じく後は散るのみ。
GM : 3年前。 8月4日。 天気は曇り。
ぼく : みーんみんみん。 みーんみんみん。 みーんみんみん。
ぼく : 燃え盛る夕暮れ空の下、セミ達は仲良く合唱していた。
誰か : 「あのぉ、犬養一夏さんですよねぇ?」
ぼく : 後ろからは、マスコミ気取りの男が薄笑いを浮かべて、スマホを銃口みたいに突きつけながら尾いてきている。
誰か : 「“事件”の真相について、伺いたいんですがぁ?」
ぼく : 声。 声。 声。 アタマの芯に響いて、ひどく耳障りだ。
誰か : 「アレ? 無視ですかぁ? もしかして、罪悪感とかない?」
誰か : 「いいですか? 少年法に守られたからといって、世間はあなたを許していませんよ!」
ぼく : それからアパートに着くまで、男はずっと追いかけてきた。 鬱陶しさでは、夏しか鳴かないセミを遥かに凌ぐ。
ぼく : 「…………」
ぼく : 自室に着くと、扉には張り紙があった。 死ねとか■■■とか、口に出すのは憚られる罵詈雑言が綴られている。
ぼく : このデコレーションは“正義感あふれる誰か”がしたんだろう。 すぐにここから出ていってほしい近隣の誰かが。
ぼく : ……別に驚くこともない。 いくら掃除しても張られてキリがないので、先週からそのままにしてあるんだから。
ぼく : 腐った生卵が散らされていた時は、流石に驚いたけど。 そうじゃなければ、どうってことはない。 もう慣れた。
ぼく : 「ただいま」
ぼく : 自室の扉を開け、誰に言った訳でもない独り言を呟くと、まるで空き部屋みたいに物がない空間に空しく響いた。
ぼく : ぼくが部屋に入って最初にしたのは、安物のマットレスにごろんと寝転がることだった。 瞼が重くて仕方ない。
ぼく : ……最後に十分な睡眠が取れたのは、いつ頃だったか。
ぼく : ぼくを嫌う人達は、私刑のつもりなのか、いつものように嫌がらせをしてきた。 それは昼でも夜でも関係ない。
ぼく : だから、今では睡眠薬が手放せない。 もしも、睡眠薬がなかったら、夜の騒音等で一睡もできなかっただろう。
ぼく : 眠っている間くらいは、幸せな夢が見たいものだけど、そもそも夢というのは記憶を整理する機能らしいので、幸せな記憶を失くしたぼくには、幸せな夢なんて見れるハズがない。 だから“心休まる日”というのはなかった。
ぼく :
ぼく : ──神奈川に引っ越してきてからは、心機一転、とはいかないけど、まあまあ上手くやっているつもりだった。
ぼく :
ボランティアで保護司※を引き受けてくれた叔父さん達との関係は、それほど険悪というほどでもなかったし、
※保護観察を監督する民間人
ぼく : 学校生活だって、友達はいたし、一緒に登下校するくらい仲のいい男子もいて、それなりに充実してたと思う。
ぼく : ……日常が再び壊れだしたのは、さっきみたいな動画投稿者が“事件”のことをネットに書き込んでからだった。
ぼく : ネット掲示板では個人情報が晒されて、ぼくがいた叔父さんの家には、知らない人が訪ねてくるようになって。
ぼく : 延々と行われるいやがらせの数々に、叔父さん達は心を病んで、次第にぼくへの嫌悪を隠さないようになって。
ぼく : 最後には“おまえなんか預かるんじゃなかった”って言って、罵声をはなむけにして、ぼくを家から追い出した。
ぼく : ……それからはこのアパートに住んでいる。 部屋にいる間は安全って点では、今までより幾らかは落ち着ける。
ぼく : そして、学校ではイジメがはじまっていて。 友達の女子も、仲がよかった男子も、結局は信じてくれなかった。
ぼく : ……それどころか“胸がデカいから近付いただけ”なんて彼は言って、率先してイジメを主導するようになった。
ぼく : ぼくと仲良くしていたことで、次のイジメのターゲットが自分には向かないように、裏切りを選んだんだろう。
ぼく : 両親の世話になりたくなかったから、今まで新聞配達のバイトをしてたけど、それも辞めさせられてしまった。
ぼく : ──不幸中の幸いというか、スマホは持っていなくて本当によかったと思う。 ネットにも、ぼくに対する悪意が満ちてるだろうし。 SNSでの友達付き合いなんて考えたくもない。 貧乏だから、買いたくても買えないけど。
ぼく :
ぼく : 彼らはいつも“差別は良くない”なんて声高々に叫ぶけど、本気でそんなことを思っている人なんて存在しない。
ぼく : 彼らは事実確認さえせずに“おまえは人でなしだ”と決めつけてきた。 誰も加害者の言葉に耳を貸したりしない。
ぼく : 誰も、ぼくを信じてくれる人はいない。 なら、ぼくだって誰も信じたりしない。もう、なにも望んだりしない。
ぼく : それは自分の心を守るために出した結論だった。 だって、期待をすればするほど裏切られたときに傷付くから。
ぼく :
ぼく : けど、結局、全ては身から出た錆。 人でなし、というのは全くの正論。
ぼく : でも、だからって何してもいいの?
ぼく : 勿論、ぼくが悪いのは分かってる。 誰もが“おまえは悪”って言うから。
ぼく : それはそれとして、正しさを騙る二枚舌が、気持ち悪くて仕方がない。
ぼく : 異常者を罰するときの彼らの瞳は、それこそまさしく、異常者だった。 誰か手鏡でも貸してあげればいいのに。
ぼく :
ぼく : ■■■。 ■■■。 ■■■。
ぼく : 真っ白になったあたまに、だれかの声が流れ込んでくる。
ぼく : ……ああ、本当に“人でなし”という言葉は的を射ている。
ぼく : だって、さっきから■したくて仕方がない。 誰でもいいから早く■したくてたまらない。
ぼく : 胸の内側に募りに募った行き場のない思いをまた、解き放って、ブチ撒けて、■したい。
ぼく : ……だから、何もかも失ったぼくに残された、その歪んだ欲望だけは遂げることにした。
ぼく :
ぼく : ──気が付くと、ぼくの右腕は、ケモノに変わっていた。
ぼく : まただ。 感情が昂るとこうなる。 こういうのを人狼(ウェアウルフ)と呼ぶんだろう。
ぼく : 誰にも明かせない、ぼくの秘密。 普段から触られたりしないように気を付けてるけど、他に対策を考える必要があると思う。 ……例えば、ゆるめの長袖を着るとか。 あざといと思われるかもだけど、バレるよりはマシだ。 尤も、未来のことを考えても仕方ない。
ぼく : 「こんなっ、こんな力さえっ、なければぁっ……!!」
ぼく : ……いつもは忌避感しかないコレも、今だけは好都合だ。
ぼく : 右腕をまな板に置き、左腕で包丁を構える。
ぼく : そう。 悪いのは、ぼくじゃないんだ。 この右腕なんだ。
ぼく : それが子供染みた逃避だって分かっていた。 でも、そうしないと生きていけなかった。 周りの人々の感情を全て受けとめて、平然としていられるほど、ぼくは強くないから。 ……それに“事件”の悪が自分だけという事実を、まだ何処かで受け入れられずにいた。
ぼく : 「はっ、はぁっ……」
ぼく : ……いざ包丁を振り翳すと、運動をした訳でもないのに、鼓動と呼吸が早くなってくる。
ぼく : 「…………ッ!!」
ぼく : これで全てが終わる。 痛いのは一瞬だけ。 幼い頃に聴いた定番のフレーズを反芻する。
ぼく : ──そうして、意を決すると、ぼくは行き場のない思いを込めて、包丁を振り下ろした。
ぼく : あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
ぼく : セミの鳴き声を覆い隠していくケモノの泣き声。 その絶叫は、ぼくの喉から出ていた。
ぼく : あまりの激痛に、右腕を押さえて蹲ってしまう。 痛い。 痛い。 怖い。 怖い。
ぼく : 苦悶の声が、涙が、血がどくどくと漏れていく。 熱がどんどんと抜けていく。
ぼく : その熱が集まってるみたいに、右腕の切断面だけは灼けつくように熱かった。
ぼく : 霞んでいく視界と意識の中、射し込んだ夕陽と飛び散った血潮で真っ赤に染まったキッチンが目にも痛かった。
ぼく : ……こんな景色を見るのは、これで二度目。 以前とは違うのは、まな板から転げ落ちた自分の右腕があること。
ぼく : 「……ああ、よかった。 これで」
ぼく : ぼくに死ねといった彼らはもう、満足しただろうか、罵らないだろうか。
ぼく : ……ひとまず、ケモノの腕を落とせたのはよかった。 誰も■さずに済む。
ぼく : 全てが壊れてしまうのが怖かった。 全てを■してしまうのが怖かった。
ぼく : ……でも、もしかして、このまま死ぬのかな。 それならそれでいいか。
ぼく : 生きていてほしいと望まれたことなんて、あれから一度だってなかった。 ぼくの居場所は、何処にもなかった。
ぼく : ──そしてぼくは、絶望と苦痛の間、僅かに安堵して意識を手放した。
ぼく :
ぼく : その翌日。 8月5日。 天気は快晴。
ぼく : 早朝。 ぼくは生きてることに落胆しながら、キッチンで目を覚ました。
ぼく : 「……な、んで? どうして!?」
ぼく : 血痕も傷痕も魔法みたいになくなっていた。 夢なのかとも思ったけど、そうじゃないと右腕の痛みが主張する。
ぼく : ……ああ、彼らの言う通り、ぼくはどうしようもなく人でなしなんだ。
ぼく : 気付くと、頬は微かに濡れていた。 昨日の激痛で泣いていたんだろう。
ぼく : 今まで散々泣いたから、もう涙なんて涸れてしまったと思ってたけど、人じゃなくなっても涙は流せるらしい。
ぼく : 死ねない体なんて、呪われている。 死ぬ方法は他にあるのだろうか? でも、あの痛みを繰り返す勇気はない。
ぼく :
ぼく : ──そうだ。 まだ生きてるなら、転校手続きをしに行かなきゃだった。
ぼく : 先生達にも“問題を起こして学校の評判を落とされたくないから転校しろ”って遠回りにずっと言われてたんだ。
ぼく :
ぼく : 夏休みだから朝から絡まれないとは思うけど、一応、部活に向かう生徒たちがいなくなる時間帯を見計らうと、明日からタンスの奥で眠り続ける運命にある学校指定のセーラー服を着て、ぼくはアパートの自室を後にした。
ぼく : 空模様は、ぼくの気持ちとは裏腹。 雲ひとつないクリアブルーの晴れ。
ぼく : ──通学路を歩いていた時のこと。
誰か : 「この人でなしが! ここから出ていきな!!」
ぼく : ぼくはいきなりバシャッとジョウロの水と罵声を同時に浴びせられた。
ぼく : 後ろを振り向くと、花の水やりをしていた優しそうなおばさんがいた。
ぼく :
ぼく : ああ、水を掛けられて、何から何までビショビショになってしまった。
ぼく : 自分が人でなしだと身に染みたからだろうか、気持ちは動かなかった。 ぼくの心は、すっかり冷えきっていた。
ぼく : でも、同時にもう疲れきっていて、学校まで歩く気力は失われていた。 少し離れた電柱の近くに蹲ってしまう。
見知らぬ少女 : 「君、どうしたの?大丈夫かい?」
ぼく : 水浴びから10分後。 道脇で蹲ってたぼくに、誰かが声を掛けてきた。
ぼく : 「…………」
ぼく : 見上げると、そこには見知らぬ少女がいた。 ……そもそも、ぼくを知る人は声なんか掛けてこないだろうけど。
ぼく :
ぼく : 朝日に照らされて煌めく白銀のロングヘア。 揺らめく蒼い焔みたいなサファイアの虹彩。
ぼく : 薔薇めいた香気を纏っていて、所作からも育ちの良さが見てとれる。
ぼく : 着ている制服のデザインを見たところ、おそらくは近くにあるお嬢様学校の生徒なのだろう。
ぼく : カラーリングで2年生だと分かる。 先輩だ。
見知らぬ少女 : 「こんにちは」
ぼく : 「……話したくないって伝わらなかった?」
ぼく : 貧乏で誰からも嫌われる自分と、裕福で誰からも好かれそうな少女。 まるで真逆だった。
ぼく : 満ち足りている人間が、今は眩しく見える。
ぼく : 「……いいから、ぼくを放っておいてよ」
ぼく : だから、特に意味もなく腹が立って、そっけない返事をしてしまう。
見知らぬ少女 : 「ごめんね。でも、そんなびしょ濡れで、一人で蹲ってる女の子を放っておくわけにもいかないよ」
ぼく : 「意味わかんない……」
ぼく : どうして“ごめんね”なんて言うんだろうか。
ぼく : 「ああ、わかった……。 恩を売って何かさせようって魂胆でしょ……」
ぼく : 「ぼくは騙されないから」
ぼく : そうは思ってなかったけど、優しさを振り撒いて自己満足に浸りたいなら、これで他所に行くだろうと思った。
見知らぬ少女 : 「見返りに何かさせようなんて考えてないよ。そんなの王子様らしくないじゃないか」
ぼく : 「王子らしい……? はっ、何を言ってるの、バカバカしい……」
ぼく : 真剣な目で何を言っているんだ、この人は。
見知らぬ少女 : 「あはは、よく言われるよ」
ぼく : そこそこ失礼なことを言った気がするけど、少女は暢気そうに笑っていた。 充実しているための余裕だろうか。
ぼく : ……ともあれ、そろそろ帰ってくれるハズ。
ぼく : そう考えていると、急に肌触りのいい高級タオルを肩に掛けられた。
ぼく : 「えっ……」
ぼく : 「こ、今度は何のつもり……?」
見知らぬ少女 : 「君が一人にして欲しいなら、もうこれ以上は構わない。すぐにここから立ち去るよ」
見知らぬ少女 : 「だけど、僕は君を放っておきたくないから、これくらいのお節介はさせてほしいな」
ぼく : 「……変わってる」
見知らぬ少女 : 「それもよく言われるよ」
ぼく : 「…………」
ぼく : ぼくは困惑した。 手酷く拒絶されたハズなのに、何の意味があって、こんなぼくに優しくしてくれるんだろう。
見知らぬ少女 : 「それじゃ、通りすがりの変な王子様はそろそろ行くよ」
見知らぬ少女 : 「風邪、引かないように気を付けてね」
ぼく : 本当にぼくを心配してくれてたんだろうか。
ぼく : 「待……」
ぼく : ここで別れたら、もう二度と会えない気がして、ぼくは思わず右手を使って、少女の手を取ってしまっていた。
見知らぬ少女 : 「おっと……。どうしたんだい?」
ぼく : 「あっ、えっと……」
ぼく : 「ありが、とう……言っておこうと、思って……」
ぼく : ……彼女は王子様らしい振る舞いがしたかっただけ、かもしれないけど、久々に人の温もりに触れた気がして。
ぼく : 心が暖かくなったから、ありがとうは言わなきゃいけないと思った。
見知らぬ少女 : 「……!うん、どういたしまして!」 嬉しそうに笑顔を咲かせる
ぼく : 「それと、疑ってごめんなさい……」
見知らぬ少女 : 「ううん、いいよ。知らない人に声をかけられて、警戒するなって言う方が難しいもんね」
ぼく : 「…………」
見知らぬ少女 : 「……やっぱり、もうちょっと一緒にいようか?」 掴んだままの手を見下ろして
ぼく : 「でも、いいの……? あなたにも用があるんじゃ……」
見知らぬ少女 : 「あ。そうだった、部活のことすっかり忘れてたよ」
ぼく :
「やっぱり……」
見知らぬ少女 : 「……ま、いいかな?少しくらい遅刻しても」
見知らぬ少女 : 「後で僕がちょっと怒られるだけだしね」
ぼく : 「それはよくないと思う……」
ぼく : ぼくなんかのために、そこまでしてくれるのが嬉しくて、それが可笑しくて……自然と笑みがこぼれてしまう。
見知らぬ少女 : 「ふふっ……やっぱりそうだよね」
見知らぬ少女 : 「でも今の僕は部活のことより、君のことの方が心配になっちゃってるんだよね」
ぼく : 「その気持ちはうれしい、けど……」
ぼく : 「ぼくとは、一緒にいない方がいいよ」
見知らぬ少女 : 「どうしてそう思うんだい?」
ぼく : 「それは…………」
ぼく : 言えなかった。 この人にまで■■■として見られるのは、怖かった。
見知らぬ少女 : 「……あっ、そうだ。君の名前は?何て言うの?」 言いたくないことなのだと察し、話題を変える
ぼく : 「………………」
ぼく : きっと名前を調べたら、ぼくの“事件”のことを知ってしまうだろう。 申し訳ないけど、答えることはできない。
見知らぬ少女 : 「……じゃあ、勝手にお姫様って呼ぼうかな」 冗談っぽく笑って
ぼく : 「……それは、恥ずかしいからやめてっ」
ぼく : ディスティニー作品は好きだけど、ぼくにプリンセスなんて似合うハズない。 ヴィランくらいがちょうどいい。
見知らぬ少女 : 「まだちゃんと名乗ってない王子様とお姫様でちょうどいいかなと思ったけど、お気に召さなかったかな」
見知らぬ少女 : 「でも恥ずかしいなら仕方ないね、別の呼び方を考えるよ」
ぼく : 「要らないと思う……。 もう二度と会うこともないだろうから……」
ぼく : 嬉しい申し出、だったけど、ぼくはもうすぐ神奈川から引っ越すことになる。 友人知人が一人もいない東京に。
ぼく : 寂しいけど、奇跡でも起こらない限り、この先輩とも二度と会うことはない。
見知らぬ少女 : 「それはどうかな?また会うこともあると思うけれど……」
見知らぬ少女 : 「いや、次に会うことよりも、まずは今だよね。何か着替えとか用意した方がいいかな……」
ぼく : 「いいよ、このままで」
ぼく : 「それより、このタオルはどうすればいい?」
見知らぬ少女 : 「濡れた体を拭くのに使ってほしいな。その後は、別に捨てても……」
見知らぬ少女 : 「……いや、次に会えた時に返してもらおうかな?」
ぼく : 「次に会えた時……」
ぼく : 次に会えた時。 甘美な響きだった。 未来を思うことは今までなかったから。
ぼく : 「うん……、約束ね?」
見知らぬ少女 : 「……!うん、約束だ」 嬉しそうに頷く
ぼく : きっと叶うことのない儚い約束。 だけど、たったひとつだけの大事な繋がり。
ぼく : 「……あなたみたいな人が、せんぱいにいてくれたらよかったのにな」
ぼく : 「あっ、ごめんなさい。 もうこんな時間……。 ぼく、行かないと……」
ぼく : ──本音をはぐらかすみたいに時計を見ると、もういい時間だった。
ぼく : 本当はもっと話していたかったけど、これ以上は迷惑になっちゃう。
見知らぬ少女 : 「君もこれから行くところがあったんだね。それなら流石に……引き留めるわけにもいかないか」
見知らぬ少女 : 「謝らなくていいよ。気を付けて行っておいで」
ぼく : 「……さようなら」
見知らぬ少女 : 「うん。……また会おうね」
ぼく : ぼくは家で着替えた後、学校で転校手続きを済ませると、すぐに家に帰った。
ぼく : そして、引っ越しの準備を済ませた頃には、太陽はもうすっかり沈んでいた。
ぼく : 睡眠薬に耐性ができてしまったのか、その夜は薬の利きが悪くて眠れなくて。
ぼく : いちど人の温もりに触れると、ひとりぼっちの夜は長くて寒くて寂しかった。
ぼく : ──取り立てて意味もなく机に向かうと、もう七夕が近いことを思い出した。
ぼく : そうだ、と消しゴムにお願いを書いてみる。
ぼく : “せんぱいと会いたい"
ぼく : 今更、神様なんかに期待はしてなかったけど、叶ったらいいなあ、と思った。
ぼく : 消しゴムに願掛けなんて、好きな人と結ばれたいみたいで、すこし可笑しい。
ぼく : その後、名前も知らない“せんぱい”に貰ったタオルを抱きしめて横になると、匂いで安心して眠りにつくことができた。 あの人の温もりも甦った気がして。
GM :
GM : このシーンの情報は、夢に見た内容として、せんぱいに共有されます!
涼風紗雪 : なに!?夢に見た!?
涼風紗雪 : どうして夢で見たんだろうなんかあるやつ…!了解です!
GM : 本人は隠し続けようとするので夢という形で共有しただけで、シナリオの根幹に関わるみたいな深い意味はない! (Y市にはハートレスクリスタルの欠片があるという理由付けはある)
涼風紗雪 : なるほどなるほど…!ハートレスクリスタルにリークされていた
GM : ハートレスクリスタルのせいで病んでる子が集まっているという説もある(?)
GM : ではでは、そんなところで次のシーンに移るのです!
涼風紗雪 : 了解!
GM : せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : 1d10+96(1D10+96) > 6[6]+96 > 102
GM : まあまあまあ…
涼風紗雪 : まあまあ、まあまあまあ…
GM : 10~8が出なければいいというハードルの低さよ
GM : それはともかく、シーンをはじめていきます!
涼風紗雪 : もう10じゃなければいいよの精神。おねがいします!
GM : 1月1日。 天気は降雪。
GM : 元日の神社は参拝客達で賑わっていた。 密度に関しては遊園地を凌ぐほどだ。
GM : 今日は雪が軽く積もるほどの寒さだが、それ以上に人々の熱気で満ちている。
GM : あなたは口から白い息を漏らしながら、人混みに一夏の後ろ姿を探していた。
GM : 年始早々に電話がかかってきて、一夏と二人で初詣に行くことになったのだ。
GM : あなたがついて数分後、一夏はあなたを見つけると、笑顔で駆け寄ってきた。
犬養一夏 : 「電話口でも伝えましたけど、改めて! あけましておめでとうございますっ!」
涼風紗雪 : 「あ……う、うん。えっと……」
涼風紗雪 :
「こちらこそ……あけましておめでとう、一夏ちゃん」
一夏ちゃんの顔を見た瞬間、少し戸惑ったような顔をしたがすぐに笑顔を作る
犬養一夏 : 「……? どうかしました? あたしの顔に、何かついてます?」
涼風紗雪 : 「ううん、一夏ちゃんはいつも通りちゃんとかわいいよ」
涼風紗雪 : 「ただ、ちょっと……。今朝、嫌な夢を見てさ。一瞬思い出してしまって……」
犬養一夏 : 「さらっと言うなあ、ホントもう……」
犬養一夏 : 「って初夢から悪夢ですか! これは厄年ですかねぇ? や、初夢って元日の夜に見る夢っぽいし、ギリギリセーフ?」
涼風紗雪 : 「いや、どうなんだろう……!初夢って大晦日の夜なのか、元旦の夜なのか今一曖昧だよね……」
涼風紗雪 : 「(……悪夢か。確かに、あれは悪夢だった)」
涼風紗雪 : 「(あの夢は、一体何だったんだろう。夢にしては、リアリティがありすぎる……)」
涼風紗雪 : 「(昔の一夏ちゃんが虐げられていて、オーヴァードの右腕を斬り落として……そして……)」
涼風紗雪 : 「(……鮮明だからって言っても、結局夢は夢でしかない……。そもそも、一夏ちゃんはオーヴァードじゃないはずだ……)」
涼風紗雪 : 「(今も頭にあの夢の内容が残って仕方がない……。でも……)」
涼風紗雪 : 「……うん、新年早々悪夢だったよ。でも、厄年なんかじゃないさ」
涼風紗雪 : 「こうして一夏ちゃんと、元旦から初詣に来れたんだからね」 微笑を浮かべる
犬養一夏 : 「……そ、そうですかっ」
犬養一夏 : 「それじゃあ、年末は寂しかったんじゃないですか?」
犬養一夏 : 「授業も部活もなくて、しばらく会えなかったですし」
涼風紗雪 : 「……あはは、もしかしたらそうだったのかもしれないね」
涼風紗雪 : 「じゃあ今日は、久しぶりの一夏ちゃんとの一日を楽しもうかなっ」
犬養一夏 : 「は、はいっ、とはいえ、初詣でできることって、ディスティニーランドほどは……」
涼風紗雪 : 「まあ、参拝だからね。だから初詣が終わったら、このままどこかに遊びにいこうよ」
犬養一夏 : 「……! いいですねっ! いきましょういきましょう!!」ぱあっ
犬養一夏 : 「ではでは、まずは初詣を……と、神社の脇の方、人が集まってますね?」
犬養一夏 : 「おまもりとかおみくじとか売ってるみたいですよ? 寄ってから遊びに行きません?」
涼風紗雪 : 「そうだね。おまもりも買いたいし、おみくじも引きたいと思ってたんだ。そうしようか」
犬養一夏 : 「あっ、おまもりといえば、せんぱいは進路どうするんです? 将来の夢とかあるんですか?」
涼風紗雪 : 「ん、将来の夢?王子様だけど……」
犬養一夏 : 「いやいやいや! そういうことじゃなくて……!!」
犬養一夏 : 「……ああ、あたしの言い方が悪かったですね! ハイ!!」
犬養一夏 : 「よーするに、やっぱり大学に進学するのか?ってことです!」
涼風紗雪 : 「大学?そうだね、進学しようとは思っているよ」
犬養一夏 : 「ですよね! じゃあ、今年は受験で忙しくなるんですねぇ」
涼風紗雪 : 「あ……そうか、今年はもう三年生か……」
涼風紗雪 : 「確かに忙しくなりそうだな……。といっても、勉強するだけだけどさ」
犬養一夏 : 「王子様の終着点がどこか分かんないけど、応援してますよ! せんぱい!」
涼風紗雪 : 「ありがとう、一夏ちゃん。頑張るよ」
犬養一夏 : 「でも、まだ先の事とはいえ、三年生は部活にも来なくなるし、会える機会が一気に減っちゃいますね……」
涼風紗雪 : 「そうだね……。一夏ちゃんはマネージャーだから部活もあるわけだし……」
涼風紗雪 : 「まあでも、まだ卒業じゃないんだから学校にはいるしさ。こうやって一緒に遊ぶ日だっていくらでも作れるよ」
犬養一夏 : 「ん……、そう、ですねっ」
涼風紗雪 : 「そうそう。ふふっ、一夏ちゃんも寂しがり屋だね」
犬養一夏 : 「なっ、先にせんぱいが言ってたんじゃないですか、寂しかったって!」
涼風紗雪 : 「ごめんごめん、でも似てるなって思っちゃってさ」
犬養一夏 : 「似てる?」
涼風紗雪 : 「僕も一夏ちゃんも寂しがり屋な方だな、ってこと」
犬養一夏 : 「……そう、ですかね? 実のところ、せんぱいが寂しがり屋なイメージ、あんまりなかったですけど」
犬養一夏 : 「さっきも“もしかしたら”寂しかったのかも、って躱されましたし」
涼風紗雪 : 「いや……結構寂しがりなところがあるよ、僕は」
涼風紗雪 : 「普段はあまりそう思わないようにしてるってだけかな、きっと」
犬養一夏 : 「ふうん……?」
犬養一夏 : 「じゃあ、ぎゅってしてあげましょうか?」冗談めかして
涼風紗雪 : 「ん、良いの?今、人がたくさんいるし、恋人のふりをしてるってわけでもないけれど……」
涼風紗雪 : 真面目な顔で、照れるわけでもなく今までの経験から一夏ちゃんが嫌がるんじゃないかと思っている。
犬養一夏 : 「え……」
犬養一夏 : 「良いの? ってなんですか、良いの? って」
涼風紗雪 : 「え?だって、一夏ちゃんが無理して言ってるのかと思ったんだけど……」
犬養一夏 : 「無理して言ってる、というか、口から出任せの冗談、というか……」
犬養一夏 : 「別に、嫌な訳じゃ、ないです、よ?」
涼風紗雪 : 「あ……なんだ、冗談だったのか!」
涼風紗雪 : 「…………」 一夏ちゃんの目をジッと見て、少し考えてから
涼風紗雪 : 両腕を拡げ、正面からふわっと優しく一夏ちゃんを抱きしめます。
犬養一夏 : 「ぁ、う……」小さく呻きながら、おとなしく抱きしめられる
涼風紗雪 : 「……うん」
涼風紗雪 : 「(……そうだ。やっぱり、あんな夢のことなんて気にする必要ない)」
涼風紗雪 : 「(僕は今、僕の目の前にいる一夏ちゃんのことを信じてこれからも付き合っていけばいい。ただそれだけで良いんだ)」
涼風紗雪 : 「……よし!ありがとう、一夏ちゃん」 ぱっと離れる
犬養一夏 : 「は、はぁ、もうビックリしたぁ……! もう、ありがとうじゃないですよっ!? さっきの流れは抱き着かないヤツじゃないですかっ!?」
涼風紗雪 : 「うーん、確かにそうかも……。でも、少し気持ちが変わっちゃって。ごめんね」 えへ、と小さく笑う
犬養一夏 : 「ごめんねって、文化祭の時もそうでしたよね!?」
涼風紗雪 : 「そうだった……かな?」
犬養一夏 : 「おばけ屋敷から出た後! あのとき、あたしは、心臓が、張り裂けそう、で…………」
GM : 一夏はあなたの後ろに目線をズラすと、そのまま次第にフリーズしていった。
誰か : 「久しぶりだなあ、犬養。 まさか本当にこんなとこに隠れてたとは」
誰か : 「まったく探すのに苦労したぜ? 見た目を変えてるんだもんなあ」
GM : そこには知らない男が立っていた。 恐らく、年齢はあなたと同じか下くらい。
涼風紗雪 : 「えっと……誰だろう。一夏ちゃんの知り合い……?」
犬養一夏 : 「…………」
GM : 一夏は肩を押して離れると、怯えた様子で、あなたの後ろに隠れてしまった。
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん……?」 一瞬戸惑うが、すぐに男に向き直って
涼風紗雪 : 「君……誰なんだい?お友達って感じじゃなさそうだけど……」
誰か : 「俺は犬養の中学時代の同級生だよ」
誰か : 「そういうアンタは、犬養の友達なのか?」
涼風紗雪 : 「(中学時代となると、一夏ちゃんが虐められてた時だよね……それで怯えてるのか……?)」
涼風紗雪 : 「あぁ。一夏ちゃんの友達の、涼風紗雪だ」
誰か : 「ハハッ、堂々とコイツの友達を名乗るなんて、まったく傑作だな」
誰か : 「あの頃の俺と同じじゃないか」
涼風紗雪 : 「同じ……?どういう意味?」
誰か : 「つまりソイツに騙されてるって事だよ」
誰か : 「いいぜ、教えてやるよ! ソイツはなあ……!」
犬養一夏 : 「や、やめて……」
誰か : 「人でなしの! 人殺しなんだよ!」制止を振り切り、指を突き付ける
涼風紗雪 : 「……な、何?」
涼風紗雪 : 「いきなり何言ってるんだ……?人殺しって……」
涼風紗雪 : そんなわけないだろう……そう続けようとして、脳裏に今朝見た夢の内容が蘇る。
涼風紗雪 : 「……っ、どういうことだ……?」
犬養一夏 : 「っ……」
GM : 一夏はその言葉に狼狽え、ついには泣きだしながら、走って逃げてしまった。
涼風紗雪 : 「あ……い、一夏ちゃん!待って……!!」
GM : しかし、あなたが伸ばした手は届かない。 人混みにまぎれて追えそうもない。
涼風紗雪 : 「……くっ」
涼風紗雪 : 「……っ。何なんだ、いきなりお前は!」 怒りをぶつけるように男に振り向いて叫ぶ
誰か : 「おいおい、なんだよ……、むしろ感謝してほしいくらいなのに」
誰か : 「アンタは、同級生を三人も刺殺した連続殺人鬼に騙されてたんだぜ?」
涼風紗雪 : 「三人も、って……。でたらめ言うなよ!」
誰か : 「でたらめかどうかは、調べれば分かることだろ? ネットで調べてみろよ」
誰か : 「“犬養一夏”って名前を検索にかけるだけで、まとめ動画とかまとめサイトがヒットする」
涼風紗雪 : 「何だよ……まとめ動画って……」
涼風紗雪 : 「いや……やっぱりありえないだろ!本当に連続殺人鬼だとかなら、普通捕まってるはずじゃないか!」
誰か : 「ああ、だから、実際に捕まった」
誰か : 「でも、アイツが三人も殺したのは小学五年生の時の話……、下らない少年法で守られたんだよ」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「(少年法……それなら確かに、いや、でも……っ)」 夢の光景が何度も頭に浮かんでくる
誰か : 「とても信じられないよな」
誰か : 「分かるよ、俺もそうだった」
涼風紗雪 : 「……さっきも言ってたな、同じだって」
誰か : 「アイツが連続殺人鬼だって知れ渡るまでは、俺もそれなりに仲が良かったからな」
誰か : 「でも、あの態度でハッキリと分かるだろ? アンタに山ほど隠し事をしてて、それがバレた途端にアレだ」
誰か : 「まあ、中学の頃は“殺してない、信じてほしい”だの言ってたが、それにしても、後ろめたいことがあったからこそ、俺たちを騙してたに違いない」
涼風紗雪 : 「……そう、か……」
涼風紗雪 : 「…………」 唇をきゅっと結び、少し何かを考えた後
涼風紗雪 : 「いや……やっぱり、悪いけど君の言葉をそのまま信じたりなんて出来ない」 男を睨みつけて、続ける
涼風紗雪 : 「あの態度で分かるだと?いきなりお前は人殺しだなんて言われたら、泣いて逃げたくもなるだろ!」
涼風紗雪 : 「初めて会う誰かも分からない人から、友達の悪口なんて聞きたくない!僕はもう失礼するよ」
涼風紗雪 : そう言って、その場から立ち去ろうとしよう。
誰か : 「…………そうかよ、忠告はしたぜ? 精々、殺されないように気を付けることだな」
誰か : 「もっとも、もうすぐ、この街にもアイツの居場所なんてなくなるだろうがな」
涼風紗雪 : その言葉には何も返さず、人ごみをかき分けて走っていく。
涼風紗雪 : 「……くそっ、あんな話真面目に聞いてる場合じゃなかった……!一夏ちゃんを捜さなきゃ……!!」
涼風紗雪 : そのまま一夏ちゃんを捜しに、彼女が去った方角へと駆ける。
GM : その後、あなたは一夏の部屋を訪ねたが、一夏はそこにもいなくなっていた。
GM : 夢で見たように、転校手続きを済ませて、街から去ってしまったのだろうか?
ぼく : 小学校の頃、ぼくは男子みたいな子供だった。
ぼく : 近所に住んでいるのが男子ばかりだったから、ぼくの友達は男子が殆どだったし、
ぼく : 口調とか嗜好とか、自然と男子に寄っていた。 自分を“ぼく”と呼ぶのが最たる例。
ぼく : だから、女子の間では占いが流行ってたけど、ぼくは体を動かす方が好きだった。
ぼく : ……だけど、四年生の春、ある転機が訪れた。
ぼく : 掃除の班分けで一緒になったのがキッカケで、“狭山瑠奈ちゃん”と仲良くなった。
ぼく : 瑠奈ちゃんは“夢見がちな乙女”ってカンジで、男の子みたいなぼくとは逆だった。
ぼく : ──瑠奈ちゃんは、いろいろと教えてくれた。
ぼく : 例えば香水。 彼女はちょっとだけ背伸びして、小学生ながらに香水を嗜んでいた。
ぼく : 振りかけるだけでイイ匂いに変わるだなんて、魔法みたいだって無邪気に思った。
ぼく : 他にもディスティニー作品とか恋愛ソングとか、縁遠かった文化に触れたことで、
ぼく : ぼくの世界は一気に広がって、意外だったけど、次第にそれらに惹かれていった。
ぼく : ……そして、一年少しの付き合いだったけれど、ぼく達は濃密な時間を過ごして、
ぼく : お互いに親友と呼べる間柄にまでなっていった。
ぼく :
ぼく : ぼく達が友達になって一年が経った五年生の春。
ぼく : ある日、ぼくは瑠奈ちゃんの恋愛相談を受けた。
ぼく : 小学生なんて単純で、足が速くてスポーツ万能な人気者に恋してしまったらしい。
ぼく : ……でも、スクールカーストでトップの女子も、その子に恋していたとのことで、“この恋は諦めた方がいい?”なんて相談だった。
ぼく : ぼくは“この恋を応援してほしいんだな”って思ったから、“そんな事で諦める必要なんかない”って、無責任にも励ましたのだった。
ぼく : ──それが最初の過ち。 暫くして瑠奈ちゃんは恋敵のグループのイジメに遭った。
ぼく :
ぼく : 初めは、意識的に無視するくらいのことだった。
ぼく : だけど、数日後には陰口を言うようになってて、
ぼく : それも、数週間後には嫌がらせになっていって、
ぼく : 一ヵ月、二ヵ月、三ヵ月、と積み重なる思いは、次第に重たさを増していって……夏の初め頃には、もう立派なイジメになってた。
ぼく :
ぼく : ぼくは別クラスだったから、瑠奈ちゃんがイジメられてるなんて気付けなかった。
ぼく : ……それでも、瑠奈ちゃんの元気が、日に日になくなっていってるのは分かった。 そんな彼女を見るのは、ぼくも凄くつらかった。
ぼく : だから、ぼくは呑気に“大丈夫?”って声をかけた。 詳しい事情は分からないけど、もし困った事があるなら力になりたいと思って。
ぼく : だけど、瑠奈ちゃんは“大丈夫!”なんて気丈に笑って、ぼくは安心してしまった。 決してそんなハズないと分かってたハズなのに。
ぼく :
ぼく : 5年前。 8月5日。 天気は快晴。
ぼく : 「ねえ、今日は一緒に帰らない?」
狭山 瑠奈 : 「ごめんね……、わたし、今日はちょっと用事があるから……」
ぼく : ここ最近の瑠奈ちゃんは、いつもこんな調子だ。 八月に入ってからは“用事があるから”って言って、一緒に帰ってくれなくなった。
ぼく : 「……そっか、じゃあ、また明日ね!」
ぼく : 寂しいけど、仕方がない。
ぼく : 「…………」
ぼく : でも、用事は放課後の学校にあるみたいだけど、一体どこで何をしてるんだろう?
ぼく : 心配しないで、とも言われていたけど、ぼくはどうしても気になって仕方なくて、
ぼく : 瑠奈ちゃんの後ろを尾けることにしたのだった。
ぼく : 「………………?」
ぼく : 何故か、瑠奈ちゃんは家庭科室に入っていった。
PTA会長の娘 : 「あら、今日はちゃんと来たみたい! まあ、来ないと朝が酷いものねぇ?」
ぼく : 誰もいないハズの特別教室から、声が聞こえる。
取り巻きA : 「あはは、画鋲でデコった下履きが効いたのかなあ?」
取り巻きB : 「あ~、アレはマジでウケたよね! 剣山みたいなカンジでさあ!」
PTA会長の娘 : 「今日はどうしよっか? あっ、三角コーナーの“掃除”でもしてもらう?」
取り巻き達 : 「「い~じゃん! さんせ~い!!」」
ぼく : そこは凄惨なイジメの現場だった。 キッカケは恋愛だったハズだけど、今となってはそんなの関係なく、気に入らないってだけで。
ぼく : 「……何、してるの?」
ぼく : ぼくはナニカに突き動かされて、教室に入った。
狭山 瑠奈 : 「い、一夏ちゃん!?」
PTA会長の娘 : 「……はあ? なんで犬養がここにいる訳? “ここの事は誰にも教えるな”ってきつ~く言ったよね?」
ぼく : イジメの主犯格は平然としている。 ……イジメを止める気は、全くないみたいだ。
ぼく : ドクン。 ドクン。 ドクン。
ぼく : 心臓が早鐘を打つ。 ノドはカラカラで、視界はボヤけてる。
ぼく : ああ、腹が立って仕方ない。 ……他の誰より、自分自身に。
ぼく : だって、きっと、ぼくは、イジメに気付けてた。
ぼく : だけど、無責任な自分の応援で、親友がイジメられた事実を認めるのが怖くって。
ぼく : もし自分が関わる事で、また現状を悪化させちゃったら、って考えると怖くって。
ぼく : “大丈夫”って言葉に、ぼくは甘え続けて、ずっと真実から逃げ続けてたんだろう。
ぼく : そして、ぼくが自分を騙し続けて逃げ続けたツケは、瑠奈ちゃんが払ってたんだ。
ぼく :
ぼく : ──これまで目を覆ってきた真実に気付いた時。
ぼく : ぼくの内側では、得体の知れないナニカが湧き出していた。
ナニカ : 『これ以上、自分の気持ちを偽る必要なんてない!』
ナニカ : 『あの人でなし共から、親友を守りたいでしょう?』
ぼく : ナニカは、嘘偽りのない本音を垂れ流している。
ナニカ : 『さあ、望むといい! 贖罪を! 断罪を!』
ぼく : ナニカの言葉は、ぼくの心をドンドン埋め尽くしていって。
ぼく : ──程なく限界を迎えると、堰を切ったように流れ出した。
ぼく : そうして、ぼくの思考は洗い流されて、まるで得体の知れないウィルスに犯されたみたいに、すっかり制御不能に陥ってしまった。
ぼく :
ぼく : 「…………おまえが」
ぼく : ユラリ。 相手になのか自分になのか、呟きながら歩み寄る。
ぼく : 「おまえが、悪いんだ」
PTA会長の娘 : 「はあ? 急に入ってきたと思ったら、何を言って」
ぼく : ズブリ。 いつからか心に合わせて異形になっていた右腕を、人でなしに突き出す。
ぼく : ジェルに手を入れたみたいに、すんなりと右腕は貫通した。
ぼく : 人でなしの体内に蠢いている血肉は、生温かくて人みたい。 人だったら、あんな事ができる訳がないし、そんなハズないんだけど。
ぼく : それから、風穴を開けた時、夏なのに触れた外気が涼しいと感じて可笑しかった。
PTA会長の娘 : 「…………ぇ?」
ぼく : 風穴から空気が漏れたみたいな間の抜けた声を漏らすと、人でなしは崩れ落ちた。
取り巻き共 : 「「きゃあああああああああ!!!!」」
ぼく : それと同時に──助けを乞っているのだろうか──取り巻きは悲鳴をあげだした。
ぼく : おまえらは、悲鳴をあげて止めてほしいと願っただろう瑠奈ちゃんを助けたのか?
ぼく : いや、そんなハズない。 もし、そこで助けてたなら、こんな事態にはなってない。
ぼく : だから、おまえらも同罪だ。 まずは、その口を黙らせる。
ぼく : 弛緩した人でなしの体を投げ捨てて、罪人の体を刺し貫く。
ぼく : 同じことを二度繰り返すと、あたりは静かになってくれた。
ぼく : 残ったのは、放心しきって黙ったままの瑠奈ちゃんだけだ。
ぼく : ああ、掃除を済まして、欲望を満たして、これでスッキリ……したハズ、だった。
ぼく : ぽたり。 ぽたり。 ぽたり。
ぼく : しずくがこぼれおちて、足下の血だまりにのみこまれていく。
ぼく : 流れつづける“しずく”の正体は、血なのか涙なのか……もう、ぼくには分からなくなっていた。
ぼく : コロセ。 コロセ。 コロセ。
ぼく : 真っ白になったあたまに、だれかの声が流れ込んでくる。
ぼく : けれど、ひどくしずかだと思った。
ぼく : 聞こえるのは、しずくの水音とだれかの音声だけ。 ……セミの鳴き声も、人間の泣き声も、右の耳から左の耳へと等しく抜けていく。
狭山 瑠奈 : 「こ、この人でなし……!」
ぼく : あたりを支配していたしずけさを、少女の叫び声が破った。
ぼく : 「待……」
ぼく : ぼくは少女を引き留めるために声をあげた。 でも、何故だろう。 その先の言葉が続かなかった。
ぼく : そして、少女は震える足を引き摺って逃げ出した。
ぼく : ぼくには、それを見ていることしかできなかった。
ぼく : 「なんで」
ぼく : こんなことになってしまったんだろう。 そんなことを言っても、返ってくる答えなんてない。
ぼく : 身体じゅうの力が抜けていき、ぼくは血だまりにたおれこんだ。
ぼく : ──真っ白な思考と真っ赤な視界の間。 「人でなし」という少女の言葉だけが、いつまでも深く刺さって。
ぼく : ぼくの意識は、真っ黒な深みに沈んでいった。
ぼく :
ぼく : その翌日。 天気は雨。
ぼく : 目覚めると、ぼくは知らない病室のベッドで横になってた。
ぼく : ぼくは確か、瑠奈ちゃんを助けるために、人でなし共を、この手で、刺して……
ぼく : ううん、そんな訳がない。 だって、あんな力ある訳がない。
ぼく : さくさくと人体を貫く力なんて、魔法とか呪いとか、そんな物語しか存在しない。
ぼく : だから、ぼくにそんな力なんてない。 あれば、それこそ「人でなし」でしかない。
ぼく : ──なので、悪夢だった、とぼくは思い込んだ。
ぼく : 瑠奈ちゃんがイジメられていたのも、ぼくが人でなし共を刺し貫いたのも、瑠奈ちゃんが人でなしと叫んだのも、悪い夢に違いない。
ぼく :
ぼく : ベッド脇に置かれた安価そうな椅子には、おとうさんとおかあさんが座っていた。
ぼく : いつだって相手を気遣っている優しさが評判で、
ぼく : 一人娘が他の女の子とは少し違っても受け入れてくれてた、大好きな自慢の両親。
ぼく : ああ、おはようって起こしに来てくれたのかな?
ぼく : もう、一人で起きるって、いつも言ってるのに。
おとうさん : 「……起きたか」
おかあさん : 「────ッ!」
ぼく : おかあさんは、ぼくの胸倉を乱暴に掴みあげて、
おかあさん : 「なんで、あんなッ! あんなッ!!」
ぼく : 悲鳴染みたヒステリックな叱責の声で、ぼくの耳を裂いた。
ぼく : ……その怒鳴り声が、いつもの目覚ましの代わりになった。
ぼく : それで事態は呑み込めた。 あれは悪夢みたいな現実だった。
ぼく : そして、それはまだ続いてる。 ……あの後、当然だけど、人でなし共を刺したことが、おとうさんとおかあさんにも知れ渡ったんだ。
ぼく : 「瑠奈ちゃんを、イジメてたから、それを止めようって……」
ぼく : でも、ふたりだったら、きっと分かってくれるって思った。
ぼく : ぼくは悪くないって、きっと信じてもらえるって、思った。
おかあさん : 「見え透いた嘘なんかつかないでッ! そんな子に生んだ覚えはないわッ!!」
ぼく : パアン。 おかあさんに思いっきり頬を叩かれた。
ぼく : 「…………ぇ?」
ぼく : 一瞬、ぼくは何が起こったのか分からなかった。
ぼく : 信じてた両親に信じてもらえなかったんだって気付いた時、
ぼく : ぼくは勝手に裏切られた気持ちになって、初めて親に打たれた頬が、酷く傷んだ。
ぼく : 「う、嘘なんかじゃないよ? どうして? 」
おとうさん : 「瑠奈ちゃんは、事件のショックで引き籠ってる」
おとうさん : 「おまえ、瑠奈ちゃんも刺そうとしたんじゃないのか?」
ぼく : おとうさんは、疑いの目を、ぼくに向けている。
ぼく : ──その視線に耐えられなくて、あたりを見回すと、ベッドには手錠がついてた。 他の誰でもない、ぼくを逃がさないための手錠が。
おとうさん : 「…………とにかく、古川さんのところにいって、謝ってきなさい」
ぼく : 「でも」
ぼく : ……謝る? 一体、何を謝ればいいの? イジメを止めるために刺してすみません?
おとうさん : 「でも、じゃないだろうッ!?」
ぼく : ぼくが口籠っていると、おとうさんは怒鳴った。
ぼく : それから、お巡りさんが入ってきて、手錠を外してくれた。
ぼく : だけど、お巡りさんも見張りとして同行するつもりらしい。
ぼく :
ぼく : ……そうして、ぼくはおとうさんに引き摺られながら、人でなしの病室を訪ねた。
PTA会長の娘 : 「ヒッ、ヒィッ!? 来ないでッ! 来ないでェッ!」
ぼく : けど、泣き喚く人でなしに病室を追い出された。
ぼく : でも、よかった。 会ったところで、謝り方が分からない。
ぼく : ほっ、と胸を撫で下ろしていると、人でなしのおとうさんが、病室から出てきて、
ぼく :
次の瞬間、ぼくは力いっぱい殴り飛ばされてた。
ぼく : 思いっきり背中を打った。 口を切って血が出た。 ……でも、あまり痛くはない。
ぼく : 両親と親友に、人でなしとして扱われた痛みに比べれば。
ぼく :
ぼく : ──それから数日後。 学級裁判が開かれることになった。
ぼく : それは裁判なんて名ばかりの、弁護人さえいない、単なる糾弾に過ぎなかった。
ぼく : 先生、知人、友人、親友、両親、誰もが信じていなかった。
ぼく : ……ああ、思えば、何故あんな事をしてしまったんだろう。
ぼく : 誰もが望んでいなかった。
ぼく : 誰もが“悪だ”と非難した。
ぼく : だから、ぼくは人でなしの悪者だったんだろう。
ぼく : だから、あれは瑠奈ちゃんのためなんて錯覚で、
ぼく : 自分の欲望を満たすだけの行為だったんだろう。
ぼく :
ぼく : ……もう、自分の正当化を続けるのは、疲れた。
ぼく : 誰も信じてくれる人がいないなら、意味もない。
ぼく : 自分勝手に同級生を刺し殺そうとした人でなし、
ぼく : もう、ぼくは、その扱いを受け入れることしか許されない。
ぼく :
ぼく : ──そうして、ぼくは、親友を、両親を、全部をなくした。
ぼく : さらに、誰もに後ろ指を刺され続ける一生、という懲罰を課せられたのだった。
ぼく : その懲罰はきっと永遠に続くもので、希望なんてないんだと、そう思っていた。
GM : せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : 1d10+102(1D10+102) > 2[2]+102 > 104
涼風紗雪 : うおおおおおおおおおお!!!!
GM : おお! おおおおおおおおお!!!!
涼風紗雪 : 紗雪史上最高の出目
GM : ここに来て! 低侵蝕!!
涼風紗雪 : 嬉しすぎるねぇ…
GM : ではでは、この出目の勢いのまま、はじめていきますよ!
涼風紗雪 : おねがいします!
GM : 2月14日。 天気は豪雪。
GM : この頃、東京では、足が取られるほどの積雪が続いている。
GM : なので、安価な暖房器具なら音をあげる寒さだったのだが、
GM : 教室には、気温なんて気にしている生徒なんていなかった。
GM : それもそのハズ!
GM : 今日は隠していた気持ちをチョコに込めて届ける特別な日! バレンタインデーなのだから!
GM : クラスの女子達は、女子同士でチョコレート交換会を催し、
GM : クラスの男子達は、ソワソワしながら無関心なフリをする。
GM : あなたは、その渦中にいながら、孤立した気持ちがあった。
GM : ……だって、あれからずっと、一夏は学校にも来ていない。
GM : 既にあなたは、複数の女子からチョコレートを貰っていた。
GM : しかし、アタマの片隅に、一夏の涙がちらついてしまって、スナオに喜ぶことができない。
狩野春香 : 「……お~い、スズ~?」
涼風紗雪 : 「……んー……」 貰ったチョコを両手に抱えながら、ぼんやりと適当な返事をしている
狩野春香 : 「まったくもう」
狩野春香 : 「……スズ、ほら、これ」
GM : 春香は可愛らしく梱包されたチョコで頬をつっついてきた。
涼風紗雪 : 「んぇ……」 頬を突っつかれ
涼風紗雪 : 「あ……チョコ……?チョコか……」
涼風紗雪 :
「……じゃなくて。ありがとう、春香!嬉しいよ!」
ハッと気を取り直して、笑顔でチョコを受け取る
狩野春香 : 「ん、今年は幼馴染の手作りチョコだぞ~? ちゃんと渡し甲斐のあるリアクションを返してくれないと、来年の分はないぜ~?」
涼風紗雪 : 「あはは、ごめんね……ぼーっとしちゃってて」
涼風紗雪 : 「ホワイトデーにはちゃんと三倍返しするから許してよ」
狩野春香 : 「仕方ない! スズの三倍は三倍で済むかあやしいけど、それは楽しみにしとく!」
狩野春香 : 「……それはそれとして、私にまで気を遣ったりしなくていいよ?」
狩野春香 : 「一夏ちゃんのことが気になってるんでしょ?」
涼風紗雪 : 「えっ……」
涼風紗雪 : 「それは……そうなんだけど……。どうして分かったの?」
狩野春香 : 「はぁ、心外だなぁ? 何年、一緒にいると思ってるんですかぁ?」
涼風紗雪 : 「何年だろうね。中学の頃は離れてたけど……長い付き合いなのは確かだ」
涼風紗雪 : 「もう僕の考えてることなんて分かっちゃうってことか。流石だね、春香は」
狩野春香 : 「まあね!」ドヤ
涼風紗雪 : 「ふふっ……」 ドヤる春香ちゃんに少し癒されたように笑う
狩野春香 : 「もっとも、一夏ちゃんのことかなって思ったのは、それだけじゃないんだけどね」
涼風紗雪 : 「あれ、じゃあ何か他に根拠があったの?」
狩野春香 : 「冬休み明けからずっと学校来てないらしいって、又聞きで知ってたし」
狩野春香 : 「……それに、あのウワサ、このクラスにまで広まってきてるじゃん」
涼風紗雪 : 「ウワサ……って?」
狩野春香 : 「ほら、一夏ちゃんが人を……殺したって……」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「……そうか。前に春香が言っていた、一夏ちゃんの良くないウワサって、そのことだったのか」
狩野春香 : 「うん、文化祭の時にね、お客さんで話してる人がいたんだ……」
狩野春香 : 「一夏ちゃんらしい人がいるみたいって聞きつけて、探しに来てたのかな……」
涼風紗雪 : 「探しに来てた……?」
涼風紗雪 : 「それってもしかして、僕達と同い年くらいの男の人?」 先月会ったあの男を思い出す
狩野春香 : 「うん、そう。 友達も何人か連れてたけど」
涼風紗雪 : 「あいつ……文化祭に来てたのか……」
狩野春香 : 「ひょっとして、知り合いだった?」
涼風紗雪 : 「知り合いというか……」 少し迷うが、春香になら話してもいいかと思い、続ける
涼風紗雪 : 「先月、一夏ちゃんと一緒にいた時に偶然会ったんだよ」
涼風紗雪 : 「その時にあいつ……一夏ちゃんのことを、人殺しだって言い張ってたんだ」
狩野春香 : 「うん、そこも一致する。 たぶん同一人物で間違いないよ、文化祭でも人殺しって言ってた」
狩野春香 : 「でも、何の執念で、一夏ちゃんに付きまとってるんだろう……、お互いに不利益しかないと思うけど……」
涼風紗雪 : 「さあ、ね……。考えても分からないし、分かりたくもないよ」
狩野春香 : 「そう、だね」
狩野春香 : 「なんだか可哀想だな、一夏ちゃん……」
涼風紗雪 : 「……かわいそう、か」
涼風紗雪 : 「春香は噂のこと、信じてないんだね」
狩野春香 : 「ううん、私にはウワサの真偽なんて分かんないよ?」
狩野春香 : 「けど、さ、それにしても、あんまりだなって思って」
狩野春香 : 「これもウワサで聞いたことなんだけど、行く先々で水をかけられたり、酷いイジメにあってたみたいだから」
狩野春香 : 「本当に、その……、罪を犯してしまったにしても、赤の他人にそれを責める権利なんてないのにって、思ってさ……」
涼風紗雪 : 「(水をかけられたり、酷いイジメ……)」
涼風紗雪 : 「……あぁ、その通りだね。でも、少しだけ違うよ」
狩野春香 : 「……?」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃんは罪なんて犯してないんだから、そもそも責めることそのものが間違いだってことさ」
狩野春香 : 「そっか、スズは信じてるんだね、一夏ちゃんのこと」
涼風紗雪 : 「うん。……あいつに色々言われた時は、少し動揺もしたけどさ」
涼風紗雪 : 「僕はウワサや、他人の言葉じゃなくて……僕が見たままの一夏ちゃんを信じるよ」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃんは人を殺すような子じゃない。……絶対に」
涼風紗雪 : 以前見た夢の内容を振り切るように、不安を拭うように、力強くそう言い切る。
狩野春香 : 「ふふん、まっすぐな子に育ってくれて、わしゃあ嬉しいよ」
涼風紗雪 : 「なんだ?僕の師匠かな?」 くすっと笑って
狩野春香 : 「ううん、親友です!」
狩野春香 : 「……でも、安心した! 一夏ちゃんは、今が一番しんどい時期だと思うから、スズが寄り添ってあげてね!」
狩野春香 : 「とはいえ、一夏ちゃんの居場所が分からないんじゃどうしようも」
涼風紗雪 : 「そうだね……それで僕も困ってる。でも僕自身、この一か月間で無意識の内に一夏ちゃんと会うことを諦めかけてたのかもしれない……」
涼風紗雪 : 「だからこれからは一夏ちゃんのこと、もっと本気で捜してみるよ」
涼風紗雪 : 「親友にも応援されちゃったし、ね」
涼風紗雪 : 少し腑抜けたような態度はもう消えて、いつも通りの微笑を浮かべてそう言った。
GM : あなた達がバレンタインに相応しくない会話をしていると、あなたの携帯に着信があった。
GM : ……今年の初めに見たきりの番号。 一夏からの電話だった。
狩野春香 : 「おや? 誰から?」
涼風紗雪 : 「い、一夏ちゃん……!?」
涼風紗雪 : 驚きながらもすぐに電話に出ます!
犬養一夏 : 「……ひさしぶりですね、せんぱい」
涼風紗雪 : 「うん……久しぶり。一夏ちゃん、家に帰ってきてたんだね……!」
涼風紗雪 : 「よかった……心配してたんだよ」
犬養一夏 : 「ええ、ちょっと準備があって」
涼風紗雪 : 「準備?それって何の?」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「実はぼく、学校を辞める事にしたんです」
涼風紗雪 : 「え……!?なっ、どうして!?」
犬養一夏 : 「ほら、もうウワサは広まってるみたいですから」
涼風紗雪 : 「ウワサって……そんなの気にすることないよ!あの男が勝手にでたらめ言ってるだけなんだから……!」
犬養一夏 : 「気にすること、ない?」
涼風紗雪 : 「そうさ!あんなの嘘のウワサなんだから!」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「たとえ“嘘のウワサ”でも、信じた人の中では本当なんですよ」
犬養一夏 : 「それに、受ける非難も本当ですから」
犬養一夏 : 「……ああ、そんな愚痴を言いたくて電話したんじゃないんです、ごめんなさい」
涼風紗雪 : 「そんなの……。ううん、謝らなくていいよ。愚痴なんていくらでも聞くからさ」
犬養一夏 : 「……せんぱいは、思わないんですか? ぼくのこと、人殺しだって」
涼風紗雪 : 「思うわけないじゃないか。一夏ちゃんはそんなことする子じゃないよ」
犬養一夏 : 「ぼく自身が“刺したのは本当だ”って言っても、まだ信じられますか?」
涼風紗雪 : 「え……?」
涼風紗雪 : 「どうしてそんなこと言う必要があるんだ……?」
犬養一夏 : 「火のないところに煙は立たない、って言いません?」
涼風紗雪 : 「確かに言うけど……」
涼風紗雪 : 「……そうだな……」 少し悩んで
涼風紗雪 : 「今の言い方だと、殺したのは本当だ、じゃないんだよね。だったら、僕は信じるよ」
涼風紗雪 : 「もし本当に刺したからといって、絶対死ぬわけじゃないんだから」
涼風紗雪 : 「……もう。あんまり変なこと言わないでよ、一夏ちゃん」
犬養一夏 : 「……だとしても」
犬養一夏 : 「人を刺したことには変わらないですよね」
犬養一夏 : 「ぼくが怖くないんですか?」
涼風紗雪 : 「怖くない。例え人を刺したのだとしても、一夏ちゃんは僕の友達だ。怖がる理由なんてどこにもないよ」
犬養一夏 : 「…………信じられない」ぼそっ
犬養一夏 : 「だったら、授業が終わってからでいいので、ぼくの部屋まで来てもらえますか?」
犬養一夏 : 「……最後に、渡したい物もあるので」
涼風紗雪 : 「分かった。でも、授業が終わってからじゃなくて今すぐに行くよ」
犬養一夏 : 「今? でも授業はどうするんですか?」
涼風紗雪 : 「サボるよ。授業なんかより、一夏ちゃんの方が大事だから」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「じゃあ、待ってますね?」
涼風紗雪 : 「うん、待ってて!すぐに行くから!」
涼風紗雪 : 一夏ちゃんの方から他に何か無ければ、電話を切ります!
GM : ないです! それで電話は切れる!
涼風紗雪 : 了解了解!
涼風紗雪 : 「春香!……えーっと」 どうサボると言えばいいか分からず目を泳がせる
狩野春香 : 「これから一夏ちゃんに会いに行くんでしょ? 分かってる分かってる」
狩野春香 : 「先生には、私の方から説明しておくから、ここは任せて先に行け!」いやーこれ言ってみたかったんだよねーと呟く
涼風紗雪 : 「う、うん……!ありがとう、春香!」
涼風紗雪 : 「……?言ってみたかった?」 小さく首を傾げる
狩野春香 : 「アニメとかだと、主人公の道を切り開くために、仲間がこういう……」
狩野春香 : 「ってそんなこと、今はどうでもいいでしょ! 早く行ってあげなよ、スズ!」
涼風紗雪 : 「そうだった……!行ってくる!!」
涼風紗雪 : 貰ったチョコレートを潰さないように鞄に詰めて、上着を急いで羽織る。
狩野春香 : 「一夏ちゃんとは知らない仲じゃないんだし、他にも出来る事があったら協力するよ! 遠慮なく言ってね!」背中に呼びかける
涼風紗雪 : 「ありがとう、春香。その時は頼らせてもらう!」
涼風紗雪 : そう返事しながら、走って教室から出ていきます!一夏ちゃんの家に急ぐよ!
GM : あなたは学校を早退し、一夏が待ってるアパートに急いだ。
GM : 授業も部活もあったが、そんなことより一夏の方が大事だ。
GM : ──それから、慣れない雪道に足をすくわれながらも、あなたは一夏の部屋に辿り着いた。
GM : 一夏の部屋のドアには“出ていけ”という張り紙がしてある。
GM : もう既に、動画投稿者達の手が伸びてきているのだろうか。
涼風紗雪 : 「はぁ、はぁ……。ついた、けど……」 全力疾走してきたので流石に息を乱しながら
涼風紗雪 : 「なんだ、この張り紙……。これもウワサの影響なのか……」
涼風紗雪 : 「(先月見た夢でも、確かこういう張り紙があった……)」
涼風紗雪 : また夢の光景が頭を過ぎるが、気を取り直してドアホンを押します。
GM : ……脇についているドアホンを押すと、鍵の開く音がして、すぐに一夏が出迎えてくれた。
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん!」
犬養一夏 : 「改めて、久しぶりですね、せんぱい」
GM : ……しかし、先月の一夏とは、まるで様子が変わっていた。
GM : 銀雪じみた白い髪。 狂炎めいた赤い瞳。
GM : さらに、一ヵ月で伸びたとは思えないほどのロングヘアで。
GM : ──まるで、初めて出会った頃の一夏に戻ったようだった。
GM : でも、決定的に違う点が1つある。 それは、一夏の表情だ。
GM : あなたとの再会を喜んで、屈託のない微笑みを見せている。
GM : ……それはいいこと、だが、いくらなんでも、一ヵ月で様変わりしすぎじゃないだろうか?
GM : 先月、一夏は泣いて逃げ出すほど追い詰められてたハズで、立ち直るには早過ぎるような。
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん、その髪と目は……」
涼風紗雪 : 「(元に戻したにしても、随分と髪が伸びたような……。いや、それよりも)」
涼風紗雪 : 「……昔に戻したんだね。少しびっくりしちゃった」 微笑を返す
犬養一夏 : 「ええ、もう偽る意味もないですから」
涼風紗雪 : 「偽るって、何をさ?」
犬養一夏 : 「姿を、ですよ。 このままだと“あの犬養一夏だ”ってすぐにバレてしまいますし」
犬養一夏 : 「それに、白い髪と赤い瞳は気持ちが悪いって、よく言われたものですから」
犬養一夏 : 「瞳はともかく、髪はせんぱいとそう変わらないハズですけど、どうしてでしょうね?」
涼風紗雪 : 「そうかな。僕は気持ち悪いなんて思わないけど」
犬養一夏 : 「せんぱいはヘンですからね」
犬養一夏 : 「わざわざ学校を休んで、ぼくの部屋に訪ねてくるくらいには」
涼風紗雪 : 「ふふっ、よく言われるよ。……でも、今回は変じゃない」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃんがやっと帰ってきてくれたんだ。すぐに会いに行くのは当然だよ」
犬養一夏 : 「……それがヘンだって言ってるんですよ」
涼風紗雪 : 「そう……?まあ、別に変って思われても構わないさ」
犬養一夏 : 「そうですか」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「ねえ、せんぱい」
涼風紗雪 : 「ん?何かなっ」
犬養一夏 : 「……最後におねがいがあるんです」
犬養一夏 : 「聞いてもらっても、いいですか?」
涼風紗雪 : 「最後っていうのはよく分からないけど、何でも聞くよ」
涼風紗雪 : 「それに、渡したいものもあるんだよね?」
犬養一夏 : 「ええ、それを渡すためにも、聞いてほしいおねがいなんです」
涼風紗雪 : 「分かった。じゃあ、聞かせて欲しいな」
犬養一夏 : 「それじゃあ、目を瞑っていてもらえますか?」
GM : 媚びるようでいて、有無を言わさない、甘い声のおねがい。
涼風紗雪 : 「目を……?」
涼風紗雪 : 疑問に思うが、従わない理由は無い。静かに瞼を閉じる。
涼風紗雪 : 「これでいいの?」
犬養一夏 : 「……はい」
GM : 目を瞑ったあなたを、濃い甘い香りがふわりと包み込んで。
GM : ──次の瞬間。 あなたの唇には柔らかい感触が触れていた。
涼風紗雪 : 「(……えっ?)」
GM : あなたが驚いて目を開けると、近くには一夏の顔があって。
GM : ……二人の唇同士が触れているのだと、一夏とキスをしているのだと、すぐに、分かった。
涼風紗雪 : 「ん……ちょ、ちょっと……!?」 動揺しながら一歩後ろに下がって、唇を離す
犬養一夏 : 「……待って」
GM : 一夏は酷く悲しげな顔で、追い縋るように唇を再び重ねた。
GM : さらに、あなたの手を捕まえると、逃がさないよう指先を絡めて“恋人つなぎ”をしてきた。
涼風紗雪 : 「ん、んぅ……!?」
涼風紗雪 : 「(な、な、なんだこれ……!?どうして一夏ちゃんにキスされてるんだ!?どうして……!?)」
涼風紗雪 : 完全に混乱してしまい、手に力も入らずその場で固まってしまう。
犬養一夏 : 「ん……っ♥」
GM : あなた達のファーストキスは、初々しさの欠片もない、一方的に貪るような口付けだった。
GM : 一夏はねっとりと唇を押し付けると、隙間から舌を出して、
GM : 獲物に舌なめずりするように、あなたの唇をなぞってきた。
GM : ……そのまま、まるで生き物みたいに自在に動く舌先を、あなたの口内に侵入させてくる。
涼風紗雪 : 「ん……!ん……、うぅ……っ!?」
涼風紗雪 : 初めて知る感覚に戸惑い、震えながら瞳を閉じて口の中に入って来るのを許してしまう。
GM : 一夏の舌が、あなたの舌を、絡め取って、組み伏せて──
GM : くちゅ、と水音が響いて、じぃん、と脳内が痺れる。
GM : 舌と舌が触れ合うほどに、ぞわり、と首筋が粟立つ。
GM : 息ができなくて苦しい。 それ以上に気持ちいい。 ずっとこうしていたい、と思うほどに。
GM : これは、一夏の匂いの影響だ。 媚毒の類なのか、理性を奪いとって、快楽を与えてくる。
犬養一夏 : 「んふふっ……♥」
GM : 一夏はあなたを見つめて、ニンマリと笑っている。 いつもとは違う捕食者じみた笑みだ。
涼風紗雪 : 「ぅ、ぁ……。い、つかちゃ……」
涼風紗雪 : 「(だ、だめだ……こんなこと、しちゃだめなのに……)」
涼風紗雪 : 「(わかってる……わかってるのに、きもちよくて……こんな……)」
涼風紗雪 : 顔を赤らめ、目を潤ませながら、快楽に浸った甘い吐息を漏らし続けている。
GM : ──最後に、あなたは甘く蕩ける“ナニカ”を口移しされた。 ……バレンタインチョコだ。
GM : そのチョコは二層構造で、外側の甘いチョコが融けると、内側の苦いチョコが出てきた。
涼風紗雪 : 「……?あ、ん……ぇ……?」
涼風紗雪 : 思考は蕩けているが、かろうじてそれがチョコだと分かる。
涼風紗雪 :
だが、どうしてこんな渡し方をするのか分からない。
気持ちよさと不安が入り混じった、揺れる瞳で一夏ちゃんをぼんやりと見つめている。
犬養一夏 : 「ぷぁっ……♥」長いキスから解放する
GM : ……そして、内側のビターチョコレートを味わっていると、
GM : 思考に続いて身体まで融かされたみたいに、手足から力が抜け出していくのが分かった。
涼風紗雪 : 「……ぷはっ……。ぁ……はぁ、はぁ……」
涼風紗雪 :
キスから解放された瞬間、名残惜しいと思ってしまう。
もっとこの快楽を味わっていたいという感情が心が支配をしていく。
涼風紗雪 : 「あ、う……ぅ?」
涼風紗雪 : 膝から崩れ落ち、その場にへたり込む。呆然と、力の入らない自分の手足を眺めている。
GM : 内側のビターチョコが、高濃度の麻痺毒だったと気が付いた頃には、もう遅かったのだ。
涼風紗雪 : 「……!い……つか、ちゃ……。こ、れ……」
涼風紗雪 : 快楽に塗り潰されていた恐怖がじわじわと浮上し、怯えた目で一夏ちゃんを上目遣いに見上げる。
犬養一夏 : 「あはっ」
犬養一夏 : 「あはははははははははははははははははっ」
GM : 一夏はあなたの身体を抱きとめると、狂ったように笑った。
犬養一夏 : 「……ごめんなさい、せんぱい」
犬養一夏 : 「やっぱり、ぼくは誰かを信じきる事なんてできない」
犬養一夏 : 「どこまでいっても、ぼくは悪い子でしかないんです」
犬養一夏 : 「……でも、せんぱいも悪いんですよ?」
犬養一夏 : 「夏合宿の時、ぼくのおねがいを、せんぱいが受け入れてくれてたら」
犬養一夏 : 「ぼくは、ずっと、この気持ちを我慢して、生きていくつもりだったんですから」
GM : ……狂喜の表情から一転。 今にも泣きだしそうな一夏が、あなたの瞳を覗き込んでいる。
GM : そんな一夏をぼんやりと眺めていると、あなたの意識は、真っ黒な深みに沈んでいった。
GM :
GM : ──次に意識が浮かびあがったのは、一時間後の事だった。
GM : ゆっくりと瞼を開くと、あなたは真っ白な空間で寝ていた。
GM : ……白いジェルで満たされた浴槽に入れられているらしい。
GM : あなたの意識は、湯煎したてのチョコみたいに蕩けていて、まだまだ固まってくれない。
GM : あなたの身体も、まるでジブンの物じゃなくなったようで、相変わらず動いてくれない。
GM : “ジブン”の輪郭さえ曖昧で、それがジェルに融けて流れ出している錯覚に陥ってしまう。
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「ここ……どこ……だ……?ぼくは、なに、を……」 とろんとした目で、白い世界を眺めながら呟く
犬養一夏 : 「あっ、これハート型……」
GM : 一夏は脇に置かれた椅子に座って、チョコを頬張っていた。
犬養一夏 : 「もしかして、本命チョコだったり、するの、かな……?」
GM : ……一夏が口に運んでいるのは、あなたが貰ったチョコだ。
犬養一夏 : 「ダメ、こんなチョコひとつで、せんぱいはあげない……」
涼風紗雪 : 「……ちょ、こ?……いつか……ちゃん……?」
犬養一夏 : 「あっ、せんぱいっ♥」
犬養一夏 : 「おはようございますっ♥」
涼風紗雪 : 「おはよ……?」
涼風紗雪 : 「……え?なんで、ぼく……ねてた……?」
犬養一夏 : 「……覚えてないんですか? ちょっと悲しいかも」
犬養一夏 : 「せんぱいは、ぼくとキスして気持ちよくなって……、それで眠ってしまったんですよ?」
犬養一夏 : 「まあ、本当はソラリス? の能力で作った毒で、ですけどね?」
涼風紗雪 : 「…………ぁ」 その言葉を聞いて、意識がはっきりとしないながらもあの時のことを思い出す
涼風紗雪 : 「(え……?でも、まって、いま……)」
涼風紗雪 : 「そらりす……。今、ソラリス……って、いった……?」
犬養一夏 : 「ああ、そのことですか」
犬養一夏 : 「せんぱいは信じていてくれたのに、今まで騙していて、本当にごめんなさい」
犬養一夏 : 「ぼく、オーヴァードなんです」
涼風紗雪 : 「……そんな」
涼風紗雪 : 「……おかしい……それじゃ、どうしてあのとき……ワーディングで……?」
犬養一夏 : 「演技、ですよ」
犬養一夏 : 「ぼく、演技は得意ですから、ストーカー役のFHエージェントを協力させて、一芝居打ったんです」
涼風紗雪 : 「えんぎ……?FH……?」
涼風紗雪 : 「どういうこと、なんだ……?ストーカーが……FHの、エージェント……?」 声が震え始める
犬養一夏 : 「そうですねぇ、こうなったら明かしちゃっても変わらないですよねぇ」
犬養一夏 : 「……ストーカーは、ぼくだったんですよ」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「え……?」
涼風紗雪 : 全く理解出来ないといった表情で、大きく見開いた目で一夏ちゃんを見つめている。
犬養一夏 : 「だって、せんぱいのことが好きで好きで好きで好きで、もう限界で」
犬養一夏 : 「会いたくて会いたくて仕方なかったんですもん」
涼風紗雪 : 「………………い」
涼風紗雪 : 「いみが……わからない……」
涼風紗雪 : 「あのとき、きみは……ぼくのために、ストーカーをつかまえようって……」
犬養一夏 : 「……ああ、せんぱいが本気で捕まえようとしたら、ぼくがストーカーだってバレちゃいそうでしたから」
犬養一夏 : 「あの時、それがバレるのは嫌だったので、マッチポンプを仕掛けたんですよ」
犬養一夏 : 「協力関係になったら、文化祭デートもできるし、吊り橋効果で仲も深まる、って思ったんですけど」
犬養一夏 : 「せんぱい、ホントにぼくの気持ちに気付いてくれないんですもんね」
涼風紗雪 : 「………………」
涼風紗雪 : 「ぼくのことが、すきだから……ぜんぶ、しくんだ……って、こと……?」
犬養一夏 : 「はい、そうですよ?」
犬養一夏 : 「今回も同じ」
犬養一夏 : 「人殺しだってバレたら、もう一緒にいられない……」
犬養一夏 : 「だから、いっそ、こうなったら、せんぱいをムリヤリにでも手に入れてしまおうと思って」
涼風紗雪 : 「………………」
涼風紗雪 : 「(わ、わかんない……。いま、じぶんがショックをうけているのか……おこっているのか、かなしいのかも……)」
涼風紗雪 : 「(いつかちゃんは……ぼくのことがすきで……だから、ぼくをてにいれるために、ずっとだましていて……)」
涼風紗雪 : 「……いつか、ちゃん。ここからだして……」
犬養一夏 : 「ん~……」
犬養一夏 : 「いいですよ~♥」
涼風紗雪 : 「……ありがとう……。じゃあ、おねがい……」
犬養一夏 : 「でも、もうちょっと浸かっていてくださいね?」
犬養一夏 : 「その獣脂に、せんぱいのエッセンスを移しているところなんですから」
涼風紗雪 : 「……エッセン、ス?そんなのうつして、どうするの……?」
犬養一夏 : 「決まってるじゃないですか」
犬養一夏 : 「それをアルコールで撹拌して、せんぱいの匂いだけを抽出して」
犬養一夏 : 「せんぱいの香水を作るんですよ♥」
涼風紗雪 : 「…………な、に?」
涼風紗雪 : 「え……?なに、それ……?」
犬養一夏 : 「だって、せんぱいを養っていくためには、ぼくも仕事をしないといけないですし」
犬養一夏 : 「ずっと一緒って訳にはいきませんけど」
犬養一夏 : 「せんぱいの香水があれば、寂しさもまぎれるでしょう?」
涼風紗雪 : 「え、でも……でも……」
涼風紗雪 : 「ど……どういうこと?やしなうって……きみが、ぼくを?」
犬養一夏 : 「ああ、言ってませんでしたっけ」
犬養一夏 : 「せんぱいのことは、これからずっと、ぼくが養ってあげるんです」
涼風紗雪 : 「な……なんで……?」
犬養一夏 : 「そうすれば、ずっと一緒にいられますから」
犬養一夏 : 「あっ、ここから出してほしいって話ですか?」
犬養一夏 : 「そこに嘘はありませんよ? 出してあげますっ」
犬養一夏 : 「その浴槽から、ね♥」
涼風紗雪 : 「……よくそう、から……」 嫌な予感が胸の中で膨らんでいく
涼風紗雪 : 「じゃあ、外に……は?」
犬養一夏 : 「出られませ~ん♥」
犬養一夏 : 「でも、代わりにベッドでたくさんたくさん可愛がってあげますから♥」
涼風紗雪 : 絶句する。朦朧とした頭に、ゾッとする感情が混み上がる。
涼風紗雪 : 「……だ、だめ」
涼風紗雪 : 「だめだよ……そんなの……」
犬養一夏 : 「あっ、幻滅しましたか? しましたよね? でも、いいんです♥」
犬養一夏 : 「誰が何といっても、せんぱいはもう、ぼくのものなんですもん♥」
犬養一夏 : 「……それとも、ぼくが仕事に言ってる間、ひとりで寂しいって心配ですか?」
犬養一夏 : 「だったら安心してください♥」
犬養一夏 : 「せんぱいには、今作ってる香水と同じものを、もうプレゼントしてあるんですから♥」
涼風紗雪 : 「……こうすい?プレゼント?それって……まさか……」
犬養一夏 : 「ええ、あのクリスマスプレゼントは、せんぱいの好きな薔薇をベースにして、ぼくの匂いを交ぜた香水……」
犬養一夏 : 「えへ、えへへ、気に入ってもらえて、うれしかったなあ……♥」
涼風紗雪 : 「……あ、あぁ、うぅ……」
涼風紗雪 : あの時良い匂いだと感じたことは嘘じゃないが、中身の正体を知ると複雑な気持ちが押し寄せてしまう。
涼風紗雪 : 「……ち、ちがう、あの……そうじゃ、なくて……っ」
犬養一夏 : 「…………?」
涼風紗雪 : 「寂しいから、じゃ……なくて……」
涼風紗雪 : 「そ、外に……でなきゃ……。でなきゃ、だめなんだ……」
犬養一夏 : 「嫌です」
犬養一夏 : 「せんぱいはずっと、ぼくと一緒にいるんです」
涼風紗雪 : 「そんなの、だめ……だめだよ……」
涼風紗雪 : 「おねがい……ここからだして……出してよぉ……!」
涼風紗雪 : 今にも泣き出しそうな声になりながら、もがくように体を僅かに震わせる。
犬養一夏 : 「もう、ホントに可愛いなぁ、せんぱいは♥」
涼風紗雪 : 「う、うぅー……うぅぅ~……!」
犬養一夏 : 「……でも、本当に“おねがい”をしてよかった」
犬養一夏 : 「これで、部活が終わっても、受験シーズンになっても、ずっとずっとせんぱいと一緒」
犬養一夏 : 「UGNの都合なんかで傷付くせんぱいの姿も、見ないでいい」
犬養一夏 : 「“おねがい”の代価なんて、軽いものです」
犬養一夏 : 「せんぱいさえいてくれたら、ぼくは他の物なんか要らないんですから……♥」
涼風紗雪 : 「…………っ」
涼風紗雪 : 「(これから、このまま……いつかちゃんと、ずっといっしょ……?)」
涼風紗雪 : 「(そんな……そんなの……)」
涼風紗雪 : 「(…………)」
涼風紗雪 : 何か大事なことを伝えなくてはいけないのに、霞のかかった思考のせいでそれも叶わない。
涼風紗雪 : 紗雪は沈黙し、絶望するように瞳を閉じた。
GM : そして再び、あなたの意識は真っ黒な深みに沈んでいった。
涼風紗雪 : 一夏ちゃんのロイスの感情を、Pを任意で快感、Nを恐怖に変更します!表に出ているのはNの方で
GM : P快感、えっちすぎでは?????
涼風紗雪 : まだ頭がはっきりしてないからね、気持ちよかったことしか残ってないね…
涼風紗雪 : Nの恐怖は一夏ちゃん自身にか、また別のことに対するものかはまだ紗雪自身よく分かっていない感じですの
GM : なるほどね…、これからの感情の推移がたのしみ…
涼風紗雪 : 落ち着けてちゃんと頭が動くようになれたらしっかり感情を整理していきますよ…!
GM : 次にせんぱいを待っているのはクライマックスフェイズですが、そこで気持ちの整理をつけてもろて…
GM : ではでは、そんな訳で、次のシーンに移っていきます!
涼風紗雪 : おっけい!
ぼく : 4月1日。 天気は晴れ。
ぼく : 見たくもない鏡台に立つ。
ぼく : 黒に染めたショートヘア。 茶系のカラーコンタクト。 校則通りのフツウの制服。
ぼく : あまり目立たない生徒だ。 まるでイケてないと思う。 ……だけど、それでいい。
ぼく : 人は“異分子”を許さない。 女子高校生は、特にそう。
ぼく : ヘアカラー、ヘアスタイル、スカートの丈。
ぼく : ……それらを選択する権限は、暗黙の了解として、年功序列で決まっているのだ。
ぼく : そのルールを破ってしまえば、陰口を叩かれたり、酷ければイジメにだって遭う。
ぼく : ──もしも、悪目立ちした結果として、ぼくの過去が探られてしまったとしたら?
ぼく : 考えたくもない。 いくら経験を積んだところで、責められるのに慣れる事はない。
ぼく : だから、ぼくは人目を気にして、全ての真実を覆い隠し、普通の生徒に擬態する。
ぼく :
ぼく : 獣化しちゃう右腕を隠すために、制服を萌え袖っぽくしたのが不安なとこだけど、背に腹は代えられない。
ぼく : ……代わりに、寝癖を“作ろう”。 天然キャラだって事にして“サイズを間違えちゃった”って言い訳しよう。
ぼく : 一歩でも間違えたら“ぶりっ子”と取られちゃうかもしれないけど、きっと大丈夫。
ぼく : そう思われないように演じるし、人間って自分より下の人間を侮る傾向にあるし。
ぼく : むしろ、バカって思わせた方が、犯罪者のイメージと結びつくことがなくていい。 懐に入るのもラクそう。
ぼく : 女子力が低ければ、男子の告白みたいな面倒事に巻き込まれる心配も要らないし、ズボラなバカでいこう。
ぼく :
ぼく : ──そんな打算を考えながら、手首に香水を吹きつける。 誰かの癇に障らないような自然な香りのものを。
ぼく : あの事件からずっと、この手に残っている、人間の血の臭いを、包み隠すために。
ぼく :
ぼく : そして、最後は“笑顔の練習”だ。 化けの皮を貼りつける。
ぼく : 楽しい時の微笑。 面白い時の爆笑。 茶化す時の苦笑。 裏表なさそうな笑顔。 人懐っこそうな笑顔。
ぼく : ……その実、全てが、作り笑顔。
ぼく : 「………………」
ぼく : うん、よかった。 今日の笑顔はすごく上手にできてる。
ぼく :
ぼく : ──学校に行く前に、これからの方針を確認していこう。
ぼく : 一人称は“あたし”にする。 “ぼく”はヘンらしいし、それで“ぶりっ子”って言われた事もあるから避けたい。
ぼく : ……それから、他にも気をつけなきゃいけない事がある。
ぼく : 他人を、愛さないように。 愛されないように。 好かれるように。 期待しないように。 期待されるように。 信じないように。 信じられるように。
ぼく : 軽いジョークや、リップサービスも忘れないように。 笑わせるよりも笑われるように。
ぼく : 自我を晒さないように。 分からないように。目立たないように。 話さないように。 口を閉じないように。
ぼく : ──そうして、誰もに嫌われる“ぼく”は、誰もに好かれる“あたし”になっていく。
ぼく :
ぼく : 「よし、行ってきま~す」
ぼく : 準備を終えた“あたし”は、青空を眺めて“あの日みたいな天気だな”なんて思いながら、入学式に向かった。
ぼく :
ぼく : ──そこで、あたしを待ち受けていたのは、奇跡としか言えない“であい”だった。
ぼく : Y高校の校門の傍で、舞い散る桜の雨を浴びて、白銀のロングヘアが靡いていた。
ぼく : 後ろ姿からでも、すぐ分かった。
ぼく : 「えっ……? せん、ぱい……?」
ぼく : ……夢にまで見た“せんぱい”が、そこには確かにいた。 夢でも幻でも嘘でもない。
ぼく : あの七夕の“ねがい”が叶ったんだろうか? あたしの事は、覚えているんだろうか?
ぼく : そもそもの話、なんで同じ学校に? せんぱいは、今も神奈川にいるんじゃないの?
ぼく : あたしのアタマは、驚愕と疑問で埋め尽くされていた。
せんぱい : 「……?」
ぼく : 「えっと、その……あたしのこと、覚えてますか?」
せんぱい : 「……えっ、と」
せんぱい : 「…………」
せんぱい : 「……ごめん、思い出せない。どこかで会ったかな……?」
ぼく : 「そうですか……」
ぼく : ああ、よかった。 覚えていなくて。 入学早々、転校手続きする事にならなくて。
ぼく : ……でも、せんぱいに忘れられてる事にショックを隠せない自分も、確かにいて。
ぼく : 安堵と悲嘆が同時に渦巻き、ぼくの心境は複雑だった。
ぼく :
ぼく : ──その翌週。 同級生の“猫山朗姫”が接触してきた。
猫山朗姫 : 「ちょっといい?」
猫山朗姫 : 「……わたしの事、覚えてるかしら?」
ぼく : 「同級生の、猫山さん、だよね?」
猫山朗姫 : 「……そう。 じゃあ、本題から入るわ」
ぼく : 「?」
猫山朗姫 : 「わたしは“FH”っていう能力者の組織の人間よ」
猫山朗姫 : 「わたし達の組織に、力を貸して頂戴」
ぼく : 「え……? 能力者……? 組織……?」
ぼく : 最初は“質の悪いジョークか何かだろう”って思った。
猫山朗姫 : 「ああ、そうよね? いいわ、見てて?」
ぼく : ……そう溜息をついた次の瞬間。 彼女の姿は、幼少期のあたしに変わっていた。
ぼく : それで、分かった。 彼女はジョークなんかで言ってる訳じゃなく、本気だって。
ぼく : 自分みたいな“人でなし”は他にもいて、そのFHって組織に集まってるんだって。
猫山朗姫 : 「これで、分かってくれたかしら」
ぼく : 「あたしの過去も、調べたの?」
猫山朗姫 : 「……ああ、この姿? まあ、そんなところね」
猫山朗姫 : 「それはともかく、詳しい話をさせてもらうわね?」
ぼく : ……話を要約すると、FHと契約したら“ねがいを三つまで叶えてくれる”らしい。 ランプの魔人みたいに。
ぼく : 胡散臭かったけど“全てのねがいを叶えたら力を貸してほしい”って取引だったし、
ぼく : 無償でない分、善意なんかより信用できると思った。
ぼく : それに、同じ境遇の人間がいるって事実が嬉しくて。
ぼく : “物は試し”と思ったのもあって、あたしは“せんぱいの事を教えてほしい”と一つ目のねがいを告げていた。
ぼく : ……すると、FHは、せんぱいの情報の他に、UGN、FH、オーヴァード、その力の扱いまで教えてくれた。
ぼく : さらに、契約の特典だとかで“フォーチュン・ハンター”というレストランで働かせてもらえる事になった。
ぼく : そして、こう言った。 “そのせんぱいも、見えない所では君の悪いウワサを広めようとしているかも”って。
ぼく :
ぼく : その場では、あたしは反論した。 ──けど、植え付けられた不安は、時間に比例して成長を続けていって。
ぼく : 不安で堪らなくなったあたしは“せんぱいは思い出せないって言ってたけど、もしも、それが嘘だとしたら”
ぼく : “身近な人にバラすかも”そんな得体の知れない被害妄想に憑りつかれ、せんぱいを監視するようになった。
ぼく : ……ごめんなさい。 能力まで使って、ストーカー行為なんて。 しかも、恩人を相手に。 本当に、最低だ。
ぼく : 良心は傷んだけど、仕方ないと自分に言い聞かせた。
ぼく :
ぼく :
ぼく : 6月12日。 天気は大雨。
ぼく : せんぱいがキレイに平らげたパスタの皿を見つめる。
ぼく :
それだけで頬が緩んでくる。 あの日のお礼のつもりだったのに、ぼくの方が嬉しくなってるのは不思議だ。
ぼく :
ぼく : ──この日のぼくは、せんぱいを自室に招いて、“試食をしてほしい”という体で手料理を振る舞っていた。
ぼく : こうして、せんぱいを自室に招く事ができたのは、テニス部にマネージャーとして入部したおかげだろう。
ぼく : それは、せんぱいに恩返しをするため。 そして、せんぱいの見張りをするため。
ぼく : ……ううん、もっと他の思いもあったかもしれない。
ぼく :
ぼく : だけど、もう潮時だろう。
ぼく : 二ヵ月も一緒に過ごして、確信を持てた。 ぼくが人殺しだとしても、せんぱいはそれを吹聴したりしない。
ぼく : ……うん、約束通り、あのタオルを返してしまおう。
ぼく : ぼくの過去を知ったら、今の関係は壊れてしまうだろうけど、それは仕方がない。 ……そう思ってたのに。
ぼく : “掃除をする”って嘘をついて、咄嗟にタンスに隠してしまったタオルを渡せない。 時間だけが過ぎていく。
せんぱい : 「……?どうかした?」
ぼく : 「えっと、その……」
ぼく : 「……………………」
ぼく : 「いえ! なんでもないんです!! 忘れ物はないのかな~と思っただけで!!」
せんぱい : 「忘れ物か……。うん、無いと思う」
ぼく : 「もし忘れ物があったら勝手に貰っちゃいますよ~? ホントに大丈夫ですか~?」
ぼく : せんぱいは帰ろうとしてるのに、まだ言い出せない。
ぼく : ……あまつさえ、せんぱいが覚えてないのをいい事に“勝手に貰っちゃいますよ”なんて卑怯な言い方して。
せんぱい : 「その時はちゃんと届けて欲しいな……!っていうか、随分心配性だね」
ぼく : 「それは~……考えておきますっ!」
ぼく : あのタオルは、ぼくとせんぱいとの唯一の繋がりで。
ぼく : ……たとえ、約束を破ってでも“返したくない”って、自分勝手に思ってしまった。
ぼく : ぼくはもう、何も望んじゃいけないハズだったのに。
ぼく : 相合傘くらいで照れ臭かったり、一緒にいるだけで胸が弾んだり、
ぼく : 恋人みたいって冗談で言われて、どんな訳なのか苦しくなったり。
ぼく : ぼくの今の気持ちは、瑠奈ちゃんに教わった恋の歌に似てる気が。
ぼく : ──ぼくは、せんぱいの事を、好きになってしまったんだろうか。 ……意識したら、心臓が暴れはじめた。
ぼく :
ぼく : ああ、本当にダメだ。 ぼくは知ってるハズなのに。
ぼく : 恋というのは、パステルカラーで彩られたキラキラとしたものなんかじゃなくて、
ぼく : まるで薔薇のように、または狂炎のように、触れるものを傷付ける凶器なんだと。
ぼく :
ぼく :
ぼく : 8月5日。 天気は快晴。
ぼく : 深夜三時頃。 夏合宿の夜。 他人と寝るのは慣れなくて、ぼくは寝付けなかった。
ぼく : ……なので、気分転換のため、ぼくは海に向かった。
ぼく : 夏の海は嫌いだ。 まるで血溜まりみたいに生温かくて、刺した感触を思い出す。
ぼく : ……けれども、だからこそ、冷静になる事ができる。 気持ちが冷えきっていく。
ぼく : そうだ。 ぼくはせんぱいに“期待”してしまっている。 誰にも“期待”しないってルールを破ろうとしている。
ぼく : ダメだ。 ダメだ。 この感情は、抱いてたらダメだ。
ぼく : せんぱいから離れないと。 せんぱいから離れないと。 せんぱいから離れないと。
ぼく : ……ぼくの幸せは、すぐに壊れる運命にある。 だって、これまでそうだったから。
ぼく : だったら、いっその事、自分から手放した方が、気がラクでいい。
ぼく : ──もしも裏切られたら、取り返しがつかなくなる。 ぼくはきっと狂ってしまう。
ぼく : もしも人殺しとバレたら、せんぱいの日常も巻き込んで、一緒に壊してしまう。
ぼく : なのに。 なのに。 なのに。 こうして夏合宿にまでついてきている“ぼく”がいる。
ぼく : せんぱいと一緒にいたい。
ぼく :
そんな気持ち一つに縛られて、せんぱいから離れる事ができない。
ぼく :
ぼく : ──ああ、いっそ、人魚みたいに泡になって、融けてしまえれば。
せんぱい : 「……え。一夏ちゃん」
せんぱい : 「……!一夏ちゃん!ちょっと待って!!」
ぼく : 感傷に浸りながら満月を仰いでいると、後ろから声を掛けられた。
ぼく : ……そこには、せんぱいがいた。 心配で探しにきてくれたらしい。
ぼく : 嬉しい。 心配させたのに。 ひどい。 ぼくの心は醜いと自覚する。
ぼく : こんなぼくなんかが、せんぱいの隣にいちゃダメだ。
ぼく : ……だから“距離を取ってほしい”とぼくは勇気を出して告白した。
ぼく : なのに、せんぱいは、いともカンタンに、それを拒否してみせた。
せんぱい : 「……一夏ちゃんは、僕のことが本当は嫌いというわけでは……ないんだよね?」
ぼく : 「…………」
せんぱい : 「もし嫌いだって言うなら、僕は言われた通り距離を置くよ」
せんぱい : 「でもそうじゃないなら、やっぱりこれからも僕と仲良くしてほしいし……」
せんぱい : 「僕は君を絶対に裏切ったりしないって、約束するから」
ぼく : いきなり“距離を取ってほしい”って言われたのに、せんぱいはまだ、ぼくに寄り添う言葉を掛けてくれた。
ぼく : 何の確証もないハズの“絶対に裏切ったりしない”ってせんぱいの言葉で、ひどく安堵したのを覚えている。
ぼく : 信じてもいいんだ、隣にいていいんだ、って許された気がして。
ぼく :
ぼく : ──それで“好きです”って本音を、無意識にこぼしてしまった。
ぼく : “せんぱいとして”なんて誤魔化したけど、もう自分では認めるしかなくなってた。
ぼく : ぼくは今、恋してるんだ。
ぼく : ワガママなねがいに笑顔で応えてくれる、この人に。
せんぱい : 「おいで、一夏ちゃん。僕と一緒に遊ぼう」
ぼく : せんぱいは微笑んで、ぼくに手を差し伸べてくれた。
ぼく : ぼくは本当の笑顔を返して、せんぱいの手を握った。
ぼく : この右手が獣化してしまわないか、なんて不安は、知らず知らずに吹っ飛んでた。
ぼく : 暖かい。 好きだ。 幸せだ。 残ってるのはそれだけ。
ぼく :
ぼく : ──恋に落ちる、と言いはじめた人は天才だと思う。
ぼく : 恋をすると、多幸感で胸が満たされて、うまく息ができなくなる。
ぼく : 風船になってしまったみたいに、得体の知れない浮遊感に包まれ、自分の足元さえ覚束なくなってしまう。
ぼく : ……そして、幸せなハズなのに、それを不安に思う恐怖感もある。
ぼく : 今のぼくみたいな人を“落ちる”って表したんだろう。
ぼく :
ぼく : ──だから、ぼくの手を離さないでくれてよかった。
ぼく : これは確かに、夢みたいな現実だって、分かるから。
ぼく :
ぼく :
ぼく : 11月7日。 天気は曇り。
ぼく : 文化祭当日。 ぼくはせんぱいと一緒に過ごしていた。
ぼく : ……せんぱいと過ごす時間は、いつでも幸せだった。
ぼく : だけど、二人でおばけ屋敷に入った後、ぼくの心は不安に塗り潰されてしまった。
ぼく : そこにいた血塗れの女を、ぼくが刺した同級生と重ねてしまって。
ぼく : まるで、今のぼくを責め立てているようで怖かった。
ぼく : ──だって、今のぼくは、身勝手極まりない幸福を享受している。
ぼく :
ぼく : 夏合宿以降、過去を明かしたぼくに、せんぱいの監視をする必要なんかなかった。
ぼく : でも、せんぱいの傍にいたい。 せんぱいの事を知りたい。せんぱいの匂いを嗅ぎたい。
ぼく : そんな浅ましい情動に負けて、ぼくはストーカー行為を続けてた。
ぼく : ……それどころか、好きって気持ちを抑えられなくて、ついには、せんぱいの着てた服を盗んでしまった。
ぼく : それに、せんぱいが怯える顔はとても可愛いな、とも思っていた。
ぼく : ……けれど、同時に、申し訳なくて仕方がなかった。
ぼく : 後ろめたさを感じながらも、ストーカーを辞める事はできなくて。
ぼく : そうこうしてる内に、せんぱいが犯人の捜索をはじめてしまった。
ぼく : 今はバレてないけど、バレるのは時間の問題だろう。
ぼく : バレてしまったら、絶対に今の関係は壊れてしまう。 自業自得だけど、それはイヤだ。
ぼく :
ぼく : だから、ぼくは“せんぱいからの疑惑を晴らしたい”って二つ目のねがいを告げていた。
ぼく : ……すると、猫山は“わたしがストーカー役になるからアリバイ作りでもすれば”と提案してきたのだった。
ぼく :
ぼく : そう。 せんぱいと今している文化祭デートは、その提案に従ったマッチポンプなのだ。
ぼく : ああ。 ぼくはまた、せんぱいを騙してしまっている。
せんぱい : 「一夏ちゃん……大丈夫?」
ぼく : せんぱいは、そんなぼくなんかを心配してくれてる。
ぼく : 「……えへへ、実はまだちょっと怖くてっ」
ぼく : 「……あの、もっとくっついてもいいですか?」
ぼく : 「……その、さっき分かったんですけど、そうすると、とっても落ち着くのでっ」
ぼく : ぼくはその良心につけこんで、ワガママを言ってしまって。 そんな自分がイヤになる。
せんぱい : 「うん、いいよ。……おいで、一夏ちゃん」片方の腕を広げて
ぼく : 「だ、抱き着くのは、えっと、流石にここだと人目がありますしっ……!」
せんぱい : 「……それもそうか」
ぼく : せんぱいは“確かに”と頷きながらも──次の瞬間、ぼくの手を取って抱き寄せていた。
ぼく : 「……っ!?」
ぼく : そして、体勢を崩したぼくは、せんぱいの胸に顔を埋めるみたいに抱き着いてしまう。
せんぱい : 「でも僕達、今日は恋人同士だからね。恋人なら、人目があったって抱き着いても別に良いでしょ?」
ぼく : 「せ、せんぱいっ……」
ぼく : せんぱいの胸元からは、いつもより濃い匂いがして、まるで火がついてしまったように胸がドキドキする。
ぼく : ……胸に点った火は、あっという間に燃え広がって。 火の手は、すぐに顔までのぼってきた。ひどく熱い。
ぼく : きっともう、顔は真っ赤を通り越して焦げ付いてる。
ぼく : アタマは沸騰しそうだ。 いいや、もう内側から蒸発してると思う。
ぼく : だって、思考がフワフワと漂ってて定まらないから。
ぼく :
ぼく : ──せんぱいの前では、自分の心を隠す事ができなくなっていた。
ぼく :
化けの皮が、あっという間に焼き尽くされてしまう。
ぼく :
ぼく : ……ああ、でも、せんぱいとぼくとは釣り合わない。
ぼく : せんぱいは高嶺の花。 ぼくは路傍の石。 月と鼈で、分不相応だ。
ぼく : ぼくには何もない。 せんぱいが大好きって気持ち以外に何もない。
ぼく : 愛の重さだって、とても釣り合ってくれないと思う。
ぼく : ……せんぱいも、ぼくの事は好きだろう。 だけど、それは、友達とか後輩に向けられる気持ちでしかない。
ぼく :
ぼく : だから、この恋が実らないと知っているから、ぼくの傷だらけの心は、高鳴る度にジクジクと傷んでいた。
ぼく : そして、この幸福の代価は、虚偽という裏切りで返したのだった。
GM : ついにクライマックス! せんぱい! 登場おねがいします!!
涼風紗雪 : 1d10+104(1D10+104) > 3[3]+104 > 107
GM : 最高
涼風紗雪 : いぇーい!!!
涼風紗雪 : いぇーいとか言ってる状況ではないけどそれはそれとして嬉しい
GM : これは幸先いいですね…。 ではでは、クライマックスフェイズをはじめていきます!
GM : 2月14日。 天気は雨に。
??? : 「……あらあら、すっかり囚われの姫様になってるじゃない? 毒リンゴではなかったけれど、一ヵ月もかけて熟成した毒は、王子様にも効果覿面みたいね」
GM : ぽつぽつと落ちる雨樋の水音と、少女の笑声であなたは目覚める。
GM : 今度はベッドに寝かされていた。 ……一夏の匂いがするベッドに。
GM : 先程までは裸だった気がするが、気が付くと服を着せられている。
GM : ……九月頃に盗まれたハズの、あなたのお気に入りのワンピースを。
涼風紗雪 : 「……う……ぅ……?」 ゆっくりと瞼を開ける
涼風紗雪 : 「ここは……?」 眠る前と違う感触に気付き、辺りをゆっくり見回す
GM : 体調はいくらかマシになったが、毒気は抜けきっていないらしい。
GM :
身体は倦怠感で鉛のように重く、あなたの思い通りに動かせない。
猫山朗姫 : 「相当な重症ね……、ここは一夏の部屋よ……」
GM : 少女は、あなたの隣に腰掛けて、物憂げに“石の薔薇”を見ている。
GM : ……そう。 あなたが契約している遺産“祈りの造花”は奪われていた。
涼風紗雪 : 「……!君は……猫山さん、か……?」
猫山朗姫 : 「ええ。 こうして顔を合わせるのは文化祭以来ね、先輩?」
GM : 猫山は“文化祭以来”と口にした。
GM : ……しかし、猫山と会ったのは、その準備が最初で最後のハズだ。
涼風紗雪 : 「……文化祭では、会ってなかった気がするけれど」 まだあまり頭が回らないが、あの時のことを思い出す
猫山朗姫 : 「ふふ、会っていない、ね……」
猫山朗姫 : 「まだ寝惚けているのかしら」
猫山朗姫 : 「それじゃあ、これで思い出してもらえる?」
GM : 猫山が毛糸を手に取ると、それは意思があるように猫山を包んだ。
GM : そして、次の瞬間。 猫山の姿は、あのストーカーに変身していた。
涼風紗雪 : 「なっ……!?お、お前は……!」 その姿を見て、急激に頭が覚醒していく
ストーカー? : 「はっ、いい目覚ましになったかしら?」
涼風紗雪 : 「(……一夏ちゃんは、FHエージェントにストーカー役をしてもらったって言っていた……じゃあ、ということは……)」
涼風紗雪 : 「君が……一夏ちゃんに協力していた、FHのエージェントだったのか……」
猫山朗姫 : 「そういう事。 呑み込みがはやくて助かるわ」
猫山朗姫 : 「ああ、別に助かりはしないかも」
GM : 猫山はすぐに変身を解くと、驚くあなたを見て、ニヤリと笑った。
涼風紗雪 : 「……どういう意味?」
猫山朗姫 : 「どういう意味も何も、ねぇ?」
猫山朗姫 : 「……そうね、まずは、身体を起こしてみるといいわ」
猫山朗姫 : 「それで分かるから」
涼風紗雪 : 「…………」 言われた通りに、身体を起こそうとしてみよう
GM : ……身体を起こそうと試みると、ヒヤリと冷たい感触に阻まれた。
GM : ソレがある首元と手元に触れる。
GM : ──ソレは、首輪と手錠だった。
GM : あなたを永久の虜囚として繋ぐ、ふたつの無骨な金属製の拘束具。
涼風紗雪 : 「……っ!?なんだ、これ……!」
猫山朗姫 : 「いちいち聞かなくても、分かっているハズでしょう?」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃんが、やったのか……。僕をここから逃がさないために……」
猫山朗姫 : 「そういう事」
猫山朗姫 : 「ちなみに抵抗してもムダだから」
猫山朗姫 : 「その二つの拘束具は、FHが用意したオーヴァード専用の特別製」
猫山朗姫 : 「……今のあんたじゃ“その拘束具だけ”は壊せない」
涼風紗雪 : 「拘束具だけ……?」 若干引っかかる言い方に感じてしまう
猫山朗姫 : 「……まあ、それはそれとして、ゆっくりしていきなさい」
猫山朗姫 : 「急いだところでムダだって事は、身に染みて分かったでしょう?」
涼風紗雪 : 「……そう、だね。正直、今すぐにここから逃げ出したいとかは思えない……」
涼風紗雪 : 「(さっきまでのことは、全部夢じゃなかった……。全部現実だ……。だったら、ちゃんと考えないと……)」 ぼんやりと天井を眺める
猫山朗姫 : 「それはよかった」
猫山朗姫 : 「……そうね、わたしもヒマだし、話し相手にでもなってあげましょうか?」
涼風紗雪 : 「じゃあ、付き合ってもらおうかな……」
涼風紗雪 :
「……って、それはいいんだけど。その前にそれ、返してくれないかな。大事なものなんだ」
指だけを動かしてアキちゃんが持っている造花を示す
猫山朗姫 : 「なんで、あなたのおねがいを聞いてあげないといけないの?」
猫山朗姫 : 「わたし、FHエージェントって事になってるんだけど?」
涼風紗雪 : 「それは分かってるけど、もしかしたらお願いしたら返してくれるかもしれないじゃないか」
涼風紗雪 : 「まあ、嫌ならとりあえず諦めるよ……」
猫山朗姫 : 「それが賢明ね」
猫山朗姫 : 「……で、他に聞きたい事はないの?」
涼風紗雪 : 「じゃあ、一夏ちゃんはどこに行ったの?この部屋にはいないみたいだけど」
猫山朗姫 : 「ああ、その話」
猫山朗姫 : 「二人分の食材を用意するのを忘れてたから、って買い物に出たわ」
涼風紗雪 : 「買い物か……。じゃあ、猫山さんは僕の見張りで呼ばれたの?」
猫山朗姫 : 「ま、そんなとこ」
涼風紗雪 : 「そうか……仲、良いんだね」
猫山朗姫 : 「仲がいい、ね」
猫山朗姫 : 「……言っとくけど、一夏はあんたの他には誰にも心を許してないわよ?」
涼風紗雪 : 「裏切られるのが怖いから……かな。夏に聞いたから、そんな気はしていたけれど……」
猫山朗姫 : 「その通り。 それぞれの仲良しグループに入っておきながら、深入りは絶対にしない」
猫山朗姫 : 「ぜんぶ、自己保身のための行為ね」
涼風紗雪 : 「詳しいんだね、一夏ちゃんのこと」
猫山朗姫 : 「……まあ、この一連の事件に関して言えば、誰よりも状況を把握してるんじゃないかしら」
涼風紗雪 : 「……だったら、あのウワサのことについても知っているの?一夏ちゃんに昔何があったのか……」
猫山朗姫 : 「ええ、もちろん」
涼風紗雪 : 「じゃあ、教えてくれないか?こうなったら、僕はもう知らなくちゃいけない……」
涼風紗雪 : 「……って、僕のお願いを聞く義理はないかな……」
猫山朗姫 : 「……別にそれは構わない、けど」
猫山朗姫 : 「事件の真相については、一夏本人に聞いた方がいいかもしれないわよ?」
猫山朗姫 : 「わたしが嘘をつく可能性だってあるし」
涼風紗雪 : 「もちろん、全てを鵜呑みにしようとは思っていなかったけれど……」
涼風紗雪 : 「(一夏ちゃんは、聞いても答えてくれるだろうか……。きっと知られたくないことだとは思うけれど……でも……)」
涼風紗雪 : 「……いや……そうだな。やっぱり、一夏ちゃんに直接聞くよ」
猫山朗姫 : 「それがいいわ」
猫山朗姫 : 「わたしが語る事ができるのは、わたしの視点から見た真実でしかないしね」
涼風紗雪 : 「うん……」
涼風紗雪 : 「……どうしようか……。いや、僕はどうしたいのか……」 瞳を閉じて
涼風紗雪 : 「それも、一夏ちゃんから真実を聞かないと……何も答えが出ない気がする……」
猫山朗姫 : 「まあ、今の一夏じゃ、会話にならないとは思うけどね」
猫山朗姫 : 「……あんた、今の一夏の状態、知ってる?」
涼風紗雪 : 「いや……分からない」 不安そうにアキちゃんを見る
猫山朗姫 : 「……そう、なら教えてあげる」
猫山朗姫 : 「一夏はあの悪魔──Y市のFHセルリーダー“メフィスト”のふたつの能力の影響下にあるの」
涼風紗雪 : 「メフィスト?二つの能力って、一体何?」
猫山朗姫 : 「まあ、同市のUGNエージェントといっても、聞いた事はないかもね。 ここのFHはほぼ壊滅状態だし、ずっと潜伏を続けてるようなヤツだから」
涼風紗雪 : 「そうだね。この町でFHエージェントと衝突したことなんてほとんど無かった……」
猫山朗姫 : 「マトモな手駒がいないのよね、自棄になってシュミに走ってばかりいるから」
猫山朗姫 : 「ま、それはそれとして」
猫山朗姫 : 「メフィストの能力について話していくわ」
猫山朗姫 : 「ヤツの能力は“相手の感情を増幅する能力”と“絶対遵守の契約をする能力”のふたつ」
涼風紗雪 : 「感情を増幅、か……。一夏ちゃんの感情も増幅されてる、って言われると納得できるところはある……」
猫山朗姫 : 「そうね、ひとつめの“相手の感情を増幅する能力”は、不安の芽を植え付けたり、あらゆる心の枷を解き放ったりって事に使われた」
涼風紗雪 : 「ファルスハーツ向きだね……」
涼風紗雪 : 「でも、じゃあ契約って方は何なんだ?」
猫山朗姫 : 「ふたつめの“絶対遵守の契約をする能力”は、相手のねがいを三つまで叶えるという取引をする事ではじまるの」
猫山朗姫 : 「これはほとんど詐欺みたいなモノで、ねがいを三つ叶えた時点で、その相手は代価として、三つのねがいを強制的に聞かされる事になる」
猫山朗姫 : 「“一生、奴隷になれ”とかね。 そのねがいの重さが釣り合っていなくても関係ないわ」
涼風紗雪 : 「そんな力があるのか……。いや、待て、じゃあ一夏ちゃんももう願いを三つ叶えて貰った後なの?」
猫山朗姫 : 「……ええ、一夏は既にねがいを三つ言ってる」
猫山朗姫 : 「せんぱいの事を教えてほしい、せんぱいからの疑惑を晴らしたい、せんぱいの事が欲しい」
猫山朗姫 : 「あんたの事ばっかり願って、もう破滅寸前よ?」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「そこまでするくらい……僕のことが好きだった、のか……」
猫山朗姫 : 「まったく罪な女ね?」
涼風紗雪 : 「……それじゃあ、一夏ちゃんはもう一生メフィストの手駒になる……ってわけだよね……」
猫山朗姫 : 「……でも、まだ一夏を助ける手はあるわ」
涼風紗雪 : 「あるのか!?」
猫山朗姫 : 「まあね」
猫山朗姫 : 「あんたが逃げ出したら“せんぱいの事が欲しい”ってねがいは叶わなかった事になる」
猫山朗姫 : 「そうなったら、契約が成立する事はなくなるって訳」
涼風紗雪 : 「なるほど……もう叶ったものとして扱われていたのかと思ったけど、そうじゃなかったのか」
涼風紗雪 : 「確かに、それならいけるのかもしれない……」
猫山朗姫 : 「契約の成立には、双方の確認がいるからね、ギリギリで間に合うわ」
涼風紗雪 : 「……そうか」
涼風紗雪 : 「じゃあ……出ないとな、ここから。一夏ちゃんを、メフィストの言いなりにさせるわけにはいかない」
猫山朗姫 : 「……監禁までされておいて、まだ一夏の事を気遣うの?」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「猫山さんは、もしかしてこう言いたいのかな。監禁までされて酷い目に遭わされてるんだから、一夏ちゃんがこれからどうなろうとどうでもいいだろう、ってさ」
猫山朗姫 : 「ええ、そうね」
猫山朗姫 : 「普通の人間なら、自分の安全が最優先で、監禁犯の事情なんて気にしないでしょ」
涼風紗雪 : 「全く、その通りだと思うよ……」
涼風紗雪 : 「でも、今回はただの監禁犯じゃない……一夏ちゃんなんだ」
涼風紗雪 : 「だったら、話は変わって来るよ。それに猫山さんと話をしていて、僕がどうしたいのか……少しずつ分かってもきた」
涼風紗雪 : 「猫山さんのためにも、僕自身のためにも、ここから逃げ出さなくちゃいけない……!」
猫山朗姫 : 「……なんで、そこに、わたしが入ってくるのよ」
涼風紗雪 : 「だって……君が僕にここまで事情を教えてくれたのは、君が一夏ちゃんのことを助けたいからなんじゃないの?」
涼風紗雪 : 「猫山さんは、一夏ちゃんの友達でしょ」
猫山朗姫 : 「………………」
猫山朗姫 : 「都合のいい解釈ね。 呆れて言葉も出ないわ」
猫山朗姫 : 「わたしは、気まぐれに話しただけよ」
涼風紗雪 : 「そっか……じゃあ、それでもいいさ。とにかく、色々教えてくれてありがとう」 少し嬉しそうに笑う
猫山朗姫 : 「……まったく。 変わり者って点で言えば、本当にお似合いだわ、あなた達」
涼風紗雪 : 「ふふっ……そうかもしれないね」
猫山朗姫 : 「……でも、まあ、その勝手な解釈に従って、ひとつアドバイスしてあげようかしら」
涼風紗雪 : 「ん……?それって?」
猫山朗姫 : 「さっきも言った通り、今の一夏は“メフィスト”に感情を増幅されてる」
猫山朗姫 : 「それで通常とは異なる暴走状態に陥ってるの」
涼風紗雪 : 「暴走状態か……確かにそうなるだろうね」
猫山朗姫 : 「……今の一夏は、本来の衝動ではない“愛”という名の狂気に身を焦がしている特殊な暴走状態」
猫山朗姫 : 「強引にでも体内のレネゲイドを落ち着かせないと、マトモな対話はムリだから」
涼風紗雪 : 「なるほどね……。でも、どうやって落ち着かせればいいかな……僕がウロボロスシンドロームだったら、何かやりようがあったかもしれないけれど……」
猫山朗姫 : 「さあ、そのくらい考えなさいよ」
涼風紗雪 : 「うん……考えてみるよ。アドバイスありがとう」
猫山朗姫 : 「はいはい」
猫山朗姫 : 「……さてと、用事は済んだし、わたしは帰るから」
GM : 猫山はそんな事を言いながら、一夏の部屋を眺めて溜息をついた。
猫山朗姫 : 「これは手向けの花よ」
GM : そう言うと、猫山はあなたのお腹のあたりに“石の薔薇”を置いた。
涼風紗雪 : 「え……!?返してくれるの?」 お腹を見下ろしてから、アキちゃんの方を驚いた目で見つめる
猫山朗姫 : 「わたしが持っていても仕方ないしね」
猫山朗姫 : 「……ああ、そうそう、青薔薇の花言葉は“夢が叶う”と“奇跡”だった気がするけど」
猫山朗姫 : 「一夏とあんた、どちらのねがいが勝つのかしらね?」
涼風紗雪 : 「さあ……楽しみに待っていてよ」
猫山朗姫 : 「ふっ、言うじゃない」
猫山朗姫 : 「……それじゃあね、一夏の相手は任せたわ」
涼風紗雪 : 「うん。……あ、そうだ、猫山さん」
猫山朗姫 : 「何?」
涼風紗雪 : 「また明日、学校でね」
涼風紗雪 : 学年は違うけど、と言って微笑する。
猫山朗姫 : 「……ふふ、次に会うのが学校だったら、挨拶くらいはしてあげるわ」
猫山朗姫 : 「精々、足掻きなさい」
涼風紗雪 : 「うんっ」 嬉しそうに頷く
涼風紗雪 : 猫山郎姫ちゃんにロイス取ります!Pは一夏ちゃんのことを想う気持ちは一緒のはずってことで連帯感、NはUGNとFHなので隔意で、表に出てる方はPです
system : [ 涼風紗雪 ] ロイス : 5 → 6
GM : 了解です! これでロイス枠が埋まりましたね!
涼風紗雪 : 埋まった!これで六つ!
猫山朗姫 : 「じゃ、わたしはこれで」
GM : 猫山は身支度を済ませると、ホントに部屋を出ていってしまった。
GM :
GM : 結果として、あなたはたった一人で、一夏の部屋に取り残された。
GM : ……逃げるなら、今しかない。
涼風紗雪 : 「……体はまだ疲れてる。けど、今は休んでるわけにはいかないな」
涼風紗雪 : イージーエフェクトの≪プラズマカッター≫で、手錠と首輪を繋いでいるベッドを破壊することって出来ますか?
GM : イージーエフェクトの使い所! できます!
涼風紗雪 : わぁい!では
涼風紗雪 : 「……っ!!」
涼風紗雪 : 紗雪の両手から、青い炎が迸る。
涼風紗雪 : 炎はまるで刃のようにベッドを走り、瞬く間にその全てをバラバラに切断・分解した。
涼風紗雪 : 断面図は綺麗に焼け焦げており、ここから他の物に炎が燃え移って火事になることもないだろう。
涼風紗雪 : 「……拘束具だけは壊せないって、こういうことだよね」
涼風紗雪 : 床に落ちた石の薔薇を拾い上げ、立ち上がる。
GM : ──猫山は“その拘束具だけは壊れない”と言っていた。 その通り。
GM : ただし、逆に言えば“その拘束具以外は壊れる”ということだろう。
GM : 拘束具の鎖が繋がっているベッド。 そこを破壊すれば抜け出せる。
GM : その言葉の裏に気付いたあなたは、鎖を繋ぐベッド自体を壊して、
GM : 拘束具から抜け出す事に成功した。
GM : ……尤も、首輪も手錠も共に連れていくハメになってしまったが。
涼風紗雪 : 「まあ……仕方ないか。これは後で、一夏ちゃんに外して貰おう」 首輪にガチャガチャと手をかけて
涼風紗雪 : ベッドの脇には制服が畳まれてあったが、こんな状態では着替えるのにも時間がかかる。
涼風紗雪 : 制服は手に持って、久しぶりに見た気がするワンピースを着たまま、部屋を出ます!
GM : ……一夏の部屋に捕えられてから、何時間が経っていたのだろう。
GM : あなたが街に出た頃には、すっかり夜の帳が下りてしまっていた。
涼風紗雪 : 「もう、夜か……一夏ちゃんの部屋に行ったのが朝だったから、凄く長い間眠っていたんだな……」
涼風紗雪 : 「これ夏用だし、流石にちょっと寒いな……。そういえば雪降ってるんだった……」 体をブルっと震わせて
涼風紗雪 : 「ひとまず、脱出は出来たから契約は不成立になってるはずだ……。とりあえず、家に戻って一旦落ち着いた方がいいかな……」
涼風紗雪 : そう呟いて、家の方角へと歩いて行こう。
GM : ここからあなたの家まで徒歩15分。
GM : オーヴァードの能力を駆使すれば、もっと早く辿り着くのだろう。
GM : しかし、身体の自由が効かない今のあなたでは、それは不可能だ。
GM : ──今のあなたの体力では、一夏に捕まったら抵抗すらできない。
GM : もしそんな事態になってしまったら、再び契約が成立してしまう。
GM : 一夏と接触したい気持ちはあるが、それは避けなくてはならない。
GM : ……直線に帰っても、一夏に追いつかれてしまうのが関の山だろう。
GM : だから、見つからないようにルートを選択して歩みを進めていく。
GM :
GM : 暗い。 寒い。 重い。
GM : いつからか天気は雨になっていて、雪は水気を吸ってグズグズだ。
GM : あなたの靴にまで侵蝕しはじめて、その足取りが重くなっていく。
GM : だが、歩みを止める事はできない。
GM : 雪道では足跡が残ってしまう以上、歩みを止めたら追いつかれる。
GM : ──とにかく、早く走らなければ。
GM :
GM : あなたが一夏の部屋を出た五分後。
犬養一夏 : 「せんぱい、どこですか~?」
犬養一夏 : 「……かくれんぼですか~?」
GM : 近くから一夏の声が聞こえだした。
GM : あなたが逃げ出した事に気付いて、早速もう追ってきているのだ。
涼風紗雪 : 「い、一夏ちゃん……!?」
涼風紗雪 : 「(今ここで追いつかれるのはまずい……。何とかしないと……)」
GM : ……毒を回復する時間さえ稼げば。
GM : そんな無い物ねだりをしていると、トン、と誰かに肩を叩かれた。
??? : 「……何、してるの?」
涼風紗雪 : 「えっ……」 慌てて振り返る
GM : あなたの後ろには、傘を持ちながら首を傾げている幼馴染がいた。
狩野春香 : 「その首輪と手錠、しかも冬場にそのワンピース?」
狩野春香 : 「そういうシュミ……じゃないよね?」
涼風紗雪 : 「は……春香!?あ、いや、これは……その……!!」 あわあわと両手を振って焦る
狩野春香 : 「…………」じとー
涼風紗雪 : 「え、ええと……あはは……」 笑って誤魔化しちゃうしか出来ない
狩野春香 : 「……一夏ちゃんと、何かあったんでしょ」
涼風紗雪 : 「…………うん」 重々しく頷く
狩野春香 : 「……そっかぁ」
狩野春香 : 「……とにかく、それじゃ寒いでしょ? うちまで来なよ?」
涼風紗雪 : 「え?で、でも、それじゃ春香が……くしゅん!」 両手で口元を覆ってくしゃみする
狩野春香 : 「もうスズはこれだから……私の事を気にしてる場合じゃないでしょ……?」
狩野春香 : 「私の事を心配するなら、私の提案に従ってくださ~い」
涼風紗雪 : 「うぅ……」
涼風紗雪 : 「(このまま一夏ちゃんに追いつかれたら、春香を巻き込んじゃう……)」
涼風紗雪 : 「(でも、自分の家に帰るより、春香の家の方が気付かれないのかもしれない……)」
涼風紗雪 : 「(……迷ってる時間はない。とにかく、早くここから離れないと……)」
涼風紗雪 : 「分かった……ごめんね、春香……」 しゅんとして
狩野春香 : 「ん、スナオでよろしいっ」
GM : ここで春香を突き放すと、余計に心配をかける事になるだろうし、
GM : フラフラと彷徨うよりも、春香の家で回復を待つ方が安全だろう。
GM : ……なので、あなたは春香の厚意に甘えて、春香の家に向かった。
GM : 春香の家は、木造二階建てで、ほぼ特徴のない造りになっている。
GM : でも、高校生になってからは、ここに来る度に懐かしさを覚える。
GM : ……近所に住んでるとはいえ、部活動なんかで忙しくなったため、
GM : 小学生の頃と比べると、遊びに来る機会が激減してしまったから。
狩野春香 : 「大丈夫? 寒くない? ……って聞くだけヤボか」
涼風紗雪 : 「うん……結構冷えちゃってるみたいだ」
狩野春香 : 「寒いのに、あんなカッコで歩き回ってたらね」
狩野春香 : 「レイヤーさんでもなかなか」
涼風紗雪 : 「(レイヤーさん……?)」
狩野春香 : 「……とにかく、お茶とか淹れてくるよ」
涼風紗雪 : 「ありがとう……。えっと、春香の部屋で待ってればいいかな」
狩野春香 : 「ん~、うちのリビングの暖炉の方があったまれるかな?」
狩野春香 : 「それに、まずは濡れたワンピースを着替えた方がいいと思う」
涼風紗雪 : 「それもそうか……分かった。って、おばさんは?いないの?」
狩野春香 : 「ママもパパも今日はいないよ~」
狩野春香 : 「なので、自由に寛いでくれたまえ!」
涼風紗雪 : 「……うん。ありがとう」
涼風紗雪 : 「じゃあ、お邪魔します」
涼風紗雪 : 玄関から上がって、リビングへと向かおう。
GM : 春香はあなたをリビングに通すと、温かいお茶を用意してくれた。
GM : お茶に含まれる成分は、あなたの身体をリラックスさせてくれる。
GM : ……万全の状態、とは言えないが、いくらかは体力が戻ってきた。
GM : だが、一夏との対峙を考えるなら、もう少しの回復が必要だろう。
狩野春香 : 「……それで、なんだけどさ」
狩野春香 : 「いったい、何があったの?」
涼風紗雪 : 「……えっと」
涼風紗雪 : 制服に着替えて、ある程度乾かしたワンピースを畳みながらどう言えばいいものかと少し悩む。
涼風紗雪 : 「(いや、でも……ここまできて誤魔化したり、嘘を吐きたくもない……)」
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃんに、監禁されていたんだ」
狩野春香 : 「……えっ」
狩野春香 : 「……は? それって、どういう」
涼風紗雪 : 「ごめん、いきなりこんなこと言ったらびっくりするよね」
涼風紗雪 : 「今朝、一夏ちゃんの家に行ってたでしょ?その時こう、薬で眠らされちゃってさ」
涼風紗雪 : 「ついさっきまで、ほとんど眠りっぱなしだったんだよ」
狩野春香 : 「…………」
狩野春香 : 「こういう時、スズは下らない嘘をつくタイプなんかじゃないし……」
狩野春香 : 「その首輪と手錠……ホントの事、なん、だね……」
涼風紗雪 : 「うん、本当だよ」
狩野春香 : 「じゃあ────」
GM : あなたが事態の説明をしていると。
GM : ピンポーン。 ……それを阻むみたいに、玄関の呼び鈴が鳴った。
涼風紗雪 : 「誰か……来た?」
狩野春香 : 「みたいだね、ママとパパが帰ってきたのかな?」
涼風紗雪 : 「そうかも……」 と、言いかけて嫌な予感がする
涼風紗雪 : 「……いや、待って。本当におばさん達なのか……?」
狩野春香 : 「え? じゃあ、誰が来たっていうの?」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃんが追いかけてきた……のかも、しれない」
狩野春香 : 「そんなまさか! だって、一夏ちゃんは、私の家の場所なんて知らないでしょ?」
涼風紗雪 : 「そうだけど、春香とさっき会った時、もう一夏ちゃんは僕を追いかけてきていたんだ」
涼風紗雪 : 「隠れて後をつけて来てたのかもしれない……」
涼風紗雪 : 「(一夏ちゃんのシンドロームはソラリス以外はっきりとはまだ分からないけど、少なくとも姿を隠すエフェクトは使えるはずだ……可能性は十分ある……)」
涼風紗雪 : 「それに、おばさん達なら自分で鍵を開けて入って来るんじゃないか……?」
狩野春香 : 「鍵をなくしちゃったのかもしれないよ? うちのママとパパは抜けてるから……」
狩野春香 : 「………………」
狩野春香 : 「でも、言われてみると、ちょっと不安になってきたな……」
涼風紗雪 : 「……僕が出るよ。春香はここで待ってて」
狩野春香 : 「いや、それは逆効果でしょ」
狩野春香 : 「絶対にダメ」
涼風紗雪 : 「どうして……!」
狩野春香 : 「そこで話がこじれたら、私だって困るし」
狩野春香 : 「もし一夏ちゃんだったら“スズは来てない”って私が追い返すよ」
涼風紗雪 : 「……いや、でも……っ」
狩野春香 : 「……大丈夫だから」
狩野春香 : 「もう、心配性だなスズは」
涼風紗雪 : 「そりゃ……心配にもなるさ……」
涼風紗雪 : 「今の一夏ちゃんは、何をするか分からないんだ……」
狩野春香 : 「何をするか分からないって言っても、私に手を出したりする子じゃないでしょ? ……いや、まあ、スズは監禁された訳だけど」
狩野春香 : 「う~ん、じゃあ、こうしよう!」
狩野春香 : 「万が一にも危ないと思ったら、大声で知らせる! これでどうよ!!」
涼風紗雪 : 「………………」 それでも心配そうな目で見詰めている
涼風紗雪 : 「本当に……大声で知らせられるのか……?」
狩野春香 : 「だいじょうぶだいじょうぶ!」
狩野春香 : 「……っていうか、もう待たせちゃってるし!」
狩野春香 : 「とにかく、スズは私の部屋で隠れて待っててくれる?」
涼風紗雪 : 「(……駄目だ、心配すぎる。オーヴァード相手に、普通の人間の春香が大声を出せる余裕なんてあるわけがない)」
涼風紗雪 : 「(でも、一夏ちゃんが僕以外に手を出す子じゃないっていうのは……)」
涼風紗雪 : 「(……信じたい。関係の無い僕の友人に手を出すなんて……今の一夏ちゃんでも、そんなことはしないって……信じたい……)」
涼風紗雪 : 「………………」
涼風紗雪 : 「……分かった……。でも、十分に警戒して欲しい……」
狩野春香 : 「わかってるわかってるって」
狩野春香 : 「そもそも、一夏ちゃんが来るって決まった訳でもないんだし、もっとラクに構えていいとは思うけど」
涼風紗雪 : 「そうだね……案外、宅配便とかだったり……するかもね……」
狩野春香 : 「そうそう! ゲームを買った覚えもある気がするし!!」
涼風紗雪 : 「ゲームか……」 春香ちゃんと昔この家で一緒に遊んだことを一瞬思い出して
涼風紗雪 : 「……じゃあ、僕は春香の部屋で隠れてればいいんだよね」
狩野春香 : 「うん、一応だけど、息を潜めてて!」
涼風紗雪 : 「……分かった」
涼風紗雪 : 頷いて、春香ちゃんの部屋に行きます!
GM : あなたは二階の春香の部屋に入る。
GM : 春香の部屋は、入る度に本棚のラインナップが更新されているが、今は恋愛マンガが多めな気がする。
狩野春香 : 「すぐ戻るからラクにして……」
狩野春香 : 「あっ、でも、PCは弄っちゃダメだぞ!」
涼風紗雪 : 「いや、触らないよ……」
涼風紗雪 : 「じゃあ、ここで待ってるから……気を付けてね」 部屋の電気はつけずに、窓からも見えないようにその辺で身を屈ませよう
狩野春香 : 「ん、よろしい!」
GM : 春香は部屋のドアを閉めると、軽い足取りで階段を下りていった。
GM :
GM : ──玄関から、女の声が聞こえる。
犬養一夏 : 「せんぱい、いますか?」
狩野春香 : 「……一夏、ちゃん」
GM : 一夏と春香が、話しているらしい。
狩野春香 : 「……なんで、スズを探してるの?」
犬養一夏 : 「せんぱいを連れ帰るためです」
狩野春香 : 「……連れ、帰る? 何、言ってるの?」
犬養一夏 : 「ぼくはこれから、せんぱいと一緒に暮らすんです」
狩野春香 : 「…………」
狩野春香 : 「一夏ちゃん?」
狩野春香 : 「あなたがつらい思いをしてきたのは分かるけど」
狩野春香 : 「……でも、スズを連れ帰るなんて、おかしいよ」
狩野春香 : 「控えめに言っても、それは重すぎるって」
犬養一夏 : 「……………………」
狩野春香 : 「とにかく、いったん家に帰って冷静になろ?」
狩野春香 : 「……そもそも、ここにはスズはいないからさ」
犬養一夏 : 「……わかりました」
犬養一夏 : 「おやすみなさい」
GM :
GM : 玄関のドアが閉まる音が聞こえた。
GM : そして一人分の足音が帰ってくる。
GM : あなたがいる部屋のドアが開いて、
GM : 窓から差し込んでいる月明かりが、
GM : その足音の主の正体を、暴き出す。
犬養一夏 : 「み」
犬養一夏 : 「つ」
犬養一夏 : 「け」
犬養一夏 : 「た」
GM : ──そこには、一夏が立っていた。
GM : じっとりと雨雲のように水を滴らせている灰色の髪の隙間からは、
GM : 血塗れの満月めいた真っ赤な瞳が、ギラリと丸く見開かれている。
涼風紗雪 : 「………………」 その目に射抜かれた瞬間、温まっていた体が一瞬で冷え切った
涼風紗雪 : 「……い……一夏、ちゃん……」 顔を青ざめさせ、震える声でその名を呼ぶ
犬養一夏 : 「はい♥」
犬養一夏 : 「……あっ、ねぇ、せんぱい? 聞いてくださいよ?」
犬養一夏 : 「ぼく、あの女に“重い”って“おかしい”って言われたんです」
犬養一夏 : 「大好きっていうのは、好きって気持ちが大きいって事で……」
犬養一夏 : 「大きいものは重いのは、あたりまえの話ですよね?」
犬養一夏 : 「大好きなのに軽いなら、それは大好きじゃないって事です」
犬養一夏 : 「ふふっ、ほらぁ、何もおかしな事なんてないじゃないですか」
犬養一夏 : 「おかしいのは、あの女のアタマの方なんじゃないですかぁ?」
GM : 一夏は早口でまくしたてると、ニンマリと笑みを浮かべてみせた。
GM : その笑みは牙を剥く肉食獣に似て、喜びの感情は含まれていない。
GM : ……その後ろ。 春香がぐったり倒れている姿が視界の端に見えた。
涼風紗雪 : 「……!春香……!?」 一夏ちゃんに気圧されていたが、春香ちゃんの姿を見てすぐに立ち上がる
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん……春香に何をしたんだ……っ」
犬養一夏 : 「ぼくより、あの女の心配ですか」
犬養一夏 : 「それじゃあ、ここでクエスチョン! ……何をしたと、思います?」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「……ワーディングを……使った。そう……だよな……?」
涼風紗雪 : 違う。≪ワーディング≫の気配なんて感じなかった。
涼風紗雪 : そんなこと分かっているはずなのに、微かな望みに縋るように声を絞り出すように答える。
犬養一夏 : 「あらら、不正解……惜しいですね……」
犬養一夏 : 「まっ、そんな事はどうでもいいですよねっ」
犬養一夏 : 「はやく一緒に帰りましょう?」
涼風紗雪 : 「どうでも良くない!!!」
涼風紗雪 : 「ちゃんと答えてくれ、一夏ちゃん!一体何をしたんだ!!」
犬養一夏 : 「……そんなに怒る事ないじゃないですかぁ、悲しいなぁ」
犬養一夏 : 「まあ、そんなせんぱいの顔もステキなので、特別に答えてあげましょう!」
犬養一夏 : 「あの女は殺してなんかいませ~ん! 《快楽の香気》? で気絶させただけで~す!!」
涼風紗雪 : 「…………」 緊張していた体から、一瞬力が抜ける
涼風紗雪 : 「……そう、か……。それなら……まだ、良かった……」 安堵して大きく息を吐く
犬養一夏 : 「もういいでしょう? ほら、邪魔者はいないんですし」
涼風紗雪 : 「……いや、あの部屋に帰ることは出来ない」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「なんで、ですか?」
涼風紗雪 : 「猫山さんから聞いたよ。契約のこと」
涼風紗雪 : 「僕を閉じ込めて、このまま最後の願いを叶えたら、君はメフィストの手駒にされる……って」
犬養一夏 : 「ああ、その話」
犬養一夏 : 「別にいいじゃないですか、そんな事」
涼風紗雪 : 「良くないだろ!君は自由でいられなくなるんだぞ!?」
犬養一夏 : 「でも、せんぱいとずっと一緒にいられます」
犬養一夏 : 「今までだって自由なんかなかった」
犬養一夏 : 「そこは何も変わりませんよ」
犬養一夏 : 「……しかし、悲しいです、せんぱいには本当に帰る気がないんですね」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「僕とずっと一緒にいる……そう言ったけど。それが、本当に君の望みなのか?」 確認するように、落ち着いて問いかける
犬養一夏 : 「ええ、そうですよ?」
涼風紗雪 : 「そうか……」
涼風紗雪 : 「だったら、やっぱりその望みは叶えて上げられない」
涼風紗雪 : 「君と一緒には、帰らないよ」
犬養一夏 : 「……ああ、せんぱいも、そうなんですね」
犬養一夏 : 「あの日、仲良くしてほしいって、言ってくれたのに」
犬養一夏 : 「ぼくを望んでくれたのは、せんぱいだけだったのに」
犬養一夏 : 「……でも、いいです」
犬養一夏 : 「これから、一緒に帰りたくなってもらいますから♥」
GM : 狂気に染められている一夏の瞳が、ひどく歪んだアーチを描いた。
GM : こうなったら、もう戦うしかない。
GM : ──それ以外、道はないのだから。
GM :
GM : クライマックス戦闘を開始します!
涼風紗雪 : わー!!
涼風紗雪 : え、ここで!?
GM : ここで!!!!
GM : この戦闘の勝利条件は、一夏が戦闘不能になり《蘇生復活》を使う事! 条件を満たしたら戦闘終了です!
GM : 今の一夏は、制御不能! このまま能力を使い続けるなら、ジャームになってしまう恐れもあるでしょう!
GM : そのレネゲイドは“パンパンになった風船”みたいな状態!
GM : 程ほどに消耗させて、アタマを冷やしてあげてください!
涼風紗雪 : なるほどね~!とりあえず殴ることしか知らないわたし
GM : エネミーは一夏のみ!
GM : その距離にして1m! 一歩でも踏み出せば、手が届くほどの近さです!
涼風紗雪 : ちかぁ!
GM : ドアを開けてすぐの所にいましたからね…
GM : まずは衝動判定をどうぞ! 難易度は9です!
涼風紗雪 : 6dx+6(6DX10+6) > 9[1,5,5,6,7,9]+6 > 15
GM : 流石に意思が強いですね、せんぱい
涼風紗雪 : 意志とメンタルの強さだけが取り柄!侵蝕率上げます
涼風紗雪 : 2d10+107(2D10+107) > 12[3,9]+107 > 119
GM : まずまずの侵蝕!
涼風紗雪 : こんなもん!
GM :
GM : では、第1ラウンド!
GM : 最初にセットアッププロセス!
GM : せんぱいには、このタイミングで使用するエフェクト等はありませんが、一夏には一杯あります!
GM : 《甘い芳香》+《先導の香り》+《ターゲットロック》+《攻性変色》+《レネゲイドキラー》 対象はせんぱい!
GM : まずは《甘い芳香》の効果によって、このラウンドの間、せんぱいの行動値を-8してもらいます!
GM : つぎに《先導の香り》の効果で、このラウンドの間、せんぱいに対する命中判定のダイスを増加!
涼風紗雪 : うわー!!
GM : そして《ターゲットロック》+《攻性変色》の効果で、せんぱいに対する攻撃力がぐぐんと上昇!
GM : そのデメリットで、一夏は暴走状態に!
涼風紗雪 : 元から暴走してるみたいなもんだよ!!!
GM : データ的にもちゃんと暴走していく!
GM : さらに《レネゲイドキラー》の効果!!
GM : このシーンの間、せんぱいはエフェクトをひとつ使用する度、3点のHPを失うことになります!!
GM : 聞き慣れないエフェクトですし、3点なら別に大したことない、なんて思ったんじゃないですか?
涼風紗雪 : 3点なら大したことないやろ~!ははは!
GM : ところがどっこい…! この効果は“組み合わせて使用した場合、エフェクトひとつ毎に計算”…!
GM : つまり! ふたつのエフェクトを組み合わせた場合、6点のHPを!
GM : みっつのエフェクトを組み合わせた場合、9点のHPを失う事に!
涼風紗雪 : ですよね!!!!!!
涼風紗雪 : くそ~、了解です!
GM : リアクションでもエフェクトを使うせんぱいにメタを張っていく後輩
GM :
涼風紗雪 : 「(……やっぱり、こうなったか)」
涼風紗雪 : 一夏ちゃんから溢れ出るレネゲイドの奔流を真っ向から受け止めながら、静かに思う。
涼風紗雪 : 「(出来ることなら、君と戦いたくなかった……。レネゲイドを落ち着かせる方法を探してから、ちゃんと君と話がしたかった……)」
涼風紗雪 : 「(でも、もうやるしかない……。力づくで、止めてあげるしか、方法はない……)」
涼風紗雪 : 「(結局、君を傷つけることになる……。でも……)」
涼風紗雪 : 「……もう、迷ってる暇も、悩んでる時間だってない。だから、覚悟を決めるよ」
涼風紗雪 : 「君を傷つけても、拒絶されても、例え嫌われたとしても!それでも戦うよ……君にちゃんと伝えなきゃいけないことがあるから!」
涼風紗雪 : 「もう逃げも隠れもしない!一夏ちゃん、かかってこい!!」
涼風紗雪 : オートアクションで≪ワーディング≫を使用!効果範囲は春香ちゃんの家の周辺!
涼風紗雪 : あと、一夏ちゃんのロイス感情を、P執着/N脅威に変えます!表に出てるのはPで!
GM : まさかの一夏の方こそ持っていそうな執着! 了解です!!
犬養一夏 : 「拒絶したのは、せんぱいの方じゃないですか……」
犬養一夏 : 「もう同意以外の言葉は、聞きたくありません……」
犬養一夏 : 「だから……」
GM :
GM : イニシアチブプロセス!
GM : 本来の行動値はせんぱいの方が高いですが《甘い芳香》で下がっているので、一夏の手番から!
涼風紗雪 : こいこい!
GM : 一夏のメインプロセス!
GM : 先にマイナーアクション! 《完全獣化》+《ハンティングスタイル》
GM : 戦闘移動で、せんぱいにエンゲージ!
GM : そしてメジャーアクション! 《コンセントレイト》+《流血の胞子》+《茨の輪》 対象はせんぱい!
GM : 13dx7+2 命中(13DX7+2) > 10[1,2,3,4,5,6,6,7,8,9,9,10,10]+10[2,2,3,5,7,9]+10[10,10]+6[1,6]+2 > 38
GM : 命中した場合、ダメージはありませんが『邪毒Lv6』と『このラウンドに行なう判定のダイスを-6個』してもらいます!
涼風紗雪 : ひぇぇ
涼風紗雪 : HPを3点消費して、≪炎神の怒り≫+≪リフレックス≫でドッジします!
system : [ 涼風紗雪 ] 侵蝕率 : 119 → 124
system : [ 涼風紗雪 ] HP : 32 → 29
GM : 《レネゲイドキラー》の効果でHPを6点失ってもらいます!
GM : そして、せんぱいのドッジ判定に対して《盲目の羊》を使用します! その判定のダイスを-6個!!
涼風紗雪 : おわー!!
system : [ 涼風紗雪 ] HP : 29 → 23
涼風紗雪 : じゃあダイスは七個になるね、判定いきます!
GM : どうぞ!
涼風紗雪 : 7dx+6(7DX7+6) > 10[1,3,3,4,7,7,8]+6[1,2,6]+6 > 22
涼風紗雪 : あー全然だめー!
GM : 《盲目の羊》のデバフが重かったですね~
GM : では、先述のデバフをすべて受けてもらいます!
涼風紗雪 : え~ん、了解です
GM : では描写!
GM :
犬養一夏 : 「こうしちゃいます」
GM : ──気付くと、あなたは一夏に、ぎゅうっと抱き締められていた。 息が止まってしまうほど強く強く。
犬養一夏 : 「ぼくにはせんぱいだけ……」
犬養一夏 : 「せんぱいにはぼくだけ……」
犬養一夏 : 「それでいいじゃないですかぁ♥」
GM : ふにふにとマシュマロみたいに柔らかい乳房が、押し付けられる。
GM : ……それからすぐ、濃い甘い香りが、ふわりと鼻先に漂ってきて、
GM : 心に焼き付いて離れない、あの深いキスの快感が、甦ってしまう。
GM : 思わず快感に身を委ねそうになる。
GM : また意識が融けていきそうになる。
犬養一夏 : 「さあ、一緒に帰りましょう?」 あなたの耳元で甘い言葉が囁かれる
GM : ──そして、一夏は優しく撫でるようにして、あなたの濡れた髪を、青いタオルハンカチで拭った。
GM : ふわふわとした肌触りの良いそのハンカチの隅には、小さな犬が刺繍されている。
犬養一夏 : 「おふろに入って、ごはんをたべて、あったまって……」
犬養一夏 : 「ずっと一緒に暮らしましょう?」
涼風紗雪 : 「う……く、ぁ……」
涼風紗雪 : 「あ……あぁ……」
涼風紗雪 : 忘れようにも忘れられない、あの時の蕩けた感覚が蘇る。
涼風紗雪 : 視界が霞む。口から甘い吐息が漏れる。このままずっと、一夏ちゃんに抱かれたままでいたいという気持ちが心の底に滲みだし──
涼風紗雪 : 「う、うぅぁぁ!!」
涼風紗雪 : だが、心を支配される前に、自分の身体に炎を灯らせる。焼き付く痛みで正気を取り戻す。
涼風紗雪 : 「離れ、ろ……!!」 力を振り絞り、一夏ちゃんを突き放す
犬養一夏 : 「なっ……!?」
涼風紗雪 : 「はぁ、はぁ……っ!ずっと一緒に、二人だけで暮らすだと……」
涼風紗雪 : 「そんなの、絶対に嫌だ!僕は君と、そんなつまらない日常を過ごすつもりはない!!」 睨みつけ、叫ぶ
犬養一夏 : 「……っ、ひどいっ、ぼくはせんぱいと過ごしたいだけなのにっ」泣きそうになる
犬養一夏 : 「それだけで、満足なのにっ」
GM :
GM : 一夏のメインプロセスが終了! 再びイニシアチブプロセス! せんぱいの手番です!!
涼風紗雪 : はい!
涼風紗雪 : マイナーアクションで≪インフィニティウェポン≫使用!
system : [ 涼風紗雪 ] 侵蝕率 : 124 → 127
涼風紗雪 : メジャーアクションで≪炎神の怒り≫+≪煉獄魔神≫+≪コンセントレイト≫
system : [ 涼風紗雪 ] 侵蝕率 : 127 → 135
涼風紗雪 : 一夏ちゃんを攻撃します!
GM : ダイス-6個のデバフも含めて命中どうぞ!
涼風紗雪 : 7dx+6(7DX7+6) > 10[1,1,6,6,6,10,10]+3[1,3]+6 > 19
涼風紗雪 : うわー!!!
GM : デバフがあまりに重い…!!
涼風紗雪 : いや、減らされてるとはいえ出目自体があかんすぎない!?
GM : それはそう
涼風紗雪 : しっかりしてよねわたし、暴走してるから当たるけど…!
GM : そうですね、暴走してるのでリアクションはありません! ダメージどうぞ!!
涼風紗雪 : 2d10+25 装甲有効(2D10+25) > 13[8,5]+25 > 38
GM : ダメージの出目はまずまず
涼風紗雪 : 頑張った方ですわね
GM : せんぱいは《レネゲイドキラー》の効果でHPを12点失ってもらいます!
涼風紗雪 : わぁい!!
system : [ 涼風紗雪 ] HP : 23 → 11
涼風紗雪 : もうこんなことになってるん????
涼風紗雪 : 描写いきます!
GM :
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん、君が僕と、あの狭い部屋の中でずっと二人だけで過ごすだけで、満足するはずがないんだ……」
涼風紗雪 : 「君は知ってるはずだ……。この一年間、僕と一緒に色んなところに行って、どれだけ楽しかったのかを……」
涼風紗雪 : 「そして、僕も知ってるんだ……!君と一緒にいて、僕がこれまでどれだけ幸せだったのかを!!」
涼風紗雪 : 自分の心をぶつけるように叫び、手に構えた青い薔薇を天に掲げる。
涼風紗雪 : 「──メタモルローゼ!」
涼風紗雪 : それは遺産の力を解放するための誓いの言葉。
涼風紗雪 : 造花の薔薇はその誓いに応えるように光り輝き、無数の青い花弁を舞い散らした。
涼風紗雪 : 世界が青く染まる。
涼風紗雪 : 煌く花吹雪が紗雪の体を覆い隠す。
涼風紗雪 : まるで遺産の薔薇が、紗雪を取り込んで殺そうとするかのように。
涼風紗雪 : しかし、その光景はすぐに一変した。
涼風紗雪 : 花吹雪を中から食い破るようにして、青い炎が爆発するかのように立ち上ったのだ。
涼風紗雪 : 炎は舞い散る花弁を全て焼き尽くし、薔薇の中に囚われていた紗雪を解放する。
涼風紗雪 : だが今の彼女は、薔薇に呑み込まれる前から大きく変貌していた。
涼風紗雪 : 純白のブラウスと首元に煌く薔薇のブローチ。
涼風紗雪 : 青色のコルセットスカートにロングブーツ。
涼風紗雪 : まるでマントのように揺らめく、両肩から噴き出す青い炎。
涼風紗雪 : 遺産が召喚した戦闘衣装に身を包んだ、その姿は────
涼風紗雪 : 「咲き誇る希望の薔薇!エーデルローゼ!!」
涼風紗雪 : 直刀型のサーベルを構え、紗雪はそう力強く名乗りを上げた。
涼風紗雪 : 今これから、希望を紡ぐ覚悟を込めて。
涼風紗雪 : ──地面を蹴る。
涼風紗雪 : 両肩の炎をマントのように翻しながら、銀の剣を一閃。
涼風紗雪 : 薔薇の茨のような鋭さを持つ刃が、一夏の体を逆袈裟掛けに鋭く斬り上げる!
犬養一夏 : 「──ッ!?」戦闘経験がない一夏は、その洗練された斬撃を回避する事ができない
犬養一夏 : 「……ぁ、う……い、ったい」
涼風紗雪 : 「…………」 一夏ちゃんが痛がっても、目を逸らさず剣を構える
犬養一夏 : 「……せんぱいが、言ってるのはっ」
犬養一夏 : 「夢物語に過ぎないんですよっ!! これまでが楽しかったからって、その日々はもう壊れてッ……戻ってなんかこないんだッ……」
涼風紗雪 : 「夢物語で何がいけないんだ!?教えてあげるよ、一夏ちゃん!」
涼風紗雪 : 「綺麗ごと並べて、夢を叶えて!!希望を与えるのが王子様だ!!!」
涼風紗雪 : 燃えるような青い瞳を輝かせながら、真っ直ぐに言い放つ。
犬養一夏 : 「……っ」
GM :
GM : クリンナッププロセス!
GM : せんぱいは邪毒Lv6の効果で18点のHPダメージを受けてもらいます!
涼風紗雪 : なんだそのダメージ!戦闘不能になります!
涼風紗雪 : アキちゃんのロイスをタイタスに変えて、昇華!HP15で復活します!
GM : 了解です! ロイスをひとつ減らしてくださいな!
system : [ 涼風紗雪 ] ロイス : 6 → 5
GM :
GM : 一夏の毒で意識が遠のいていく。
GM : 先程までは時間を欲していたが、今はそんなものは全く必要ない。
GM : ……むしろ、できるだけ短い時間で決着をつけなければ、マズい
涼風紗雪 : 「……っ」
涼風紗雪 : 霞がかかったように意識が遠のく頭に、いつか聞いた猫山朗姫の言葉が蘇る。
涼風紗雪 : ──青薔薇の花言葉は“夢が叶う”と“奇跡”だった気がするけど、一夏とあんた、どちらのねがいが勝つのかしらね?
涼風紗雪 : 「(……そんなの、決まってる)」
涼風紗雪 : 「(両方だ……!僕は僕の願いも、一夏ちゃんの本当の願いも叶えてやる!!)」
涼風紗雪 : 意志を強く持ち、ふらついた足下を支え、一夏ちゃんから目を離さない。
GM :
GM : では、第2ラウンド!
GM : 最初にセットアッププロセス!
GM : 一夏はまたデバフを使います!
GM : 《甘い芳香》+《レネゲイドキラー》 対象はせんぱい!!
GM :
このラウンドの間、せんぱいの行動値を-8!
&このラウンドの間、せんぱいはエフェクトを使う度HP-3!
GM : 次にイニシアチブプロセス!
GM : デバフによって一夏の手番から!
GM : という事で、一夏のメインプロセス!
GM : 先にマイナーアクション! 《破壊の爪》+《襲撃迷彩》
GM : 《襲撃迷彩》の効果で、メインプロセス終了時まで隠密状態に!
GM : そしてメジャーアクション! 《コンセントレイト》+《罪人の枷》 対象はせんぱい!
GM : 17dx7 命中(17DX7) > 10[1,1,2,2,2,2,2,2,3,3,3,4,5,5,6,7,10]+2[1,2] > 12
GM : な、なに…!?
涼風紗雪 : 出目が悪い卓だな????
GM : せんぱいの言葉が響いてるのかもしれない…
GM : 命中した場合、このラウンドの間、せんぱいが行う判定の達成値を-6してもらいます! リアクションの選択をどうぞ!
涼風紗雪 : これどうするか…エフェクト使って回避しても、HP減って…
涼風紗雪 : っていうかタイタス使うなら邪毒回復するべきだったな!?うっかりしてた!
GM : そうなのです! デバフ全解除しておいた方がラクだったヤツ!
涼風紗雪 : ばかやっちゃった!とりあえず、エフェクト使わずにドッジしましょ…!
GM : くくく、せんぱいのドッジ判定に対して《盲目の羊》を使用します! その判定のダイスを-6個!!
涼風紗雪 : えーん、それでもHP減らすよりかはこっちにかけるしかない。判定します!
涼風紗雪 : 3dx+6(3DX10+6) > 9[2,8,9]+6 > 15
涼風紗雪 : yatta!!!
GM : さすがせんぱい!!
GM : では描写します!
GM :
犬養一夏 : 「もしかしたら、なんて希望を持つのはやめたんです、やめたんですよッ……」
犬養一夏 : 「ぜんぶ失うくらいなら、確実に手に入る方を選ぶのは当然なんですっ……」
犬養一夏 : 「だから」
犬養一夏 : 「ここは痛めつけてでも、分からせてあげます」
犬養一夏 : 「人を従わせるのは、それがいいんです……、ぼくだって、そうされてきましたから知ってます……」
GM : 一夏は溜息をつくと、あなたの視界から、一瞬にして消え去った。
GM : ……いや、そうではない。 目を凝らせば分かる。
GM : 一夏はカメレオンのように“擬態”して、風景に融け込んだのだと。
犬養一夏 : 「…………」
GM : しかし、一夏を目で追っていると、ふいに甘い匂いが立ち込めて、
GM : 思考に靄がかかると、その姿は、完全に見えなくなってしまった。
GM : いくら戦闘経験豊富なあなたでも、擬態の看破は、僅かな差異を認知する能力が正常でないと不可能。
GM : ……あなたに擬態を看破されたと気付いた一夏が、ソラリスの能力を駆使して対応してきたのだろう。
涼風紗雪 : 「(これか……僕をストーキングする時に使っていた力は……!)」
涼風紗雪 : 頭がまたはっきりしなくなる。視界さえも薄く霞んで、一夏の姿を見失ってしまう。
涼風紗雪 : ──だが、一夏が紗雪を追いかけて、ずっと見続けていたように。
涼風紗雪 : 紗雪もこの一年間、ずっと一夏のことを見続けていた。
涼風紗雪 : 「……!!」
涼風紗雪 : だから、分かった。今、どこに一夏が隠れているのか。
涼風紗雪 : 「……そこ、だよね。一夏ちゃん」 見えないはずの目線を合わせ、そう告げる
犬養一夏 : 「────えっ!?」
GM : 誰にも見つかった事がなかった擬態を見抜かれた一夏は、獣の爪を振り翳したまま停止してしまう。
涼風紗雪 : 「やっぱり。隠れたって、もう分かるよ」 微笑を浮かべる
犬養一夏 : 「……なん、で」
涼風紗雪 : 「きっと、僕が一夏ちゃんとずっと一緒にいたからさ……」
涼風紗雪 : 「だから、もう絶対に見失わない。君の姿も、心も、これからは全部……目を逸らしたりなんかしない!!」
犬養一夏 : 「……なんなんですか、それっ」
犬養一夏 : 「意味が、分からないんですよっ!」
GM :
GM : 一夏のメインプロセスが終了! 再びイニシアチブプロセス! せんぱいの手番です!!
涼風紗雪 : メジャーアクションで≪炎神の怒り≫+≪煉獄魔神≫+≪コンセントレイト≫!
system : [ 涼風紗雪 ] 侵蝕率 : 135 → 143
涼風紗雪 : 一夏ちゃんに攻撃します!
GM : 命中どうぞ!
涼風紗雪 : えっと、ダイスデバフ…は今は無かった…で合ってるかな?
GM : あのダイスデバフは付与ラウンド限定だったので、今はないですね!
涼風紗雪 : ありがとう、了解です!
涼風紗雪 : 14dx+6(14DX7+6) > 10[1,2,2,3,3,3,4,7,7,8,9,10,10,10]+10[2,3,4,4,7,10,10]+6[3,4,6]+6 > 32
涼風紗雪 : 普通!
GM : ですが、一夏はリアクションができないので当たります! ダメージどうぞ!!
涼風紗雪 : 4d10+25 装甲有効(4D10+25) > 24[5,7,5,7]+25 > 49
涼風紗雪 : まあまあ!
GM : 一夏の戦闘不能まで2点だけ足りない…!!
涼風紗雪 : うぇああ!!
GM : 《レネゲイドキラー》の効果でHPを9点失ってもらいます!
system : [ 涼風紗雪 ] HP : 15 → 6
涼風紗雪 : 演出いきます!
GM :
涼風紗雪 : 「次は、ちょっと痛むよ……!」
涼風紗雪 : 剣を持つ紗雪の手から、青い炎が溢れ出す。
涼風紗雪 : 膨れ上がった炎は剣を瞬く間に包み込み、巨大な炎熱の刃を作り上げた。
涼風紗雪 : 「──ローゼ・エクスプロジオン!!」
涼風紗雪 : 両手で構えた炎の柱を振り下ろす。
涼風紗雪 : 刃が叩きつけられた瞬間、閃光と共に弾けた爆発が一夏ちゃんの体を吹き飛ばす!
犬養一夏 : 「きゃああああっ!?」
GM : 一夏は爆風によって本棚に叩きつけられ、肩で息をしている状態だ。
GM : あと一押しで、戦闘不能まで追い込めるだろう。
GM : ……だが、それはあなたも同じ事。
GM :
GM : クリンナッププロセス! せんぱいは邪毒で18点のHPダメージを受けます!!
涼風紗雪 : わーん、1R前のわたしのばか!ダメージ受ける前に、ストーカーのロイスをタイタスに変えて邪毒状態を回復します!
system : [ 涼風紗雪 ] ロイス : 5 → 4
GM : では、なんとか戦闘不能を免れます!
涼風紗雪 : いやごめん待って…!
涼風紗雪 : この状態だと、もうあれだ…レネゲイドキラーが来ること考えたら、やっぱり復活した方が良いわ…!
涼風紗雪 : ダメージを受けて、戦闘不能状態回復します!
GM : 改めて、戦闘不能を免れます!!
GM :
涼風紗雪 : ──あのストーカーは、一夏ちゃんだった。
涼風紗雪 : 正体の分からない視線に、盗難に怯えていたあの頃が今ではもう懐かしい。
涼風紗雪 : だが、もう恐怖なんて感じない。何故なら、彼女をもう見失ったりはしないのだから。
GM :
GM : では、第3ラウンド!
GM : 最初にセットアッププロセス!
GM : 一夏はまたデバフを使います!
GM : 《甘い芳香》+《レネゲイドキラー》 対象はせんぱい!!
GM :
このラウンドの間、せんぱいの行動値を-8!
&このラウンドの間、せんぱいはエフェクトを使う度HP-3!
GM : 次にイニシアチブプロセス!
GM : デバフによって一夏の手番から!
GM : という訳で、一夏のメインプロセス!
GM : もう見つけられてしまったので、マイナーアクションの隠密エフェクトは放棄!
GM : メジャーアクション! 《コンセントレイト》+《罪人の枷》 対象はせんぱい!
GM : 17dx7 命中(17DX7) > 10[1,1,2,5,5,5,5,6,6,7,8,8,8,9,10,10,10]+10[1,3,3,4,5,6,7,7]+10[1,7]+1[1] > 31
GM : さあ、出目がそこそこ良くなければドッジはできませんよ! リアクションはどうしますか!!
涼風紗雪 : ちょっと待ってね…!ええと…どうするか…
涼風紗雪 : あ、この攻撃って攻撃力…あるよね!破壊の爪あったし…!
GM : あります! ターゲットロックと攻性変色も乗ってます!!
涼風紗雪 : ひぇ~
涼風紗雪 : すっかり忘れていた、ターゲットロック
涼風紗雪 : そうね、ドッジして避けられても、HP9点減るから次攻撃したら確実に死ぬ…
涼風紗雪 : どうせタイタス一個使うことになるから、侵蝕率もやばいし、エフェクト無しでドッジします!
GM : せんぱいのドッジ判定に対して《盲目の羊》を使用します! その判定のダイスを-6個!!
涼風紗雪 : わーい!わたしのダイスはもう三つしかないぞ!!
涼風紗雪 : 3dx+6(3DX10+6) > 7[5,7,7]+6 > 13
涼風紗雪 : うー、だめ!
GM : ではダメージ!
GM : 4d10+42 初ダメージ!!!!(4D10+42) > 28[6,9,4,9]+42 > 70
涼風紗雪 : ぬああ!
GM : いい火力が出ましたね!
涼風紗雪 : 戦闘不能ですよ!どれをタイタスにする、か……
涼風紗雪 : 王子様のロイスをタイタスにします!昇華して、戦闘不能状態を回復!!
system : [ 涼風紗雪 ] ロイス : 4 → 3
GM : では描写!
GM :
犬養一夏 : 「もう、いいかげん、たおれてくださいよっ……」
犬養一夏 : 「そんなに、ぼくが嫌いになりましたかっ……」
犬養一夏 : 「ぼくはっ、ぼくはっ、一緒に、いたい、だけなのに……」
犬養一夏 : 「……こんな事、したい訳じゃないのにっ!」
GM : 一夏はもう隠れる事を諦めて、まっすぐ一直線に突っ込んできた。
GM : ……しかし、あなたには、そんな単調な攻撃さえ避ける体力がない。
GM : 一夏の爪は、あなたの腹に深々と突き刺さった。
犬養一夏 : 「ねぇ、せんぱい?」
犬養一夏 : 「痛い、ですよね?」
GM : 一夏は愛撫するような手つきで、あなたの腹の内側を弄っている。
犬養一夏 : 「……だったら、もう諦めてくださいよ」
犬養一夏 : 「もう首輪で繋いだり、しませんから」
犬養一夏 : 「ぼくの傍に、ずっといてくれるだけで、いいですからっ……」
犬養一夏 : 「これ以上、痛い思いをしたくないなら、ぼくのものになってくださいっ……、おねがい、ですからっ……」
涼風紗雪 : 「……っ、グ……ア、あぁぁ……!!」 抉られた腹部から散る青い薔薇の花弁が、赤い血で染まっていく
涼風紗雪 : 「……う、うぅ、うううう……!!」
涼風紗雪 : 「痛く、なんか……ない……っ。この程度……君の心の傷に比べれば……っ」 顔を苦痛で歪ませながら、一夏ちゃんを見つめる
犬養一夏 : 「えっ……」
涼風紗雪 : 「だから、諦めない……諦めたりなんか、しない……ッ!!」
犬養一夏 : 「嘘…………、こんな、こんな、事まで、されて、まだ…………」
涼風紗雪 : 「嘘じゃ、ない……。だって、もう僕は決めたんだ……」
涼風紗雪 : 荒く息を繰り返しながら、一夏ちゃんの腕を片手で掴みながら言う。
涼風紗雪 : 「僕は……君の王子様になるって……!!」
犬養一夏 : 「……っ!」
GM :
GM : 一夏のメインプロセスが終了! 再びイニシアチブプロセス! せんぱいの手番です!!
涼風紗雪 : うおおお!
涼風紗雪 : 侵蝕がやばい、ロイスもやばい…!うわーどうしようエフェクト…!
涼風紗雪 : うー、全力で…いくか…!
GM : 全力で、来い!
涼風紗雪 : メジャーアクションで≪炎神の怒り≫+≪煉獄魔神≫+≪コンセントレイト≫、一夏ちゃん攻撃します!
system : [ 涼風紗雪 ] 侵蝕率 : 143 → 151
GM : デバフなどはありません! 命中どうぞ!!
涼風紗雪 : なかった!いきます!
涼風紗雪 : 14dx+6(14DX7+6) > 10[1,2,2,2,4,5,7,7,7,8,8,9,10,10]+10[2,4,5,7,8,8,9,9]+10[5,8,8,9,10]+10[1,2,5,7]+1[1]+6 > 47
GM : 暴走でリアクションできないので命中! ダメージどうぞ!!
涼風紗雪 : この出目さっき出して!!
GM : それはそう
涼風紗雪 : 5d10+25 装甲有効(5D10+25) > 24[1,6,8,2,7]+25 > 49
GM : 一夏は戦闘不能! そして≪蘇生復活≫を使用!!
GM : これにて戦闘終了です!!
涼風紗雪 : お、終わった~!終わったぁ!!
涼風紗雪 : 演出いきます!
GM :
涼風紗雪 : 「一夏、ちゃん……」
涼風紗雪 : 今にも消えてしまいそうな命の灯火を燃え上がらせる。
涼風紗雪 : その遺志に応じるように、白銀の剣が炎を纏って眩い輝きを放った。
涼風紗雪 : 「思い出してくれ……」
涼風紗雪 : 「君の、本当の望みを……」
涼風紗雪 : 「君が、本当は……僕とこれから、どう生きたいのかを……!!」
涼風紗雪 : 「思い出してくれ!僕がその夢を、絶対に叶えるから!!」
涼風紗雪 : 溢れそうになる涙をこらえながら、剣を突き出す。
涼風紗雪 : 青く輝く炎の切っ先が、吸い込まれるように一夏の胸へと突き立てられた。
犬養一夏 : 「……ぁ」
GM : 一夏はあなたの炎を受けて、ふっと糸が切れたように崩れ落ちた。
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん……」 今にも倒れそうになるが、立ち続ける
GM : ……あなたの腹から、鮮血に濡れた腕が抜ける。
犬養一夏 : 「ぼく、は、ぼく、は……、せんぱいと、また一緒に過ごしたい…………」
犬養一夏 : 「去年みたいに、せんぱいとの、幸せな思い出を、作って、いきたい……」
犬養一夏 : 「でも……! でも……! そんな願い、許される訳がない……!!」
犬養一夏 : 「ぼくは、自分勝手に、せんぱいを傷付けてっ……、ぼくは、なんてことを…………」今度は愛する人の血に塗れてしまった手を見つめる。
犬養一夏 : 「人でなしの、罪人に、なにかを願う権利なんて、ないんだっ……」
涼風紗雪 : 「許すよ」
犬養一夏 : 「ぇ……」
涼風紗雪 : 「君の裏切りも、全て……僕は許すよ」 剣から手を離す。カラン、と乾いた音が響く。
犬養一夏 : 「なん、で……、なんで、ぼく、なんかを…………」
涼風紗雪 : 「そんなの決まってるじゃないか。君は、自分のことを罪人だなんて言うけど……それは違う」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん。君は、世界でたった一人だけの──」
涼風紗雪 : 「──僕の大切な、お姫様だ」
涼風紗雪 : 片膝をつき、手を差し伸べる。優しく、愛おしそうな笑みを浮かべて。
犬養一夏 : 「お姫、様……?」
涼風紗雪 : 「そうだよ。だからもう自分のことも、この世界も、怖がらなくていいんだ」
涼風紗雪 : 「僕がずっと、君を守るから……」
涼風紗雪 : だから、この手を取って。
涼風紗雪 : そう、目で訴えかける。
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「そんな夢みたいな幸せ、本当に、願ってもいいんでしょうか……」
涼風紗雪 : 「良い。さっきも言っただろう?」
涼風紗雪 : 「夢を叶えるのが、王子様だってさ」
犬養一夏 : 「だとしても、せんぱいのお姫様は、ぼくなんかじゃ相応しくない……」
涼風紗雪 : 「……相応しいとか、相応しくないとかじゃないだろう?」
犬養一夏 : 「同情でそう言ってくれてるなら、やめた方がいいと、思います……」
犬養一夏 : 「せんぱいは、ぼくの事が嫌いになったでしょう? 好きでもない相手を、お姫様扱いなんて……」
涼風紗雪 : 「………………」
涼風紗雪 : 「ただの同情心で、ここまで命を張るもんか……」
涼風紗雪 : 「じゃあ、はっきり言うよ。一夏ちゃん」
涼風紗雪 : 「僕は一夏ちゃんのことが好きだ」
犬養一夏 : 「…………ぇ?」
涼風紗雪 : 「この一年間、君と一緒に過ごして分かったんだ。僕は君と一緒にいれて、本当に幸せだったんだって」
涼風紗雪 : 「そして、これからもずっと一緒にいたいと思った。君と僕の望みは、もう同じなんだ」
涼風紗雪 : 「嫌いになんか、なるもんか!好きな相手だから、お姫様だって言ったんだ!」
涼風紗雪 : 一夏ちゃんのロイス感情を、P純愛/N脅威に変更します。表は純愛で。
犬養一夏 : 「そ、そんなの、とても信じられませんよっ……! だって、ぼくは、せんぱいにひどい事しかしてこなかったのにっ……!」
涼風紗雪 : 「信じてよ。……ねえ、一夏ちゃん」
涼風紗雪 : 「僕がたった一度でも、君を裏切ったことがあった?」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「ない、です……」
涼風紗雪 : 「……でしょ?」
涼風紗雪 : 「それに、これから先も、僕は誓うよ」
涼風紗雪 : 「僕は君を、絶対に裏切らない」
犬養一夏 : 「ねえ、せんぱい……、でもやっぱり、言葉だけだと現実感がないんです……」
犬養一夏 : 「だから、ひとつ、おねがいしても、いいですか……?」
涼風紗雪 : 「いいよ。何かな?」
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「せんぱいから、キス、してもらっても、いい、でしょうか……?」
GM : 一夏はポロポロと大粒の涙を零しながら、嗚咽交じりにねがう。
涼風紗雪 : 「……うん、分かった。それじゃあ、目を閉じてくれるかな」
犬養一夏 : 「……はい」震えながら、目を閉じる
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「(本当は、この手を自分から取って欲しかった)」
涼風紗雪 : 「(でも、君はやっぱり怖がりなんだよね)」
涼風紗雪 : 「(……だったら、その怖さが無くなるまで、僕の方からいくらでも歩み寄るよ)」
涼風紗雪 : 一夏ちゃんの手を優しく握って、静かに唇を重ねる。
犬養一夏 : 「んっ……」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 数秒間、しかし永遠にも感じられるような瞬間を共に感じた後。
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん」 唇を離し、目を見つめる
犬養一夏 : 「……は、い」目を合わせられない
涼風紗雪 : 「これでこれからも、僕と一緒にいてくれるよね?」 笑みを浮かべて
犬養一夏 : 「……もちろんっ、よろこんでっ」頬を染めながら、控えめに笑みを返す
涼風紗雪 : 「……良かった。それじゃ、これからもよろしくね。一夏ちゃん」 その笑顔を見て、心から安心して微笑む
GM : ──血と罪にまみれたこの手を握ってくれる人を、ずっとずっと待ち続けていたのかもしれない。
GM : 罪も罰も消え去ってはくれない。
GM : でも、希望的観測かもしれないけど、乗り越えていける気がする。 ……せんぱいが傍にいるから。
GM :
GM : バックトラック!
涼風紗雪 : うぇ~い!!!!!失敗したくない!!!!
GM : ここで一夏のDロイスを公開!
涼風紗雪 : Dロイス!?
GM : Dロイス・記憶探索者(メモリーダイバー)! せんぱいの王子様のロイスを復活!!
涼風紗雪 : はぁ!??!?!??!??!!???
涼風紗雪 : 記憶探索者!??!??!??!??!??!??!??!?
GM : 一夏の記憶を見ていたのは、実はハートレスクリスタルと記憶探索者の相乗効果だったってワケ……
涼風紗雪 : なるほどな~~~~~!
涼風紗雪 : ありがたく復活させていただきます…!
system : [ 涼風紗雪 ] ロイス : 3 → 4
GM : これで出目腐ったら笑って霧散してください
涼風紗雪 : しょうがないね…
GM : それと“メフィスト”のEロイス《愚者の契約》がひとつ
GM : これは一夏との契約に使われたものですね
涼風紗雪 : メフィスト様ありがとうございます
GM : バックトラックの時だけ崇められるジャーム
涼風紗雪 : 許さねえけどありがとうの気持ちしかない
涼風紗雪 : じゃあこれで振って行けばいいかしら?
GM : ですね! 他はないです!
涼風紗雪 : 了解、じゃあEロイスから…!
涼風紗雪 : 151-1d10(151-1D10) > 151-9[9] > 142
涼風紗雪 : よしよししょ
涼風紗雪 : 四つのロイスを二倍にして振ります
涼風紗雪 : 142-8d10(142-8D10) > 142-48[9,10,2,7,4,8,6,2] > 94
涼風紗雪 : やった!!!!!!
GM : 二倍で生還! ここぞという時にヒロイン力(データ)を出していく!!
涼風紗雪 : ヒロイン力(データ)、初めて見た
涼風紗雪 : いやでもほんとに…ほんとに良かった…
涼風紗雪 : ロイス三つになった時から、ロストした時のRPもう考えてたよ…
GM : なおこのバックトラックでせんぱいがロストした場合、一夏は自殺します
涼風紗雪 : もう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
涼風紗雪 : も~~~~~~~~~~~!!!!!!!(机ばんばん)
GM : 仕方ない…“ふたりなら”生きていけるって言ってたし…
涼風紗雪 : でもそんな未来は来なかったのでOK、OKです…!!!
GM : よかったよかった…
GM : では経験点の計算!
GM : DロイスとEロイスがひとつずつ!
GM : いつもの5点+シナリオの目的達成5点
GM : あとはバックトラック分かしら!
涼風紗雪 : じゃあ、14点かな!
涼風紗雪 : いやまて?
涼風紗雪 : うそーちぇ、ほんとは15点ちぇ…二倍ぶりは3点だから…ゆるしてほしーちぇ…
GM : んちぇちぇ…じゃあ3で割って5点だけ貰うーちぇ…
涼風紗雪 : あげるーちぇ…すっくな!!
涼風紗雪 : PL少ない時あるある
GM : あるある…、謎のGM経験点の配布式…
GM : これにてバックトラック終了! あとは安心してエンディングに臨むだけですよ!!
涼風紗雪 : わ~い
GM : 2月14日。 天気は雨。
GM : 二人が束の間の口付けを交わした後。
GM : 一息ついてから、あたりを見回すと、春香の部屋はボロボロになっていた。
GM : 戦闘の余波で本棚は壊れてしまって、漫画や小説がバラバラに散っている。
GM : ……さらに、一部の本は燃えていた。
GM : “ローゼ・エクスプロジオン”を使用した時、燃え移ってしまったのだろう。
涼風紗雪 : 「さて……このままゆっくりしているわけには、いかないな……」
涼風紗雪 : 変身を解除する。戦闘衣装は青い花弁となって散り、元の石の薔薇に戻った。
涼風紗雪 : 「まずは、火を何とかしないと……。一夏ちゃん、手伝ってもらえるかな」 傷口を抑えながら立ち上がる
犬養一夏 : 「はい、あたりを血まみれにもしちゃいましたし、狩野先輩にも、本当に申し訳ない事を……」
涼風紗雪 : 「もう仕方のないことさ。悔いるのは後にして、今できることをしてしまおう」
犬養一夏 : 「そう、ですねっ」
涼風紗雪 :
一夏ちゃんに優しく頷いてから、急いで洗面所に水を汲みに行きます!
二人で協力して、これ以上燃え広がる前に消火したいけど出来るかな
GM : 少しだけ焦げ跡は残ってしまいましたが、消火自体はキチンとできました!
涼風紗雪 : よかった!
涼風紗雪 : では消火が終わった後、
涼風紗雪 : 「ひとまず、これでよし……っと」
涼風紗雪 : 「あとは……一夏ちゃん、一つお願いがあるんだけどいいかな」
犬養一夏 : 「……はい、なんでしょうか?」
涼風紗雪 : 「今から僕が世話になっているUGNの支部に連絡を入れようかと思うんだ」
涼風紗雪 : 「僕達の傷の手当てをするためにも、戦闘の痕跡を消して、春香の記憶を少しだけ操作してもらうためにもさ」
涼風紗雪 : 「そこで、一夏ちゃんにはUGNに話をする時、少し口裏を合わせて欲しいんだ」
犬養一夏 : 「口裏、と言うと?」
涼風紗雪 : 「そう難しいことじゃないし、嘘をつくわけでもない」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃんがファルスハーツの協力を得ていたということだけを、一旦隠して話したいんだよ」
犬養一夏 : 「いったん、隠す?」
涼風紗雪 : 「うん。この場での戦闘は、一夏ちゃんがレネゲイドの暴走のせいで起こった、ということだけにしておきたいんだ」
涼風紗雪 : 「ファルスハーツと繋がっていた、とまで説明すると向こうも混乱するし、もしかしたら治療が受けられないかもしれない」
涼風紗雪 : 「だから少し落ち着いてから、改めてちゃんと事情を説明した方が良いと思うんだけど……だめかな?」
犬養一夏 : 「……いえ、せんぱいがそう言うなら、ぼくもそれがいいと思います」
涼風紗雪 : 「ありがとう。じゃあ、そうさせてもらうよ」
涼風紗雪 : 「……でも、もしかして不安かな?UGNと連絡を取るの」 心配そうに見つめる
犬養一夏 : 「ちょっとだけ、不安ですけど」
犬養一夏 : 「……守って、もらえるんですもんね、せんぱいに」
涼風紗雪 : 「あぁ、もちろんっ。支部の人達のことは信頼出来るから、そうまずいことにはならないと思うけど……」
涼風紗雪 : 「それでも何かあった時は、ちゃんと僕が君を守るよ。だから心配しないで、僕に全部任せて」 安心させるように微笑みかける
犬養一夏 : 「はいっ……!」嬉しそうに微笑み返す
涼風紗雪 : 「うん。……っと、そういえば携帯電話も今持ってないんだった……春香の家の電話を借りさせてもらおうか……」
涼風紗雪 : そんな感じで、Y市のUGN支部に連絡を入れたいです!
GM : わかりました!
GM : あなたの手元には、通信端末がない。 ……一夏の部屋に置いてきたからだ。
GM : ……なので、あなたは、狩野家の固定電話からUGNに連絡を取る事にした。
GM : それからすぐに、UGNは来てくれた。
GM : ──そして、あなた達は、Y市支部まで医療班に運んでもらう事になった。
GM : 春香の部屋の事後処理は、情報操作を専門とする班が行ってくれるらしい。
GM : UGNの情報操作能力は卓越している。
GM : 春香が目を覚ます頃には、魔法みたいに元通りだろう。 後顧の憂いはない。
GM :
GM : ──それから、あなた達は支部内にあるベッドで一晩を過ごす事となった。
GM : 医療班の診断では“二人とも身体的にも侵蝕的にも、休めば回復する範疇”
GM : との事で“でも一晩は安静にして”と隣り合うベッドに案内されたのだった。
GM : それまでに簡易的な聞き取り調査も行われたが、あなたのアドバイスのおかげか、マズい事態になったりはしなかった。
涼風紗雪 : 「……ふぅ。良かったね、二人共一晩休むくらいで回復する程度で」 ベッドに仰向けに横になる
犬養一夏 : 「えぇ、安心しました……」
涼風紗雪 : 「ほんとに安心だよ。春香の方も、特に問題なく何とかなりそうらしいし……」
涼風紗雪 : 「でも一夏ちゃん、疲れてない?」
犬養一夏 : 「んと、疲れは……」
犬養一夏 : 「いつのまにか、吹っ飛んじゃったみたいです」
涼風紗雪 : 「え、そうなの?レネゲイドが暴走して、傷も負った上に、初めて会う支部長達と色々話もしたのに?」 意外そうに
犬養一夏 : 「それは、まあ、いろいろな事がありましたけど……」
犬養一夏 : 「せんぱいと一緒にいられるのが嬉しくて、それくらいは大した事じゃなくなっちゃった、っていうか」
犬養一夏 : 「……あー、恥ずかしい事を言っちゃいましたね、忘れてください」
涼風紗雪 : 「ふふっ。悪いけどそんな嬉しいこと言われて、忘れたりなんか出来ないな」
犬養一夏 : 「うー……」
涼風紗雪 : そう恥ずかしがる様子をにこにこと笑顔で眺めてから、ベッドの上で体を起こす。
涼風紗雪 : 「……また後日にしようかと思っていたけど、一夏ちゃんの体が大丈夫なら……お願いしてみようかな」
涼風紗雪 : 「寝る前に一つ、聞かせて欲しいことがあるんだ。いいかな?」
犬養一夏 : 「せんぱいのお願いは断れません、もちろんいいですよ」
涼風紗雪 : 「ありがとう。いや、どうしても無理だっていうなら僕のお願いだろうが断ってくれても構わないけど……」
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん。小学生の頃、君の身に起こったことを話して欲しいんだ」
犬養一夏 : 「……あぁ、その話、ですか」
犬養一夏 : 「……いいですけど、面白い話じゃないですよ」
涼風紗雪 : 「面白い話だなんて最初から思ってもいないさ。むしろ、君にとって辛い話だろう」
涼風紗雪 : 「それでも知りたいんだ。君に何があったのか、君がどう感じたのか……」
犬養一夏 : 「わかり、ました」
犬養一夏 : 「ぼくは、あの時────」
GM : 一夏は自分の罪を告白するように、当時の事件に関して自嘲気味に話した。
GM : ……事件について告白している一夏は、酷くつらそうな様子ではあったが、
GM : それと同時に、ずっと誰かに打ち明けたかった事だったのかもしれない。
涼風紗雪 : その話を真剣に聞き終えてから、改めて一夏ちゃんの目を見つめる。
涼風紗雪 : 「……そういうことだったのか。話してくれてありがとう、一夏ちゃん」
犬養一夏 : 「……いえ」
GM : 一夏は改めて自分に嫌気が刺したのか、あなたから目を逸らしている。
涼風紗雪 : 「……。一夏ちゃんは、やっぱり自分が全部悪いと思ってるの?」 その様子を見て、静かに問いかける
犬養一夏 : 「…………みんながそう言いますから」
涼風紗雪 : 「そうか……」
涼風紗雪 : 「だけど僕は、全くそうは思わないけどね」
犬養一夏 : 「え……?」
涼風紗雪 : 「一夏ちゃんは何も悪くない。そう僕は思う」
犬養一夏 : 「でも、ぼくは三人も刺して……、守ろうとした瑠奈ちゃんにも……、おとうさんにもおかあさんにも……」
涼風紗雪 : 「そうだね……刺したのは、事実だ」
涼風紗雪 : 「でもそれは、オーヴァードに覚醒した時に暴走状態になったせいだろう?」
犬養一夏 : 「…………だとしても、暴走した事を言い訳には、できませんよ」
犬養一夏 : 「今回の事だってそう」
涼風紗雪 : 「良いんだよ、言い訳にして」
涼風紗雪 : 「そもそも、オーヴァードになんて誰にでも覚醒するし、誰だって暴走するんだ」
涼風紗雪 : 「内なるレネゲイドを制御するのは熟練のエージェントでも難しいんだよ。覚醒したての何も知らない子が暴走するなんて当たり前だ」
涼風紗雪 : 「だからそのことで責められるのは、君じゃない。未だにオーヴァードの存在を世間に公表できず、人々に認めさせることが出来ていない僕達UGNの責任だ」
涼風紗雪 : 一夏ちゃんに優しく言い聞かせるように、しかし自身に怒りを覚えているかのように強くそう伝える。
犬養一夏 : 「…………」
犬養一夏 : 「そう言ってもらえるのは嬉しいです、けど……」
犬養一夏 : 「UGNに責任転嫁してしまうのは、気が引けます」
犬養一夏 : 「“ぼくは悪くない”なんて、すぐに開き直る事はできません」
犬養一夏 : 「でも」
犬養一夏 : 「せんぱいから“きみは悪くない”って許してもらえただけで」
犬養一夏 : 「すごく心が軽くなった気がします……っ」
犬養一夏 : 「ありがとう、せんぱい……!」
涼風紗雪 : 「……うん。どういたしまして、一夏ちゃん」 少し表情を緩める
涼風紗雪 : 「今、心が軽くなったっていうなら……僕も安心したよ」
犬養一夏 : 「そう、ですか……? それなら、よかった……、話した甲斐があったな……」
涼風紗雪 : 「うんっ」
涼風紗雪 : 「(……一夏ちゃん、君は本当に誠実で、自分よりも他の人のことを想える優しい子だよ)」
涼風紗雪 : 「(だから、今すぐに開き直ることも、UGNのせいにも出来ない。でも、それで良いと思う……)」
涼風紗雪 : 「(きっといつか、自分のことを許せる日が来る。ゆっくりでいいんだ。ゆっくり……前を向いて進んでいけるさ……)」
涼風紗雪 : 「……さて、と。ところで一夏ちゃん、まだ眠気の方は大丈夫?」
犬養一夏 : 「ええ、隣のベッドで寝るって思うと、ちょっと緊張しちゃって……」
涼風紗雪 : 「ふふっ、そっか。じゃあ寝れそうになるまで、もう少しお話しないかい?」
涼風紗雪 : 「次は……僕の昔のことの話でも、さ」
犬養一夏 : 「昔のことって……」
涼風紗雪 : 「僕が七歳くらいの頃の話だよ。興味ない?」
涼風紗雪 : 「誰にも話してないことだから、きっとファルスハーツからも教えてもらってない話だと思うんだけど」
犬養一夏 : 「それは、興味はあります、けど……、それって、せんぱいの古傷なんじゃないですか……?」
涼風紗雪 : 「そうだね。でも構わないし、むしろ一夏ちゃんには聞いて貰いたいんだ」
涼風紗雪 : 「だって、そうじゃないとフェアじゃないだろ?恋人としてさ」 小さく笑って
犬養一夏 : 「恋人、として……」
犬養一夏 : 「………………」
犬養一夏 : 「そ、そうでしたよね、ぼく達、もう恋人で……」
涼風紗雪 : 「うん。……えっと、大丈夫?」
犬養一夏 : 「大丈夫、だと思います、キスまでしてもらったのに、まだ夢みたいだって感覚が抜けてないだけなので……」
涼風紗雪 : 「それも仕方ないかもね。でもちゃんと現実だから、ゆっくり慣れて行こうよ」
涼風紗雪 : 「これからの人生、まだまだ長いんだからさ」
犬養一夏 : 「は、はいっ」
涼風紗雪 : 「うんっ。……じゃあ、話していこうか」
涼風紗雪 : 「僕がどうして、王子様になろうって思ったのか──」
涼風紗雪 :
それは、今まで誰にも打ち明けたことも無かった話。
涼風紗雪の起源とも言える過去を、ゆっくりと話し始めていく……。
GM : 2月14日。 天気は雨。
GM : 涼風紗雪と犬養一夏がUGNの医療班に運ばれた頃。
GM : 同市内のレストラン“フォーチュンハンター”にて。
猫山朗姫 : 「あんたのオーダー通り、涼風紗雪を監禁している証拠になる動画を撮ってきてあげたわ」
猫山朗姫 : 「一夏がアイツに救われてしまったのは予想外だったけど、ね」
GM : その裏手でも、ある二人組が秘密の話をしていた。
メフィスト : 「……そうか、ごくろう」
猫山朗姫 : 「それで? これをどうするつもり?」
メフィスト : 「コイツはインターネットに放流させてもらう」
メフィスト : 「被害者側がどう思っているとしても、加害者側が排他されるべき狂人として喧伝されることは間違いないだろう」
メフィスト : 「それはインターネットで、ある種の祭りとも呼べるような騒ぎになり……」
メフィスト : 「そして、犬養一夏の将来に致命的な傷跡を残すことになる」
猫山朗姫 : 「…………」
メフィスト : 「……そこが狙い目、という訳だ」
メフィスト : 「犬養一夏には“動画の隠蔽”を願ってもらう」
猫山朗姫 : 「なるほどね、それで三つ目の願いも果たされて契約が再成立するって事」
メフィスト : 「流石は我が右腕。 物分かりがいいじゃあないか」
猫山朗姫 : 「ええ、分かったわ、十分、分かったわ」
猫山朗姫 : 「……それじゃ、わたしからのバレンタインプレゼントを受け取って頂戴」
GM : ……デジタルカメラのセルフタイマーを起動して、
猫山朗姫 : 「(3、2、1……)」
GM : 少女はメフィストへと向かって、ソレを投げ渡す。
GM : ソレは、ふわりと宙を舞って。
メフィスト : 「………………ッ!?」
GM : ──メフィストに触れた瞬間、閃光と共に弾けた。
メフィスト : 「ぐ、がああああああああああッ!!!!!!」
GM : その破片を浴びたメフィストは、激痛に絶叫する。
猫山朗姫 : 「ふふっ、あはっ、あははははははははっ!!」
GM : ……一方、傍らの少女は、愉快そうに笑っていた。
猫山朗姫 : 「飼い犬に手を咬まれるなんて思わなかった?」
猫山朗姫 : 「人を騙している時は、自分が騙されている事には気付けない……鈍いのね、あんたも一夏も」
メフィスト : 「こ、この売女ッ……! まさか、UGNのッ……」
猫山朗姫 : 「はあ? この後に及んで、的外れにも程があるわ」
猫山朗姫 : 「いい? Y市のFHは、もうあんたしか残ってない」
猫山朗姫 : 「シュミで手駒を全て失ったんだものね、ジャームだからって全く愚かにも程があるわ」
猫山朗姫 : 「そんな愚か者一人を潰すためだけに、UGNが専属のスパイなんて用意すると思うの?」
猫山朗姫 : 「自分を過大評価しすぎよ?」
メフィスト : 「(くそ、くそ、くそォッ……! この女ッ!! この俺をバカにしやがってェ……!!)」
メフィスト : 「(だが、今は体力を回復させなければッ……)」
メフィスト : 「な、ならば、何故ッ! FHに潜り込んだ!?」
猫山朗姫 : 「……一夏の願いを叶えるためよ」
メフィスト : 「あの女の、願いを、叶える、ためだと……?」
猫山朗姫 : 「あんたが一夏を利用するには、願いを三つ叶えないといけない」
猫山朗姫 : 「だから、逆に利用してやろうと思ったのよ」
メフィスト : 「答えになっていないッ! 何故、あの女に尽くす必要がある!?」
メフィスト : 「いったい、貴様は何者だというんだッ!?」
猫山朗姫 : 「……それじゃ、冥途の土産に教えてあげる」
猫山朗姫 : 「それこそが、わたし──」
猫山朗姫 : 「狭山瑠奈の欲望だからよ」
メフィスト : 「さ、狭山、瑠奈、だとッ!?!?」
猫山朗姫 : 「当然、わたしを覚えているわよね」
猫山朗姫 : 「……だって、あんたは、自分のイカれたシュミのためだけに」
猫山朗姫 : 「一夏を追い詰めて、その様子を観察して、愉しんでたんだから」
メフィスト : 「…………」
猫山朗姫 : 「……何? 今更、白を切るつもり?」
猫山朗姫 : 「いいわ、じゃあ、わたしの口から、説明してあげましょうか」
猫山朗姫 : 「あんたは一夏を追い詰めるために」
猫山朗姫 : 「嘘の噂を流し、居住地を晒し……」
猫山朗姫 : 「ソラリスの力を使い、一夏を排斥するように大衆を誘導した」
猫山朗姫 : 「一夏が日常に戻れそうになったタイミングを見計らって、ね」
猫山朗姫 : 「……ソレがあんたの無二の愉しみ」
猫山朗姫 : 「同族同士で争う人の愚かさを眺め」
猫山朗姫 : 「力がない人相手に、為す術なく弱ってくオーヴァードを眺め」
猫山朗姫 : 「心身共に限界になったオーヴァードを、部下として引き込む」
猫山朗姫 : 「……FHこそ最後の居場所なんだと」
猫山朗姫 : 「守ってあげるのは自分だけだと、洗脳して依存させるのよね」
メフィスト : 「……………………」
猫山朗姫 : 「そして、オーヴァードの能力を使って状況を打開した場合は」
猫山朗姫 : 「人外の能力を使った証拠を撮って」
猫山朗姫 : 「これをバラされたくなければ、って脅迫して丸め込むのよね」
猫山朗姫 : 「他人を食い物にする、最低の手口」
メフィスト : 「それが……」
メフィスト : 「それが、どうした! 私は好きなように生きていただけだ!」
メフィスト : 「欲望のまま生きる! それがFHだろう! それの何が悪い!」
猫山朗姫 : 「……別に、正義感のままに、あんたを断罪する気はないわ」
猫山朗姫 : 「それをしたら、一夏を糾弾した奴らと同じになっちゃうし」
猫山朗姫 : 「わたしも、あんたを利用して願いを叶えようとした訳だし」
猫山朗姫 : 「只、」
GM : ……少女の声を、悪魔の嘲笑が遮る。
メフィスト : 「──はっ! いずれにせよ残念! 口が災いしたようだ!!」
GM : 話している間に体力を回復したメフィストの毒霧が、あたりに立ち込める。
メフィスト : 「時間切れだよォ! これで形勢逆転だなァ!!」
メフィスト : 「は、ははッ! 戦闘経験のないひよっこに負ける俺ではないわッ!!」
猫山朗姫 : 「…………」
GM : 勝利を確信して笑う悪魔、その胸に。
GM : ──無数の銀の弾丸が撃ち込まれた。
メフィスト : 「……ぇ」
GM : そして、悪魔は床と口付けを交わす。
UGNエージェントA : 「“エーデルローゼ”からの通信を受けてきたら、本当に“メフィスト”がいるとは……」
UGNエージェントB : 「しかし、どうして、彼女の通信端末がこんな所に……」
猫山朗姫 : 「(メフィストを潰すのは、わたし一人じゃ分が悪いからね)」
猫山朗姫 : 「(一夏の部屋に置いてあった端末を拝借したって訳だけど)」
猫山朗姫 : 「(……ま、UGNに損がある訳でもないし、もうすこし騙されていてもらうわ)」
UGNエージェントC? : 「とにかく、メフィストの状態を確認して拘置施設まで移送しましょう」
UGNエージェントA : 「あ、ああ、そうだな」
GM : 毒霧から出てきたUGNエージェントが、メフィストの状態を確認するため、
GM : その傍らで膝を曲げてしゃがみこむ。
UGNエージェントC? : 「一夏の願いを叶える事が、あんたに報いを与える事が」
UGNエージェントC? : 「守ってくれた一夏に怯えて、庇う事さえできなかった」
UGNエージェントC? : 「……わたしの贖罪、わたしの欲望」
UGNエージェントC? : 「──しかし、利用しようとした相手に、逆に利用されて破滅するなんて」
UGNエージェントC? : 「ふふっ、外道に相応しい結末ね?」
メフィスト : 「……貴様も、あの女も、おれと、同類だ」
メフィスト : 「……い、今に、同じ末路を、辿るだろう」
UGNエージェントC? : 「…………」
UGNエージェントB : 「ん? 何か言ったか?」
UGNエージェントC? : 「いえ、息はありますが、抗レネゲイド弾はしっかり効いているようです!」
猫山朗姫 : 「(……わたしとあんたは違う)」
猫山朗姫 : 「(もちろん、一夏だって違う)」
猫山朗姫 : 「(人は誰だって嘘をついて生きてる)」
猫山朗姫 : 「(人のための嘘と、人を傷付ける嘘……その差が、大事だとわたしは思うわ)」
GM : 仮にメフィストが言う通りの運命が待ち受けていたとしても、平気だろう。
GM : ──何故なら、一夏には、あの王子がついている。
GM : あの変わり者は、また奇跡のひとつくらいは、起こしてくれるだろうから。
GM : ……少女は因縁に決着をつけて去っていった。 その足取りは軽やかだった。
GM : 2月15日。 天気は晴れ。
涼風紗雪 : 早朝、紗雪は一旦UGN支部から自宅へと戻ってきた。
涼風紗雪 : 今日も学校に通うためだ。
涼風紗雪 : 制服と通学鞄は手元にあるが、今日の授業に必要な教科書は無かったので、家に帰って用意する必要があった。
涼風紗雪 : 両親には昨日の内に、友人の家に泊まっていると連絡を入れておいたから特に怪しまれることも無かった。
涼風紗雪 : そうして手早く用意を済ませ、家族一緒に朝食を摂った後、
涼風紗雪 : 「いってきまーす」
涼風紗雪 : 紗雪は使用人に見送られながら、いつもの時間に家を出た。
涼風紗雪 : 広い庭を通り抜けて、門を潜る。
涼風紗雪 : そして、朝日に照らされた道の先には、いつも通りに幼馴染が待っていた。
狩野春香 : 「よっ、スズ。 おはよ~さん!」
涼風紗雪 : 「春香……!」 その顔を見た瞬間、ぱぁっと表情を明るくさせて
涼風紗雪 : 「おはよう!」 嬉しそうに、小走りで駆け寄った
狩野春香 : 「おおっ? 今朝は矢鱈とテンション高いな、スズ? どうかしたん?」
涼風紗雪 : 「ん、そうかな?うーん……春香が元気でいてくれたから、かな……?」
狩野春香 : 「ん~? 私はいつも元気だが~?」
狩野春香 : 「……まっ! いずれにせよ、スズが元気なのもよき哉よき哉!」
涼風紗雪 : 「ふふっ、そうだね。やっぱり、みんな元気なことが一番だよ」
涼風紗雪 : 「じゃあ、行こうか!」 そう言って、通学路へと歩き出す
狩野春香 : 「ん。 そうだね」
GM : 話がひと段落ついたところで、眩しい笑顔を交わしあって、二人は歩き出した。
狩野春香 : 「あっ、そうだ! 昨日、スズってば、うちに来てなかった?」
涼風紗雪 : 「え!?えーっと……あれ?そうだっけ?」 ギク、と一瞬顔を引きつらせて
狩野春香 : 「私もぜんぜん覚えてないんだけど、流しにスズ用のティーカップが置いてあったからさ」
涼風紗雪 : 「(あ……!?そ、そういうことか……!)」
狩野春香 : 「……でも、スズにもうちに来た覚えがないなら、おかあさんが勝手に使ったって事かなぁ」
涼風紗雪 : 「あ、いや、えーっと……」
涼風紗雪 : 「……ううん、行ったよ!夕方か少し暗くなった頃かな、ちょっとだけ春香の家に寄ったんだよ!」
涼風紗雪 : 「あの後色々あったから、僕もすっかり忘れちゃってたんだけどさ……」
涼風紗雪 : 騙し続ける罪悪感が勝ったのか、嘘は言っていない範囲で…とそう伝える。
狩野春香 : 「あ、やっぱり? ごめんね、あんまり覚えてなくて!」
狩野春香 : 「いやぁ、手作りチョコで悪戦苦闘しちゃって、バレンタイン前日は夜更かししちゃったから、眠かったのかなぁ……」
涼風紗雪 : 「うん……もしかしたら、そうかもしれないね。春香、ぐっすり寝ちゃってたしさ」
狩野春香 : 「えっ、その時の寝顔、見られたの!?」
狩野春香 : 「寝不足でスズの前でそのまま寝て……、って事は、きっとだらしない顔で……」
狩野春香 : 「はっず……」
涼風紗雪 : 「いやいや、そんなだらしない感じじゃなかったから!普通だったよ、普通!」
狩野春香 : 「あ、そうだった? それならいいか?」
狩野春香 : 「いや、でも、勝手に寝ちゃってゴメンね!」
涼風紗雪 : 「ううん。……こっちこそ、なんか……ごめんね」 目を伏せる
狩野春香 : 「?」
狩野春香 : 「別にスズが謝る事なんてないじゃん?」
涼風紗雪 : 「うん、まあ……そうなんだけど……」
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「……あ!そうだ、春香!」 話題を無理矢理変えるように、手をパンッと合わせて
涼風紗雪 : 「僕ね、春香に伝えなきゃいけないことがあるんだよ!」
狩野春香 : 「えっ、伝えたい事、ですかっ!?」
狩野春香 : 「バレンタイン翌日のこのタイミングで!」
狩野春香 : 「え、何かな?」
涼風紗雪 : 「え、えっと……」
涼風紗雪 : 「(確かに、バレンタイン翌日ってなると……。春香、鋭いな……でも、言わないと……)」
涼風紗雪 : 「……その、恋人が……出来たんだよ、僕」 少しだけ照れ臭そうに言う
狩野春香 : 「……えっ」
狩野春香 : 「ええええええええええええええええええっ!?!?!?」
涼風紗雪 : 「ちょ、春香、そんな大声出さなくてもっ」
狩野春香 : 「あっ、ごめ」
狩野春香 : 「……いや、だって、スズは“まだ誰ともそういう関係になりたいと思えないんだよ”って」
狩野春香 : 「そう言ってたし、ビックリしちゃったというか」
涼風紗雪 : 「そうだよね……僕もずっとそう思ってたんだけど、昨日告白されて、気が変わった……みたいなさ」
狩野春香 : 「ほ、ほえええええ……」
狩野春香 : 「でも、そっか……、そうなんだ……、おめでとう、スズ」
涼風紗雪 : 「あ、ありがとう。あ……でも……」
涼風紗雪 : 「恋人っていっても、出来たのは彼氏じゃないんだよ」
狩野春香 : 「ん? 彼氏じゃない? ということは?」
涼風紗雪 : 「女の子。だから、彼女……?になるのかな……」
狩野春香 : 「ですよね~! なんかスズが男子と手を繋いで歩いてるとこ、想像しにくいと思ってたんだよな~!」
涼風紗雪 : 「え……そうなの!?もっとびっくりされるかなって思ったけど、そこは納得なんだ!?」
狩野春香 : 「まあ、うちの学校で女の子同士で付き合ってるって話は、ほぼ聞かないけど……」
狩野春香 : 「王子様に必要なのは、お姫様でしょ?」
涼風紗雪 : 「……ふふっ。うん、確かに。その通りだよ」
涼風紗雪 : 「何ていうか、流石春香かも。僕のこと、僕よりよく分かってるとこあるよね」
狩野春香 : 「ま、まあねっ!」ドヤッ
涼風紗雪 : 「うんうん」 かわいいな、と思いながらドヤ顔を見てる
狩野春香 : 「……でも、スズのお姫様って誰だったの?」
涼風紗雪 : 「春香も知ってる子だよ」
涼風紗雪 : 「犬養一夏ちゃん。一夏ちゃんが、僕の……お姫様」 髪をいじりながら
狩野春香 : 「一夏ちゃんかあ! まっ、一夏ちゃんからは、スズ大好きオーラがいつも出てたしな~!!」
狩野春香 : 「(そっか、そっか、よかったね、一夏ちゃん)」
狩野春香 : 「ちゃんと王子様らしく守ってあげなよスズ?」
涼風紗雪 : 「うん、もちろん!ちゃんと守るさ!」
涼風紗雪 : 「でもやっぱり、春香に一番に報告してよかった。なんか、凄く嬉しいよ」
狩野春香 : 「そう? それなら、よかった、な」
涼風紗雪 : 「うんっ。……ただ、さ」 少しだけ言い淀んでから
涼風紗雪 : 「これからは、もう春香と一緒に登校出来なくなるんだよ、ね……」
狩野春香 : 「そっかぁ、スズはこれからは一夏ちゃんと一緒に登校するんだもんね……」
涼風紗雪 : 「うん、そういうこと。家も近いから一緒に登校出来るし……ごめんね」
狩野春香 : 「…………」
狩野春香 : 「ううん、私は大丈夫! むしろ、毎朝、一夏ちゃんとの惚気話を聞かされなくて済んでよかったぜ!」
狩野春香 : 「……なんて、ね」
狩野春香 : 「もう受験も近いんだし、残りの青春は短いよ? 一夏ちゃんとの時間を大事にしな?」にこっと笑う
涼風紗雪 : 「……ありがとう、春香!分かった、ちゃんと大事にするよ!」
涼風紗雪 : 「……あ、でもさ。僕だけ悪いなって思ったけど、それなら春香も誰かと付き合えば良いんじゃ……」
狩野春香 : 「おい」
涼風紗雪 : 「えっ。でもほら、恋人作るって……一年前から……」
狩野春香 : 「………………」
狩野春香 : 「そうカンタンにできたら、今頃、彼氏との青春を謳歌してるわ!! 終いには泣くぞっ!」
涼風紗雪 : 「ご、ごめん!無神経だった!だから泣かないで!!」
涼風紗雪 : 少し慌てながら、春香ちゃんの頭を撫でてあやしてる。
狩野春香 : 「ちょっと撫でたくらいで機嫌がなおると思うな~~~~!!!! 小学生の頃の感覚のまんまか~~~~!?!?」
涼風紗雪 : 「春香あんまり小学生の頃から性格変わってないし……ってそういうわけじゃないけどさ……!!」 手を離す
涼風紗雪 : 「あ、そ、そうだ!ご機嫌取りってわけじゃないんだけど、もう一個春香に話があるんだよ!」
狩野春香 : 「……今度はなんだよぅ」
涼風紗雪 : 「えっとね、実はさ……」
涼風紗雪 : 「僕、コスプレ……?っていうの、やりたいんだよ」
狩野春香 : 「えっ、コスプレ????」
狩野春香 : 「いや、急にどしたん」
涼風紗雪 : 「まあ、急と言えば急だけど、ずっと気になってはいたんだよ」
涼風紗雪 : 「春香が時々好きそうな感じに言ってたしさ……」
涼風紗雪 : 「ただ、僕漫画とかアニメには詳しく無いから、今までやりたいとかは思わなかったんだけど……」
涼風紗雪 : 「なんか……これから春香と登校出来ないってなると、寂しいからっていうか……。それなら一緒に、また別の新しいことがしたいな、って思ったんだよ」
狩野春香 : 「コスプレ喫茶の時もノリノリだったし、言われてみるとコスプレに興味を持ってるのも納得ですな」
狩野春香 : 「うん! そういう事なら、任せてくださいな! 私がコスプレのいろはを叩き込んであげましょう!」
涼風紗雪 : 「ありがとう!じゃあ任せて……って、やっぱり凄く詳しいんだね……!?」
狩野春香 : 「実は、ね」
狩野春香 : 「あっ、ここだけの秘密だからね……? コスプレ趣味とか知られたら恥ずかしいし……」
涼風紗雪 : 「え?う、うん。よく分からないけど、秘密は守るよ」
狩野春香 : 「よかったよかった」
狩野春香 : 「……私も、本当はスズともっと一緒に過ごしたかったし、同じ趣味ができるのは嬉しいなっ」
涼風紗雪 : 「……うん、僕もっ。恋人が出来たからって、春香と友達でいることは変わらないんだ」
涼風紗雪 : 「だから、これからもよろしく頼むね」 嬉しそうな笑顔を向ける
狩野春香 : 「うんっ、もちろんっ」
狩野春香 : 「……って、こんな事を改めて言うなんて、なんだか可笑しいね」
狩野春香 : 「ずっと一緒に過ごしてきた幼馴染なのにさ」
涼風紗雪 : 「あはは、そうかも……。だけど、言葉にしなくちゃ伝わらないこともあるしさ」
涼風紗雪 : 「だから、別に良いんじゃないかな?」 とは言うが、少し照れているのか髪をいじっている
狩野春香 : 「そうだねっ」
狩野春香 : 「じゃあ、まずは、私のオススメのアニメとマンガの履修から……」
狩野春香 : 「大丈夫、あまりそういうジャンルに触れた事がない人でもオススメな作品を選ぶから、ね……ふふふ……」
涼風紗雪 : 「うっ……。そりゃ、おすすめしてもらうつもりだったけど……ほんとに大丈夫……?」 謎の嫌な予感を覚える
狩野春香 : 「まったく意味のない嘘は、エイプリルフールくらいしかつかないよ!」
狩野春香 : 「この春香さんを信じて任せて!」
涼風紗雪 : 「……分かった、信じるよ!春香!」 グッと小さく握り拳を作る
涼風紗雪 :
春香ちゃんのロイスの感情を、P友情/N恐怖に変えます!
表に出てるのはPで、友情はそのまま友情、恐怖は大切な友達を失うことへの恐怖です(クライマックスで色々あったので)
GM : わかりました! 一夏に良心が残ってなかったら、完全に殺されてましたからね春香さん…
狩野春香 : 「でわでわ、差し当たっては、久々にお泊り会でも────」
GM : 親友との関係。 そのカタチが時の流れで変わっていってしまったとしても、
GM : 一緒に過ごした時間がなくなる訳じゃない。
GM : そのキズナがなくなってしまう訳じゃない。
GM : だから、大丈夫。
GM : きっと、ずっと、掛け替えのない親友同士。 これまでも、これからも──
GM : 3月14日。 天気は快晴。
GM : 事件後、一夏は学業に復帰。
GM : “犬養一夏は人殺しである”というウワサは、既に全生徒に認知されており、
GM : 暫くの間、その影響で、一夏はイジメ擬いの事もされていたようだったが、
GM : あなたが献身的に弁護をした甲斐あってか、
GM : ウワサはいつからか“犬養一夏は涼風紗雪と付き合っている”という内容に。
GM : 虚偽から真実に上書きされていたのだった。
GM : そして、三月に入る頃には、一夏は元の平穏な高校生活を取り戻していた。
GM :
GM : ──それから、あなたと一夏は、昼休みも一緒に過ごすようになっていた。
GM : 今時、不用心にも──恐らく一夏が鍵を壊したから──開いていた屋上で、
GM : ふたりきりで隠れて過ごすのだ。
GM :
GM : ……しかし、今日のあなたは、秘密の屋上に行くのに遅刻してしまいそう。
GM : というのも、今日はホワイトデー。 バレンタインチョコの返礼をする日だ。
GM : ──なので、昼休み、あなたはお返しとしてクッキー等を配り歩いていた。
GM : それも今はあらまし片付いて、あとは春香に渡したら一段落、といった所。
涼風紗雪 :
「あとは春香だけ、と……。教室にいるかな?」
ほぼ校内をぐるっと一周してから、自分の教室に戻って扉を開ける。
狩野春香 : 「でさ──スズったら────」
GM : 春香は教室であなたの話をしていたらしい。 あなたに気付いた様子はない。
涼風紗雪 : 「……あ、いたいた」 近付いていって
涼風紗雪 : 「春香!」 後ろからぽんぽんと肩を叩く
狩野春香 : 「うわおっ!? ……噂をすれば!!」
涼風紗雪 : 「なんだ、やっぱり僕の話してたの?」
春香の友人 : 「あっ、涼風さん! あなたって、パーフェクトヒューマンに見えるけど実は……!」
狩野春香 : 「あ~~っ!? ちょいちょいちょい!?」
涼風紗雪 : 「実は……?春香、もしかして何か変なこと言ってたんじゃ……」 ジトっと見て
狩野春香 : 「……あ、あはは~」
狩野春香 : 「あっ、悪口とかじゃないからねっ!? それだけは誓って本当だからねっ!!」
涼風紗雪 : 「その心配はしてないよ、春香がそんな陰口言うわけないしさ」
涼風紗雪 :
「ただ、僕の話するのもほどほどにして欲しいな。恥ずかしいからさ……」
何となくどんな話をしてたのか想像ついたのか、少し照れたように髪をいじっている。
狩野春香 : 「それは……」
狩野春香 : 「約束できないってばよ……」
涼風紗雪 : 「なんでさ!」
狩野春香 : 「え~、スズの話ってウケいいしさ~」
狩野春香 : 「それに、親しみを持ってもらうためにも、スズのひととなりを知ってもらうのはイイコトじゃん?」
涼風紗雪 : 「う……うぅん……」
涼風紗雪 :
「そりゃ、勝手なイメージで変に距離置かれるよりは良いけどさ……」
微妙に納得したようなしてないような顔している
狩野春香 : 「ふふん、チョロいぜ……」ぼそっ
涼風紗雪 : 「全くもう……仕方ないな、春香は」 困ったように苦笑いして
涼風紗雪 : 「それよりさ、春香。渡したいものがあるんだけど」
狩野春香 : 「えっ、もしかしてっ、私宛のラブレターっ!?」
涼風紗雪 : 「違うよ!なんでそうなるのさ」
狩野春香 : 「えへへ、本当は分かってるよっ! 例のブツでしょっ!」
涼風紗雪 : 「もう、変な言い方しないでよ。分かってると思うけど……はい、これ」
涼風紗雪 :
そう言って、青いリボンで包装された袋を渡す。
袋は透明で、中には数枚のクッキーが入っているのが見えていた。
涼風紗雪 : 「ホワイトデーのお返しだよ」
狩野春香 : 「どもども! ありがたく頂戴しますよっと!」受け取り
狩野春香 : 「……う~ん、しかし、今年のクッキーはおいくらなのかね」クッキーを眺めながら
涼風紗雪 :
「えっと……いや、秘密ってことでさ」
と言うが、クッキーを眺めていれば袋の底に値段が書いているのが分かる。
それを見れば、値段には0が四つ並んでいるのが分かるだろう……五つじゃないだけマシというべきかもしれない。
狩野春香 : 「えっ、こわっ」
狩野春香 : 「隠されるの逆にこわっ」
涼風紗雪 : 「怖くないよ!」
狩野春香 : 「いや、こわいが~~~~……」
狩野春香 : 「でも、まあ、格付けチェックとかに出そうなクッキーって事は分かったよ、うん……」
涼風紗雪 : 「そうかな?すぐ突っ込まれるから秘密って言ったけど、結構安い方を選んだんだよ」
狩野春香 : 「こ、こういう女だからね、みんな……! 涼風紗雪は……!!」
涼風紗雪 : 「こら、何がこういう女なんだ……!!」
狩野春香 : 「あはは~、ともあれ、今年もみんなで分けて大事にたべさせてもらいますわねっ!」
涼風紗雪 : 「んもう……。うん、そうしてよ」
狩野春香 : 「……しかし、このおかえしのクオリティを知ったら、女子はおろか男子も含めて全校生徒からバレンタインチョコがもらえちゃうかもね」
涼風紗雪 : 「それは流石に色々と困るな……」
涼風紗雪 : 「まあ、そういう目的の人からは受け取ったりしないよ。僕も」
狩野春香 : 「なるほど、それはもっともな対策」
涼風紗雪 : 「でしょ?」
GM : そのように春香と話し込んでいると、ふいに後ろからあつい視線を感じた。
涼風紗雪 :
「……ん?」
視線を確かめるために振り返る。
GM : ──そこには、一夏が立っていた。 教室のドア窓から覗き込んできている。
犬養一夏 : 「……みつけた」
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん?」
GM : 一夏はススッとあなたの隣に寄ると、ぎゅっとしがみつくように腕を組む。
涼風紗雪 : 「わっ……どうしたの、いきなり」
犬養一夏 : 「……遅いんですけど、いつも」
涼風紗雪 : 「あぁ、ごめんね?でも今日はホワイトデーのお返しがあったからさ……」
狩野春香 : 「そうそう、ごめんね?」
犬養一夏 : 「……それは、分かってますけど」
犬養一夏 : 「…………」
GM : ──そうして、あなたは、そのまま屋上まで引き摺ら……連れていかれた。
涼風紗雪 : 「うわ、ちょ、一夏ちゃん……!?」 引っ張られていく
犬養一夏 : 「……………………」むすーん
涼風紗雪 : 「……一夏ちゃん?もしかして、何か怒ってる……?」
犬養一夏 : 「べつに?」
涼風紗雪 : 「本当?そうは見えないんだけど……」
犬養一夏 : 「そう見えるなら、そうかもしれませんね……と」
GM : まだまだ肌寒いので、風がない場所を探して座ると、身を寄せて暖を取る。
涼風紗雪 : 「うーん……」
涼風紗雪 : 「(やっぱり、怒ってるよな……一夏ちゃん。待たせちゃってたから?いや、それくらいだとこんな態度には……)」
涼風紗雪 : 何故一夏が怒っているのか考えていくと、これまでの経験から一つの答えに行きつく。
涼風紗雪 : 「一夏ちゃん、もしかして……僕が他の人にホワイトデーのお返ししてるの、嫌……とか?」
犬養一夏 : 「はぁぁ、そうです、そうですよ」
犬養一夏 : 「────ぼくだけの王子様じゃなかったんですか?」
涼風紗雪 : 「そうだよ。でも、せっかく貰ったんだからお返ししないってわけにもいかないじゃないか」
涼風紗雪 : 「(まあ、バレンタインデーのチョコは全部一夏ちゃんに食べられちゃったわけだけど……)」
犬養一夏 : 「……わかってますけど、嫌だったんですもん」
GM : 一夏は子供みたいに拗ねている。
涼風紗雪 : 「……ふふっ」 その様子を見て、思わず小さく笑ってしまう
犬養一夏 : 「な、なにが可笑しいんですか」
涼風紗雪 : 「いや……何でもないさ」
涼風紗雪 : 「それより、一夏ちゃん。ちょっとだけ目を閉じてくれないかい?」
犬養一夏 : 「えっ、今、ですか? いいですけど……」言われるがままに目を瞑る
涼風紗雪 :
「ん、ありがと」
そう言って、自分の口元に手を当ててから
涼風紗雪 :
「……ん」
と、一夏ちゃんと自分の唇を優しく重ねる。
犬養一夏 : 「……ん、ぇ!?!?」いきなりの口付けに驚いてあとずさる
涼風紗雪 :
「逃げちゃダメ」
後ずさる一夏を逃がさないとでも言うかのように、両肩を手で押さえ、更にキスを続ける。
犬養一夏 : 「ちょ、ちょっと待……! んぅ、んぅぅっ……!!」
涼風紗雪 : 肩から腕へと撫でるように手を動かし、一夏と恋人繋ぎをする。
涼風紗雪 :
ギュッと指が絡み合ったところで、一夏は気付くだろう。
紗雪の唾液に混じって、何か甘い味が染み込んでくることに。
それは紗雪の舌で押し出されるようにして、一夏の口の中へと侵入してくる。
犬養一夏 : 「……? あ、ん……ぇ……?」
涼風紗雪 : 「ん……ん……」 そのまま、その味を確かめるようにキスを続けてから
涼風紗雪 :
「……ぷはっ」
唇を離し、一夏の目を見つめる。
涼風紗雪 : 一夏の口の中では、コロコロと小さなキャンディが転がりながら、甘い林檎の味を広げていた。
犬養一夏 : 「ぷぁっ……、は、ぁ、はぁ……」肩で息をして、口移しされたものの正体を確かめる
犬養一夏 : 「り、りんごアメ……?」
涼風紗雪 : 「そ。林檎味のキャンディ」
涼風紗雪 : 「……ねえ一夏ちゃん、知ってるかな?ホワイトデーのお返しのクッキーは、いつまでも友達でいようって意味だけど……」
涼風紗雪 : 「キャンディには、どういう意味があるか……分かる?」
犬養一夏 : 「えっ、えっ……?」あまりの事に頭が回っていないらしく、疑問符しか出てこない
涼風紗雪 : 「答えはね、あなたが好きです、だよ」
涼風紗雪 : 「キャンディは口の中に味が長く残り続けるから、甘く蕩けるように、愛が長く続きますように……って意味もあるんだってさ」
涼風紗雪 : そう微笑みながら伝える紗雪の頬は、仄かに赤く染まっている。
犬養一夏 : 「ぼくが、好き…………」
犬養一夏 : 「そ、それは、知ってます……けど……」
GM : 一夏は思わずニヤける口を手の甲で隠した。
GM : ……しかし、顔が林檎みたいに真っ赤になってしまっているのはバレバレ。
犬養一夏 : 「いきなり過ぎて、心の準備がっ……」
犬養一夏 : 「ぅ……し、心臓がっ……、オーヴァードでも死んじゃいそうっ……」
涼風紗雪 : 「ふふっ、かわいいね。でも、今回は謝らないよ」
涼風紗雪 : 「バレンタインデーの時だって突然だったんだから。これで本当にお返しさ」
犬養一夏 : 「あぅぅ……、せんぱいのイジワルぅぅ……」
涼風紗雪 : 「意地悪なんかじゃないさ」
涼風紗雪 : 「ねえ、一夏ちゃん。これでもまだ怒ってる?」
犬養一夏 : 「……は、ぅ」息をととのえる
犬養一夏 : 「……………………」
犬養一夏 : 「怒っては、ないです」
涼風紗雪 : 「ん。それなら、良かった」 嬉しそうに微笑む
犬養一夏 : 「──で、でも、不満がサッパリなくなった訳じゃないですからね!」
犬養一夏 : 「この際! いつも我慢してる事を言うとするなら!!」
犬養一夏 : 「一日に最低でも一回は“好き”って言葉で伝えてほしいし……!」
犬養一夏 : 「もっと触りたいし触ってほしいし……!!」
犬養一夏 : 「もっと長い時間、一緒にいたいし……!!!」
犬養一夏 : 「っていうか、それくらい、言わなくても分かっててほしいしっ……!!!!」
GM :
一夏は信じられないワガママを口に出した。 以前は考えられなかった事だ。
涼風紗雪 : 「…………」
涼風紗雪 : 「……そっか。うん、分かった」
犬養一夏 : 「えっ」
涼風紗雪 : 一夏の背に腕を回し、その体をギュッと抱きしめる。
犬養一夏 : 「あ、ぇ!?」
涼風紗雪 : 「好きだよ、一夏ちゃん。愛してる」 耳元で優しく囁きかける
犬養一夏 : 「う、うううう……」ぺたんと力なく身を預ける
犬養一夏 : 「せんぱい、畳み掛けるのは、ズ、ズルいですって」
犬養一夏 : 「そ、そんな今すぐ直してなんて、言ってないのにっ……」
涼風紗雪 : 「そうなの?でもこれくらいでズルいなんて言われちゃうと、僕も困っちゃうな……」
涼風紗雪 : 「これからは、顔を合わせる度にこうして抱きしめあって、愛を伝えて……キスもするつもりなんだけど?」
犬養一夏 : 「え、ええっ!? ええええええっ!?!?」
犬養一夏 : 「そ、それは、死んじゃいますっ……きっと、オーバーヒートしちゃいますっ……」
涼風紗雪 : 「駄目だよ、死んでもするから。だって、そうでもしないと一夏ちゃんの望みを叶えられないでしょ?」
犬養一夏 : 「……っ、ううっ」
犬養一夏 : 「わ、わかり、ました」
涼風紗雪 :
「うん。じゃあ、そういうことだからね」
体を離し、一夏と目を合わせる。その表情は満足げだ。
犬養一夏 : 「はい……、た、耐えられるかな……」
犬養一夏 : 「……………………」
犬養一夏 : 「あ、ああっ、キスで忘れるところでした、ぼくからもお返しが……」
涼風紗雪 : 「え?お返し?」
犬養一夏 : 「はい」
犬養一夏 : 「遅くなっちゃいましたけど、これ」
GM : 一夏は肌触りのいいタオルを手渡してきた。
涼風紗雪 : 「あ……これは」
犬養一夏 : 「はい、あの時に貸してもらったタオルです」
犬養一夏 : 「再会できたら返すって約束だったのに、今までコレを御守りみたいに思ってたから、返したくなくなっちゃって……」
涼風紗雪 : 「そっか……そうだよね」 夢で見た内容をふと思い出す
涼風紗雪 : 「でも、良いの?約束は約束だけど、一夏ちゃんがまだ持っていたいなら僕は全然構わないよ?」
犬養一夏 : 「…………もう、いいんです」
犬養一夏 : 「だって、ぼくにはせんぱいがいますからっ」
犬養一夏 : 「会う度にハグもキスもしてくれる……んですもんね?」
GM : 一夏は照れ臭そうに目を逸らし、そう言った。
涼風紗雪 : 「……うん!そうだよ、嘘は言わないさ!」
涼風紗雪 : 嬉しそうにそう答えながら、タオルを確かに返してもらった。
犬養一夏 : 「そ、そうですよねっ」
犬養一夏 : 「(会う度って事は、学校だけで登校時と昼休みと下校時で三回……?)」
犬養一夏 : 「(……せんぱい、本当にぼくの事が好きなんだ)」
犬養一夏 : 「(今までは、ぼくばかり好きなんじゃないかって不安に思う時もあったけど……)」
犬養一夏 : 「(えへへ、うれしいな、またニヤけちゃいそう)」
犬養一夏 : 「……あっ、そうだっ、次のデートっ、何処に行きましょうかっ?」
涼風紗雪 : 「うーん、そうだな……」 少し考えて
涼風紗雪 : 「じゃあ、次は────」
涼風紗雪 : 愛する恋人に笑顔を向けながら、紗雪は彼女と行きたい場所を告げる……。
犬養一夏 : 「あっ、それ! いいですねっ!! もう週末がたのしみだなぁ……!!」
GM : 一夏は屈託のない笑顔を返した。 嘘でも作り物でもない、心からの笑顔を。
GM : ──空模様は、初めて会った日と同じ、雲ひとつないクリアブルーの晴れ。
GM : 少し眩しすぎる青空は、その下に佇む二人の薔薇色の未来を照らしていた。
GM : 以上をもちまして、ダブルクロスThe 3rd edition『ウェアウルフはもう隠せない』は完結となります!
涼風紗雪 : うわ~!お疲れ様でした!!!楽しかった!!!!!
GM : おつかれさまでした! たのしんでもらえたようで、なにより!! 私もすごくたのしかった!!!!
涼風紗雪 : ほんとにね…!描写から演出から何まで、めちゃくちゃ気合入りまくってて面白かったし、一夏ちゃんが幸せになってくれて良かった…
GM : ありがとうございます! 今回は特にいろいろと張り切って準備してましたね…!!
GM : これから紗雪ちゃんと一夏ちゃんの二人は、周りが見てて恥ずかしくなるくらいイチャイチャとした薔薇色の人生を歩んでいくことでしょう…。
涼風紗雪 : 周りの目なんか気にせずいちゃつくらしいね…
GM : 一夏は最初は世間体を気にして、人前でのキスとかハグとか禁止するけど、次第に隠れてイロイロしはじめるらしいですね…。
涼風紗雪 : いろいろ…なるほどね…?
GM : 健全! 健全なコンテンツです!!
涼風紗雪 : ほんとに!?!?!??(お風呂覗き、全裸で白い液体塗れ、ベッドの上でたくさん愛してあげます発言)
GM : ごめんなさい、最後に嘘をつきました
涼風紗雪 : 正直でよろしい……
涼風紗雪 : あとは、一夏ちゃんロイス、最後まで残してたわけだしメモリーにします!関係恋人、感情純愛とかで!
涼風紗雪 : もし継続で使うにしても絶対ロスト出来ないので固定ロイスよりこの方が良い気がした
GM : メモリーはもう変化しない関係性、という事でもあるので、この二人の愛は永遠、という証左ってワケ……
涼風紗雪 : そういうこと…!!
涼風紗雪 : 固定ロイスはせっかく復活させてくれたわけだから引き続き王子様と、あと春香ちゃんって感じになると思う
GM : これは固定ロイスでニコニコ春香🌸
涼風紗雪 : かわいいね…
GM : さて、アフタープレイもこんなところでしょうかね!
涼風紗雪 : ですです!
GM : ではでは、長い間、お付き合い頂き、ありがとうございました!
涼風紗雪 : こちらこそ、ありがとうございましたー!